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過去 10 年間の業種別労働災害発生状況 ( 大垣労働基準監督署管内 ) 令和元年 4 月末現在年別 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 対前年比全産業 % (6

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平成 29 年 12 月末現在 認定事業場は 112 件 (97 企業 ) 適用事業場数は 248 事業場となっている ⑷ 安全衛生教育の推進 第 7 次計画 期間中に本部が実施した安全衛生教育は 平成 29 年 12 月末現在 本部教育部では 18 講座で計 201 回 延べ 9,906 人であり

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可能性重篤度優先度評価⑵ リスクアセスメントの目的 工事現場に潜在する労働災害の原因となる 危険性又は有害性 を特定し 負傷又は疾病の 災害の重大性 ( 重篤度 ) 及び 災害の可能性( 度合 ) からリスクを見積もり リスクのレベルを評価し レベルに応じたリスクの低減対策を講じることにより 労働災

資料 5 事故防止に向けた政策動向 平成 29 年 10 月 厚生労働省労働基準局安全衛生部

建設工事従事者の安全及び健康の確保に 関する三重県計画 平成 31 年 4 月 三重県

中央労働災害防止協会発表

働き方改革 魅力ある建設業の構築に向けて 特集 域によっても大きな差があり, 北陸地方や北海道 など一部の地方では平成 28 年 10 月調査の加入率が 80% を超えているのに対し, 大都市部のある関東 地方 (55%) や近畿地方 (60%) は低い加入率に 留まっている ( ) 建設マネジメン

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建設業における総合的労働災害防止対策の基本的考え方 建設業の特徴は重層下請構造の下 所属の異なる労働者が同一場所で作業する形態であり 短期間に作業内容が変化するという事業の性質から 工事現場における元方事業者による統括管理の実施 関係請負人を含めた自主的な安全衛生活動の推進を基本に 工事現場を管理す

JNIOSH-SRR-No.46 JNIOSH-SRR-No.46(06) (06) 図 ミュンヘンにおける足場 図 中桟が 階段 妻側にも設置してある 1 趣 サンフランシスコにおける足場 交さ筋かいの下に下桟が設置してある 旨 足場からの墜落 転落災害の防止については 平成年6月に労働安全衛生規

一般社団法人送電線建設技術研究会関西支部社会保険等の加入促進計画 1. はじめに 平成 27 年 4 月 24 日制定 建設産業においては 健康保険 厚生年金保険及び雇用保険 ( 以下 社会保険等 という ) の 1 法定福利費を適正に負担しない企業が存在し 技能労働者の医療 年金など いざというと

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足場関係審議会説明資料(当日配布セット版)

2017年度 施行簿 労働基準局 安全衛生部 安全課分




更には 死亡災害が年々減少傾向をたどる一方 墜落 転落は死に直結する可能性が非常に高いことから他業種にも対策を打つ施策が必要になったことによる このように 墜落 転落災害 を特定災害対策に掲げ 災害の発生防止に力を入れており 各労働局では特に墜落 転落災害の多い建設業に対し 建設現場の一斉監督指導を

別紙 平成 30 年度安全衛生教育促進運動実施要領 1 趣旨安全衛生教育促進運動は 労働者の安全と健康を守る上で中核となる安全衛生教育についてその重要性を啓発し 実施を促進するため 平成 25 年度から中央労働災害防止協会が主唱し 実施している運動である わが国の労働災害は 関係者のたゆまぬ努力によ

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目次 1 計画のねらい (1) 計画の期間 1 (2) 計画の目標 1 (3) 計画の評価と見直し 1 2 第 12 次労働災害推進計画中の労働災害発生状況 2 3 死亡等重篤な災害の撲滅を目指した対策の推進 (1) 論理的な安全衛生管理の定着と推進 2 (2) はさまれ 巻き込まれ等災害防止を重点

