開示府令改正案(役員報酬の開示拡充へ)

Similar documents
有償ストック・オプションの会計処理が確定

預金を確保しつつ 資金調達手段も確保する 収益性を示す指標として 営業利益率を採用し 営業利益率の目安となる数値を公表する 株主の皆様への還元については 持続的な成長による配当可能利益の増加により株主還元を増大することを基本とする 具体的な株主還元方針は 持続的な成長と企業価値向上を実現するための投

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

「恒久的施設」(PE)から除外する独立代理人の要件

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

XBRL導入範囲の拡大

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

いよいよ適用開始 投信制度改革 トータルリターン通知制度

このガイドラインは 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する留意事項 ( 制定 発出時点において最適と考えられる法令解釈 運用等 ) を示したものである 第一章 総則 1-1 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令 ( 平成 19 年

役員給与の見直し(10月施行分)のポイント

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

独立役員、適時開示に関する東証規則改正案

2 名以上の独立社外取締役の選任状況 2 名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は 市場第一部では 9 割を超え 91.3% に JPX 日経 400では 97.7% に 2 名以上の独立社外取締役を選任する上場会社 ( 市場第一部 ) の比率推移 ( 参考 ) 100% 88.0% 91.

コーポレート ガバナンスに関する報告書の主な開示項目 コーポレート ガバナンスに関する報告書 記載項目 ( 内訳 ) 記載上の注意 基本的な考え方 ( 記載例 : コーポレート ガバナンスについての取組みに関する基本的な方針 目的 ) Ⅰ コーポレート ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成

空売りポジションの報告義務に関する内閣府令・告示

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

議決権行使に係る事務取扱手続

営業報告書モデルの改訂について(案)

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

注記事項 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) : 無 新規 社 ( 社名 ) 除外 社 ( 社名 ) (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 無 2 1 以外の会計方針の変更 : 無 3

新たな株式報酬(譲渡制限付株式)の導入等

版 知る前契約 計画 に関する FAQ 集 2015 年 9 月 16 日 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令が改正され いわゆる 知る前契約 計画 に係るインサイダー取引規制の適用除外の範囲が拡大されています 日本取引所自主規制法人に寄せられる 知る前契約 計画 に関する主な

<4D F736F F D2092E88ABC88EA959495CF8D5882C98AD682B782E982A8926D82E782B E646F6378>

<4D F736F F D20335F395F31392E31312E323895BD8BCF925089BF82C982E682E98EE688F88EC08E7B82CC82BD82DF82CC8BC696B191CC90A CC90AE94F

2019 年 6 月 26 日 各 位 会社名 代表者名 問合せ先 株式会社スターフライヤー代表取締役社長執行役員松石禎己 ( コード番号 :9206 東証第二部 ) 取締役常務執行役員柴田隆 (TEL ) コーポレートガバナンス方針 の改定について 当社は 2019 年 6

アナリスト レポートの取扱い等に関する規則 ( 平 ) ( 目的 ) 第 1 条この規則は アナリスト レポートの取扱い等に関し 協会員 ( 特別会員にあっては 金融商品取引法 ( 以下 金商法 という ) 第 33 条第 2 項第 3 号ハ又は同項第 4 号ロに掲げる行為 ( 以下

注記事項 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) : 無 新規 社 ( 社名 ) 除外 社 ( 社名 ) (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 有 2 1 以外の会計方針の変更 : 無 3

平成30年公認会計士試験

第 3 章内部統制報告制度 第 3 節 全社的な決算 財務報告プロセスの評価について 1 総論 ⑴ 決算 財務報告プロセスとは決算 財務報告プロセスは 実務上の取扱いにおいて 以下のように定義づけされています 決算 財務報告プロセスは 主として経理部門が担当する月次の合計残高試算表の作成 個別財務諸

リスク分担型企業年金の導入事例

Microsoft Word _臨時報告書_最終_.doc

第 3 章 保険募集管理態勢の整備と内部監査 法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト とは別に 保険募集管理態勢の確認検査用チェックリスト により検証する構成がとられています これは 保険募集に関する法令等遵守の重要性が高く また 着目すべきポイントが多岐に渡っていることを反映したものとも考えられ

