中国経済の2018年問題

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現代資本主義論

中国 資金流出入の現状と当局による対応

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

グラフで見る2018年11月の中国経済動向

スライド 1

グラフで見る2018 年5 月の中国経済動向

【ロシア最新経済金融週報】

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マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

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金融市場2018年12月号

国際与信は再び中国へ向かう

利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

グラフで見る2019年1~3月の中国経済動向

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FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

みずほインサイト アジア 2019 年 1 月 22 日 中国経済の現状と 2019 年展望 2018 年 10~12 月期 GDP と修正李克強指数の動向 アジア調査部中国室主任エコノミスト 大和香織 年

中国:ネット市場が示唆する成長余力

中国:春節にみられた消費の変化

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平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

中国初の家計資産調査が示す収入・資産格差

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

グラフで見る2018 年3 月の中国経済動向

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1. 各都市の不動産市場トレンド 1-1. オフィス価格指数 対前回変動率 (2016 年 4 月から 2016 年 10 月まで ) 図表 1-1は オフィス価格指数の各都市 対前回変動率 今回 (2016 年 10 月現在 ) 対前回変動率が最も高かったのは 東京 の +3.4% 次いで 大阪

順調な拡大続くミャンマー携帯電話市場

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

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先行き高めの成長が持続 現状 : 内外需要が堅調経済は内外需要が堅調を維持 輸出が世界経済の回復を背景に拡大 工業生産も高めの伸びが持続 もっとも 固定資産投資の増勢は鈍化傾向 内訳をみると 民間投資と不動産開発投資が小幅に加速したものの 国有企業の設備投資やインフラ投資が減速 政府は 民間投資が拡

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PowerPoint プレゼンテーション

12月CPI

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

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つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

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統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

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Invesco Premia Plus Fund

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

消費増税と原油高でデフレ脱却とインフレ目標はどうなる?

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

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PowerPoint プレゼンテーション

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

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先行きも高めの成長が持続 現状 : 堅調さを維持経済は 一部で弱い動きがみられるものの 堅調さを維持 弱い動きは主に耐久消費財 一部の固定資産投資 輸出の 3 分野で出現 もっとも こうした弱めの動きは限定的であり 景気を大きく下押しするほどのマイナス影響は顕在化せず 実際 工業生産や輸入は堅調な伸

先行き高めの成長が持続 現状 : 内外需要が堅調足許の経済は内外需要が堅調を維持 輸出は世界経済の回復を背景に急拡大 個人消費は良好な雇用所得環境を受けて 若干減速しつつも安定的に拡大 企業マインドの改善によって 固定資産投資に底入れの兆し 堅調な需要拡大を受けて 工業生産は高めの伸びを維持 展望

平成14年1月20日

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

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2018 年第 1 四半期ベトナム経済事情 2018 年 4 月 在ベトナム日本大使館経済班 ( 注 ) 本資料の記載情報は, 信頼できると考えられる情報源等を元に作成しておりますが, その正確性 完全 性を保証するものではありません また, 記載された数値, 意見, 予測等は, 作成時点のものであ

2017年上半期の為替相場展望

第1章

経済:マーケット・フォーカス

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

2019年の日本経済

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

Microsoft Word ECB利下げ.doc

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

2014~2016年度 東海経済見通し

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

○ユーロ

nichigingaiyo

有償ストック・オプションの会計処理が確定

資料1

景気は再び減速局面に 現状 : 景気は減速では ~ 月期の実質 GDP 成長率が前年同期比 +.% と 四半期ぶりに低下 足許の景気減速の背景として 政府が政策スタンスを変えたことが指摘可能 昨年まで 政府は景気失速を回避するために 積極的な財政支出と金融緩和を実施していたものの 過剰生産や不動産市

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

先行き景気は緩やかに減速 現状 : 景気は減速局面入り経済は減速局面入り 政府が環境規制を強化したため 重工業で減産の動き 短期市場金利を高めに誘導するとともに 金融監督を強化したことも 企業の資金調達コストを上昇させ 固定資産投資が緩やかに減速 小型車減税措置の完全終了 (217 年末 ) に伴い

