1.2 エーヤワディー川流域の洪水ハザード エーヤワディー川はミャンマー中央部を縦断している河川で流域面積は 411,km 2 全長は 2,17km あり マンダレーを経由してヤンゴンに近いエーヤワディーデルタに到達します 多くの河川港を有する経済的に最も重要といわれる同川は洪水が一番多く発生してい

Similar documents
2015 年 1 月 5 日 カンボジア自然災害リスク < シリーズ 3> カンボジアの台風リスクについて インターリスクアジアタイランド シリーズ 3 回目はカンボジアの台風リスクについてご紹介します 日本と比較し カンボジアの台風リスクは低いと言えます 1. 台風ハザードの概要 Strategi

2008

InterRisk Report Form(2010.7改定)

1.2 近年の傾向 サイクロンの発生数については近年 大きな変化はないものの ミャンマーへの上陸回数については増加傾向にあり 特に 2000 年以降は毎年のように上陸しています またサイクロンは従来 ベンガル湾に面し バングラディッシュと国境を接しているラカイン州 ( 図 3 を参照 ) から上陸す

地震のほとんどは海側のプレート付近で発生する地震 ( 海溝型地震 ) と 内陸の断層で発生する地震 ( 活断層型地震 ) となります ミャンマーにおけるこれらの地震の特徴について下記いたします 1.1 海溝型地震 ミャンマーを含むニュージーランドからパキスタンにかけてのインド オーストラリアプレート

2014 年 12 月 2 日 カンボジア自然災害リスク < シリーズ 2> カンボジアの洪水リスクについて インターリスクアジアタイランド シリーズ 2 回目はカンボジアの洪水リスクについてご紹介します カンボジアの自然災害リスクの中で最も注意が必要と考えられるのが洪水リスクです 特にトンレサップ

図 3 はプノンペン周辺の地勢について衛星写真から類推して作成された地勢図です それぞれの色は以下を示しています トンレサップ湖 1. 濃いピンク : 山もしくは丘 2. 薄いピンク : 高台 3. オレンジ : 台地 4. 薄い黄色 : 穏やかな傾斜の扇状地 5. 濃い黄色 : 自然堤防 6. 空

2. 過去の地震 前述のとおり カンボジアは地震が非常に少ない地域に位置しています 下表に東南アジアにおける地震の発生データを示します 当データは Incorporated Research Institutions for Seismology (IRIS) US National Earthqu

第 24 章地域別の概要 地域別の概要 ミャンマーの地域分類ミャンマーの地域区分としては カチン カヤー カレン チン モン ラカイン シャンの 7 州と ザガイン タニンタリー バゴー マグウェー マンダレー ヤンゴン エヤワディの 7 管区に加え 連邦直轄区域であるネーピードーがあり 統計もこれ

4

Microsoft Word - RM最前線 doc

2008

コメント 前述 2 箇所の爆弾は政府要人宅等を狙ったもので 使用された爆弾は M26 手榴弾 1 という軍用の手榴弾です この二つのテロ行為はデモ隊に向けてのものではなく政府要人に対するものです 従って 現在の政府要人の住宅および良く立ち寄る場所がテロの対象となる可能性があることが分かります この

中国風険消息<中国関連リスク情報>2016No.6_危険化学品の管理法案について

ハザードマップポータルサイト広報用資料

中国風険消息 2016 No.5_電気火災事故の防止に向けて

災害時にも関わらず 通常の業務を行うことが出来た自動車メーカー Volvo は 今回の洪水の最中でも タイにある大型トラック組立工場では通常通りの業務を行った これは 十分な部品を確保できたためであるが その一方で他の自動車メーカー ( 日野 いすゞ 三菱など ) は部品不足に陥った 同社のサムット

.....u..

