NEDO フォーラムクリーンコール技術セッション CO 2 分離回収技術の現状と展望 2015 年 2 月 13 日 NEDO 環境部部長 安居徹
1.NEDO クリーン コール技術の取組 CO2 回収コスト削減技術 発電効率の改善 NEDO プロジェクト IGCC (EAGLE STEP-1) IGFC 向け石炭ガスクリーンナップ技術開発 IGCC 水蒸気添加噴流床ガス化技術開発 技術確立時期 2006 年 2017 年 2030 年 石炭火力発電における低炭素化 CO 2 分離 回収技術の開発 燃焼前回収法 EAGLE での化学吸収法 物理吸収法の適用性評価 (STEP-2 & 3) その他の回収法 2014 年 CO 2 回収型次世代 IGCC 技術開発 2035 年 ケミカルルーピング燃焼技術開発 2030 年 製鉄業における低炭素化 CO 2 分離 回収及び排出抑制 高炉製鉄所からの CO 2 削減 (COURSE50) 2030 年 2050 年 低品位炭の利用 乾燥及び改質 低品位炭利用ビジネスモデル検討 海外実証 2
3 2.2040 年までの世界の石炭需要見通し 石炭は 石油や天然ガスなど他のエネルギー源に比べて 地域偏在性が低く かつ 安価で比較的 価格も安定 エネルギー需要全体の伸びに併せて拡大の見通しであり 今後とも重要なエネルギー源として期待 されている Mtoe Mtoe 27% 24% 46% 37% World primary energy demand by source World power generation by source 出典 : World Energy Outlook 2002, 2004, 2007 2012, 2014
[g-co 2 /kwh] 3. 発電時における CO2 発生量の比較 効率のよい超超臨界石炭火力発電においても LNG 火力発電に比べおよそ 2 倍の CO 2 を排出 石炭火力最も発電の利用にあたっては 更なる効率の向上と CO 2 の貯留 利用が必要 発電燃料別 kwh 当たりの CO 2 発生量 1400 1200 1000 800 600 400 1195 967 907 889 958 864 806 CCS で削減 米 財務省基準 :500 g-co 2 /kwh EIB( 欧州投資銀行 ): 550 g-co 2 /kwh 695 476 375 200 0 インド 中国米国ドイツ世界 石炭火力 CCS 付石炭火力 ( 日本平均 ) USC IGCC 石油火力 LNG 火力 LNG 火力 ( 日本平均 ) ( 汽力 ) ( 複合平均 ) 出典 : 電力中央研究所 (2009) 各研究事業の開発目標をもとに推計 : 海外については CO 2 Emissions Fuel Combustion 2012 4
4.CCS の導入見通し 炭酸ガス発生抑制を行わない場合には 2050 年に 500 億トンに年間 CO 2 発生量は増加し世界の平均気温は約 6 増加する IEA のモデルでは平均気温の上昇を 2 に抑えるために年間 CO 2 発生量を約 150 億トンに削減する必要があり CCS はこの CO2 削減量の 14% を担うとされている 億 ton/ 年 600 発電効率向上と燃料転換 原子力発電 6 上昇 500 億トン 400 再生可能エネルギー 燃料転換 14% 200 省エネルギー 2 上昇 150 億トン 省エネルギー 38% 燃料転換 9% 発電効率向上と燃料転換 2% CCS 14% 再生可能エネルギー 30% 原子力発電 7% 出展 :GCCSI Global Status of CCS 2014
4.1 世界の IGCC-CCS 開発状況 ガス化技術の進化 一層の高効率化と CCS の実現 低コスト化 IGCC : 運開 発電端出力 IGCC-CCS: CCS 開始予定 年間貯留量 世界各国でIGCC+CCSの実証プラントが盛んに計画されている IGCC+CCS プロジェクトの一例 Kemper 米国 Southern 社 発電端出力 582MW 2014 運開予定 貯留量 3.0Mtpa 1500m プロジェクトの一例 Green Gen 中国 GreenGen 社 PhaseⅠ(2006-2011) 2,000tpd IGCC Tianjin Phase Ⅱ(2010-2013) 3,500-2,000tpd IGCC+ 水素製造 +CCS Phase Ⅲ(2014-2017) 400MW IGCC+ 