別紙2

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

Transcription:

中国経済 17 年 5 月 日全 9 頁 中国経済の 1 年問題 住宅価格下落と土地使用権売却収入の減少 地方債への置き換え一巡 経済調査部主席研究員齋藤尚登 [ 要約 ] 米国政府と中国政府は 5 月 11 日に 貿易不均衡是正に向けた 1 日計画 の具体策を発表した これらの政策が実行に移されても 1 年に中国側統計で,5 億米ドルに達する中国の対米貿易黒字を大きく減らすことは期待できない 北朝鮮問題に対する中国の貢献を強く期待する米国と 5 月 1 日 日の 一帯一路 ( 海と陸のシルクロード経済圏構想 ) 国際会議の箔を付けるために米国からの代表派遣を切望する中国が 合意しやすい項目を選んで成果を強調したというのが現実的な評価であろう それでも 米トランプ大統領就任で懸念された米中通商関係の悪化が回避されていることは 米中貿易にとって良い話である 中国の実質 GDP 成長率は 1 年 1 月 ~3 月以降 3 四半期連続で前年同期比.7%( 以下 断りのない限り前年比 前年同期比 もしくは前年同月比 ) であったが 1 月 ~ 月は.% 17 年 1 月 ~3 月は.9% と成長が加速した 大和総研は想定以上に強い足元の成長率を受けて 17 年の成長率予想を従来の.% から.% へ上方修正した ただし 今後は内需の勢いが鈍化していくことを背景に この 1 月 ~3 月を当面のピークとして 成長率は緩やかに減速していくと見ている 1 年以降の景気を支えた乗用車 住宅 インフラの 3 本柱のうち 乗用車販売は既に息切れし 不動産開発投資も年後半には減速する可能性が高い さらに 1 年は住宅価格の下落が中国経済の下振れリスクを高める懸念がある 前回の住宅価格下落局面 即ち土地使用権売却収入が減少する局面では 地方政府債務の地方債への置き換えという政策対応が奏功し インフラ投資の高い伸び率を維持することができた しかし 地方債への置き換えが一巡する 1 年以降は 少なくとも同じ手法は使えない 17 年秋に 5 年に一度の党大会の開催を控えて 中国政府は経済の安定成長を最優先し 実質 GDP 成長率が加速する局面が出現した ただし それを支えた政策対応は息切れしつつあり 特に 1 年の中国経済には不透明感が漂い始めている 財政のさらなる拡大などの政策対応がなければ 景気下振れリスクが増大することになろう 株式会社大和総研丸の内オフィス 1-75 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

/ 9 米中通商関係の悪化は回避 米トランプ大統領は大統領選挙中に 中国からの全ての輸入品に 5% の関税をかける 中国を為替操作国に認定する などと発言したが 高関税はかけられていないし 月 1 日に発表された米財務省為替報告では 中国の為替操作国認定は見送られた 月 日 ~7 日に行われた米中首脳会談では 貿易不均衡問題 ( 中国側の大幅な出超 ) の是正に向けた 1 日計画 の策定で合意し 米国政府と中国政府は 5 月 11 日に 1 項目の具体策を発表した その内容は以下の通りである 1 牛肉 : 中国は 3 年に米国で BSE( 牛海綿状脳症 ) が発生したことを理由に米国産牛肉の輸入を禁止していたが 7 月 1 日までに輸入を再開 調理済み肉 : 米国は規則を制定し 中国からの調理済み肉の輸入を認可 3バイオテクノロジー : 中国は安全審査待ちとなっている米国のバイオテクノロジー製品への評価を行い 承認するか または製品が安全審査に通らなかった理由を明確に説明 天然ガス : 中国は天然ガスの輸入契約 ( 長期契約を含む ) について交渉 5 格付けサービス : 中国は外資系金融サービス会社による格付けサービスの提供を許可 クロスオーバー決済 : 中国人民銀行と米商品先物取引委員会 (CFTC) は クロスオーバー決済機関の監督管理について合意 7 電子決済サービス : 中国は米国の電子決済サービス会社に市場参入を認可 銀行業 : 米国は中国の銀行を他の外国銀行と同等に待遇することを承諾 9 債券決済 : 中国は米国の金融機関 社に対して債券の引き受けと決済を許可 ➉ 国際フォーラム : 米国は 中国の 一帯一路 国際会議に代表を派遣 米国は 中国が 月 1 日 ~ 日にワシントンで開催される Select USA Investment Summit に参加することを歓迎 上記 1 3 は中国の対米輸入を増やし は中国の対米輸出を増やす政策であり 5 7 9は中国のサービス業の対外開放を促進する政策となっている これらの政策が実行に移されても 1 年に中国側統計で,5 億米ドル ( 米国側統計では 3,7 億米ドル ) に達する中国の対米貿易黒字 ( 米国の対中貿易赤字 ) を大きく減らすことは期待できない 北朝鮮問題に対する中国の貢献を強く期待する米国と 5 月 1 日 日の 一帯一路 ( 海と陸のシルクロード経済圏構想 ) 国際会議の箔を付けるために米国からの代表派遣を切望する中国が 合意しやすい項目を選んで成果を強調したというのが現実的な評価であろう それでも 米トランプ大統領就任で懸念された米中通商関係の悪化が回避されていることは 米中貿易にとって良い話である