<4D F736F F D208BD98B7D92B28DB88EC08E7B95F18D908F915F96788CA42E646F63>

2,

<4D F736F F D F837E D815B D815B F83808D5E C8889F35F D815B8

L21_WBS_パンフ_

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

スライド 1


新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川洪水浸水想定区域図 ( 計画規模 ) (1) この図は 新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川の水位周知区間について 水防法に基づき 計画降雨により浸水が想定される区域 浸水した場合に想定される水深を表示した図面です (2) この洪水浸水想定区域図は 平成

重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが


目次 1. はじめに 1 2. 協議会の構成 2 3. 目的 3 4. 概ね5 年間で実施する取組 4 5. フォローアップ 8

InterRisk Report Form(2010.7改定)

Microsoft PowerPoint ThaiFlood_UT-IIS03_final_sn.pptx

<4D F736F F D DC58F4994C5817A904D945A90EC5F8DC4955D89BF92B28F912E646F63>

aozora.…y…›.pdfŠp

資料 2 東海管内における農業水利施設の防災 減災の取組 ( 農村地域防災減災事業 海岸事業 ) 平成 27 年 2 月東海農政局整備部防災課

> P12 > P19 > P32 > P36 > P40 > P44 > P48 > P60

鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

PowerPoint Presentation

2008

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

DIAS COMMUNITY FORUM 2018 東南アジアにおける 農業マーケットでの取り組み ( 天候インデックス保険 次世代型農業保険 ) 2018 年 3 月 9 日 企業商品業務部リスクソリューショングループ郷原健 2017 Sompo Japan Nipponkoa Insurance

アジアでの水災害評価

<4D F736F F D F B836A E F D815B836894C55F9861>

5-2 居住誘導区域の設定 居住誘導の基本方針を踏まえ 以下の居住誘導区域の設定の考え方に基づき 居住誘導区域を設 定します 居住誘導区域の設定の考え方 (1) 居住誘導区域に含めるエリア 居住誘導区域に含めないエリア 居住誘導区域に含めるエリア 1 都市機能誘導区域 居住誘導区域に含めないエリア

タイ政府洪水防止事業の現状――タイ政府治水プロジェクト、工業団地洪水防止堤防および2013年の洪水について

目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

<30362D8FAC97D C90E690B62E706466>

先進国化する中国 東南アジアの大都市 ~ メガシティ ( 大都市 ) からメガリージョン ( 大都市圏 ) へ ~ 要 旨 調査部環太平洋戦略研究センター 主任研究員 大泉啓一郎 GDP 8,000 10,00

アジアにおけるさらなる技術交流を目指して

計画書

H19年度

InterRisk Report Form(2010.7改定)

<4D F736F F F696E74202D A F95BD90AC E31308C8E8AFA5F8C888E5A90E096BE89EF81408DC58F4994C530362E70707

1 1 4

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか

<4D F736F F D20967B95B681698DC58F498D D8E968C888DD A2E646F63>

やよいの顧客管理

弥生給与/やよいの給与計算

弥生 シリーズ

弥生会計 プロフェッショナル/スタンダード/やよいの青色申告

弥生会計/やよいの青色申告

弥生会計 ネットワーク/プロフェッショナル2ユーザー

MISUMI It s about TIME QCT 8 12 CSR

< E81408A438A4F8FEE90A895F18D CFA984A8FC8208D918DDB89DB C96DA8E9F817C907D955C96DA8E9F817C967B95B62E696E6464>

<30352D88E9924A81458BB48B6C90E690B62E706466>

東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

題名・目次

untitled

平成16年度 台風災害調査報告書(WEB).indd

スライド 1

資料 2 平成 27 年度の政策対話等の実施実績及び予定について ( 未定稿 ) 1. 概要 平成 27 年度は 以下の取組につき 各国の状況に応じ組み合わせて実施 (1) 各国との政策対話の実施 (2) 対話の場を活用した 我が国食関連産業と先方政府 先方民間企業のとの情報共有 マッチングの促進

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある


NGGAUM_特別対談_再.indd

BC2007_11_ indd


<4D F736F F D B4C8ED294AD955C8E9197BF E894A8AFA8B7982D191E495978AFA82C982A882AF82E996688DD091D490A882CC8BAD89BB82C982C282A282C4816A48502E646F63>

