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背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

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Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

イネは日の長さを測るための正確な体内時計を持っていた! - イネの精密な開花制御につながる成果 -

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PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

生物時計の安定性の秘密を解明

< 用語解説 > 注 1 ゲノムの安定性ゲノムの持つ情報に変化が起こらない安定な状態 つまり ゲノムを担う DNA が切れて一部が失われたり 組み換わり場所が変化たり コピー数が変動したり 変異が入ったりしない状態 注 2 リボソーム RNA 遺伝子 タンパク質の製造工場であるリボソームの構成成分の

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

論文の内容の要旨

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別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

報道関係者各位 平成 26 年 5 月 29 日 国立大学法人筑波大学 サッカーワールドカップブラジル大会公式球 ブラズーカ の秘密を科学的に解明 ~ ボールのパネル構成が空力特性や飛翔軌道を左右する ~ 研究成果のポイント 1. 現代サッカーボールのパネルの枚数 形状 向きと空力特性や飛翔軌道との

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

記者発表開催について

クワガタムシの大顎を形作る遺伝子を特定 名古屋大学大学院生命農学研究科 ( 研究科長 : 川北一人 ) の後藤寛貴 ( ごとうひろき ) 特任助教 ( 名古屋大学高等研究院兼任 ) らの研究グループは 北海道大学 ワシントン州立大学 モンタナ大学との共同研究で クワガタムシの発達した大顎の形態形成に

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

ます この零エネルギーの輻射が量子もつれを共有できることから ブラックホールが極めて高温な防火壁で覆われているという仮説が論理的必然でないことを明らかにしました 本研究の成果は 米国物理学会誌 Physical Review Letters に 2018 年 5 月 4 日 ( 米国東部時間 ) オ

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

博士学位論文審査報告書

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60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 1 月 18 日 独立行政法人理化学研究所 植物の形を自由に小さくする新しい酵素を発見 - 植物生長ホルモンの作用を止め ミニ植物を作る - 種無しブドウ と聞いて植物成長ホルモンの ジベレリン を思い浮かべるあなたは知識人といって良いでしょう このジベ

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

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4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

植物が花粉管の誘引を停止するメカニズムを発見

物学的現象をはっきりと掌握することに成功した論文である との高い評価を得ています 2. 研究成果ブフネラゲノムの全塩基配列の決定に当たっては 全ゲノムショットガンシークエンス法 4 を用いました 今回ゲノム解析に成功したのは エンドウヒゲナガアブラムシ (Acyrthosiphon pisum) の

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報道関係各位 日本人の肺腺がん約 300 例の全エクソン解析から 間質性肺炎を合併した肺腺がんに特徴的な遺伝子変異を発見 新たな発がんメカニズムの解明やバイオマーカーとしての応用に期待 2018 年 8 月 21 日国立研究開発法人国立がん研究センター国立大学法人東京医科歯科大学学校法人関西医科大学

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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生物は繁殖において 近い種類の他種にまちがって悪影響を与えることがあり これは繁殖干渉と呼ばれています 西田准教授らのグループは今まで野外調査などで タンポポをはじめとする日本の在来植物が外来種から繁殖干渉を受けていることを研究してきましたが 今回 タンポポでその直接のメカニズムを明らかにすることに

ミトコンドリアに関わる遺伝子が神経変異を起こす機序を解明~新たなパーキンソン病原因遺伝子の理解と治療的試み~

PRESS RELEASE (2017/7/28) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

世界初! 細胞内の線維を切るハサミの機構を解明 この度 名古屋大学大学院理学研究科の成田哲博准教授らの研究グループは 大阪大学 東海学院大学 豊田理化学研究所との共同研究で 細胞内で最もメジャーな線維であるアクチン線維を切断 分解する機構をクライオ電子顕微鏡法注 1) による構造解析によって解明する

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平成14年度研究報告

( 図 ) 顕微受精の様子

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

図 : と の花粉管の先端 の花粉管は伸長途中で破裂してしまう 研究の背景 被子植物は花粉を介した有性生殖を行います めしべの柱頭に受粉した花粉は 柱頭から水や養分を吸収し 花粉管という細長い管状の構造を発芽 伸長させます 花粉管は花柱を通過し 伝達組織内を伸長し 胚珠からの誘導を受けて胚珠へ到達し

平成 26 年 8 月 21 日 チンパンジーもヒトも瞳の変化に敏感 -ヒトとチンパンジーに共通の情動認知過程を非侵襲の視線追従装置で解明- 概要マリスカ クレット (Mariska Kret) アムステルダム大学心理学部研究員( 元日本学術振興会外国人特別研究員 ) 友永雅己( ともながまさき )

2017 年 2 月 6 日 アルビノ個体を用いて菌に寄生して生きるランではたらく遺伝子を明らかに ~ 光合成をやめた菌従属栄養植物の成り立ちを解明するための重要な手がかり ~ 研究の概要 神戸大学大学院理学研究科の末次健司特命講師 鳥取大学農学部の上中弘典准教授 三浦千裕研究員 千葉大学教育学部の