8. 内部監査部門を設置し 当社グループのコンプライアンスの状況 業務の適正性に関する内部監査を実施する 内部監査部門はその結果を 適宜 監査等委員会及び代表取締役社長に報告するものとする 9. 当社グループの財務報告の適正性の確保に向けた内部統制体制を整備 構築する 10. 取締役及び執行役員は

内部統制ガイドラインについて 資料

フェア・ディスクロージャー・ルール細則案の概略

PYT & Associates Attorney at law

企業アンケート ( 東証一部 二部の 941 社が回答 ) の結果等のポイント 指名委員会を設置済み 又は設置を検討中 検討予定の企業 : 55% 報酬委員会 : 5 3 ページ参照 社長 CEOの選定 解職の決定に関して監督を行なうことについて 社外取締役が役割を果たしている と回答 した企業 委

<4D F736F F D208F4390B3819B E30352E A C A838A815B E88ABC82CC88EA959495CF8D5829>

平成27年5月20日

表紙 EDINET 提出書類 株式会社アーク (E0244 臨時報告書 提出書類 提出先 提出日 会社名 英訳名 臨時報告書近畿財務局平成 30 年 1 月 18 日株式会社アーク ARRKCORPORATION 代表者の役職氏名 代表取締役社長金太浩 本店の所在の場所 大阪市中央区南本町二丁目 2

<4D F736F F D208B7A8EFB95AA8A8482C982A982A982E98E96914F8A4A8EA68F9196CA2D312D322E646F6378>

マツダ株式会社

コーポレートガバナンス ガイドライン 2015 年 10 月 27 日制定 2018 年 12 月 13 日改定 大王製紙株式会社 1

あえて年収を抑える559万人

東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び委員会の設置状況 2017 年 7 月 26 日株式会社東京証券取引所

<4D F736F F D2089EF8ED096408CA48B8689EF8E9197BF E7189BB A2E646F63>

(3) 分割の日程 ( 予定 ) 1 基準日設定公告 2013 年 9 月 13 日 ( 金 ) 2 基準日 2013 年 9 月 30 日 ( 月 ) 3 効力発生日 2013 年 10 月 1 日 ( 火 ) (4) 新株予約権の目的である株式の数の調整今回の株式の分割に伴い 当社発行の第 1

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を

また 代表取締役社長直属の内部監査部門を設置し 法令遵守 内部統制の有効性と効率性 財務内容の適正開示 リスクマネジメントの検証等について 各部門 工場 グループ会社などの監査を定期的に実施し チェック 指導するとともに 監査役との情報共有等の連携を図っております 1-4( 中長期的な経営戦略等 )

順調な拡大続くミャンマー携帯電話市場

2 政策保有株式に係る議決権行使の基準政策保有株式の議決権行使に当たっては 投資先企業の中長期的な企業価値向上が株主利益への向上にも繋がるものであることを前提とし 株主への還元方針 コーポレートガバナンスや企業の社会的責任への取組み等総合的観点から議決権を行使する (4) 買収防衛策は 経営陣 取締

四半期会計基準(案)の概要

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

平成 26 年 5 月 13 日 各 位 会社名カルビー株式会社代表者名代表取締役社長兼 COO 伊藤秀二 ( コード番号 :2229 東証第一部 ) 問合せ先上級執行役員財務経理本部長菊地耕一 (TEL: ) 業績連動型株式報酬制度の導入に関するお知らせ 当社は 平成 26

【PDF】コーポレートガバナンス・ガイドライン

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

所内研修議事録

業績連動型株式報酬制度の導入に関するお知らせ

平成8年月日

2020年の個人情報保護法改正の見通し

行役員の任期は 現行規約第 17 条第 2 項の定めにより 平成 28 年 11 月 1 日より 2 年間となります ( 執行役員 1 名選任の詳細については 添付資料 第 2 回投資主総会招集ご通知 をご参照ください ) 3. 補欠執行役員 1 名選任について執行役員が欠けた場合又は法令に定める員

< 目的 > 専ら被保険者の利益 にはそぐわない目的で運用が行われるとの懸念を払拭し 運用に対する国民の信頼を高める 運用の多様化 高度化が進む中で 適切にリスクを管理しつつ 機動的な対応を可能に GPIF ガバナンス強化のイメージ ( 案 ) < 方向性 > 1 独任制から合議制への転換基本ポート

