解剖学 1

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眼球から脳への情報伝達を行う視神経の機能不全は視力低下を引き起こします 幸運にも この視神経の機能不全は甲状腺眼症の約 5% にしか起こらず 圧迫が解除されれば可逆的に 戻ることもあります 病態 : 免疫系が外眼筋をどのように そしてなぜ攻撃するのか よくわかっていません 免疫による刺激の結果 外眼

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い結合組織性の瞼板がある 瞼板中には 30~40 個の瞼板腺 ( マイボーム Meibome 腺 ) が一列に存在し 導管は眼瞼後縁に開口する 前縁には 睫毛 ( まつ毛 ) が 2~3 列あり その根部に睫毛腺 ( モル Moll 腺 ) また脂腺 ( ツァイス Zeiss 腺 ) が開く 涙腺は

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解剖・栄養生理学

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UDガイド 改

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アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)

眼科学 責任者 コーディネーター 眼科学講座黒坂大次郎教授 担当講座 学科 ( 分野 ) 担当教員 眼科学講座 黒坂大次郎教授 町田繁樹准教授 木村桂講師 後藤恭孝助教 菅原剛助教 橋爪公平助教 対象学年 4 期間前期 区分 時間数 講義 17 時間 学習方針 ( 講義概要等 ) 視機能の回復 改善

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コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)

呼吸器系空気の経路 : 気道 ( 鼻腔 咽頭 喉頭 気管 気管支 ) ガス交換 : 肺 1. 鼻 a. 外鼻と鼻腔 1 外鼻 : 鼻根 鼻背 鼻尖 鼻翼からなる 下面は外鼻孔 2 鼻腔 : 鼻前庭 外鼻孔から1~2cm奥 鼻毛により空気の濾過装置上 中 下鼻道 外側壁 上 中 下鼻甲介からなる総鼻道

凸レンズの公式 : 実像の場合 A P : 実光源 ( 実物体 ) とレンズ間の距離 : 実像とレンズ間の距離 : 焦点距離 実光源 B F F B 実像 光軸 A DAB DA B より, AB B A B B DPF DA B F より, P F A B B F - P AB より, AB P

生物 第39講~第47講 テキスト


日本の糖尿病患者数約 890 万人糖尿病の可能性が否定できない人約 1320 万人合わせて約 2210 万人 (2007 年厚生労働省による糖尿病実態調査 ) 糖尿病の患者様の約 40% に網膜症発生 毎年 3000 人以上が糖尿病網膜症で失明 2

A: 中心光度の 98% の光度となるレンズ 部分 B: 直接光が図面上入射するレンズ部分 照明部の大きさとは 別に定めるもののほか 自動車の前方又は後方に向けて照射又は表示する灯火器又は指示装置にあっては車両中心面に直角な鉛直面への投影面積とし 自動車の側方に向けて照射又は表示する灯火又は指示装置

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一身体障害認定基準 1 総括的解説 (1) 視力の屈折異常がある者については 眼科的に最も適当な矯正眼鏡を選び 矯正後の視力によって判定する () 視力表は万国式を基準とした視力表を用いるものとする () 視野はゴールドマン視野計及び自動視野計又はこれらに準ずるものを用いて測定する ゴールドマン視野

10視能訓練士_PM

白内障について 白内障は虹彩 ( 瞳 くろめ ) の後ろにある 眼のレンズ ( 水晶体 ) が濁る病気です 加齢によりこの水晶体が濁ると 眼の奥に光が届きにくくなるため ものがぼやける 視力が低下する などの症状が出現します 白内障の治療は? 白内障は年齢とともに次第に進行します 初期であれば 多少

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報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

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目は重要な感覚器 目は私たちにとって 重要な感覚器の一つです もし 目の機能が低下すると 日常生活への影響は想像以上に大きいものになると考えられます 高齢化社会となった現代 目の健康には日ごろから十分に注意する必要があります QOV( qua lity of vision ) を維持して QOL (

