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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

いて認知 社会機能障害は日々の生活に大きな支障をきたしますが その病態は未だに明らかになっていません 近年の統合失調症の脳構造に関する研究では 健常者との比較で 前頭前野 ( 注 4) などの前頭葉や側頭葉を中心とした大脳皮質の体積減少 海馬 扁桃体 視床 側坐核などの大脳皮質下領域の体積減少が報告

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Microsoft Word - tohokuuniv-press _03(修正版)

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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図 2 発達障害外来初診予約件数 ( 注 :2013 年 3 月現在までのデータにさしかえています ) デイケアのプログラムを図 3 に示します ASD と診断された場合 精神科で使われる薬に多くを期待することはできません 彼らの社会での生きづらさを軽減するには デイケアでのコミュニケーション スキ

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

資料 2 脳科学研究戦略推進プログラム 課題 D: 社会的行動を支える脳基盤の 計測 支援技術の開発 Program Director (PD) 津本忠治 Program Officer (PO) 吉田明 拠点長狩野方伸

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02.docx

安静状態の脳活動パターンが自閉症スペクトラム傾向に関与している

4. 発表内容 : 研究の背景 イヌに お手 を新しく教える場合 お手 ができた時に餌を与えるとイヌはまた お手 をして餌をもらおうとする このように動物が行動を起こした直後に報酬 ( 餌 ) を与えると そ の行動が強化され 繰り返し行動するようになる ( 図 1 左 ) このことは 100 年以

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Microsoft Word - リリース文書.doc

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

すことが分かりました また 協調運動にも障害があり てんかん発作を起こす薬剤への感受性が高いなど 自閉症の合併症状も見られました 次に このような自閉症様行動がどのような分子機序で起こるのか解析しました 細胞の表面で働くタンパク質 ( 受容体や細胞接着分子など ) は 細胞内で合成された後 ダイニン

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抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

Untitled

研究課題名

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

問題 近年, アスペルガー障害を含む自閉症スペク トラムとアレキシサイミアとの間には概念的な オーバーラップがあることが議論されている Fitzgerld & Bellgrove (2006) 福島 高須 (20) 2

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統合失調症といった精神疾患では シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられています これまでの研究で シナプスの形を作り出す細胞骨格系のタンパク質 細胞同士をつないでシナプス形成に関与する細胞接着分子群 あるいはグルタミン酸やドーパミン 2 系分子といったシナプス伝達を

染色体微小重複による精神遅滞・自閉症症例

4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

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博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

平成14年度研究報告

01 表紙

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精神医学研究 教育と精神医療を繋ぐ 双方向の対話 10:00 11:00 特別講演 3 司会 尾崎 紀夫 JSL3 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学 親と子どもの心療学分野 AMED のミッション 情報共有と分散統合 末松 誠 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 11:10 12:10 特別講

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

2. 身体障がいの状況 (1) 身体障がいの種別 ( 主な障がいの部位 ) 平成 28 年 6 月 30 日現在の身体障害者手帳所持者の身体障がいの種別 ( 主な障がいの部位 ) をみると 肢体不自由が 27,619 人 (53.3%) と全体の過半数を占めて最も多く 次いで 内部障がいが 15,9

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

DSM A A A 1 1 A A p A A A A A 15 64

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

論文の内容の要旨 日本人サンプルを用いた 15 番染色体長腕領域における 自閉症感性候補遺伝子の検討 指導教員 笠井清登教授 東京大学大学院医学系研究科 平成 13 年 4 月入学 医学博士課程 脳神経医学専攻 加藤千枝子 はじめに 自閉症は (1 ) 社会的な相互交渉の質的な障害 (2 ) コミュ

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

Microsoft Word - 【確定】プレスリリース原稿(坂口)_最終版

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

脳機能画像・事象関連電位でみたこころの発達

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

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1. 背景コンピュータが目覚ましく進歩し 演算速度や記憶容量の大きさでは人の脳を凌駕するスーパーコンピュータも出現してきました しかし 言語を用い 直観を働かせ 抽象や概念を形成し 問題への解答を見いだし 自分自身を改善する 人間のような思考能力を持つ人工知能の実現にはまだ遠い道のりがあるように見え

