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Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ

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別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

Microsoft Word - 01.doc

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

PowerPoint プレゼンテーション

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

記 者 発 表(予 定)

細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見 - 新規食品素材 PQQ がもたらす寿命延長のしくみを解明 名古屋大学大学院理学研究科 ( 研究科長 : 杉山直 ) 附属ニューロサイエンス研究セ ンターセンター長の森郁恵 ( もりいくえ ) 教授 笹倉寛之 ( ささくらひろゆき ) 研

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Microsoft Word CREST中山(確定版)

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

平成14年度研究報告

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

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Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

記者発表資料

平成24年7月x日

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

第6号-2/8)最前線(大矢)

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

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スライド 1

2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

スライド 1

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

第四問 : パーキンソン病で問題となる運動障害の症状について 以下の ( 言葉を記入してください ) に当てはまる 症状 特徴 手や足がふるえる パーキンソン病において最初に気づくことの多い症状 筋肉がこわばる( 筋肉が固くなる ) 関節を動かすと 歯車のように カクカク と軋む 全ての動きが遅くな

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見


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平成 26 年 8 月 21 日 チンパンジーもヒトも瞳の変化に敏感 -ヒトとチンパンジーに共通の情動認知過程を非侵襲の視線追従装置で解明- 概要マリスカ クレット (Mariska Kret) アムステルダム大学心理学部研究員( 元日本学術振興会外国人特別研究員 ) 友永雅己( ともながまさき )

ⅱ カフェイン カテキン混合溶液投与実験方法 1 マウスを茶抽出液 2g 3g 4g 相当分の3つの実験群と対照群にわける 各群のマウスは 6 匹ずつとし 合計 24 匹を使用 2 実験前 8 時間絶食させる 3 各マウスの血糖値の初期値を計測する 4 それぞれ茶抽出液 2g 3g 4g 分のカフェ

2006 PKDFCJ

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

報道関係者各位

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

Q2 はどのような構造ですか? A2 LDL の主要構造蛋白はアポ B であり LDL1 粒子につき1 分子存在します 一方 (sd LDL) の構造上の特徴はコレステロール含有量の減少です 粒子径を規定する脂質のコレステロールが少ないため小さく また1 分子のアポ B に対してコレステロールが相対

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」【岡澤均 教授】

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

第1回 生体内のエネルギー産生

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さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

生物時計の安定性の秘密を解明

<連載講座>アルマイト従事者のためのやさしい化学(XVII)--まとめと問題 (1)

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研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

平成 29 年 8 月 4 日 マウス関節軟骨における Hyaluronidase-2 の発現抑制は変形性関節症を進行させる 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 : 門松健治 ) 整形外科学 ( 担当教授石黒直樹 ) の樋口善俊 ( ひぐちよしとし ) 医員 西田佳弘 ( にしだよしひろ )