186

目次 第 1 章ミャンマー概要 1.1 ミャンマー地図 ミャンマー首都ネーピードー地図 ミャンマーに関する基礎情報 州 管区 経済 ミャンマーと周辺国 ミャンマーとASEAN ミャンマーと大メコン圏 (GMS) 8

1 160

労災リスクインフォ(第21号)

1. はじめに 2015 年 7 月末 ミャンマーの西側に位置するバングラデシュにサイクロン コメンが上 陸し ミャンマーの北西部で記録的な大雨が発生 ラカイン州の他 国内 4 大河川の一つ チンドウィン河流域にあるチン州 ザガイン地域 マグウェー地域で大洪水が発生した 数日後には 河口に向かって水

(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

平成 30 年度農村地域防災減災事業 ( 美馬 3 地区 ) ため池ハザードマップ作成委託業務 特記仕様書 経済建設部 農林課

177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

中国風険消息<中国関連リスク情報>2017 No.7_スプリンクラー設備の設置および維持に関する基準



Resigtration Manual (Japanese)

ビットリアカップ2007けいはんなサイクルレースリザルト

yume_P01-056

校友会16号-ol.indd

Page 1

スライド 1

INFORMATION Key Woman 14 Pocket Page Weekly 01 July 2016 No. 546 B

22年5月 目次 .indd

Microsoft PowerPoint - 洪水予報河川等.pptx

Microsoft Word - 最終版_1224_中国風険消息1月号.docx

Transcription:

ミャンマーの自然災害リスク < シリーズ NO.4> 27 th July, 215 ミャンマーにおける洪水リスク はじめに インターリスクアジアタイランド 今回はミャンマーにおける洪水のリスクについて解説いたします ミャンマーでは過去より多くの洪水被害が発生しています 特に河川沿いの都市やデルタ地帯の農業 漁業エリアでは頻繁に洪水が発生して家屋などの被害が発生しています 一方で農業や漁業においては洪水は肥沃な土地をもたらす恵みとして活用されているという側面もあります 1 ミャンマーにおける洪水の特徴 ミャンマーにはエーヤワディー川をはじめとする多くの河川が存在します こうした河川は古くから水上輸送ルートとして利用されてきたため 多くの都市は河川沿いに発展してきました 経済の発展に貢献してきたこうした河川は 同時に洪水による多くの被害をもたらしてきました ミャンマーにおける主な洪水被害は河川氾濫によるものです 河川沿いの都市では洪水による被害が繰り返し発生しています 一方で南 西沿岸部ではサイクロンに伴う高潮による洪水が発生しています 高潮被害は従来 西側沿岸部での被害が目立ちましたが 近年はサイクロンの経路が低緯度化していると言われており 28 年にはサイクロン ナルギスがヤンゴン周辺の南沿岸部に上陸し 高潮による甚大な損害が発生しました 1.1 洪水の発生数と傾向 ミャンマーはモンスーン気候の影響のため多雨地域であり 雨季には毎年のように洪水が発生しています 表 1 は 1997 年から 27 年までに発生した主な洪水の月別発生件数とその割合を整理したものです これより洪水は 6 月から 1 月に集中していることが分ります 図 1 主要 4 河川 表 1 主な洪水の月別発生回数 割合 (1997 年 ~27 年 ) 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月計 発生回数と割合 (%) (%) (%) (%) (%) 2 (1%) 8 (38%) 6 (29%) 3 (14%) 2 (1%) (%) (%) 21 (1%) Hazard Profile of Myanmar (ADPC) をもとに集計 Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 1