3 / 9 中国通関統計によると 17 年 1 月 ~ 月の世界向けの輸出 ( 米ドル建て ) は.1% 増 (1 月 ~3 月は.% 増 ( 以下 断りのない限り前年比 前年同期比もしくは前年同月比 )) 輸入は.% 増 ( 同.% 増 ) と それぞれ 1 年の 7.7% 減 5.5% 減から大きく改善した 貿易収支は 3.1% 減の 1,33 億米ドルであった 輸入急増は 前年比で見た原油価格の急騰によるところが大きかったが この効果も一巡しつつある 原油価格 (WTI) は昨年 1 月 ~ 月の 1 バレル=3 米ドル割れという歴史的低水準から同年 月初旬には 5 米ドルを回復 17 年 月末時点で.% に達した上昇率は 月末には 7.% に圧縮された ちなみに 月単月の中国の輸入は 11.9% 増に減速しており 中国の輸入が原油価格の要因によって急増する局面は終わりつつある 一方で 輸出は米国を中心とした主要先進国の景気拡大を背景に 当面は順調な増加が期待できる 今後 輸出と輸入の伸び率の差はさらに縮小に向かい 貿易黒字の減少幅はより小さくなろう 輸出入増減率 ( 価格 数量 ) の推移 ( 前年同月比 %) 3 輸出価格輸出数量輸出増減率 3 輸入価格輸入数量輸入増減率 1 1-1 -1 - - 11 ( 注 )1 月 ~ 月は平均 ( 出所 ) 中国通関統計より大和総研作成 -3 11 ( 注 )1 月 ~ 月は平均 ( 出所 ) 中国通関統計より大和総研作成 乗用車販売は既に息切れ 中国の実質 GDP 成長率は 1 年 1 月 ~3 月以降 3 四半期連続で.7% であったが 1 月 ~ 月は.% 17 年 1 月 ~3 月は.9% と成長が加速した 大和総研は想定以上に強い足元の成長率を受けて 17 年の成長率予想を従来の.% から.% へ上方修正した ただし 今後は内需の勢いが鈍化していくことを背景に この 1 月 ~3 月を当面のピークとして 成長率は緩やかに減速していくと見ている 1 年以降の景気を牽引したのは (1) 年 1 月 ~1 年 月の排気量 1.L 以下の乗用車に対する車両購入税の半減措置 ( 価格の 1% 5%) による乗用車販売の好調 () 年 3 月 1 月 1 年 月に発表された頭金比率の引き下げ等一連の住宅販売刺激策の奏功に