役 員 等 報 酬 規 程

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか


LTIの日米欧比較

平成13年11月8日

Stewardship2017

平成 年 月 日

内部昇進の女性役員が多い業種はどこか

剰余金の配当に関するお知らせ

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

1.XBRL の対象範囲の拡大について 1 対象項目と対象書類の拡大 2 提出者へのツールの提供 ( 参考 ) XBRL に係る諸外国の動向 2. 検索機能の向上等について 1 条件付検索機能 企業間 経年比較機能の追加 2 XBRLデータをCSVデータに変換するツールの提供 ( 参考 ) 利用者へ

コーポレートガバナンス・ガイドライン

株式保有会社の相続税評価の緩和

日本基準基礎講座 資本会計

(資料4)運用機関とのコミュニケーションの取り方や情報開示の方法等(案).pdf

定款

定いたします なお 配当の回数は原則として中間配当と期末配当の年 2 回といたします 3 自己株式 当社は 経営環境の変化に機動的に対応し 株主価値の向上に資する財務政策等の経営の諸施策を実行することを可能とするため 市場環境や資本効率等を勘案しながら適宜自己株式を取得いたします (3) 政策保有株

Microsoft Word - 公開草案「中小企業の会計に関する指針」新旧対照表

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

JIPs_038_nyuko_6

有価証券報告書

1 制定の目的 方針 当社におけるコーポレートガバナンスを向上させるための枠組みである パーク 24 コーポレートガバナンスガイドライン を制定し コーポレートガバナンスの強化 充実に努めることで 当社の中長期的な価値向上と持続的成長を実現する コーポレートガバナンスに対する基本的な考え方公正で透明

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

日本郵政グループ ディスクロージャー誌 2009 取扱時間・お問い合わせ・日本郵政グループ・プライバシーポリシー・開示項目一覧

平成22 年 11月 15日

各位 2018 年 2 月 27 日 会社名 株式会社資生堂 代表者名 代表取締役執行役員社長兼 CEO 魚谷雅彦 ( コード番号 4911 東証第 1 部 ) 問合せ先 IR 部長 北川晴元 (TEL ) ストックオプション ( 新株予約権 ) に関するお知らせ ~2017

第 分科会 / 分科会 B 改正会社法等への対応状況と今後の課題 ディスカッションポイント ( 例 ) 参考資料 関西支部監査役スタッフ研究会報告書 改正会社法及びコーポレートガバナンス コードへの対応状況と監査役 監査役スタッフの役割と今後の課題. 監査役会の運営 改正会社法等により監査役会の開催

移行認定の申請書類目次

(6) 経営会議規程 (7) 取締役会議長 CEO COO および CFO 職務分掌規程 ( その他取締役または執行役の職務または権限を定める規程 ) (8) 取締役 執行役等の定年 任期 処遇等の基準 準則等について当会社としての内規を定める場合は 当該内規 (9) 取締役 執行役等のトレーニング

<4D F736F F D D8AE9817A836A B A838A815B83588EE692F796F08CFC82AF8A948EAE95F18F5690A CC93B193FC82C98AD682B782E982A8926D82E782B932382E352E31332E646F6378>

2. 本制度の仕組み 株式市場 残余財産の給付残余株式の無償譲渡 消却94 当社株式 4 代金の支払 1 本株主総会決議 54配代当金の支6 委託者 議決権不行使の指図8当社 受託者( 共同受託 ) ( 予定 ) 三菱 UFJ 信託銀行 日本マスタートラスト信託銀行 BIP 信託 当社株式 金銭 4

なお 検証に当たっては 特に以下の点に留意する イ.~ニ.( 略 ) 改正後 なお 検証に当たっては 特に以下の点に留意する イ.~ニ.( 略 ) ( 新設 ) ホ. 経営に実質的に関与していない第三者と根保証契約を締結する場合には 契約締結後 保証人の要請があれば 定期的又は必要に応じて随時 被保

IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

PowerPoint プレゼンテーション

6 当社は 反社会的勢力に対しては一切の関係をもたず 不当要求を受けた場合等の 事案発生時には 総務部を対応統括部署として警察および顧問弁護士等と連携し毅然とした態度で対応する (2) 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制 1 当社は 取締役の職務の執行に関する情報 ( 株主総会議