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1 大阪府の石綿対策の制度 1-1 建築物等の解体等工事に係る法 条例の主な規制内容 建築物の解体等工事 吹付け石綿 断熱材 保温材 被覆材 成形板 ( 石綿使用面積 1,000m 2 以上 ) 成形板 ( 石綿使用面積 1,000m 2 未満 ) 石綿無 着手前 着手中 事前調査条例条例条例条例

26公表用 栃木局版(グラフあり)(最終版)

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別添 平成 31 年度における建設業の安全衛生対策の推進に係る留意事項 1 足場等からの墜落 転落防止対策事業者は 建設業における死亡災害のうち 墜落 転落災害が 4 割以上を占めていることから 引き続き墜落 転落災害防止に係る労働安全衛生規則 ( 以下 安衛則 という ) の遵守徹底を図るとともに

5) 輸送の安全に関する教育及び研修に関する具体的な計画を策定し これを適確に実施する こと ( 輸送の安全に関する目標 ) 第 5 条前条に掲げる方針に基づき 目標を策定する ( 輸送の安全に関する計画 ) 第 6 条前条に掲げる目標を達成し 輸送の安全に関する重点施策に応じて 輸送の安全を確 保

労災リスクインフォ(第21号)



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2. 死亡災害の撲滅を目指した対策の推進 林業における伐木等作業の安全対策参照第 13 次労働災害防止計画 (2018~2022 年度 ) 1) 林業における伐木等作業の安全対策と関係団体との連携と取組み 伐木等作業における安全対策のあり方に関する検討会の議論の結果を踏まえ 安全対策の充実強化を図る

職場における熱中症による死傷災害の発生状況 ( 広島労働局 ) 1 熱中症による死傷者数の推移 ( 平成 20 年 ~ 平成 29 年分 ) 過去 10 年間の職場での熱中症による死亡者及び休業 4 日以上の業務上疾病者の数 ( 以下 死傷者数 という ) をみると 年によって差はあるものの 3 人

別紙 1 事故データベースへ登録する事故報告書の提出対象事故について 事故の定義は以下のとおりとする 事故の分類 事故の定義 労働災害 ( 工事作業が起因して 工事関係者が死傷した事故 ) もらい事故 ( 第三者の行為が起因して 工事関係者が死傷した事故 ) 死傷公衆災害 ( 工事作業が起因して 当

れている者 個人事業所で5 人以上の作業員が記載された作業員名簿において 健康保険欄に 国民健康保険 と記載され 又は ( 及び ) 年金保険欄に 国民年金 と記載されている作業員がある場合には 作業員名簿を作成した下請企業に対し 作業員を適切な保険に加入させるよう指導すること なお 法人や 5 人

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愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

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広労発基 第 1 号の 2 平成 31 年 3 月 6 日 別記関係団体の長 殿 広島労働局長 平成 31 年 STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン の実施について 平素から労働行政の運営に格別の御理解と御協力をいただき厚く御礼申し上 げます さて これまで 職場における熱中

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

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第4回 東日本大震災アスベスト対策合同会議

最初に 現場事務所において 各パトロール参加者の自己紹介が行われた後 元請事業場の担当者から 工事概要及び安全衛生活動等の説明を受けました 特徴的な活動 好事例として以下の活動が展開されていました 1 作業所のスローガンとして We are Hungry! を掲げ 現状に満足することなく 困難を積極

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( 参考 ) 熱中症による死亡災害の月別 業種別発生状況 ( 22 年 ) 6 月 7 月 8 月 9 月 建設業 製造業 農業 運送業 警備業 2 2 林業 1 1 その他 (2) 時間帯別発生状況

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新旧対照表

Ⅱ 取組み強化のためのアンケート調査等の実施 (1) 建設技能労働者の賃金水準の実態調査国土交通省から依頼を受けて都道府県建設業協会 ( 被災 3 県及びその周辺の7 県を除く ) に対し調査を四半期ごとに実施 (2) 適切な賃金水準の確保等の取組み状況のアンケート調査国は 平成 25 年度公共工事

