DB のガバナンス ( 資産運用ルール等 ) について ( 第 18 回企業年金部会 ) 総合型 DB 基金のガバナンス については 平成 28 年 6 月 15 日付年金 NEWS DB 厚年基金 総合型 DB 基金のガバナンス見直しについて ( 続報 ) をご参照ください 平成 28 年 6 月 日本生命保険相互会社 本資料は 作成時点における信頼できる情報にもとづいて作成されたものですが その情報の確実性を保証するものではありません 本資料に含まれる会計 税務 法律等の取扱いについては 公認会計士 税理士 弁護士等にご確認のうえ 貴団体自らご判断ください ホームページアドレス http://www.nenkin.nissay.co.jp/info/report.htm H28.6.17 日本生命保険相互会社団体年金コンサルティング G 発行 ( 日本 - 年基 -201606-170-0294- D)
1. 資産運用について 1 確定給付企業年金 (DB) の 資産運用におけるガバナンスの見直し は平成 27 年 1 月に取りまとめられた厚生労働省 社会保障審議会 企業年金部会の報告書に盛り込まれた内容 厚生労働省は その具体策として 運用の基本方針 政策的資産割合策定の全 DB 義務化 2 や厚年基金の運用ルールを参考とした 資産運用ガイドラインの見直し を提案した 受託保証型 DB( 生命保険の一般勘定などで運用することにより 積立不足が生じないことが確実に見込まれる仕組み 平成 26 年度から実施中 ) を除く 1. 運用の基本方針 政策的資産構成割合 の策定 一定の予定利率を確保する必要のある DB 制度においては 運用の基本方針や政策的資産構成割合なしに安定的な運営は困難と考えられるため 運用の基本方針 政策的資産割合の策定を全 DB( 受託保証型 DB を除く ) に義務化 運用の基本方針 運用の基本方針を作成し 当該基本方針に沿って運用しなければならない 但し 以下の DB を除く - 加入者の数が 300 人未満かつ資産の額が 3 億円未満の規約型 DB - 受託保証型 DB 受託保証型 DB を除き 全ての DB において策定を義務化 政策的資産構成割合 政策的資産構成割合を定めるよう努めなければならない 受託保証型 DB を除き 全ての DB において策定を義務化
2 2. 資産運用ガイドライン (DB ガイドライン ) の見直し 厚年基金より強化 資産運用委員会 資産運用委員会を設置することが望ましい 資産運用委員の設置 については でも 厚年基金ガイドライン と同様の内容 一定規模以上 ( 例えば資産規模 100 億円以上 ) の DB に 資産運用委員会の設置を義務化 上記状況を検証した上で より小規模の DB における設置のあり方を検討 < ご参考 : 厚年基金ガイドライン > 資産運用委員会 理事長等を補佐するため 資産運用委員会を設置することが望ましい
3 厚年基金と同様 分散投資 資産の運用に当たっては 分散投資に努めなければならない ただし 分散投資を行わないことにつき合理的な理由がある場合は この限りではない 分散投資を行わないことについて合理的な理由がある場合は 合理的理由を 運用の基本方針 に定めるとともに 加入員への周知を義務化 運用の基本方針 に 運用委託先が特定の運用機関に集中しないための方針を定めることとする < ご参考 : 厚年基金ガイドライン > DB ガイドライン に追記される見込みの部分に下線 分散投資義務 基金に係る資産の運用に当たっては 分散投資に努めなければならない 分散投資を行わないことにつき合理的な理由がある場合はこの限りでないが 合理的理由を 運用の基本方針 に定めるとともに 加入員 事業主に周知しなければならない 運用の基本方針に定める事項 特定の運用受託機関に対する資産の運用の委託が 基金の資産全体から見て過度に集中しないよう 運用の基本方針 に 集中投資に関する方針を定めなければならない 次のような合理的理由がある場合は 特定の運用受託機関に資産の運用を委託できる旨定めることができるが 信用リスク等に留意しなければならない 1 当該特定の運用受託機関の複数の資産で構成される商品等に投資する場合 2 生命保険一般勘定契約等の元本確保型の資産に投資する場合 3 その他合理的理由がある場合