1.2 エーヤワディー川流域の洪水ハザード エーヤワディー川はミャンマー中央部を縦断している河川で流域面積は 411,km 2 全長は 2,17km あり マンダレーを経由してヤンゴンに近いエーヤワディーデルタに到達します 多くの河川港を有する経済的に最も重要といわれる同川は洪水が一番多く発生している川でもあります 特にミャンマー中部のマンダレー周辺や南部のヤンゴン周辺では頻繁に洪水による被害が発生しています 一方で前述の取り 洪水は肥沃な土地をもたらす恵みとして農業 漁業において活用されてきました 従って これまでのエーヤワディー川流域における治水対策とは 主に灌漑対策となります 表 2 はエーヤワディーデルタにおける主な治水の歴史です こうした取組みにより エーヤワディー管区では農耕地の 67% は堤防に防護されています ( ヤンゴン管区は 12% バゴー管区は 21%) こうした灌漑対策は防水防止 軽減の観点からも有効なものとなっています 1 表 2 エーヤワディーデルタにおける主な治水年代政権概要 1882 年 ~ 1948 年 1977 年 ~ 1987 年 植民地時代 社会主義時代 199 年 ~ 軍事政権時代 北部に大規模な河川堤防を建設 同堤防の建設により デルタ北側の約 61.2 万エーカーの稲作エリアの洪水リスクが大きく減少した 中央ならびに南部デルタ地区の干拓地を開発 同干拓地の開発により 南部デルタ地区の2 万エーカー以上の休耕地および荒地の洪水危険が減少し 稲作地が開墾された 2 農耕政策上重要な場所である中央デルタ地帯の4 万エーカーで 夏期の稲作増産のための灌漑施設が建設 ヤンゴン 図 2 エーヤワディーデルタの防護範囲 ( 赤い線は護岸工事が終了した場所 ) ( 出典 :World Water Week ホームページ ) 以下は エーヤワディー川と 東南アジアを流れる他の河川とを比較したものです 211 年に大洪水が発生したタイのチャオプラヤ川では 同川の勾配が非常に緩やかであったために水が滞留して遅々として流れなかったことが洪水長期化の一つとされていますが エーヤワディー川の勾配はチャオプラヤ川のさらに 1/2 となります また雨季におけるエーヤワディー川流域の平均降雨量はチャオプラヤ川流域の約 1.4 倍となっています 表 3 東南アジアでデルタを形成する大河川の比較 Gross Area 大河川国全長 (km) 河川の傾斜流域面積 (k m2 ) メコン川 複数国 4,345 55, 3/1, エーヤワディー川 ミャンマー 2,173 31, 5/1, 紅河 ベトナム 1,27 15, 9/1, チャオプラヤ川 タイ 362 11,3 1/1, ( 出典 :World Water Weekホームページほか ) こうした状況を見ると チャオプラヤ川との比較においてエーヤワディー川における洪水ハザードは高い可能性があります 洪水被害が発生する可能性の高い集水域では人口の増加や それに伴う宅地 農地の開発が進んでいるため 今後 洪水リスクが高まる恐れがあります 1 1882 年 -199 年代までの間にエーヤワディーデルタには総延長で約 21,59km の堤防が建設されている これらの堤防によりエーヤワディーデルタの農耕地の約 28%(6 百万エーカー ) が防護されており またモンスーン時期の高潮と塩害から 1.7 百万エーカーが防護されているといわれている 2 世界銀行による融資で実行 (the Lower Burma Paddy Land Development Projects) Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 2