視覚障害

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糖尿病網膜症診療の現状

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テレコンバージョンレンズの原理 ( リアコンバーター ) レンズの焦点距離を伸ばす方法として テレコンバージョンレンズ ( テレコンバーター ; 略して テレコン ) を入れる方法があります これには二つのタイプがあって 一つはレンズとカメラ本体の間に入れるタイプ ( リアコンバーター ) もう一つ

Pick-up プロダクツ プリズム分光方式ラインセンサカメラ用専用レンズとその応用 株式会社ブルービジョン 当社は プリズムを使用した 3CMOS/3CCD/4CMOS/4CCD ラインセンサカメラ用に最適設計した FA 用レンズを設計 製造する専門メーカである 当社のレンズシリーズはプリズムにて

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

Ⅲ 錐体細胞の回復と色の関係について錐体細胞の視物質の回復速度を調べるために視細胞に関する資料を調べたところ 光の暗順応曲線というものがあり これが活用できるのではないかと考えた 暗順応とは 明るい場所から暗い場所に入った際に 時間とともに目が暗闇に慣れてくるという現象である これは 視物質の合成が

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シリーズ 刊 行 にあたって 21 quality of life 80

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動脈硬化の診断 2 糖尿病による血管の病変の診断 頭蓋内の病気の診断など 3. 眼底検査の流れ 眼底は瞳孔の奥にあるため 瞳孔を開く目薬 ( 散瞳薬 ) をさします その後 10 分 ~15 分で瞳孔が開いた段階で いた段階で 眼底カメラなどを使って眼の奥を観察します 検査はわずかの時間で終わります

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財団法人 県総合 健協会 予支 長 眼底検査は 目の底の血管を直接見ることができる検査です 眼底検査をすることによって 高血圧 糖尿病 動脈硬化等 ( 脳疾患 心臓疾患 ) の進行状態を把握することができます また緑内障 黄斑変性症などの眼科疾患もわかります 眼底の構造 眼底写真 これは正常の眼底像

著作権法に違反いたしますので 以下の図 ( 文章を含む ) などを 柏木豊彦の許可なく 複製することを禁じます なお図 B,C,D は 第 51 回日本眼光学学会総会 2015 年 9 月 26 日 ~27 日 岡山コンベンションセンターにて 柏木豊彦がすでに発表したものです 多焦点眼内レンズ挿入眼

「解剖学用語 改訂13版」解剖学会ホームページ公開版

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

解剖学 1

9.50 歳男性 仕事中にセメントが飛入し 両眼の眼痛と流涙を訴えて受診した 両眼ともに自己開瞼不能であるため 点眼麻酔を使用して前眼部検査を行なったところ 結膜充血と角膜混濁を認めた まず行なうべき処置はどれか a セメントの除去 b 大量のアンモニア水による洗眼 d 抗菌剤の点眼 c 大量の生理

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報道発表資料 2005 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人京都大学 ES 細胞からの神経網膜前駆細胞と視細胞の分化誘導に世界で初めて成功 - 網膜疾患治療法開発への応用に大きな期待 - ポイント ES 細胞の細胞塊を浮遊培養し 16% の高効率で神経網膜前駆細胞に分化させる系

準備コース カルテを見る付加レンズの用意をする (0 以内に使用 ) 注意! 説明 疾患は何か? 何が疑われるのか? 何を知るために測るのか? ただし先入観で視野を作る場合があるので注意 視力はどの位か? 矯正視力が不良の場合 中心の比較暗点を考える その患者について知っておくべき情報はないか? 本

障害程度等級表

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200(平成年)月日実施

背景 近年, コンピューター, タブレット, コンタクトレンズなどの使用増加に伴い, 国民の約 10 人に 1 人がドライアイだと言われています ドライアイの防止に必要な涙 ( 涙液 ) は水だけでできていると思われがちですが, 実は脂質層 ( 油層 ), 水層, ムチン層の三層で形成されています