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

Transcription:

証券 金融取引の法制度 2018 年 11 月 26 日全 8 頁 開示府令改正案 ( 役員報酬の開示拡充へ ) 報酬額等の決定方針 業績連動報酬などについて開示が拡充される 金融調査部研究員藤野大輝 [ 要約 ] 金融庁は 2018 年 11 月 2 日 企業内容等の開示に関する内閣府令 の改正案を公表した 改正案では 報酬額等の決定方針 業績連動報酬 役員の報酬等に関する株主総会の決議 報酬委員会等の活動内容などに関するが拡充されている なお 役員ごとの個別開示については 大きな変更はない 改正案のうち 役員の報酬等の開示については 2019 年 3 月 31 日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用が予定される ( 経過措置はない ) 1. 企業内容等の開示に関する内閣府令 の改正案 金融審議会 ディスクロージャーワーキング グループ報告 ( 平成 30 年 6 月 28 日 以下 WG 報告 ) を受けて 金融庁は 2018 年 11 月 2 日 企業内容等の開示に関する内閣府令 ( 以下 開示府令 ) の改正案を公表した( 意見募集は 2018 年 12 月 3 日まで ) WG 報告では 財務情報及び記述情報の充実 建設的な対話の促進に向けた情報の提供 情報の信頼性 適時性の確保に向けた取組 のための適切な制度設計を行うべきとされており 本改正案はこれに対応したものと考えられる 特に 建設的な対話の促進に向けた情報の提供 では 政策保有株式の開示対象の拡大等 1 と 役員報酬等の開示拡充 ( 業績連動報酬に関する記載等 ) についての関心が高まっている 役員報酬については 不適切な開示に関する問題が大きな話題となる等 注目されている 役員報酬の適切な開示が 今後より強く求められる潮流にあると考えられる 今回は改正案の中でも 役員報酬の部分について解説する 1 詳しくは 藤野大輝 開示府令改正案 ( 政策保有株式について ) (2018 年 11 月 14 日 大和総研レポート ) 参照 https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20181114_020443.html 株式会社大和総研丸の内オフィス 100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

2 / 8 2. 役員報酬等に係る改正 図表 1 役員報酬等に係る開示府令の改正 ( 簡易版 ) 開示義務の対象者 ( 役員区分ごと ) 役員区分 項目 改正案 1 報酬等の総額 2 報酬等の種類別 ( 例えば 固定報酬 業績連動報酬および退職慰労金等の区分 以下同様 ) の総額 3 対象となる役員の員数 提出会社の役員 ( 取締役 監査役 執行役 ) ( 最近事業年度の末日までに退任した者を含む ) 1 取締役 ( 監査等委員 社外取締役を除く ) 2 監査等委員 ( 社外取締役を除く ) 3 監査役 ( 社外監査役を除く ) 4 執行役 5 社外役員 ( 社外取締役 社外監査役等 ) 改正前 1 報酬等の総額 2 報酬等の種類別 ( 例えば 基本報酬 ストックオプション 賞与および退職慰労金等の区分 以下同様 ) の総額 3 対象となる役員の員数 ( 報酬額等の決定方針 ) ( 業績連動報酬 ) ( 使用人兼務役員 ) 提出日現在において 提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針について 1 提出日現在における方針の内容 決定方法方針を定めていない場合はその旨 2 役職ごとの方針を定めている場合はその内容 3 方針の決定権限を有する者の氏名または名称 その権限の内容 裁量の範囲 4 方針の決定に関与する委員会 ( 以下 委員会等 ) が存在する場合は その手続の概要 提出会社の役員の報酬等に 業績連動報酬が含まれる場合は 1 業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支払割合の決定方針を定めているときは その方針の内容 2 当該業績連動報酬に係る指標 3 当該指標を選択した理由 4 当該業績連動報酬の額の決定方法 5 最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標 実績 1 使用人兼務役員の使用人給与のうち重要なものがある場合は (a) 総額 (b) 対象となる役員の員数 提出日現在において 提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針について提出日現在における方針の内容 決定方法方針を定めていない場合はその旨 - ( その他 ) 1 提出会社の役員の報酬等に関する株主総会の決議が (a) ある場合は 当該決議年月日 (b) ない場合は 提出会社の役員の報酬等について定款に定めている事項の内容 2 最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における提出会社の取締役会 委員会等の活動内容 - 役員ごとの個別開示 以下の項目を役員ごとに 提出会社と主要な連結子会社に区分して記載 ( 連結報酬等の総額が 1 億円以上である者に限ることができる ) 1 氏名 2 役員区分 3 提出会社の役員としての報酬等の (a) 総額 (b) 連結報酬等の種類別の額 ( 注 1) 赤字の部分が改正された部分である ( 以下の図表 4~6 図表 8 について同様 ) ( 注 2) ここでいう 社外役員 は 厳密には会社法施行規則第 2 条第 3 項第 5 号に規定する者を指す (1) 開示義務の対象者 図表 2 開示義務の対象者 開示義務の対象者 改正案改正前提出会社の役員 ( 取締役 監査役 執行役 ) ( 最近事業年度の末日までに退任した者を含む ) 開示府令では 有価証券報告書の提出会社 ( 以下 提出会社 ) の役員の報酬等について 有価証券報告書等で各種の開示が求められているが 開示の対象となる役員の範囲は 取締役