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

研究の背景近年 睡眠 覚醒リズムの異常を訴える患者さんが増加しています 自分が望む時刻に寝つき 朝に起床することが困難であるため 学校や会社でも遅刻を繰り返し 欠席や休職などで引きこもりがちな生活になると さらに睡眠リズムが不規則になる悪循環に陥ります 不眠症とは異なり自分の寝やすい時間帯では良眠で

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

特別な支援を必要とする 子どもの受け入れと対応

平成24年5月17日

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

発達期小脳において 脳由来神経栄養因子 (BDNF) はシナプスを積極的に弱め除去する 刈り込み因子 としてはたらく 1. 発表者 : 狩野方伸 ( 東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻神経生理学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 生後発達期の小脳において 不要な神経結合 ( シナプス )

みんなの健康ラジオ

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

り込みが進まなくなることを明らかにしました つまり 生後 12 日までの刈り込みには強い シナプス結合と弱いシナプス結合の相対的な差が 生後 12 日以降の刈り込みには強いシナプス 結合と弱いシナプス結合の相対的な差だけでなくシナプス結合の絶対的な強さが重要であることを明らかにしました 本研究成果は

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

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平成 26 年 8 月 21 日 チンパンジーもヒトも瞳の変化に敏感 -ヒトとチンパンジーに共通の情動認知過程を非侵襲の視線追従装置で解明- 概要マリスカ クレット (Mariska Kret) アムステルダム大学心理学部研究員( 元日本学術振興会外国人特別研究員 ) 友永雅己( ともながまさき )

的な記憶を使って素早く学習しますが 練習時間が長くなると長期的な記憶を使い 長く記憶を残せるようになります 例えば いちど練習してできるようになった運動のやり方を忘れてしまっても 2 回目に練習するときは 1 回目より早くできるようになります これは 短期の記憶が失われても 長期の記憶が残っているか

統合失調症の病名変更が新聞報道に与えた影響過去約 30 年の網羅的な調査 1. 発表者 : 小池進介 ( 東京大学学生相談ネットワーク本部 / 保健 健康推進本部講師 ) 2. 発表のポイント : 過去約 30 年間の新聞記事 2,200 万件の調査から 病名を 精神分裂病 から 統合失調症 に変更

プレスリリース原稿案_final

修士論文 ( 要旨 ) 2017 年 1 月 自閉症スペクトラム障害児に対するタッチセラピーの効果について 内因性オキシトシンに着目して 指導山口創教授 心理学研究科健康心理学専攻 215J4058 堀越詩帆

Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

平成30年度精神保健に関する技術研修過程(自治体推薦による申込研修)

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

Microsoft Word - HP用.doc

NIRS は安価かつ低侵襲に脳活動を測定することが可能な検査で 統合失調症の精神病症状との関連が示唆されてきました そこで NIRS で測定される脳活動が tdcs による統合失調症の症状変化を予測し得るという仮説を立てました そして治療介入の予測における NIRS の活用にもつながると考えられまし

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認知・情動脳科学専攻  Cognitive and Emotional Neuroscience Major

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

神経発達障害診療ノート

Microsoft Word - 【HP用】170807_最終版_プレスリリース.docx

ただし 対象となることを希望されないご連絡が 2016 年 5 月 31 日以降にな った場合には 研究に使用される可能性があることをご了承ください 研究期間 研究を行う期間は医学部長承認日より 2019 年 3 月 31 日までです 研究に用いる試料 情報の項目群馬大学医学部附属病院産科婦人科で行

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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汎発性膿庖性乾癬の解明

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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

プロジェクト概要 ー ヒト全遺伝子 データベース(H-InvDB)の概要と進展

プレスリリース 報道関係者各位 2019 年 10 月 24 日慶應義塾大学医学部大日本住友製薬株式会社名古屋大学大学院医学系研究科 ips 細胞を用いた研究により 精神疾患に共通する病態を発見 - 双極性障害 統合失調症の病態解明 治療薬開発への応用に期待 - 慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

第四問 : パーキンソン病で問題となる運動障害の症状について 以下の ( 言葉を記入してください ) に当てはまる 症状 特徴 手や足がふるえる パーキンソン病において最初に気づくことの多い症状 筋肉がこわばる( 筋肉が固くなる ) 関節を動かすと 歯車のように カクカク と軋む 全ての動きが遅くな