眼科手技を模擬した眼科手術シミュレータの開発 ~ マイクロフックを用いた緑内障手術用眼球モデルの開発に成功 ~ 名古屋大学大学院工学研究科の新井史人教授 小俣誠二特任助教の研究グループは 東京大学大学院医学系研究科の相原一教授の研究グループと東京大学大学院工学系研究科の光石衛教授の研究グループとの共

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

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診断群分類医療資源を最も投入した傷病名年齢 出生時体重手術手術 処置等 1 MDC コード分類名 ICD 名称 ラ手術分岐ラ点数表名称ラコード時体重コー等コードグググト ト 対応 等等ググト 網膜芽細胞腫 網膜の悪性新生物 C692 手術なし 手術なし 1 1 リンパ節摘

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平成 26 年 8 月 21 日 チンパンジーもヒトも瞳の変化に敏感 -ヒトとチンパンジーに共通の情動認知過程を非侵襲の視線追従装置で解明- 概要マリスカ クレット (Mariska Kret) アムステルダム大学心理学部研究員( 元日本学術振興会外国人特別研究員 ) 友永雅己( ともながまさき )

科目名授業方法単位 / 時間数必修 選択担当教員 人体の構造と機能 Ⅱ 演習 2 単位 /60 時間必修 江連和久 北村邦男 村田栄子 科目の目標 人体の構造と機能 はヒトの体が正常ではどうできていてどう働くのかを理解することを目的とする この学問は将来 看護師として 病む ということに向き合う際の

四消化器系 ( 口腔及び歯牙 を除く ) 五血液及び造血器系六腎臓 泌尿器系及び生殖器系 ( 二 ) 心筋障害又はその徴候がないこと ( 三 ) 冠動脈疾患又はその徴候がないこと ( 四 ) 航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと ( 五 ) 航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁

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医療が変わるto2020

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後遺障害別等級表・労働能力喪失率

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本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

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手術後の生活の質に 関係する眼内レンズ度数

平成 30 年度日本財団助成事業 光 を総合的に学習する巡回型展示物の制作 の 展示物制作業務 展示物制作概要 公益財団法人日本科学技術振興財団

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モリサワ多言語フォント (UD 新ゴハングル UD 新ゴ簡体字 UD 新ゴ繁体字 ) の可読性に関する比較研究報告 株式会社モリサワ 概要 モリサワはユニバーサルデザイン (UD) 書体を2009 年に市場投入して以来 多くのお客様の要望に応え フォントの可読性に関する比較研究を行ってきた エビデン

チトマス ステレオテスト 両眼分離方法 偏光 長所 定量性に優れている 記載例 TST(SC) 図形パターン 最も一般的に普及しているので 他施設との比較が容 fly(-) R supp(+) 実質図形 易である animals(1/3) 検査距離 40cm 視差 羽先端 幼児に動機付けがし易い 短

2011年7月28日

一 身体障害者障害程度等級表 ( 抜すい ) 級別視覚障害 1 級両眼の視力 ( 万国式試視力表によって測ったものをいい 屈折異常のある者については きょう正視力について測ったものをいう 以下同じ ) の和が0.01 以下のもの 2 級 1. 両眼の視力の和が0.02 以上 0.04 以下のもの 2

PTM 12 ( 2 ) OCT., 2009 最新眼科屈折矯正医療の現状 The Latest Trends in Refractive Surgery 品川近視クリニック東京本院 副院長冨田 実 Tomita Minoru

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コンピュータグラフィックス第8回

乳児内斜視 (Infantile esotropia)

等級割合第660% 第7級50% 第8級障害の状態 耳の聴力を全く失い 他耳の聴力が 40 センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの級4せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 51 上肢の3 大関節中の2 関節の用を廃したもの 61 下肢の3 大関節