3 / 8 監査役 執行役となっている ( ただし 最近事業年度の末日までに退任した者を含む ) 開示対象者については 改正案では変更はない (2) ( 役員区分ごと ) 図表 3 ( 役員区分ごと ) における役員区分 改正案改正前 1 取締役 ( 監査等委員 社外取締役を除く ) 2 監査等委員 ( 社外取締役を除く ) 役員区分 3 監査役 ( 社外監査役を除く ) 4 執行役 5 社外役員 ( 社外取締役 社外監査役等 ) ( 注 ) ここでいう 社外役員 は 会社法施行規則第 2 条第 3 項第 5 号に規定する者を指す 図表 4 ( 役員区分ごと ) ( 役員区分ごと ) 改正案 1 報酬等の総額 2 報酬等の種類別 ( 例えば 固定報酬 業績連動報酬および退職慰労金等の区分 ) の総額 3 対象となる役員の員数 改正前 1 報酬等の総額 2 報酬等の種類別 ( 例えば 基本報酬 ストックオプション 賞与および退職慰労金等の区分 ) の総額 3 対象となる役員の員数 提出会社は 図表 3 の1~5の役員区分ごとに それぞれ図表 4 の1~3の各項目を開示しなければならない なお 報酬等 とは 報酬 賞与 その他その職務執行の対価としてその会社から受け取る財産上の利益のうち 最近事業年度に係るもの 最近事業年度において受けたもの 受ける見込みの額が明らかになったものを指す ( ただし 最近事業年度前のいずれかの事業年度の有価証券報告書に記載したものを除く ) つまり 開示対象となる 報酬等 は 必ずしも金銭に限らないという点には 注意が必要である 改正案では のうち 報酬等の 種類別 の例が変更されている これは 現行制度で例として挙げられている 基本報酬 の定義があいまいであったこと 業績連動報酬 に関する開示の拡大に合わせているといったことが背景にあると考えられる なお この 種類別 の考え方は 2.(7) 役員ごとの個別開示 の 連結報酬等の種類別の額 においても同様である