4 厚年基金と同様 オルタナティブ 投資 ( オルタナティブ投資に関する規定なし ) 運用の基本方針 にオルタナティブ投資の位置付け等を記載し 運用機関の選任 商品選択等についての留意事項を示す < ご参考 : 厚年基金ガイドライン > DB ガイドライン に追記される見込みの部分に下線 運用の基本方針 オルタナティブ投資を行う場合は 運用の基本方針 に以下の事項を定めなければならない オルタナティブ投資を行う目的 政策的資産構成割合における当該オルタナティブ投資の位置付け 割合 オルタナティブ投資に固有のリスクに関する事項 運用受託機関の選任 以下の事項に留意しなければならない 当該運用受託機関の組織体制に関する事項 当該運用受託機関の財務状況等に関する事項 運用戦略の確認 以下の事項を参考に 運用受託機関に対し運用戦略等についての説明を求める ( 共通事項 ) リターンの源泉 リスク 時価の算出根拠と報告方法 情報開示に対する態勢 運用コスト ( 個別運用戦略 ) 海外のファンドを用いた投資を行う場合 デリバティブ ( 金融派生商品 ) を用いた投資を行う場合 証券化を用いた投資を行う場合 異なる複数のヘッジファンドに投資する場合 未公開株式や不動産等に投資する場合
5 運用受託機関の得意とする運用手法を考慮する 定量評価だけでなく 定性評価を加えて総合評価をすることにより行うことが望ましい 厚年基金と同様 運用受託機関の選任 契約締結における定性評価 定量評価の基準について具体的事例を追加する 厚年基金ガイドライン の該当箇所は次頁 運用受託機関の選任 契約締結 厚年基金より追加 上記に加え スチュワードシップ責任 ESG 投資 受託業務監査 投資パフォーマンス基準 (GIPS) を定性評価項目として例示する 各項目の解説は P.7 スチュワードシップ責任 スチュワードシップ責任 を定性評価項目として採用する場合 - 定期的に運用受託機関から議決権行使 スチュワードシップ行動の実績等の説明を求める - 説明内容をその評価項目の一つとする - 議決権行使 スチュワードシップ行動の内容を代議員会等へ報告する
6 < ご参考 : 厚年基金ガイドライン ( 運用受託機関の選任 契約締結 に関する部分 )> DB ガイドライン に追記される見込みの部分に下線 選任の基準 運用受託機関の得意とする運用手法を考慮する 定量評価だけでなく 定性評価を加えて総合評価をすることにより行うことが望ましい 選任の際に行うヒアリングは 定性評価の基準の例に掲げる事項について行う その場合 投資判断を行うファンドマネジャー等に対するヒアリング 及び運用コンサルタントや資産運用委員会等に対するヒアリングを含めることが望ましい 定量評価の基準 一般的に適正と認められる合理的な基準により行う 時価による収益率 リスクを基準とし 資産種類ごとに適切な市場ベンチマークを設定 同様の運用を行う他の運用受託機関の収益率 及びリスクとの相対評価等 アクティブ運用においては シャープレシオやインフォメーションレシオ ( リターンを得るために どのくらいリスクが取られたかを計測する指標 ) 等の指標にも留意しなければならない なお 短期の収益率に著しく問題のある場合等を除き 一定の期間の実績等を評価することが望ましい 定性評価の基準 以下の点を総合的に考慮して行う 運用についての基本的な考え方 運用責任者及び運用担当者の体制及び能力 調査分析等運用支援の体制等 具体的には 以下のような点に留意しなければならない 投資方針( 内容の明確性 合理性 一貫性など ) 組織及び人材( 意思決定の流れや責任の所在の明確性 十分な専門性 経験を有する人材の配置 人材の定着度と運用の継続性 再現性の確保 ) 運用プロセス( 投資方針との整合性 運用の再現性 リターンの追求方法の合理性 有効性 リスク管理指標の合理性 有効性 ) 事務処理体制( 売買 決済等の事務処理の効率性 正確性 運用実績の報告の迅速性 正確性 透明性 ) リスク管理体制( 実効性及び適切性など ) コンプライアンス( 法令や運用ガイドライン遵守体制の整備状況 過去における法令違反の有無 事故発生時における対応体制 監査の状況 )