/ 9 よる住宅販売の好調と不動産開発投資の回復 さらには (3)13 年以降 固定資産投資の急減を回避する原動力となってきたインフラ投資の堅調 などであった しかし 乗用車販売は既に息切れしている 17 年の車両購入税は 7.5% と 通常税率よりは軽減されたが 1 年年末までの 5% との比較では 増税 となり 乗用車販売は 1 年の 1.9% 増から 17 年 1 月 ~ 月は 3.1% 増に減速した 月単月では 3.7% 減と 年 月以来の前年割れとなった 1 1 年の車両購入税は通常税率の 1% に戻るとみられ 17 年年末に向けては若干の駆け込みも期待されるが その後は需要先食いの影響が一段と濃くなろう 乗用車販売伸び率 ( 前年同月比 ) と車両購入税の推移 ( 単位 :%) 1 車両購入税 ( 右 逆目盛 ) 乗用車販売 - 1-9 1 11 ( 注 )1- 月は平均 ( 出所 ) 中国汽車工業協会 CEIC より大和総研作成 ( 年 ) 足元で加速している不動産開発投資も年後半には減速へ 住宅販売金額は 1 年 1 月 ~ 月の 1.% 増を直近のピークに伸び率は低下し 1 年年間は 3.% 増 17 年 1 月 ~ 月は 1.1% 増となった 全国 7 都市平均の新築住宅価格は上昇傾向を強め 1 年 11 月と 月には 1.% の上昇となった 住宅価格の上昇は 需要が大きく 過剰な住宅在庫を抱えていなかったティア 1( 北京市 上海市 深圳市といった大都市 ) ティア ( 省都レベル ) 一部ティア 3 へと波及し 住宅価格抑制策も 1 年 3 月 1 年 9 月 ~1 月 17 年 3 月と期間を置いて発表された その内容は 当該地域に戸籍を有する世帯への 軒目の住宅ローンの頭金比率の引き上げや 3 軒目以降の住宅ローンの停止 戸籍を有さない世帯の住宅購入制限など 投資 投機需要を制限するものであり 1 年 9 月 1 月以降はその対象都市が急増している 1 旧正月の時期のずれの影響を大きく受ける 1 月と 月は平均値で比較

5 / 9 下図表は 住宅価格の上昇率と 都市一人当たり可処分所得増加率の推移であり 前者が後者を上回るタイミングの前後で当局が住宅価格抑制策を発表し それが強化されると住宅価格が調整していくことが示されている 17 年 月の住宅価格は 9.9% 上昇と 直近ピークの 1 年 11 月 月の 1.% 上昇から既に低下し始めているが 今後 価格の上昇ペースはさらに鈍化していこう 一方で 17 年 1 月 ~ 月の不動産開発投資は 9.3% 増と 1 年夏場以降の改善が継続している これは 住宅価格の変化が 不動産開発投資に影響するには時間差があるためであり 年後半以降は不動産開発投資も減速していく可能性が高い さらに 住宅価格が前年割れとなると 中国経済へのマイナスの影響は大きくなる 土地使用権売却収入は地方政府の重要な財政収入であり これが減少に転じる可能性が高くなるためである 前回の住宅価格のピークは 13 年 月の 9.7% 上昇であったが 1 年 9 月にはマイナスとなり 前年割れが 年 11 月まで続いた こうした中 土地使用権売却収入は 1 年の 兆,931 億元から 年には 3 兆,53 億元へと.% 減少した 財政収入の減少から地方政府が 無い袖は振れない 状態に陥るのを防ぐために 後述する地方政府債務の地方債への置き換えという政策対応が取られた可能性がある 住宅価格 ( 前年同月比 ) 都市一人当たり可処分所得 (1 月から累計の前年同期比 ) と住宅政策 ( 単位 :%) 住宅価格抑制策 投資 投機抑制策の発表 1/1 1/1 強化 13/3 13/ 強化 1/3 1/9-1 強化 17/3 強化 1 都市一人当たり可処分所得 5-5 7 都市平均新築住宅価格 /1 /3 1/9 /3 強化 住宅市場テコ入れ策の発表 -1 9 1 11 ( 出所 ) 中国国家統計局より大和総研作成