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資料 4 建設業における労働安全衛生対策 厚生労働省 安全衛生部

2 低入札対策の拡充

業界で躍進する 工事現場 の 要 登録基幹 技能者 登録基幹技能者制度推進協議会 一財 建設業振興基金

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参考 1 死亡発生件数の推移 ( 滋賀県建設業 ) 平成 29 年は 3 件発生 前年と同数となった 死亡災害報告によるもの 参考 2 休業 4 日以上の死傷災害発生件数の推移 ( 滋賀県建設業 ) 平成 29 年は対前年比 5.1% の増加 建設業の死傷災害は長期的には減少して きたが 近年では減

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社団法人日本生産技能労務協会

基本問題小委員会における提言 ( 平成 26 年 1 月 ) 社会保険等未加入対策関係 1. これまでの中央建設業審議会 社会資本整備審議会基本問題小委員会における提言 1 行政 元請企業による加入指導 法定福利費確保に向けた取組等の総合的な対策を推進すべき 2 平成 29 年度を目途に 事業者単位

レベル 1 2 石綿届出対象 記入例 レ労働安全衛生法第 88 条第 3 項 労働安全衛生規則第 90 条第 5 号の2 の規定による計画の届出 石綿障害予防規則第 5 条第 1 項の規定による作業の届出 レ大気汚染防止法第 18 条の15 第 1 項の規定による作業実施の届出を行っております 石綿

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プレゼンテーションタイトル

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防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン

別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

所において施工する場合 2 施工にあたり相互に調整を要する工事で かつ 工事現場の相互の間隔が 10km 程度の近接した場所において同一の建設業者が施工する場合 ( 別添 建設工事における現場代理人の常駐義務の緩和に係る取扱いについて に示す 参考 第 2 第 1 項第 3 号に定める該当工事 参照

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Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

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A4 経営事項審査の受審状況により確認方法が異なります なお 適用除外は 労働者の就業形態等によって適用除外とならない場合もあることから 元請負人は 年金事務所等に適用除外となる要件を確認した上で判断してください 経営事項審査を受審している場合 有効期間にある経営規模等評価結果通知書総合評定値通知書

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2016年度 施行簿 労働基準局 安全衛生部 化学物質対策課分

Transcription:

第 12 次労働災害防止計画について 建設業対策を中心に 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室主任技術審査官釜石英雄 はじめに国は 労働災害を減少させるために 昭和 33 年開始の第 1 次労働災害防止計画の策定以来 これまで11 次に亘って労働災害防止計画を策定し 中期的に重点を置いて取り組むべき事項を定め 労働災害の減少に取り組んできました 平成 24 年の全産業における労働災害による休業 4 日以上の死傷者数は11 万 9,576 人と 前年比 1,618 人 1.4% の増加で 平成 22 年から3 年連続の増加となりました 厚生労働省では このような状況を踏まえるとともに 災害の発生状況の変化にも対応するため 平成 25 年度から平成 29 年度までの5ヶ年を計画期間とする 第 12 次労働災害防止計画 を平成 25 年 2 月 25 日に策定し 3 月 8 日に公示しました 本稿では この第 12 次労働災害防止計画について 建設業に関連する部分を中心に紹介します 1 計画のねらい ⑴ 計画が目指す社会計画が目指す社会は 働くことで生命が脅かされたり 健康が損なわれるようなことは 本来あってはならない という意識を 全ての関係者 ( 国 労働災害防止団体 労働者を雇用する事業者 作業を行う労働者 仕事を発注する発注者 仕事によって生み出される製品やサービスを利用する消費者など ) が共有し 安全や健康の ためのコストは必要不可欠であることを正しく理解し それぞれが責任ある行動を取ることにより 誰もが安心して健康に働くことができる社会 です ⑵ 計画の全体目標計画の全体目標は 次の2 点です 加えて 初めて 重点対策ごとに個別の目標を定めました 死亡災害の撲滅を目指して 平成 24 年と比較して 平成 29 年までに労働災害による死亡者の数を15% 以上減少させること 平成 24 年と比較して 休業 4 日以上の労働災害による死傷者の数を15% 以上減少させること 2 社会の変化と安全衛生施策の方向性高度経済成長期には 製造業と建設業の雇用者数の割合が高く 労働災害の発生件数も高かったことからこれらの産業に重点を置いた取組が講じられてきましたが 第三次産業に従事する労働者が増加したことにより これら第三次産業における労働災害の発生割合が増加しています しかし 死亡災害などの重篤な災害は依然として製造業や建設業で多発している状況です 平成 21 年のリーマンショックによる経済活動の低迷の影響もあり 一時期大きく減少した労働災害が 産業活動の活性化に伴い再度増加しつつあったところに 平成 23 年 3 月に東日本大震災が発生し 復旧 復興工事の進展に伴い 建設業の需要が急増 2