< ご参考 : 定性評価項目として 厚年基金ガイドライン より追加を検討されている項目について > 7 スチュワードシップ責任 機関投資家が 投資先の日本企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な 目的を持った対話 ( エンゲージメント ) などを通じて 当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより 顧客 受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任のこと 金融庁が平成 26 年 2 月に公表した 責任ある機関投資家の諸原則 (( 日本版 ) スチュワードシップ コード ) にその責任を果たすにあたり有用と考えられる諸原則が定められている ESG 投資 長期投資において 投資先企業が持続可能な社会の維持 実現の観点から 環境 社外 ガバナンスに配慮した経営を行っているかどうかを判断要素とする考え方 GPIF が平成 27 年 9 月に ESG の取組に関する基本方針 を公表している 受託業務監査 受託会社がその受託する業務に係る内部統制の有効性を委託業者に証明するために受ける公認会計士監査 投資パフォーマンス基準 (GIPS) 資産運用会社が顧客に提示する運用成績について 公正な表示と完全な開示を確保するための世界共通基準 米国アナリスト協会 (CFA 協会 ) が作成した基準であり 採用するかどうかは各資産運用会社の任意 < ご参考 : 日本再興戦略 2016 において求められたスチュワードシップ コード受入の促進について > 日本再興戦略 2016 - 第四次産業革命に向けて - において 年金基金等において スチュワードシップ コードの受け入れ促進などの取組を通じて 加入者等の老後所得の充実を図る としている 日本再興戦略 2016 - 第 4 次産業革命に向けて - ( 平成 28 年 6 月 2 日閣議決定 ) 2-2. 活力ある金融 資本市場の実現 (1) 新たに講ずべき具体的施策 ⅵ) 企業年金等の改善 抜粋 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案の成立後 その円滑な施行を図るとともに 運用リスクを事業主と加入者等で分担する リスク分担型確定給付企業年金制度 等の導入により 企業年金等の普及 拡大を図る あわせて 年金基金等において スチュワードシップ コードの受入れの促進など コーポレートガバナンスの実効性の向上に向けた取組を通じて 加入者等の老後所得の充実を図る
8 厚年基金と同様 運用コンサルタント 運用コンサルタントの利用 運用の基本方針等の策定 運用受託機関の選任 評価等に関し 運用コンサルタントに分析 助言を求めることが考えられる 運用受託機関の選任 評価に関する助言の契約を締結する場合 助言の中立性 公平性の確保に十分留意する必要がある 運用コンサルタントの利用 ( 通り ) 運用コンサルタントの要件 運用コンサルタントは金融商品取引法上の投資助言 代理業者でなければならない 運用コンサルタント採用の際に 運用受託機関との間で利益相反がないか確認する < ご参考 : 厚年基金ガイドライン > DB ガイドライン に追記される見込みの部分に下線 運用コンサルタント等の利用 運用の基本方針等の策定 運用受託機関の選任 評価等に関し必要な場合には 運用コンサルタント等に分析 助言を求めることが考えられる なお 運用受託機関の選任 評価に関する助言の契約を運用受託機関又は運用受託機関と緊密な資本若しくは人的関係にある機関と締結する場合 助言の中立性 公正性の確保に十分留意する必要がある 運用コンサルタント等の要件 基金が契約を締結する運用コンサルタント等は 金融商品取引法の規定による投資助言 代理業を行う者としての登録を受けている者でなければならない 基金が運用コンサルタント等と契約を締結する際には 当該運用コンサルタント等の運用機関との契約関係の有無を確認しなければならない
9 厚年基金と同様 代議員会 加入者への報告 周知事項 代議員会への報告内容 運用の基本方針及び運用ガイドライン 運用結果 ( 時価による資産額 資産構成 収益率 運用機関ごとの運用実績等 ) 理事会における議事の状況 加入員等への周知内容 積立金の運用収益又は運用損失 資産の構成割合その他積立金の運用の概況 運用の基本方針の概要等 代議員会への報告内容 代議員会への報告内容に 運用受託機関の選任 評価状況などを追加する 加入員等への周知内容 資運用委員会の議事録を保存し 議事概要を加入員へ周知する 規約型 DB にも留意しつつ見直しを行う < ご参考 : 厚年基金ガイドライン > 代議員会への報告内容 運用の基本方針及び運用ガイドライン 運用結果 ( 時価による資産額 資産構成 収益率 リスク 運用機関ごとの運用実績等 ) 理事会における議事の状況 運用受託機関の選任状況 運用受託機関の評価結果 運用受託機関のリスク管理状況 基金の理事及び職員に係る研修の受講 自己研鑽の状況 その他基金の管理運用体制の状況 加入員等への周知内容 積立金の運用収益又は運用損失 資産の構成割合その他積立金の運用の概況 運用の基本方針の概要等 資産運用委員会の議事の概要等 DB ガイドライン に追記される見込みの部分に下線