はじめに 100 円ショップの おたま を使った球面鏡の実験と授業展開 by m.sato ご存知のように 一昨年から導入された新しい学習指導要領の 物理 の内容は 標準単位が1つ増えたことに伴い 剛体やドップラー効果 波の干渉などが ( 物理 Ⅰから ) 上がってきました ところが 教科書を見ると

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ここまで進化した! 外観検査システムの今 表 2 2 焦点ラインスキャンカメラ製品仕様 項目 仕 様 ラインセンサ 4K ラインセンサ 2 光学系 ビームスプリッター (F2.8) ピクセルサイズ 7μm 7μm, 4096 pixels 波長帯域 400nm ~ 900nm 感度 可視光 : 量子

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

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Transcription:

解剖生理学神経系の構造と機能 ( 感覚器 : ) 眼球の構造 : 眼球は直径 25mm ほどの球状で 前後径の方が横径より少し大きい : 前方の角膜は 他部分よりも彎曲が強い : 後極の少し下内側で視神経につながる : 眼球の壁は 3 層構造からなり 内部に水晶体 硝子体 眼房水が含まれる 眼球線維膜 ( 外膜 ) : 眼球壁の最外層を形成 : コラーゲン線維を主体とする強靭な膜 : 前方の一部は透明な角膜だが 残りの大部分は強膜は硬く白い膜である 眼球線維膜 ( 外膜 ) 強膜 : 眼球外層の約 5/6 を占め 血管が少なく白く見える : 厚さは後部で厚く ( 約 1mm) 赤道部で薄く ( 約 0.4mm) この厚さの部位差と眼内圧のバランスで 眼球の形が保たれる : 強膜角膜移行部近くの内面に 強膜静脈洞 ( シュレム管 ) があり 眼房水の流出路となる 眼球線維膜 ( 外膜 ) 角膜 : 眼球の前 1/6( 直径約 10~12mm) を占め 厚さ約 1mm 前方に凸彎する透明部 : 核膜の本体は規則的に配列したコラーゲン線維からなる : 外表面の角膜上皮は重層扁平上皮で角化しておらず 強膜を覆う結膜の上皮に続く : 後面は前眼房に面して 1 層の内皮細胞が並ぶ : 角膜刺激により 眼瞼が反射的に閉じる事を角膜反射という

眼球血管膜 ( ブドウ膜 ) : 血管の豊富な膜で 大部分を占める脈絡叢と前方に突き出す毛様体と虹彩からなる 脈絡叢 : 強膜の内面にある薄い膜 : 血管と色素細胞に富み赤黒い事で 眼球内部を暗くして また眼球壁に栄養を与える 眼球血管膜 ( ブドウ膜 ) 毛様体 : 脈絡膜の前方に突き出す肥厚部で 内部に平滑筋性の毛様体筋がある : 毛様体の内面には 約 70 の毛様体突起が中心に向かって突出し 無数の毛様体小帯 ( チン小帯 ) によって水晶体と連結している : 毛様体表面の上皮細胞は 眼房水の分泌を行う : 毛様体筋は 副交感神経 ( 動眼神経 ) に支配され 収縮すると毛様体を中央に向かって突出し 毛様体小帯がゆるみ 水晶体はみずからの弾力で凸度を増す 眼球血管膜 ( ブドウ膜 ) 虹彩 : 毛様体の前方に突き出す 平たい環状の膜で 中央の瞳孔を取り囲んでいる : 眼球の外から核膜を通して見える : 虹彩により 水晶体と角膜の間の空間は 前眼房と後眼房に分けられる : 虹彩は血管 神経 色素を豊富に含み 内部には瞳孔の大きさを調節する 2 群の平滑筋がある : 輪状の瞳孔括約筋は副交感神経 ( 動眼神経 ) に支配され 放射状の瞳孔拡大筋は交感神経に支配される : 黒目 茶目 青目等の目の色は 虹彩の結合組織に含まれるメラニン細胞の量の違いにより生じる 網膜 ( 眼球内膜 ) : 眼球壁の最内層で 本体をなす狭義の網膜と脈絡膜に面する色素上皮とからなる 網膜 : 眼球壁の最内層部で 感覚細胞 神経細胞 神経線維が整然と配列し 多くの層に区別される : 色素上皮側 ( 外側 ) から 視細胞層 双極細胞層 神経節細胞層がある : 双極細胞は視細胞からの刺激を神経節細胞に伝え 同じ神経節細胞層にある他の神経細胞とともに 網膜内である程度の情報処理を行う