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

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シトリン欠損症説明簡単患者用

第1回 生体内のエネルギー産生

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

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PRESS RELEASE(2009/09/29) 九州大学広報室 812-8581 福岡市東区箱崎 6-10-1 TEL:092-642-2106 FAX:092-642-2113 MAIL:koho@jimu.kyushu-u.ac.jp URL:http://www.kyushu-u.ac.jp/ 水素を含んだ水の日常飲用が脳神経の変性を防ぐ事を発見 ~パーキンソン病モデルマウスに対する治療 予防効果 ~ 九州大学 ( 福岡県福岡市 総長 : 有川節夫 ) の野田百美准教授 ( 薬学研究院 ) 中別府雄作教授 ( 生体防御医学研究所 ) とパナソニック電工株式会社 ( 本社 : 大阪府門真市 取締役社長 : 畑中浩一 ) の研究グループは 水素を含んだ水を飲用することが 活性酸素 1) が 2) 原因で起こると考えられているパーキンソン病等の脳神経変性疾患の予防と治療に有用である可能性を検証しました 研究グループが注目したのは 低濃度の水素を含んだ水です 水素を含んだ水を飲ませたマウスと水素を含まない通常の水を飲ませたマウスに 薬物性パーキンソン病の原因となる MPTP 3) を投与し 実験的に脳神経変性疾患を発症させました 水素を含んだ水を飲用させたマウスでは パーキンソン病で見られる黒質ドパミン神経細胞 4) の脱落が顕著に抑制されました また脱落の原因とされる活性酸素の生成量 および活性酸素による DNA の酸化損傷も抑制されることが明らかになりました これらの検証結果から 活性酸素が原因で起こるパーキンソン病等の脳神経変性疾患の予防と治療に 水素を含んだ水の飲用が有用であり また低濃度の水素で効果をもたらす可能性を見出しました 水素を含んだ水は電解アルカリ水など 水の電気分解で容易に生成できるため 今後実用に向けた研究の展開が期待されます 本研究成果は オンライン科学誌 PLoS ONE に平成 21 年 9 月 30 日付 ( 米国 : 太平洋標準時 ) で掲載され 広く一般公開されます (URL:http://www.plosone.org/) 背景私たちの身体で恒常的に生成される過剰の活性酸素は 酸化ストレスとして細胞死を誘発し 組織障害を引き起こし 生活習慣病をはじめとした疾病の原因になると考えられています 脳組織も例外ではなく 脳梗塞などによる神経細胞 脳組織壊死 また脳神経変性疾患の一つであるパーキンソン病などにおいても 酸化ストレスが原因となって神経細胞死が起こることは広く知られています 現行の治療薬にはドパミン補充療法などがありますが 今回本研究グループは抗酸 1 / 6

化物質によって酸化ストレスを抑制することにより パーキンソン病における細胞障害を抑制する事を検討しました 酸化ストレスにより引き起こされる多様な疾患を防ぐために各種ビタミン物質 ポリフェノール等の抗酸化物質の積極的な摂取が推奨されていますが 近年その中でも注目されている物質は 水素分子です 水素は水を電気分解により陰極側で生成することができ 比較的簡単に家庭でも生成出来るため 日頃から簡単に摂取できる抗酸化物質としての汎用性が非常に高い物質です こうした背景を踏まえ この研究を通じて水素を含んだ飲用水がパーキンソン病における細胞障害を抑制し 疾患の改善 抑制に応用できることを明らかにするため 本研究を遂行しました 研究成果マウスに MPTP を投与すると黒質ドパミン神経細胞が顕著に脱落し ヒトのパーキンソン病と同じ病理所見が観察されました しかし 前もって水素を含んだ水を飲水することにより神経細胞の変性は有意に抑制され 効果が有意に発現された水素濃度は 0.08 ppm 以上でした ( 図 1 2) さらに MPTP を投与した後から水素を含んだ水の飲水を開始しても その抑制効果が観察されました これらの結果から水素が神経細胞の保護作用に重要であると考えられます さらに 水素を含んだ水を飲水することにより MPTP 投与による行動障害も抑制できることがわかりました ( 図 1) 脳 黒質のドパミン神経細胞の染色画像と神経細胞数の計測 水素溶解水 水素溶解水で細胞数改善 MPTP: 急性投与 ( 神経細胞観察は投与 48 時間後 ) 水素溶解水飲水 : 飽和水素溶解水 (1.5ppm) 2 / 6

( 図 2) ドパミン神経細胞 (TH 5) 陽性細胞 ) 死の抑制に有効な水素濃度の検討 また 脳内の活性酸素 窒素種による酸化ストレスを検証した実験から 活性酸素障害に伴い黒質 線条体における脂質の過酸化物 (4-HNE) 6) と DNA 塩基グアニンの酸化体 (8-oxoG 特にミトコンドリア DNA に蓄積する ) 7) の蓄積も 水素を含んだ水を飲用する事により 顕著に減少することがわかりました ( 図 3 4 5) ( 図 3)MPTP 投与後に生成される脂質過酸化物 4-HNE の蓄積と水素の効果 水素溶解水 3 / 6