水素製造 +FC+CCS IGCC 700m Puertollano ( スペイン,318MW,1997) Polk Power ( 米,315MW,1996) Wabash River ( 米,296MW,1995) Buggenum ( オランダ,284MW,1994) Pre-Combustion 方式による CCS の実施 勿来 ( 日,250MW,2007) IGCC Taean ( 韓,300MW,2015) Edwardsport ( 米,630MW,2013) Teeside ( 英,2018,4.2Mtpa) Don Valley Hatfield ( 英,2018,4.75Mtpa) Cash Creek New Gas ( 米,2018,5Mtpa) HECA ( 米,2018,3Mtpa) Summit ( 米,2018,2Mtpa) Green Gen ( 中,2016,2Mtpa) Kemper ( 米,2014,3.5Mtpa) 大崎 CG ( 日,2019,0.3Mtpa) 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 6
4.2 世界の大規模 CCS プロジェクト 現状では CO 2 /EOR が主流 出展 :GCCSI Global Status of CCS 2014
4.3 CCS の課題 政策課題 現状はCO 2 が売れるCO 2 /EORが主に実施されている CCSは帯水層貯留の場合コスト増加のみで事業の経済性が無く 政策的措置がとられた場合にのみ実現される CO 2 /EOR 以外の帯水層貯留は 長期間のCO 2 貯留のため PA( 社会的受容性 ) に十分留意して 地域住民のコンセンサスを得て進める必要がある 技術課題 分離 回収は既存技術の組合せで現状でも実現可能な技術であるが コスト負担低減が課題 貯留技術は数百万トン / 年の大規模貯留時の貯留 CO 2 貯留範囲予測の高精度化とサイト閉鎖後の低コスト 継続的 CO 2 挙動監視技術の開発が必要 CCS の概要 ( 帯水層貯留 ) CO2/EOR の概要 ( 枯渇油田の再生 )
CO2 の費用 ( 円 / トン CO2) CO2 の費用 ( 円 / トン CO2) CO 2 の費用 ( 円 / トン CO 2 ) 5. 現状の発電 CCS コスト構造 分離 回収で約 3 円 /kwh 増加 分離 回収は約 3,500 円 /t-co 2 3 円 /kwh (1) 12,000 10,000 8,000 貯留 O&M 費 貯留資本費 輸送 O&M 費輸送資本費 (2) 12,000 9,892 10,000 8,000 (3) (4) 10,973 11,343 9,892 貯蔵 輸送 10,973 8,246 1 1 6,000 6,187 発電燃料費 6,000 6,187 3,500 円 /tonco 2 4,000 発電 O&M 費 4,000 液化 昇圧 2,000 発電資本費 2,000 エネルギーペナルティ ( 効率低下による費用増 ) 分離 回収 陸上基地から貯留 IGCC に CCS を適用した場合の発電原価 0 0 洋上基地ケース1 ケース2 陸上基地ケース 31 洋上基地ケース 42 ケース 53 ケから貯留から貯留から貯留 ( 輸送無 0km) (1259km) ( 輸送無 (1074km) 0km) (1259km) (704km) (120km) (1074km) (1 ( CO 2 の費用 洋上基地 分離 回収エネルギーペナルティ分離 回収液化 昇圧エネルギーペナルティ輸送液化 昇圧貯留 洋上基地 陸上基地からの貯留 帯水層 CO 2 貯留層 洋上基地からの貯留 帯水層 CO 2 貯留層
6.CO 2 分離 回収技術 石炭焚ボイラー ポストコンバッション CO 2 回収技術 民間企業開発 酸素燃焼 CO 2 回収技術 METI 補助事業 ケミカルルーピング 石炭ガス化 プレコンバッション CO 2 回収技術 ( 化学 物理 ) CO 2 膜分離回収技術 METI 直轄事業 CO 2 回収型次世代ガス化技術 NEDO 技術開発 分離回収装置が必要 分離回収装置なし 10