4 / 8 (3) ( 報酬額等の決定方針 ) 提出会社は 役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針 ( 以下 決定方針 ) について 図表 5 の開示を行わなければならない 図表 5 ( 報酬額等の決定方針 ) ( 報酬額等の決定方針 ) 改正案提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針について 1 提出日現在における方針の内容 決定方法方針を定めていない場合はその旨 2 役職ごとの方針を定めている場合は その内容 3 方針の決定権限を有する者の氏名または名称 その権限の内容 裁量の範囲 4 方針の決定に関与する委員会が存在する場合はその手続の概要 改正前提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針について提出日現在における方針の内容 決定方法方針を定めていない場合はその旨 現行制度では 提出日の現在における決定方針の内容と決定方法 ( 決定方針を定めていない場合はその旨 ) がであった 改正案ではこれに加えて まず 役職ごとの決定方針の開示が求められている これは WG 報告で 役職ごとの支給額についての考え方の内容など 報酬の決定 支給の方法や考え方を具体的かつ分かりやすく記載することを求めるべきとされたためと考えられる また改正案では 決定方針の決定権限を有する者に関する情報 決定方針の決定に関与する委員会 ( 以下 委員会等 ) における手続の概要の開示も新たに求められている これは 報酬決定プロセスの客観性 透明性のチェックを可能とするため 算定方法の決定権者 その権限や裁量の範囲 報酬委員会がある場合にはその位置付け 構成メンバー等の情報とともに その実効性を確認できるよう 取締役会 報酬委員会の具体的活動内容などについても開示を求めるべき という WG 報告の内容に対応している なお 業績連動報酬に関する決定方針については (4) で解説する (4) ( 業績連動報酬 ) 図表 6 ( 業績連動報酬 ) ( 業績連動報酬 ) 改正案提出会社の役員の報酬等に 業績連動報酬が含まれる場合は 1 業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支払割合の決定方針を定めているときは その方針の内容 2 当該業績連動報酬に係る指標 3 当該指標を選択した理由 4 当該業績連動報酬の額の決定方法 5 最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標 実績 改正前 -

5 / 8 改正案では 新たに業績連動報酬について 図表 6 の開示が求められている ここでいう 業績連動報酬 とは 利益の状況を示す指標や株式の市場価格の状況を示す指標等 提出会社または関連会社の業績を示す指標を基礎として算定される報酬等を指す 金融審議会 ディスクロージャーワーキング グループ ( 平成 29 年度 ) ( 以下 ワーキング グループ ) では 固定報酬と業績連動報酬の構成割合や 業績連動報酬の額の決定要因等 報酬プログラムの基本的内容が分かりづらい ( 第 7 回資料 2 論点整理 (2018 年 6 月 8 日 )) という指摘があった これを受け WG 報告では 経営陣の報酬内容 報酬体系と経営戦略や中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるよう 役員の報酬プログラムの開示において 固定報酬 短期の業績連動報酬 ( 賞与 ) 中長期の業績連動報酬( ストックオプション等 ) それぞれの算定方法や固定報酬と短期 中長期の業績連動報酬の支給割合 ( 中略 ) など 報酬の決定 支給の方法やこれらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載することを求めるべきである とされた また WG 報告では 役員報酬の算定方法に KPI 等の指標が関連付けられている場合には その指標と指標の選定理由 業績連動報酬への反映方法 ( 中略 ) についても記載されるべきである ともされている 加えて 報酬プログラムに基づく報酬実績について 経営陣のインセンティブとして実際に機能しているかを確認できるよう 当期の KPI の目標値と実際の達成度等も開示されるべきとしている これらの提言を踏まえ 改正案では図表 6 のような 業績連動報酬に関する開示の拡充が図られたものと考えられる (5) ( 使用人兼務役員 ) 図表 7 ( 使用人兼務役員 ) 改正案改正前使用人兼務役員の使用人給与のうち重要なものがある場合は (a) 総額 ( 使用人兼務役員 ) (b) 対象となる役員の員数 提出会社は 役員の報酬等に加え 使用人兼務役員の使用人給与のうち 重要なものがある場合は その総額と 対象となる役員の員数を開示しなければならない この点に関しては 改正案では変更はない

6 / 8 (6) ( その他 ) 図表 8 ( その他 ) 改正案 1 提出会社の役員の報酬等に関する株主総会の決議が (a) ある場合は 当該決議年月日 (b) ない場合は 提出会社の役員の報酬等について定款に定 ( その他 ) めている事項の内容 2 最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における提出会社の取締役会 委員会等の活動内容 改正前 - 改正案では新たに 役員の報酬等に関する株主総会の決議の年月日 ( 決議がない場合は定款に定めている報酬等についての事項の内容 ) の開示が求められている これは 過去に一度定められた役員報酬の上限等が長期間そのままとなっているケースが見受けられたこと等から WG 報告で 報酬総額等を決議した株主総会の年月日等についても記載されるべき とされたことを受けている また 改正案では 最近事業年度の役員の報酬等の額の決定過程における 取締役会 委員会等の活動内容の開示も求められている これは 報酬決定プロセスの客観性 透明性のチェックの実効性を確認できるよう WG 報告で 取締役会 報酬委員会の具体的活動内容などについても開示を求めるべき とされたことを反映している (7) 役員ごとの個別開示 図表 9 役員ごとの個別開示 役員ごとの個別開示 改正案改正前以下の項目を役員ごとに提出会社と主要な連結子会社に区分して記載 ( 連結報酬等の総額が1 億円以上である者に限ることができる ) 1 氏名 2 役員区分 3 提出会社の役員としての報酬等の (a) 総額 (b) 連結報酬等の種類別の額 ( 注 ) 種類別 の定義については 図表 4 における改正にあわせて変更されている (2)~(6) のに加え 提出会社は役員ごとに氏名 役員区分 報酬等の総額 連結報酬等の種類別の額を開示しなければならない ただし この個別開示は 連結報酬等の総額が 1 億円以上の者に限ることができる なお ここでいう 連結報酬等 とは 提出会社の役員としての報酬等に 主要な連結子会