( 図 4) ミトコンドリアゲノムに蓄積する 8-oxoG と水素の効果 純水水素溶解水純水水素溶解水 ( 図 5)8-oxoG の生成量と水素の効果 今後の展開水素がどのようにして活性酸素障害を抑制するのかについて その詳しいメカニズムはまだ明らかになっていません 例えば水素は最も強力な酸化力を持つ水酸基ラジカル ( OH) を選択的に減少させる作用が認められると考えられていますが 他方で水素によりスーパーオキシドアニオン (O 2 - ) も減少するという報告もあり 生体内における水素のラジカル選択性には未だに疑問が残っています 4 / 6

また 水素を含んだ水を飲用した場合 あるいは直接水素ガスを吸入した場合に水素が人体のどの部分から細胞に取り込まれ どのルートを通過して体内から排出されるかはまだ分かっていません しかし 水素分子はそのサイズが小さいため 体内の殆どの物を通過し拡散すると考えられ 他の抗酸化物質よりも体内の隅々まで行き渡る可能性があります 体内すべての活性酸素障害を抑制するためには 優れた拡散性が必須と考えられます さらに水素は一般の抗酸化物質と違い 水を電気分解 8) することにより簡単に生成することができます そのため 家庭やオフィスで直接水電解により水素を生成し 呼気や飲料水から容易に水素を摂取することができます 従って 抗酸化対策として最も有効かつ簡単な方法の一つである可能性を秘めています ( 掲載論文名 ) Hydrogen in Drinking Water Reduces Dopaminergic Neuronal Loss in the 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine mouse model of Parkinson s Disease ( 水素含有飲用水は MPTP 誘発性パーキンソン病モデルマウスにおけるドパミン神経の脱落を抑制する ) ( 用語解説 ) 1) 活性酸素 : 酸素の還元により生成される高い反応性と強い酸化力をもった物質 生体にとって異物から体を守る免疫機能等において有益であるが 過剰に存在すると生体に酸化障害を引き起こすとされる 2) パーキンソン病 : 中脳の黒質緻密部にあるドパミン神経が変性 脱落することによって起こる脳神経変性疾患 3)MPTP (1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine): 薬物性パーキンソン病を引き起した合成麻薬の副産物として同定された化合物 ヒトを含めた霊長類 げっ歯類で黒質ドパミン神経を選択的に脱落させる パーキンソン病態モデルの誘発剤として用いられる 4) 黒質ドパミン神経細胞 : 中脳の黒質緻密部にあるドパミンを産生する神経細胞 5) TH (tyrosine hydroxylase): ドパミン神経細胞のマーカーであり カテコラミン合成経路に関わる酵素群の一種 6)4-HNE (4-hydroxy-2-nonenal): 生体脂質が酸化ストレスをうけて生成する酸化二次生成物 7)8-oxoG (7, 8-dihydro-8-oxoguanine): 活性酸素に曝された DNA 中に最も多量に生じるグアニン塩基の酸化体 主要な酸化的 DNA 損傷のマーカーとして酸化ストレスの程度を判断するのに用いられるが, 中別府らによって細胞死の原因となることが明らかにされている 8) 水電解 : 水を電気分解する事により負極側で水素が生成される 5 / 6

< 本件の問い合わせ先 > 国立大学法人九州大学 ( 広報室 ) 812-8581 福岡市東区箱崎 6-10-1 TEL: 092-642-2106, FAX: 092-642-2113 MAIL:koho@jimu.kyushu-u.ac.jp URL:http://www.kyushu-u.ac.jp ( 九州大学の研究に関すること ) 国立大学法人九州大学大学院薬学研究院生命薬学講座病態生理学分野准教授野田百美 TEL/FAX: 092-642-6574 MAIL: noda@phar.kyushu-u.ac.jp 国立大学法人九州大学生体防御医学研究所個体機能制御学部門脳機能制御学分野教授中別府雄作 TEL: 092-642-6800/6802, FAX: 092-642-6791/6804 MAIL: yusaku@bioreg.kyushu-u.ac.jp 6 / 6