Transcription:

[PRESS RELEASE] 2010 年 9 月 14 日東京大学医学部附属病院 自閉症の新たな治療につながる成果 世界初自閉症に関わる脳の体積変化および自閉症の候補遺伝子との関連を解明 自閉症は 相手や場の状況に合わせた振る舞いができないといった対人コミュニケーションの障害を主徴とする代表的な発達障害です この障害の原因や治療法は未確立で 高い知能を有する人でも社会生活に困難をきたすことが多い現状にあります 東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の准教授山末英典 教授笠井清登らのグループは ヒトの脳部位のうち他者への協調や共感に関わる下前頭回弁蓋部と他者の感情の理解に関わる扁桃体について調べ 下前頭回弁蓋部の体積減少が自閉症の対人コミュニケーションの障害に関与すること さらに扁桃体の体積の個人差が自閉症に関わるオキシトシン受容体遺伝子のタイプに関連していることを いずれも世界で初めて明らかにしました 今回の研究成果は 自閉症の原因や仕組みの解明に遺伝子や脳体積のレベルから貢献し 近年注目されるオキシトシンによる治療の可能性を支持するものです ( 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 CREST および文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラム - 社会的行動を支える脳基盤の計測 支援技術の開発 - による成果 ) これらの成果は2 編の論文として 日本時間 9 月 2 日および9 月 11 日に米国 Biological Psychiatry 誌オンライン版にて発表しました 研究の背景 自閉症とは自閉症やアスペルガー障害などを含めた自閉症スペクトラム障害 ( 用語解説 1) は代表的な発達障害で 中核となる症状は 相手や場の状況に合わせた振る舞いができないといった対人交渉の質的な障害です 自閉症スペクトラム障害の治療法は未確立で 高い知能を有する人でも社会生活上の困難をきたすことが多いのが現状です また 一般人口の 100 ~150 人に 1 人程度の極めて高い頻度でこの障害が認められることが世界各地から報告されています

自閉症の原因 この障害では 80 90 の高い遺伝性が認められますが これまで原因遺伝子の特定に至 っていませんでした 一方 MRI 核磁気共鳴画像 などを用いた脳画像研究によって 症 状が現れるしくみについて明らかにされてきたことで 他者の模倣を通して共感や協調に 関わる脳部位である下前頭回 用語解説 2 の弁蓋部や 共感により他者の感情を理解する のに重要な脳部位である扁桃体 用語解説 3 が 自閉症スペクトラム障害に関与すると推 測されていました 研究の内容 自閉症の対人コミュニケーションの障害に下前頭回弁蓋部の体積減少が関与 Yamasaki et al., Biological Psychiatry, in press 脳溝 脳のしわ パターンの個人差も考慮の上 頭部 MRI から下前頭回の体積を弁蓋部 と三角部に区分して測定しました 図 1 知的には平均以上である自閉症スペクトラム障 害の成年男性からなるグループでは 年齢や知能および両親の社会経済背景に差が無い定 型発達男性と比べ 下前頭回の体積が左右ともに統計学的に有意に小さく 図 2 特に右 半球の弁蓋部の体積が小さい人ほど模倣等を介した対人コミュニケーションの障害が重度 であることを見出しました 図 3 この結果は 先行研究の結果 右半球の弁蓋部の働き が他者と感情を共有する際に重要で 同障害ではこの部位の働きが低下し 対人的なコミ ュニケーション障害の重症度と相関する と一致します さらに弁蓋部の障害が脳の体積 の変化として現れ 対人コミュニケーションの障害と関連することを世界で初めて示しま した 図1

図 2 図 3 オキシトシン受容体遺伝子のタイプがヒトの社会性に関わる扁桃体の体積差に関与 (Inoue et al., Biological Psychiatry, in press) 次に 自閉症との関連が報告されている遺伝子 オキシトシン受容体遺伝子 ( 用語解説 4 5) と MRI から測定した脳部位の体積 ( 図 4) との関係を検討しました 自閉症の人に多く認められるタイプのオキシトシン受容体遺伝子を持つ人は そうでないタイプの遺伝子を持つ人に比べて 他者の表情の理解や共感に関与する扁桃体の体積が統計学的に有意に大きいことを 世界で初めて見出しました ( 図 5) 自閉症の人の扁桃体体積が定型発達の人に比べて大きいことは 以前から報告されています また 動物実験からオキシトシン受