2. 加入者等への説明 開示 10 リスク対応掛金 の仕組みが導入されることにより 目標とする積立水準は労使合意に基づき定められることとなる 事業主 加入者ともに意思決定への参画がこれまで以上に求められる中で 制度に対し関心を持つ重要性が高まっている 厚生労働省は 周知される項目や方法に改善の余地がないか検討する方針を示している 見直しの背景 方向性 加入者等への説明 開示 DB 制度の業務概況を加入者等に対して周知する 周知される項目や周知の方法について DB 制度への関心を高めるという観点から改善の余地がないか 検討する < ご参考 :DB 制度における業務概況の周知 (DB 法施行規則 )> 周知事項 事業主は 毎事業年度一回以上 次に掲げる事項を加入者に周知させるものとする 標準的な給付の額 給付の設計 加入者数 受給権者数 給付の支給額等 掛金の額 納付時期等 積立金の額 責任準備金の額 最低積立基準額との比較等 運用収益 運用損失及び資産の構成割合等 基本方針の概要 その他重要事項 周知方法 周知事項を加入者に周知させる場合には 次のいずれかの方法によるものとする 各実施事業所の見やすい場所に掲示する方法 書面を加入者に交付する方法 磁気テープ 磁気ディスク等に記録し 各実施事業所に内容を確認できる機器を設置する方法 その他周知が確実に行われる方法 事業主は 受給権者等にも周知が行われる方法を選択するよう努めなければならない リスク対応掛金 の仕組みについては 平成 28 年 5 月 30 日付年金 NEWS DB DB 制度の拠出弾力化 ハイブリッド型年金について ( パブリックコメント ) をご参照ください
3. 企業年金部会での主な議論 11 資産運用 について 森戸英幸部会長代理 ( 慶応義塾大学大学院法務研究科教授 ) スチュワードシップ コードについて 受託者責任の観点から 経済的な利益と委託者の利益に齟齬が発生することもある 小林由紀子委員 ( 日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会部会長代理 ) スチュワードシップ コードについて 受託者責任は資料のとおりだと思うが 老後所得の充実とスチュワードシップ コードは必ずしもリンクしていないのではないか 白波瀬佐和子委員 ( 東京大学大学院人文社会系研究科教授 ) スチュワードシップ コードについては 労働者の利益 ( 保護 ) になるということをもっと訴えてほしい そうすることで受け入れやすくなると思う 小林委員 アセットオーナーとして対応すべき部分が明確ではなく スチュワードシップ コードを取り入れる影響 効果が見えてこない 影響 効果をクリアにすべきではないか 村瀬清司オブザーバー ( 企業年金連合会理事長 ) スチュワードシップ コードについて企業年金の理事長は母体企業の役員を兼任していることが多く 基金として宣言しなくても同じ効果を得られることもある 基金が納得した形で進めていただきたい 加入者への説明 開示 について 小林委員 ビジュアルの工夫など 分かりやすさは必要であるものの 開示項目はの内容で十分足りていると思う 分かりやすさの観点では むしろ簡素化することも考えられる また 好事例を集める等の対応もあるのではないか なお 年金運用との間で問題になるのは 総合型 DB のように事業主と制度との間に距離がある場合に限られるのではないか 問題の所在を十分につかんだ上で検討を進めていただきたい 森戸部会長代理 前回の企業年金部会での発言の繰り返しになるが 労働者にとっては 労働条件の 1 つであるので 実態も踏まえて 就業規則等の労基法の規制と併せて検討いただきたい 伊藤委員 これまで 組合から会社に対して説明を求めても 会社が理解していなかったり 断られたりしたケースがあると仄聞するので 是非求めていきたい 伊藤彰久委員 ( 日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長 ) スチュワードシップ コードについて 投資先と意見交換を行うことは良いことだが 形式的ではなく本質的な施策が必要だと考える