網膜 ( 眼球内膜 ) 視細胞 : 視細胞は 杆体と錐体の 2 種類の感覚細胞がある : 色素上皮に向かう突起の形により命名される : 杆体はロドプシンという感光色素を持ち 光の感度が高く 色を区別しない : 光が杆体に照射されると フォトン ( 光子 ) がロドプシンに吸収されて視細胞にある G タンパク質が活性化される : 活性化により それまで開いていたナトリウムチャネルが閉鎖して過分極がおきる : 過分極による信号が視細胞を通ってを生じる : 錐体はイオドプシン ( アイオドプシン ) という感光色素を持ち 光の感度は低いが 異なる色を青錐体 緑錐体 赤錐体の 3 種類の錐体で感知する 網膜 ( 眼球内膜 ) 視神経 : 網膜の神経節細胞から出た軸索は 網膜の最内層を通り 視神経乳頭 ( 円板 ) に向かう : 視神経乳頭で眼球を離れて視神経に入る : 視神経乳頭には視細胞がない為 光を感じない : 神経乳頭の外側 4~5mm の場所に 黄斑 ( 黄色っぽい領域 ) があり 中央に中心窩という軽いくぼみがある : 中心窩は視細胞の錐体が集まり 注視する時に視野の中心になって 高い視力が得られる : 網膜は中心窩の周縁で厚く 前方に向かって薄くなりながら鋸状縁に達する : 鋸状縁で急に極薄くなり 毛様体の内面と虹彩後面を覆う上皮に移行 眼房水 : 核膜と水晶体の間には 眼房水によって満たされる眼房があり 虹彩によって前眼房と後眼房に分けられる : 眼房水の成分は血漿に近いが 炭酸水素イオン ( 重炭酸イオン :HCO 3- ) を多く含み 角膜 水晶体 硝子体に栄養を与える : 眼房水は循環しており 毛様体上皮から後眼房に分泌され 前眼房に入り 虹彩と角膜の境界部にある強膜静脈洞に吸収される 眼内圧 : 眼房水の圧を眼内圧 ( 眼圧 ) といい 平均眼内圧は 14~16mmHg 正常値の上限は 20~21mmHg : 眼房水の出口が閉鎖され 眼内圧が高まると緑内障になり 視細胞が障害されて失明の危険がある 水晶体 : 水晶体は 直径約 9mm で前後両面が凸のレンズで 後面の彎曲が強く 眼房水および硝子体よりも屈折率が大きい : 前後軸は約 4mm だが 遠近調節の為に厚さを変化させ 遠方視で薄く 近方視で厚くなる : 水晶体の表面は弾力性のある水晶体包に覆われ 内部の大部分は上皮細胞からなる水晶体線維が規則的に集合している : 毛様体内面からおこる毛様体小帯が 水晶体包に付着する : 加齢とともに水晶体は固くなり 遠近調節が困難になる ( 老眼 ) : 高齢になると水晶体が白濁し 視力障害がおこる ( 白内障 ) : 高度な白内障の場合 水晶体を摘出して人工の眼内レンズを挿入することで視力を回復することができる