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

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Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

配信先 : 東北大学 宮城県政記者会 東北電力記者クラブ科学技術振興機構 文部科学記者会 科学記者会配付日時 : 平成 30 年 5 月 25 日午後 2 時 ( 日本時間 ) 解禁日時 : 平成 30 年 5 月 29 日午前 0 時 ( 日本時間 ) 報道機関各位 平成 30 年 5 月 25

研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

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平成23年度 第4回清掃審議会議事録

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

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平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

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平成 29 年 2 月 3 日 報道機関各位 東北大学大学院生命科学研究科東京大学大学院理学系研究科情報 システム研究機構国立遺伝学研究所 鳥類の進化に関わった 配列群を同定 鳥エンハンサーの発見 発表のポイント 鳥だけに共通する 配列を多数発見した その多くは タンパク質を作る配列 ( 遺伝子 ) ではなく それらの使い方を決める 制御配列 であることを突き止めた 新たに見つかった制御配列のはたらきにより 鳥の飛翔能力に重要な風切羽の形成場所において鳥のみで使われている遺伝子があることを発見した 鳥の祖先から鳥への進化にあたって新しい遺伝子の獲得はほとんどなく 既存の遺伝子の使い方 を変えたことが重要であった 研究概要 鳥が恐竜の一部から進化したことは確実視されていますが 羽毛やクチバシなどの鳥らしい特徴をもつようになった仕組みはほとんどわかっていませんでした 東北大学大学院生命科学研究科の田村宏治教授のグループは 東京大学の入江直樹准教授 情報 システム研究機構国立遺伝学研究所の関亮平研究員 城石俊彦教授 ならびに中国 BGI コペンハーゲン大学らの国際共同チームにおいて 48 種の鳥の全ゲノム を他の動物のゲノムと比較することにより 鳥らしさをもたらしている 配列を探しました 解析の結果 鳥へと進化する過程において 新しいタンパク質を作る配列 ( または遺伝子 ) の獲得はほとんどなく 鳥への進化には むしろ遺伝子の使い方を変えたことが決定的な役割を果たしたことが明らかになりました 遺伝子の使い方を決める 配列のことを一般的に 制御配列 と呼び 遺伝子のスイッチをオンにしたりオフにしたりします 研究チームが見つけたのは スイッチをオンにする鳥特有の制御配列 すなわち鳥エンハンサー (*) と言えます 例えば 今回見つけた鳥エンハンサーの 1 つは ある遺伝子 (Sim1 遺伝子 ) を 風切羽の作られる翼 ( 前肢 ) ではたらくようにしていることが明らかになりました さらなる解析の結果 Sim1 遺伝子が翼の風切羽だけでなく尾羽が形成される領域でもはたらいていることもわかりました Sim1 鳥エンハンサーはまだ恐竜がいた頃の時代に獲得されていた可能性が高く 風切羽と尾羽が同時に恐竜で進化していたというこれまでの知見と合わせて考えると このような鳥エンハンサーを使って恐竜も風切羽や尾羽を進化させていた可能性があります このように 鳥の進化過程において新しい遺伝子の獲得はほとんどなく 既にもっていた遺伝子の使い方を変えることで 鳥らしい特徴を進化させてきたことがわかりました 鳥の進化に決定的に重要だったのは 新しい遺伝子ではなく 既にもっていた遺伝子の新しい使い方だったのです 本研究成果は Springer Nature (UK) 発行の online 科学誌 ネイチャー コミュニケーションズ (Nature Communications) において 2 月 6 日午後 7 時 ( 日本時間 ) に発表されます