容体が最も多く分布する脳部位は扁桃体であることが知られています さらに オキシトシンは他者の感情の理解を促進したり信頼関係を形成したりする上で重要な役割を持ち この際に扁桃体の働きの変化が関与することが示されてきました 最近では自閉症の対人コミュニケーション障害にも改善効果を示す可能性が示されています 今回の研究結果は 遺伝子や脳体積のレベルから オキシトシンが扁桃体を介して対人行動やその障害に関与すること および対人コミュニケーション障害の治療薬の候補であることを支持しています 我々は当院精神神経科において オキシトシンによる対人コミュニケーション障害の治療効果を MRI を用いて検証する臨床試験を行っています ( 関連 URL 参照) 図 4 図 5 オキシトシン受容体遺伝子多型と扁桃体体積 (n=208)

用語解説 1) 自閉症スペクトラム障害 1) 対人交渉の質的障害 2) 言語的コミュニケーションの障害 3) 常同的 反復的行動様式という 3 つの中核症状全てを有する自閉症から 1) と 3) だけを有するアスペルガー障害 1) だけを有する特定不能の広汎性発達障害までを含む概念 自閉症的な特性は 重度の知的障害を伴った自閉症から 知的機能の高い軽度の自閉症を経由し 対人関係上で いわゆる変わり者と言われるような人まで続くスペクトラムを形成するという考えに基づく 2) 下前頭回 ( 弁蓋部 三角部 )( 図 1) 情報を統合して行動を調節する前頭前野の最後部に位置する 下前頭回の中でもブロードマンの 45 野に相当する三角部と同 44 野に相当してその後ろに位置する弁蓋部に分かれる 左半球の弁蓋部が古くから運動性言語野として知られる一方 近年 特に右半球の弁蓋部は 自分が行動する時だけでなく他者の同様の行動を見る時にも活動し 模倣を介して社会的な学習や他者への共感や協調に関与するミラーニューロンシステムの中心部位として注目される 3) 扁桃体 ( 図 4) 大脳の中央部で側頭葉の内側部にある記憶への関与で知られる海馬の前に位置する成人で約 2 ml 弱のアーモンド型の構造物 不安や恐怖等の情動反応の処理に重要な役割を持ち 共感を介した他者の感情の理解にも関わる 4) オキシトシン脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで 従来は子宮平滑筋収縮作用を介した分娩促進や乳腺の筋線維を収縮させる作用を介した乳汁分泌促進作用が知られていた しかし一方で男女を問わず脳内にも多くのオキシトシン受容体が分布している事が知られ 脳への未知の作用についても関心が持たれていた 5) 受容体細胞の内と外の境界を成す細胞膜上に存在していて 細胞外にある情報伝達物質と結合して細胞内へと情報を取り入れる部位 発表雑誌 雑誌名 : Biological Psychiatry オンライン版 (Articles in Press) 論文名および掲載日時 : Reduced gray matter volume of pars opercularis is associated with impaired social communication in high-functioning autism spectrum disorders ( 日本時間 9 月 2 日掲載 ) Association between the oxytocin receptor gene (OXTR) and amygdalar volume in healthy adults ( 日本時間 9 月 11 日掲載 )

注意事項 本件につきましては 報道解禁はございません 関連 URL 東大病院オキシトシン臨床試験登録情報 https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows& type=summary&recptno=r000002743&language=j Biological Psychiatry ホームページ http://www.biologicalpsychiatryjournal.com/home 画像ダウンロード 図 1~5 は下記 URL よりダウンロードできます [ パスワード :y1h0i0y9k1t4h1p4] http://www.h.u-tokyo.ac.jp/pressrelease/release20100914mmdd-1_th.pdf -------------------------------------------------------------------------------- 本件に関するお問合せ先 東京大学医学部附属病院精神神経科准教授山末英典電話 :03-5800-9263 FAX:03-5800-6894 E-mail:yamasue-tky@umin.ac.jp 取材に関するお問合せ先 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター ( 担当 : 小岩井 渡部 ) 電話 :03-5800-9188( 直通 ) E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp --------------------------------------------------------------------------------