硝子体 : 硝子体は水晶体の後方にあり 眼球の後方約 3/5 を占めるゼリー状の物質である 眼球付属器 眼瞼 結膜 : 一般的に瞼 ( マブタ ) といわれる上 下の眼瞼 ( ガンケン ) は 必要に応じて光を遮断し 眼球を保護する : 外面は皮膚 内面は血管と神経に富む粘膜 ( 結膜 ) に覆われる : 眼瞼の内面を覆う粘膜 ( 眼瞼結膜 ) と 眼球前面の強膜を覆う結膜 ( 眼球結膜 ) は 上下の結膜円蓋で互いに移行する 眼球付属器 眼瞼 結膜 : 眼瞼の内部には 硬い結合組織の瞼板 ( ケンバン ) および いくつかの分泌腺がある : マイボーム腺は 瞼板中に 30~40 個ある大型の皮脂腺で 眼瞼後縁に開口する : 眼瞼前縁には瞼毛 ( まつげ ) が 2~3 列ある : 瞼毛の根部には特殊なアポクリン汗腺と脂腺が開く : 眼窩内の上眼瞼挙筋 ( 動眼神経支配 ) が上眼瞼を牽引する事で 眼瞼裂も引き上げて眼瞼裂を開き 眼瞼裂を取り巻く眼輪筋 ( 顔面神経支配 ) が 眼瞼裂を閉じる 眼球付属器 涙器 : 涙腺は 眼球の上外側にある小指頭ほどの漿液腺である : 涙を分泌する涙腺は角膜の表面を覆い 乾燥を防ぎ保護する : 涙液は内眼角に集まり 上下の涙点から流出し 鼻涙管を通って鼻腔の下鼻道に入る : 瞬目 ( シュンモク / まばたき ) は 眼瞼を動かして涙液を眼球表面に均等に広げるだけでなく 鼻涙管を収縮 拡張させて涙液を吸引する 眼球付属器 眼筋 ( 外眼筋 ) : 眼窩には 眼球を動かす 6 つの外眼筋があり 作用的には 4 つの直筋と 2 つの斜筋があり 動眼神経 滑車神経 外転神経に支配される : 外眼瞼挙筋は 眼球の運動は行わないが 外眼筋に含める 上直筋 下直筋 内側直筋 外側直筋 :4 つの直筋は 視神経管のまわりにある総腱輪からおこり 前方に直進し扁平な腱となり 角膜縁から 5~10mm 後ろで眼球の強膜に停止

眼球付属器 眼筋 ( 外眼筋 ) 上斜筋 : 総腱輪からおこり 眼窩の前上内側隅に進み 軟骨性の滑車により外後方に向きをかえ 眼球の上面に斜めに停止する 下斜筋 : 眼窩底の鼻側 涙嚢の直下を起始とし外後方に走行し 眼球の外側面に停止する : 滑車神経は上斜筋 外転神経は外側直筋 動眼神経はそれ以外の眼筋群と上眼瞼挙筋を支配する 視野と視力 視野と盲斑 :1 点を注視した状態で見える範囲を視野 : 白に対する視野よりも 色に対する視野は狭く 緑に対する視野が最も狭い : 注視した点から 15 外側の位置に 視細胞の無い視神経乳頭に対応してのない盲斑 ( 盲点 ) がある 視力 : 眼の分解能を示す数値で 識別できる最小の視角 ( 分単位 ) の逆数で示す : 視力 1.0 で識別できる 1 分の角は 5m の距離から見た 1.5mm の長さに相当する 色覚 : 波長が 400nm( ナノメートル ) の紫から 800nm の赤までの可視光線を感知できる : 波長や組み合わせに対応する色調 色の明るさにあたる明度 色に白や黒が混ざって白っぽくないし黒っぽくなった度合いを示す飽和度 ( 彩度 ) が区別できる色覚の 3 要素 色覚異常 : 色覚異常の多くは先天性の錐体異常により色の識別が出来ない : 色覚異常の程度により 1 色覚 ( 色覚の欠如 ) 2 色覚 (1 つの色覚が欠損 ) 異常 3 色覚 (1 つの色覚が鈍い ) に区別される : 錐体には赤 青 緑の 3 種類の感光物質のどれかが含まれているが 赤または緑の感光物質が欠損して 赤か緑の色覚異常をおこすことが多い : このような赤緑色覚異常は伴性劣性遺伝を示し 多くは男性にのみあらわれる 遠近調節 : 遠近調節は 毛様体筋の収縮と水晶体の弾力により行われる : 副交感神経の刺激で毛様体筋が収縮すると毛様体が内方に突出し 水晶体自体の弾性によって前後の厚さを増し 視点が近方に移動する : 中年以後は 水晶体が硬くなって弾力性を失い 調節力が小さくなる事を老眼といい 中年以後に発生する 屈折異常 : 遠近調節を休止した状態で無限遠の像が網膜に結ぶ状態は正常であるが それ以外の状態をすべて屈折異常という