2 過去に発生した洪水 近年 大きな被害をもたらした洪水は表 4 の通りです (28 年のサイクロン ナルギスを除く サイクロン ナルギスの詳細については本シリーズ NO.3 を参照下さい 3 ) 21 件の洪水のうち約半数はミャンマー北部のサガイン管区 (9 回 ) で発生しています また主要都市である ヤンゴン管区では 2 回 マンダレー管区では 3 回発生しています その他 カチン州で 2 回 バゴー管区で 1 回 モン州で 1 回 カレン州で 2 回 ラカイン州で 1 回で発生しています 表 4 大きな被害をもたらした最近の洪水 ( 1997 年 ~27 年 ) 場所 発生日 家屋被害 被災家族 影響を受けた人口 サガイン管区ホマリン 1997 年 7 月 9,916 9,95 59,594 サガイン管区ホマリン 1997 年 9 月 3,867 3,867 28,399 サガイン管区 1997 年 7 月 6,652 6,652 44,143 2 サガイン管区モーライ県 1997 年 7 月 3,622 3,622 21,897 カチン州ミッチーナ県 死者 1997 年 7 月 4,254 4,471 3,615 4 ヤンゴン管区カヤン郡区 1997 年 6 月 1,189 1,189 5,878 バゴー管区 1997 年 7 月 6,629 6,629 33,768 5 カレン州 1997 年 8 月 18,84 18,855 19,84 カレン州パアン県 1991 年 8 月 2,669 2,669 14,488 ラカイン州チャウッピュー県 1997 年 7 月 1,3 1,3 5,983 マンダレー管区 21 年 6 月 463 1,164 2,172 42 サガイン管区モンユワ県 22 年 8 月 9,178 9,46 48,746 サガイン管区サリンジ郡区 22 年 8 月 1,647 1,72 1,216 サガイン管区モンユワ県 22 年 8 月 2,42 2,27 12,48 モン州チャイマロー郡区 22 年 8 月 829 829 4,686 ヤンゴン管区シュピタ郡区 22 年 9 月 886 886 4,541 サガイン管区カムティ県 23 年 7 月 1,23 1,536 8,131 マンダレー管区チャウセ県 26 年 1 月 1,433 1,763 7,45 サガイン管区 26 年 9 月 77 791 5,372 マンダレー管区 26 年 1 月 14 18 97 16 カチン州ミッチーナ県 27 年 7 月 6 6 3,167 ( 出典 :Hazard Profile of Myanmar) 図 3 洪水で被害が発生した管区 州( 赤丸 ) 3 ミャンマーの自然災害リスク < シリーズ NO.3> ミャンマーにおけるサイクロンのリスク (215 年 7 月 13 日発行 ) Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 3

3 洪水ハザードマップ 図 4 は IHTACA 4 によって作成 公表されているミャンマーの洪水ハザードマップです 2 年から 21 までのモンスーンシーズンの間に浸水した日数で色分けして表示されています これより マンダレーに近いエーヤワディー川流域と ヤンゴンに近い南沿岸部のデルタ地帯の洪水危険度が高いことが分かります 2 年から 21 までのモンスーンシーズン ( 約 198 日 ) のうち 少なくとも以下の日数浸水していた場所 1 日間 1 日間 3 日間 図 4 洪水の発生場所と再発程度を表した図 (2 年 ~21 年 ) 4 Information Technology for Humanitarian Assistance, Cooperation and Action.( 国連機関による共同プロジェクト ) Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 4

4 ヤンゴンとマンダレー周辺における洪水のリスク ここではミャンマーにおける主要な経済都市であるヤンゴンならびにマンダレー周辺の洪水の特徴についてまとめます 4.1 ヤンゴン周辺の洪水リスクの特徴 ヤンゴン周辺ではエーヤワディー川下流域のデルタ地帯での洪水リスクが高くなっています ほとんどは河川氾濫によるよるものですが 28 年のサイクロン ナルギスでは高潮による甚大な被害を被っています ヤンゴン管区ではヤンゴン市内と北部を除くほとんどの地域が洪水ハザードに晒されています 特にヤンゴン川沿いと河口付近の多くの場所では頻繁に洪水が発生しています 4.2 ヤンゴン周辺で過去に発生した洪水 ヤンゴンならびにその周辺で近年発生した洪水は表 5 の通りです (28 年のサイクロン ナルギスを除く ) 表 5 最近の主な洪水 (1997 年 ~27 年 ) 場所 発生日 家屋被害 被災家族 影響を受けた人口 死者 損害額 ヤンゴン管区カヤン郡区 1997 年 6 月 7 日 1,189 1,189 5,878 バゴー管区 1997 年 7 月 7 日 6,629 6,629 33,768 5 カレン州 1997 年 8 月 1 日 18,84 18,855 19,84 カレン州パアン県モン州チャイマロー郡区ヤンゴン管区シュピタ郡区 4.3 ヤンゴン周辺のハザードマップ 1991 年 8 月 13 日 2,669 2,669 14,488 22 年 8 月 19 日 829 829 4,686 37,636USD 22 年 9 月 8 日 886 886 4,541 ( 出典 :Hazard Profile of Myanmar) 前述の洪水ハザードマップによると ヤンゴン管区全体では多くの場所で浸水履歴があるものの ヤンゴン市内の浸水は限定的です またヤンゴン国際空港およびその周辺も浸水履歴はありません ヤンゴン国際空 ヤンゴン市街地 図 5 洪水の発生場所と再発程度を表した図 (2 年 ~21 年 ) の拡大図 Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 5

