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TAVR ライブ手術ガイドライン ( 案 ) 2017 年 12 月 25 日現在 経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会 1

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 はじめに 現在 種々の学会や研究会で PCI などのライブデモンストレーション ( 以下ライブ ) が行われているが ライブ手術では視聴者が 術者と同時にその局面を経験して その判断と対応を勉強できることに意義がある また その時の視聴者の印象は強く 教育効果は大きいことから 今後の治療に役立つと考えられる しかしながら一方で術者に余分なストレスがかかり 通常の実力を発揮できない可能性があり ライブ手術を受ける患者にとっては利益が無いことを十分認識する必要がある このような点を踏まえてライブ手術を行う限りは 患者の手術安全を最重視した上で 教育効果が充分あることが必須である この度 経カテーテル的大動脈弁置換術 ( 以下 TAVR) についてもライブ手術を適切に実施するにあたり 患者の人権問題 安全性の確保 不慮の事故への対応などに対する一定の基準を設けたガイドラインを作成することとなった Ⅰ.TAVR ライブ手術の目的ライブ手術の企画では TAVR に関する様々な手術手技のみならず適応を含めた手術戦略の選定 手術に必要な設備や機材の選択 麻酔管理を含む手術のサポート体制などに関する教育を基本とするものであり 優れた術者のパフォーマンスを供覧する場でもなければ 臨場感のみを求める視聴者に応えるものでもない Ⅱ.TAVR ライブ手術の要件 1. 手術内容 1) 本領域においては ライブ手術に適する手術と適さない手術があるので たとえ標準的手術であっても合併症や死亡率が高いと予想される手術は患者の人権に配慮して ライブ手術の対象からは除外すべきである 2) 新たな手術器具やデバイス ( 国内にて承認済のものに限る ) を用いたライブ手術は その学術的意義から妥当性あるものに限る 企業の宣伝のみを行うようなライブ手術は 金銭の授受が無くても利益相反の観点から避けるべきである 2

33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 2. 術者経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会 ( 以下 TAVR 関連学会協議会 ) において適任とされた者が術者となるが 以下の条件を全て満たすものとする 1) 当該手術に対して充分な知識と経験を有し これを日常的に実践している者 2) ライブ手術の趣旨を理解し 正しい教育を行える者 3)TAVR 実施医認定機構の当該デバイスの指導医として認定されている者 4) 術者は所属している施設でライブ手術を行う 5)TAVR ライブ手術の内容に関連する利益相反について 手術開始前に言及する 3. 実施施設以下の条件を全て満たすものとする 1) すべての観点から社会的に透明性が保たれ 情報公開が行われている施設であること 2) 外科医 麻酔科医 関連診療科 看護師 臨床工学技士など全ての医療従事者が当該手術に熟練し 不測の事態に速やかに対応できるように 連携が保たれ 術前の話し合いが充分になされていること 3) 施設管理者も ライブ手術の趣旨を理解し同意していること 4)TAVR 実施医認定機構に認定された指導施設であること 4. 視聴者原則として関連主要学会 ( 日本経カテーテル心臓弁治療学会 日本循環器学会 日本心血管インターベンション治療学会 日本胸部外科学会 日本心臓血管外科学会 )( ただし研究会 地方会は除く ) に参加している医師 看護師 技師などの医療従事者で ライブ手術の目的を理解し患者の人権を尊重しているものとする 一般市民やマスコミは当然除外されるが 企業などの医療関係者は 主催者の判断で参加を認めてもよい なお ライブ手術では参加者を登録制にして 主催者が把握 管理することが望ましい 3

62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 Ⅲ. 倫理的問題 1. インフォームドコンセント TAVR ライブ手術は 手術手技の教育 が主な目的であるが あくまでも患者の治療の一環であるので 手術チームと患者との十分な信頼関係の上で診療契約がなされることが重要である そのためには ライブ手術という特殊な環境下で行われることを十分に患者に説明して インフォームドコンセント ( 同意 ) を得る必要がある さらに このインフォームドコンセントを得る際には 患者は医師からの依頼を断りにくい立場にあることを充分に考慮し 下記の点に留意することとする 1) ライブ手術の目的とその内容 問題点を説明し 充分に理解を得た上で患者自身の自由意思による判断であること 2) ライブ手術の教育効果により将来の患者治療に役立つが 本人にとっては利益が無く むしろリスクが増すこともあり得ることを患者に伝える必要がある その際には ライブ手術では術者が通常の慣れた環境とは異なり 多数の視聴者の前で実技を公開するために余分なストレスがかかり 判断もその状況に影響されることがあり 術者の通常の実力を 100% 発揮できない可能性があるという内容を含むこと 3) 手術の説明は 術者が直接 当該患者に行い 書面での同意を得ること 2. 倫理委員会実施施設の倫理委員会では この TAVR ライブ手術ガイドラインの内容を理解して それに沿ったライブ企画であることを確認した上で承認すること そして そのようにして承認したという内容を明記した議事録 ( もしくは申請内容及び倫理委員会報告書 ( 承認書 )) などを提出することが望ましい また たとえ毎年行う同じ内容のライブ企画であっても 手術内容 対象患者 社会情勢は異なるので 個々の手術が倫理的に問題ないかを検討するため 毎回倫理委員会での承認が必要である 3. 患者のプライバシー当該患者のプライバシーが決して侵されることがないように 個人情報は厳密に管理する必要があり 映像配信技術にも充分な配慮が求められる 4