遠近調節 屈折異常 近視 : 屈折力に比べて眼軸が長く 遠方の物体の像が網膜の前方に生じてしまい 凹レンズにより矯正 遠視 : 遠方の物体の像が網膜の背後で結び 凸レンズにより矯正 乱視 : ( 正乱視 ) : 水平方向と垂直方向の焦点距離が違うためにおこる : 円柱レンズによって矯正 ( 不正乱視 ) : 角膜表面に凹凸があるために生じる : コンタクトレンズによって矯正 ( 通常 角膜を移植した際には乱視となるので コンタクトレンズで矯正する必要がある ) 明暗順応 : 明所から暗所に移ると 初めは物が見えないが やがて見えてくる : この過程を暗順応といい 30 分ほどかかる : 暗所から明所に移ると まぶしさに慣れる明順応は 1 分ほどで完了する : 明暗順応により 網膜の感度は 100 万倍にも変化する : 順応と明順応は 杆体の外節に含まれるロドプシンが 分解されたり再合成されたりして行われる : ロドプシンはビタミン A からつくられる物質を含むため ビタミン A が欠乏すると 暗所での視力が低下する夜盲症となる 外眼筋による眼球の運動 ( 像のぶれを防ぐ ) : 頭部がある方向に回転すると反射的に眼球が逆方向に回転して 眼球の方向を一定に保つ : 内耳の半規管からの平行覚が 大きな役割を果たす ( 前庭動眼反射 ) ( 視線を向ける ) : 興味のある対象に視線を移す時に衝動性動眼反射が 身体の向きをかえる運動 ( 定位反応 ) と協調しておこる : これにより求める像が 解像度のよい中心窩にすみやかに結ばれる ( 複視 ) : 外眼筋の動きが障害されると 物が二重に見える 眼球に関する反射 対光反射 : 網膜に入る光の量により 瞳孔の大きさが反射的に調節される反射 : 光を斜めから瞳孔にあてると 瞳孔が反射的に収縮する : 暗所に移ると 瞳孔は散大する : 瞳孔の散大 縮小による入射光量の変化は最大でも 20 倍足らずで 明 暗順応に比べてはるかに小さい : 光を照射すると反射によって即座に縮瞳がおこる為 強い光による網膜の障害を防ぐことができる : 虹彩の瞳孔散大筋は交感神経により 瞳孔括約筋は副交感神経 ( 動眼神経 毛様体神経節経由 ) により収縮する 眼球に関する反射 輻輳反射 : 近いものを注視すると 両眼の視軸が鼻側に寄る ( 内転 ) が このとき反射的に瞳孔が縮小する 瞬目反射 ( 角膜反射 ) : 角膜を保護する目的の反射 : 角膜や眼の周囲の皮膚にものが触れたり 眼前に急に物体が近づいたりすると 反射的に眼瞼が閉じる事を瞬目反射という : 角膜の刺激による物を角膜反射といい 中枢神経の障害を検査するのに用いる