して全国的な人材不足等が生じ その結果 人材の質の維持や現場管理に支障が生じることが懸念されています また 少子高齢化の進展による高年齢労働者の労働災害の増加等 技術革新に対応して予防的な対策をどう講じるか検討する必要があること 国の財政事情が厳しさを増す中 行政には取組の選択と集中を進めるとともに 業界団体や労働災害防止団体との連携の強化 業界の自主的な取組の支援 促進が必要であること 労働災害に関する様々な情報を社会全体で共有して 安全衛生に対する認識を高めることが重要であること等が指摘されています 3 重点対策上記 2の現状と課題を踏まえて次の6つを重点施策としています ⑴ 労働災害 業務上疾病発生状況の変化に合わせた対策の重点化 ⑵ 行政 労働災害防止団体 業界団体等の連携 協働による労働災害防止の取組 ⑶ 社会 企業 労働者の安全 健康に対する意識改革の促進 ⑷ 科学的根拠 国際動向を踏まえた施策推進 ⑸ 発注者 製造者 施設等の管理者による取組強化 ⑹ 東日本大震災 東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応 4 重点施策ごとの具体的取組重点施策ごとの具体的取組のうち建設業に関係する事項は次のとおりです ⑴ 労働災害 業務上疾病発生状況の変化に合わせた対策の重点化ア重点とする業種対策イ重篤度の高い労働災害を減少させるための重点業種対策 ( 建設業 ) 死亡災害は大幅に減少してはいるものの 依然として年間 1,000 人を超える人が労働災害で亡くなっており 重篤な災害を防止するという観点からは その3 割近くを占める 墜落 転落災害 の防止対策を徹底させなければならない 墜落 転落災害は 半数以上が建設業で発生しており 死亡という最悪の結果に至らなくとも 障害が残る可能性が高い災害であるため 建設業に対しても 重篤な災害の防止に着目した取組が必要である 建設業は 平成 23 年以降労働災害が増加する傾向にある この背景には 東日本大震災の復旧 復興に向けた各種工事が本格化していることの影響が考えられ 被災地の建設復興需要の急増により 建設業者 技術者 技能労働者等が被災地に集中し その影響で被災地以外の地域でも人材が不足し この結果 全国的に人材の質の維持や現場管理に支障を来すことが懸念される さらに 今後インフラの老朽化等により増加が見込まれる解体工事の労働災害防止対策やアスベストばく露防止対策も重要な課題である ( 目標 ) 建設業について 平成 24 年と比較して 平成 29 年までに 労働災害による死亡者の数を20% 以上減少させるという目標の達成を目指す ( 対策 ) a 墜落 転落災害防止対策 様々な場所からの墜落 転落災害防止対策の推進 墜落 転落災害のうち 足場からの墜落 転落は約 15% を占め はしご 屋根等からの墜落 転落が約 4 割を占めるため 足場からの墜落 転落災害防止対策の推進に加え 労働安全衛生総合研究所 3