4.4 マンダレー周辺の洪水リスクの特徴 マンダレー周辺の多くの都市は河川沿いに立地しているため 過去より洪水リスクに晒されてきました 4.5 マンダレー周辺で過去に発生した洪水 マンダレーならびにその周辺で近年発生した洪水は以下の通りでです 表 6 最近の主な洪水 (1997 年 ~27 年 ) 場所発生日家屋被害被災家族影響を受た人口死者 サガイン管区ホマリン 1997 年 7 月 9,916 9,95 59,594 サガイン管区ホマリン 1997 年 9 月 3,867 3,867 28,399 サガイン管区 1997 年 7 月 6,652 6,652 44,143 2 サガイン管区モーライ県 1997 年 7 月 3,622 3,622 21,897 マンダレー管区 21 年 6 月 463 1,164 2,172 42 サガイン管区モンユワ県 22 年 8 月 9,178 9,46 48,746 サガイン管区サリンジ郡区 22 年 8 月 1,647 1,72 1,216 サガイン管区モンユワ県 22 年 8 月 2,42 2,27 12,48 サガイン管区カムティ県 23 年 7 月 1,23 1,536 8,131 マンダレー管区チャウセ県 26 年 1 月 1,433 1,763 7,45 サガイン管区 26 年 9 月 77 791 5,372 マンダレー管区 26 年 1 月 14 18 97 16 ( 出典 :Hazard Profile of Myanmar) 4.6 マンダレー周辺のハザードマップ 前述の洪水ハザードマップによると マンダレー周辺の洪水はエーヤワディー川ならびにその支流に沿って発生していることが分ります マンダレー市 サガイン市 5km 図 6 洪水の再発程度を表した図 (2 年 ~21 年 ) Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 6

おわりに 本稿ではミャンマーにおける洪水リスクについて紹介しました 本稿をもちまして ミャンマーの自然災害リスクりシーズ は終了となります Reference: - Hazard Profile of Myanmar(ADPC) - World water week ホームページ http://www.worldwaterweek.org/ - Ithaca ホームページほか - 現地でのヒアリング 文章中 出典のない地図は弊社にて作成したものです 株式会社インターリスク総研は MS&AD インシュアランスグループに属する リスクマネジメントに関する調査研究およびコンサルティングを行う専門会社です タイ進出企業さま向けのコンサルティング セミナー等についてのお問い合わせ お申込み等はお近くの三井住友海上 あいおいニッセイ同和損保の各社営業担当までお気軽にお寄せ下さい お問い合せ先 インターリスク総研総合企画部国際業務チーム TEL.3-5296-892 http://www.irric.co.jp/ インターリスクアジアタイランドは タイに設立された MS&AD インシュアランスグループに属するリスクマネジメント会社であり お客様の工場 倉庫等へのリスク調査や BCP 策定等の各種リスクコンサルティングサービスを提供させて頂いております お問い合わせ お申し込み等は 下記の弊社お問い合わせ先までお気軽にお寄せ下さい お問い合わせ先 : InterRisk Asia(Thailand) Co., Ltd. 175 Sathorn City Tower 9th Floor. South Sathorn Road. Thungmahamek. Sathorn. Bangkok 112. Thailand http://www.interriskthai.co.th/ Direct: +66-()-2679-5276 Fax: +66-()-2679-5278 本誌は ミャンマー国の現地調査 研究機関より公開されている情報等に基づいて作成しております また 本誌は 読者の方々および読者の方々が所属する組織のリスクマネジメントの取組みに役立てていただくことを目的としたものであり 事案そのものに対する批評その他を意図しているものではありません Copyright InterRisk Asia Thailand 215 Copyright of InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd. Page 7