94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 Ⅳ. ライブ手術の安全対策 1. 手術内容の企画前述したとおり 合併症や死亡率の高い手術は避けるべきであり 時間的に余裕を持ったスケジュールのライブ企画とすることが必須である また 術後の検討会にも術者が参加できるような時間的配慮が求められる 2. 実施施設手術の安全性の確保には 使い慣れた手術器具をはじめとした 普段通りの手術室環境が必須であり 不測の事態にも迅速に対応できるという観点からは 他の医療従事者や関連診療科との連携が緊密に保たれた術者の所属施設での実施が最も優れているため ライブ手術は術者が所属している施設 (TAVR 実施医認定機構に認定された指導施設 ) で行うこととする 3. コーディネーター ( 手術室内 ) と司会者 ( 会場 ) 術者 討論者 視聴者とのコミュニケーションを適切に保ちつつ 手術の進行を妨げないように心掛ける必要があるため 術者とは別に適切なコーディネーターを手術室内に置くこと コーディネーターの役割は重要で 討論者や視聴者から術者への質問は 状況によっては コーディネーターがその内容をまとめて適切なタイミングで行うなどの工夫をして 円滑なライブ手術となるようにする 会場の司会者は術者の集中力を損なう質問やコメントを控えさせ 進行状況を判断して質問 コメントの可否とタイミングを決定する 術者は ライブ手術では個人差はあるもののストレスが多く 術中の不適切な質問により 集中力の低下や判断ミスを起こす危険性があることを認識しておくことが重要である 4. TAVR ライブ委員のライブ評価上記基準の徹底のため TAVR ライブ時には日本経カテーテル的心臓弁治療学会 ( 以下 JTVT) より選任された TAVR ライブ委員を 1 名派遣する TAVR ライブ委員は上記基準に則り適切にライブ運営がなされているかを評価し 実施後 1-2 ヶ月以内に報告書を TAVR ライブ委員会へ提出する 5

126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 5. その他 1) 撮影方法ライブ手術の撮影は 良好な映像を求めることにこだわって手術手技の妨げになってはならない 術者が映像に配慮することはあっても 手技自体の質を落としたり 手術時間を極端に延長させたりしてはならない コーディネーターや司会者が 撮影が手術手技の妨げにならないように充分に配慮する必要がある 2) 中継の中止患者に重大な事態が生じた場合は 直ちに中継を中止し患者の救命に全力を尽さなければならない その判断は司会者あるいはコーディネーターが負う 3) 費用について費用については 高額な費用を要することから 寄付金を募集することを原則とする その場合 寄付金は特定の企業色に偏らないよう複数の企業に依頼するなど留意する Ⅴ. 届出の義務ライブ手術の届出を徹底することにより 実態を把握して 後述のように今後のライブ手術のあり方について検討できるように 届出を義務化する 届出責任者は ライブ手術実施責任者もしくは実施施設の責任者 ( 院長 ) とする 1. 実施前届出先は日本経カテーテル心臓弁治療学会医療安全管理委員会 ( 委員長宛 ) とする 当面は 上記委員会が主体 ( 窓口 ) となり 届出があれば 医療安全委員会に速やかに配信して報告する 期限はライブ手術実施予定日の 4 週間前までに提出することとする 必要書類は以下の通りとする 1 届出書 ( ライブ手術の目的 内容 術者 実施施設など企画の詳細 ) 2 プログラム 3 実施施設における倫理委員会申請書及び報告書 ( 承認書 )( 可能な限り議事録も添付 ) 4 ライブ手術用チェックリスト ( 届出責任者の署名要 ) 6

158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 なお 届出を受けた医療安全管理委員会は ライブ手術実施を許認可する立場ではなく 許認可に関する責任は各施設にある 2. 実施後届出先は実施前と同じとする 期限はライブ手術後 1~2 か月を目途とする 必要書類は以下の通りとする 1 術後報告書 2 退院サマリーなど経過がわかるものただし もしも術中に事故が生じた場合や術後経過に問題があった場合は できるだけ速やかに詳細を検討して報告すること なお 重大な合併症や死亡事故などが発生した場合は 外部組織からの評価を受ける体制での院内の医療事故調査委員会を設置し 公正性と透明性を確保しなければならない Ⅵ. ライブ手術の評価 1. 手術直後の検討会手術中にはできなかった質問やコメントについて 術者と討論者 視聴者が充分に討論できる場を手術後に設け 手術の評価を行うべきである 学会会場 ( 研究会会場 ) とライブ実施施設が離れており 術者が検討会に直接参加できない場合には インターネットによる映像を利用して参加することも考慮する 2. 術後報告書のまとめ医療安全管理委員会は 一定期間の後 提出された術後報告書をまとめて合同で分析し その後のライブ手術のあり方について検討する 終わりにライブ手術の主な目的は 手術手技の教育 であり その治療戦略や術中の予期していなかった事態に対する術者の的確な判断などは 視聴者にとって参考になると思われる しかし ライブ手術の施行に当たって最も重要なことは 患者のための医療として行われていることをしっかり認識することであり 主 7

190 191 192 193 194 195 催団体 術者 実施施設 さらには参加者 ( 視聴者 ) すべてが 教育が目的であることを認識し 患者の安全を第一に置くべきである 手術の録画ビデオにおいても 様々な工夫をすることで 手術手技の教育 が可能であることも認識しておくべきであろう TAVR ライブ手術の実施にあたっては このガイドラインを遵守され ライブ手術が安全かつ円滑に行われることを TAVR 関連学会協議会は希望する 8