第 12 次労働災害防止計画 (H25 年度 ~5 カ年計画 ) における建設業の労働災害防止対策の柱 1 墜落 転落災害防止対策の推進 ハーネス型安全帯 安全帯は 作業床がない等墜落のおそれがある高さ 2m 以上の高所作業を行う場合は 必ず使用しなければなりません 特に 墜落災害の危険性の高い作業や墜落時に救出に時間がかかる場所での作業の場合は 墜落時の衝撃を少なくするハーネス型安全帯を使用しなければなりません 地上からの親綱設置先行工法ウェイトバケット又はフック金具 ( 軒先に引掛ける金具 ) を使用して 親ロープを十字状に設置し 墜落防止 親ロープを十字状に設置することにより 屋根全面の作業が可能です 機材の構成の例 構成部材は多いですが 設置は比較的容易です 特に親綱を地上から設置するため 親綱の設置作業を含め安全性が高いものです そのため 安全性が高いと考えられます 安全ブロック ( ストラップ式の墜落防止器具 ) を使用するため 作業者の移動に応じてストラップを繰り出し 巻取りでき作業の効率が高いものです と協力して はしご 屋根等からの墜落 転落災害を防止するための機材 手法を開発し 普及させる ハーネス型の安全帯の普及 一般に広く使用されている胴ベルト型の安全帯は 墜落時の身体への衝撃が大きいため 作業性を考慮しつつ 一定条件下でハーネス型の安全帯を義務付ける等 墜落時に衝撃が少ない安全帯を普及させる b 震災の影響による全国的な人材不足等の状況を踏まえた対策 建設工事発注者に対する要請 建設業の発注者に対し 仕様書に安全衛生に関する事項を盛り込むなど 施工時の安全衛生を確保するための必要な経費を積算するよう また 関係請負人へその経費が確実に渡るよう 国土交通省と連携して対応する また 官公庁発注の公共工事において同様の取組が取られるよう広く要請する 特に アスベストを含む建材の解体工事では 必要経費や工期の不足のためにア スベストのばく露や飛散の防止措置を講じることが困難になるような工事の発注が行われないよう 環境省 地方公共団体等とも連携して重点的に対応する 建設現場の統括安全衛生管理の徹底 新規に建設業に就労する者( 新規参入者 ) 等に対する安全衛生教育の確実な実施等 各建設現場の統括安全衛生管理の徹底を図る c 解体工事対策今後 老朽化したインフラや建造物の解体 改修工事の増加が見込まれるため 以下の対策を講じる アスベストばく露防止対策 アスベスト含有建材を利用した建築物の解体も今後増加が見込まれるため 引き続きアスベストのばく露や飛散の防止を徹底するとともに 環境省 地方公共団体等と連携して 事前調査の実施と届出が適切になされるよう指導を行い 不適切な事案には厳正に対処する また 建築物等の解体等の事前調査の徹底 アスベスト除去工事を行う者等の能力向上 4