(*) エンハンサー 遺伝子の使い方を決めるゲノム のひとつ この配列があることで 遺伝 子がいつどこでどれくらいのタンパク質を作り出すかが決められる 背景 恐竜の生き残りである鳥類は 体を覆う羽毛や飛ぶために必要な風切羽をはじめクチバシや折りたためる翼状の前肢など 独特な特徴をたくさんもっています ( 図 1) 鳥類しかもたないこのような特徴を生み出す仕組みは 生命の設計図とされるゲノム のどこかに刻まれているはずですが 十分な数の鳥のゲノムが不明であったことなどから それらを見つけ出すのはとても困難でした 爬虫類の一群から鳥類が進化する過程で どのようなゲノム の変化があったのかは大きな謎として残っていたのです 研究成果 今回 東北大学 東京大学 情報 システム研究機構国立遺伝学研究所ならびに中国 BGI コペンハーゲン大学らの国際プロジェクトチームは ニワトリやツバメ ペンギンなどを含む 48 種もの現存鳥類の全ゲノム配列をマウスなど他の 9 種の動物のゲノムと比較することによって 鳥が進化する過程で起こった の変化とその性質を突き止めました ( 図 2) 鳥だけがもつゲノム 配列を多数同定し その性質を調べたところ 99% 以上がタンパク質を作り出さない配列であり ( つまり遺伝子ではなく ) その多くが遺伝子の機能を制御する特徴を備えたエンハンサーなどの 配列 ( 制御配列 ) であることがわかりました ( 図 2) これは 鳥類の進化には 鳥が進化する前からもっていた遺伝子群の使い方 ( いつどこでどれくらいタンパク質を作り出すか ) を変えることが重要だったことを意味しています ( 図 3) 実際 同定された鳥特有の制御配列の 1 つが 飛翔に必須である 風切羽 が作られる翼の領域において ある遺伝子 (Sim1 遺伝子 ) を活性化させる機能をもつ ( エンハンサー配列である ) ことを示しました ( 図 4) さらなる解析により この Sim1 遺伝子の鳥エンハンサーはまだ恐竜が生きていた時代に獲得された可能性が高いこと ( 図 5) そして Sim1 遺伝子が翼の風切羽だけでなく尾羽が形成される領域でもはたらいていることもわかりました その時代の恐竜が翼の風切羽と尻尾の尾羽を同時に進化させていたという化石からの知見 ( 図 5) と合わせて考えると 一部の恐竜も 現存する鳥類に受け継がれた 鳥エンハンサー を使って風切羽と尾羽を進化させていたのかもしれません 今後の展開 今後さらに解析を進めていくことで 鳥において実際に使い方が変わっている遺伝子を Sim1 以外にも多数特定できるでしょう このことは 鳥らしい特徴 が作られたメカニズムを解明する重要な糸口となります また今回の研究では 鳥類とそれ以外の動物を比較しましたが ひと口に鳥類といっても様々なサイズ 色 形の鳥がいます 今回のゲノム比較を応用することで 鳥の多様性を生み出した進化のシナリオにも迫ることができるはずです また 明らかにできるのは鳥類に留まりません 現存する恐竜がいない以上 その直接の子孫である鳥類から得られる情報は 化石と並んで最良のもののひとつです 今回の発見を皮切りに 恐竜の進化だけでなくその形態が作られる過程の理解に向けて 鳥を使った恐竜研究 がより盛んになっていくことが期待されます

図1 鳥類に特有の形態 鳥類最大の特徴といえる飛翔能力に関与するもののひとつが 翼に存在する風切羽である 99.69 % 0.31 % 図2 鳥類が進化する際に 新たな遺伝子の獲得はほとんどなかった 鳥類48種のゲノムと鳥類以外の動物9種のゲノムを比較することで 鳥だけがもっている 配列 を特定したところ そのほぼ全て 99.69% がタンパク質を作らないものであった 図3 鳥類は 進化の過程で新しい制御配列を獲得し 遺伝子の使い方を変えた 鳥類が進化する過程では 新しい遺伝子の獲得はほとんどなかった 鳥類が得たのは 遺伝子の使い方を 制御するエンハンサーなどの 配列であった

ON Sim1 Sim1 OFF Sim1 図 4 Sim1 鳥エンハンサーは 遺伝子を風切羽領域で活性化する Sim1 遺伝子そのものは鳥類以外の動物種にも存在し 脳などではたらいている しかし鳥類では 鳥エンハンサーの存在により 翼 ( 前肢 ) の風切羽の形成場所でも活性化している ( 上段 ) その一方で その他の動物 ( 例えばマウス ) の前肢では Sim1 は活性化していない ( 下段 ) また マウスに Sim1 鳥エンハンサーを人工的に導入すると 前肢の一部で遺伝子のスイッチがオンになることもわかった cv Sim1 図 5 Sim1 鳥エンハンサーは恐竜時代に獲得された Sim1 鳥エンハンサーが獲得された年代を推定すると 現代型の飛行能力に長けた風切羽が進化した年代とおおよそ一致していた 掲載論文 著者 Seki, R. #, Li, C. #, Fang, Q., Hayashi, S., Egawa, S., Hu, J., Xu, L., Pan, H., Kondo, M., Sato, T., Matsubara, H., Kamiyama, N., Kitajima, K., Saito, D., Liu, Y., Gilbert, M.T.P., Zhou, Q., Xu, X., Shiroishi, T., Irie, N. *, Tamura, K. *, and Zhang, G. * (# 印は co-first authors * 印は co-corresponding authors) 題目 Functional roles of Aves class-specific cis-regulatory elements on macroevolution of bird-specific features 掲載誌 Nature Communications, DOI 10.1038/ncomms14229

研究支援 本研究は 科研費 ( 基盤研究 B 特別研究員奨励費) 最先端 次世代研究開発支援プログラム ( ライフ イノベーション ) ナショナルバイオリソースプロジェクト( ニワトリ ウズラ ) などの支援を受けて実施されました お問い合わせ先 ( 研究に関すること ) 東北大学大学院生命科学研究科教授田村宏治 ( たむらこうじ ) 電話番号 022-795-3489 E メール tam@m.tohoku.ac.jp ( 報道に関すること ) 東北大学大学院生命科学研究科広報室担当高橋さやか ( たかはしさやか ) 電話番号 022-217-6193 E メール lifsci-pr@grp.tohoku.ac.jp