7 / 8 社役員としての報酬等を含んだものを指す つまり 2.(2) ( 役員区分ごと ) の 報酬等の総額 とは必ずしも合致しないという点には注意が必要である WG 報告では 個別開示について 現行制度は 企業価値の向上に貢献した経営陣に対して それに見合った報酬を提供していくべきとのコーポレートガバナンス上の要請に合ったものとなっていない可能性があり 再考の余地がある としていた 現行制度の見直しに当たっては 報酬水準を基準に区切るのではなく CEO や代表取締役などの一定の役割を果たす者や 報酬額上位から一定数の者について開示を求めることが 報酬の適切性を検証する上で必要との意見があった (WG 報告 ) とされている 一方で 我が国企業の役員報酬の水準が諸外国と比較して低いことや 報酬の内容や決定方針等に関する開示が充実すれば報酬の適切性を検証することが可能となりうることから 個別開示の対象を拡大することは必ずしも重要ではないという意見もあった (WG 報告 ) とされている WG 報告では以上の意見を受け まずは 役員報酬プログラムの内容の開示の充実を図り その上で 報酬内容と経営戦略等との整合性の検証の進展や 我が国における役員報酬額の水準の変化等を踏まえながら 必要に応じて個別開示のあり方について検討すべきである とした 改正案では 役員ごとの個別開示については 変更がない ( 前述 2.(2) の 種類別 の定義の改正を除く ) ただし WG 報告に鑑みても 今後も検討が進められていくと考えられ 注目の必要があろう 3. 施行日 開示府令改正案のうち 本稿で解説した役員報酬に関する部分については 2019 年 3 月 31 日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用が予定されている 経過措置は設けられていないため 政策株式保有に関する部分同様 仮に予定通り改正案が適用される場合 3 月決算会社は今年度に係る有価証券報告書等から対応が求められる そうした会社は特に 最終的な府令の改正に向けた今後の動向等を見守る必要があるだろう 4. 改正案における留意点 今回の改正案は ワーキング グループで 企業の情報開示について 投資判断に必要な情報を十分 正確 適時に提供するという観点で非財務情報の拡充に焦点を当てた検討を行った結果の一つであると言える 役員報酬の開示については 改正案では 報酬額等の決定方針 業績連動報酬 役員の報酬等に関する株主総会の決議 報酬委員会等の活動内容などの開示が拡充されている この拡充により 役員報酬に関する提出会社のポリシーやフィロソフィーに関する説明義務の強化が図

8 / 8 られており 投資判断に必要な情報の提供という観点では 一定の貢献があると考えられる 提出会社としては 特に業績連動報酬が役員報酬に含まれている場合は 業績連動報酬の割合の決定方針 業績連動報酬に係る指標とその目標 実績 その指標を選んだ理由 業績連動報酬の額という 詳細な開示が新たに求められることになるため 留意が必要であろう また 役員報酬の決定等に係る背景や考え方を筋道立てて説明をすることが求められるようになるため 提出会社は今一度 自社の役員報酬についての確認が必要となるかもしれない ただし 役員ごとの個別開示については 1 億円以上の者に限ることができるという点は変更がされていない 役員報酬がその役員の貢献に見合ったものかどうかを正確に判断する上でも 今後も検討が続けられることと考えられ 引き続き注目をしていくべきである