第 12 次労働災害防止計画における建設業の労働災害防止対策の柱 2 全国的な人材不足等の状況を踏まえた対策の推進 ( イメージ ) 現状 人材の質の維持や現場管理に支障を来たすことが懸念される 対応人材の質の維持 作業者 新規参入者教育新規入場者教育建設従事者教育 職長 職長 安全衛生責任者教育 管理監督者 現場代理人に対する研修等 現場管理の劣化の防止 集団指導個別指導パトロール等 建設業労働災害防止協会との連携 発注者への要請 安全衛生の確保に配慮した工期の設定 安全衛生を確保するために必要な経費の積算 入札参加指名時における労働安全衛生マネジメントシステム等の取組を評価する仕組みの導入等 発注機関連絡会議等の活用 集じん 排気装置の整備に必要な情報の提供等を推進する 解体工事の安全対策 老朽化したインフラや建造物の解体 改修工事での安全対策を検討し ガイドラインを示す d 自然災害の復旧 復興工事対策 近年 台風 大雨 大雪 竜巻等の自然災害が頻発しており 今後も同様の自然災害の発生が予想されるため 自然災害によって被災した地域の復旧 復興工事での労働災害防止対策の徹底を図る イ重点とする健康確保 職業性疾病対策 ( 熱中症 ) 夏季を中心に依然として頻発している熱中症への対策の強化が喫緊の課題となっている ( 目標 ) 平成 20 年から平成 24 年までの5 年間と比較して 平成 25 年から平成 29 年までの5 年間の職場での熱中症による休業 4 日以上の労働災害の死傷者の数 ( 各期間中 (5 年 間 ) の合計値 ) を20% 減少させる ( 講ずべき施策 ) a 屋外作業に対する規制の導入 熱中症の発生状況を勘案し 夏季の一定の時期の屋外作業について 作業環境の測定 評価と必要な措置を義務付けることを検討する b 熱中症対策製品の客観的評価基準の策定 熱中症対策として労働現場で用いられている製品の中には 身体の一部の温度は下がっても 身体への負担軽減につながらないものもあるため WBGT 値 ( 暑さ指数 ) の低減効果の観点から機能の評価基準の策定を行い 周知を行う ウ業種横断的な取組 リスクアセスメントの導入は進んでいるが 中小規模事業場の取組が遅れている また リスクアセスメントは 概念としては安全衛生全体を含むものであるが 現状では安全分野が先行しており 労働衛生分野の取組が進んでいない 5

( 講ずべき対策 ( 建設業 )) b 建設業の元方事業者と関係請負人によるそれぞれの役割に応じたリスクアセスメントの実施促進 建設業では 関係請負人の段階では対応が困難な事項について元方事業者がリスクアセスメントを行うなど 元方事業者と関係請負人がそれぞれの役割に応じたリスクアセスメントを行い その結果に基づいて適切な措置を講じるよう 建設業労働災害防止協会と連携して指導する ⑹ 東日本大震災 東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応 平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災により 東北地方の太平洋沿岸を中心に甚大な被害が発生し その復旧 復興に向けた各種工事が本格化しているため 被災地の状況に応じた労働災害防止対策を徹底する必要がある 被災地の建設復興需要の急増により 建設業者 技術者 技能労働者等が被災地に集中し その影響で被災地以外の地域でも人材が不足するなど 全国的に人材の質の維持や現場管理に支障を来すことが懸念される 東日本大震災の影響で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業や 放射性物質が飛散した地域の除染作業での被ばく防止を徹底する必要がある また 除染作業や生活基盤の復旧作業において 屋根などの高所からの墜落や重機災害などの労働災害防止対策を徹底する必要がある ( 講ずべき対策 ) 1 東日本大震災の復旧 復興工事対策 a 復旧 復興工事の労働災害防止 東日本大震災の被災地での復旧 復興工事の労働災害防止対策を着実に実施する また 避難指示解除準備区域等で行われる除染作業や生活基盤の復旧作業での高所からの墜落防止 重機災害の防止等を着実に実施する b 建設現場の統括安全衛生管理の徹底 ( 略 (⑴アイb と同じ)) 2 原子力発電所事故対策 b 原発事故対応作業と除染作業での放射線障害防止等 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業の被ばく防止対策 特別教育等の安全衛生管理の実施を徹底する 除染特別地域等での除染作業 復旧 復興に携わる労働者の放射線障害防止対策を着実に実施する おわりに厚生労働省では 第 12 次労働災害防止計画に基づき計画的に建設業における労働災害防止対策を推進していくこととしています 建設業の事業者の皆様が 第 12 次労働災害防止計画のスタートを受けて 安全衛生関係法令に規定された事項の遵守だけでなく リスクアセスメントの実施及びその結果に基づく対策 更には 快適な職場環境の構築や労働条件の改善など 建設業がより魅力を増すように積極的に取り組んでくださることを期待しています 本記事は計画本文より抜粋している為 一部項目番号が飛んでおります 6