6.1 CO 2 分離 回収技術の開発 CO 2 分離 回収に伴う発電効率の損失低減 石炭ガス化複合発電 石炭焚き火力 ( 超々臨界圧 ) A-1 A-2 A-3 A-4 損失 : 2 ポイント (CO 2 回収率 : 約 100%) 損失 : 6ポイント (CO 2 回収率 : 90%) 損失 : 7ポイント (CO 2 回収率 : 90%) 損失 : 9 ポイント (CO 2 回収率 : 90%) 基準 : 石炭ガス化複合発電 (CO 2 分離 回収なし ) ( 乾式ガス精製 ) A-1) 従来の CO 2 分離 回収技術 ( 化学吸収法 ) [DOE/NETLReport 2010 より ] A-2) EAGLE 化学吸収法 A-3) EAGLE 物理吸収法 A-4) CO 2 回収型次世代 IGCC 技術開発 B-1 B-2 目標 :CO 2 分離 回収コストの低減 基準 : 微粉炭火力 ( 超々臨界圧 ) (CO 2 分離 回収なし ) 損失 : 0 ポイント (CO 2 回収率 : 約 100%) 損失 : 9 ポイント (CO 2 回収率 : 90%) B-1) 従来の CO 2 分離 回収技術 ( 化学吸収法 ) [DOE/NETLReport 2010 より ] B-2) ケミカルルーピング燃焼技術開発 11
6.2 化学吸収法と物理吸収法の開発 (EAGLE STEP-2 & 3) 石炭ガス化設備 空気分離装置 ガス精製設備 ガスタービン建屋 CO 2 分離 回収設備 ( 物理吸収法 ) CO 2 分離 回収設備 ( 化学吸収法 ) 150 t/day EAGLE パイロットプラント, J-POWER( 北九州市 ) 12
13 6.3 CO 2 分離 回収技術の開発 化学吸収法と物理吸収法の開発 (EAGLE STEP-2 & 3) CO 2 分離 回収あり ( 回収率 : 90%) CO 2 分離 回収法送電端効率効率損失 CO 2 分離 回収なし 45.6% 化学吸収法 再生塔再生 ( 従来法 ) 加熱フラッシュ再生 ( 新開発 ) 34.8% 10.8% 38.2% 7.4% 物理吸収法 39.2% 6.4% (1,500ºC 級ガスタービン導入想定 ) 3.4 ポイント改善 さらに 1.0 ポイント改善 ( 高位発熱量ベース ) CO 2 分離 回収による効率損失の大幅な削減を達成 CO 2 分離 回収コストが 3 円 /kwh から 2 円 /kwh に低減可能かどうか今後精査
6.4 CO 2 回収型次世代 IGCC 技術開発 CO 2 分離 回収設備やシフト反応器の不要な CO 2 回収型 IGCC 技術 CO 2 回収後も 42% の送電端効率が期待できる革新的な IGCC 基盤技術の開発 (CO 2 分離 回収に相当する効率損失は 2 ポイント ) CO 2 分離 回収に相当するコスト :3 円 /kwh から 2 円 /kwh への低減が期待できる技術 合成ガス 燃焼器 GT ST G 電力 ガス化炉 石炭酸素 CO: 66% H 2 : 24% CO 2 : 5% 酸素 CO 2 リサイクル CO 2 GT: ガスタービン ST: 蒸気タービン G: 発電機 CO 2 リサイクル CO 2 回収 技術確立時期 : 2035 年 14
6.5 ケミカルルーピング燃焼技術開発 中小型石炭火力発電所向け (100 MW ~ 500 MW) 空気分離装置不要 排ガスがほとんど CO 2 CO 2 分離 回収設備不要 CO 2 回収後も送電端効率 46% を目指す技術開発 CO 2 分離 回収に相当するコスト : 4 円 /kwh から 2 円 /kwh への低減が期待できる技術 空気反応塔 窒素 MO X 石炭 MO X 燃料反応塔 窒素 蒸気 ( 発電用 ) HRSG サイクロン サイクロン 蒸気 HRSG 窒素 : (98%, dry) CO 2 : (98%, dry) HRSG: 排熱回収ボイラ 空気 MO X-1 技術確立時期 : 2030 年 15
16 7. まとめ 1. CO 2 分離 回収コストの低減は CO 2 を貯留する CCS の場合でも CO 2 を利用する CCUS の場合でも重要な課題 2. NEDO は石炭火力発電からの CO 2 分離 回収エネルギーの 40% 低減を達成し コスト低減の目処を得た 3. 引き続き技術開発を進め CCS または CCUS が世界の温暖化対策の有力な選択肢となることに貢献する
17 本日の講演 JPOWER: NEDO の事業で行った EAGLE の成果と この技術を活用した事業展開 三菱重工 : CO 2 回収技術の海外展開ビジネスモデルの検討について サザンパワーテクノロジー : サザンカンパニープロジェクトの概要と CO 2 /EOR の米国状況