/ 9 土地使用権売却収入と前年比の推移 ( 単位 : 兆元 %) 5..5. 土地使用権売却収入 ( 兆元 左 ) 前年比 (% 右 ) 5 3 3.5 3. 1.5. -1 1.5-1. -3.5 -. 11 13 1 1 ( 出所 ) 中国財政部より大和総研作成 -5 地方債への置き換えは 17 年で一巡 17 年 1 月 ~ 月の固定資産投資は.9% 増 (1 月 ~3 月は 9.% 増 ) と 1 年の.1% 増をやや上回る伸びが続いている 1 年の伸び率との比較では製造業投資 不動産開発投資 インフラ投資はともに伸びを高めているが 全体を支えているのは やはりインフラ投資であり 1 月 ~ 月は 1.% 増となった インフラ投資が高水準の伸び率を維持している背景は 1 高金利 短期の地方政府債務が 年以降 返済期限が到来したものから順次 低金利 中長期の地方債に置き換えられたことで 地方政府や国有企業の資金繰りが改善し これらの投資余力が高まったこと 民間資本によるインフラ投資増加を目指した PPP( 官民連携投資 ) が増加していること などである 上記 1の地方債への置き換えは 年は 3. 兆元 1 年は.9 兆元 17 年は 兆元程度とされ 金額は増加しているが 増加率は圧縮されている さらに 地方債に置き換えられるべき地方政府債務は 1 兆元であり 17 年を以て置き換えは一巡することになる こうしてみると 1 年以降の景気を支えた乗用車 住宅 インフラの 3 本柱のうち 乗用車販売は既に息切れし 不動産開発投資も年後半には減速する可能性が高い さらに 1 年は住宅価格の下落が中国経済の下振れリスクを高める懸念がある 前回の住宅価格下落局面 即ち土地使用権売却収入が減少する局面では 地方政府債務の地方債への置き換えという政策対応が奏功し インフラ投資の高い伸び率を維持することができた しかし 地方債への置き換えが一巡する 1 年以降は 少なくとも同じ手法は使えない 17 年秋に 5 年に一度の党大会の開催を控えて 中国政府は経済の安定成長を最優先し 実質 GDP 成長率が加速する局面が出現した ただし それを支えた政策対応は息切れしつつあり 特に 1 年の中国経済には不透明感が漂い始めている 財政のさらなる拡大などの政策対応がなければ 景気下振れリスクが増大することになろう

7 / 9 固定資産投資 (1 月からの累積の前年同期比 %) 不動産開発投資 3 固定資産投資 製造業 インフラ 1-1 11 ( 出所 ) 中国国家統計局より大和総研作成 主要経済指標一覧 1 年 11 月 月 17 年 1 月 月 3 月 月 実質 GDP 成長率 ( 四半期 前年同期比 %) -. - -.9 - 鉱工業生産 ( 前年同月比 %)...3 7..5 電力消費量 ( 前年累計比 %) 5. 5..3.9.7 鉄道貨物輸送量 ( 前年同月比 %) 13.9 9. 1. 19. 17.3.5 固定資産投資 ( 前年累計比 %).3.1.9 9..9 不動産開発投資 ( 前年累計比 %).5.9.9 9.1 9.3 小売総額 名目 ( 前年同月比 %) 1. 1.9 9.5 1.9 1.7 小売総額 実質 ( 前年同月比 %) 9. 9..1-9.7 消費者物価指数全体 ( 前年同月比 %).3.1.5..9 1. 消費者物価指数食品 ( 前年同月比 %)...7 -.3 -. -3.5 消費者物価指数非食品 ( 前年同月比 %) 1...5..3. 工業製品出荷価格指数 ( 前年同月比 %) 3.3 5.5.9 7. 7.. 工業生産者購入価格指数 ( 前年同月比 %) 3.5.3. 9.9 1. 9. 新規融資額 ( 億元 ) 7,9 1,,3 11,7 1, 11, M 伸び率 (%) 11. 11.3 11.3 11.1 1. 1.5 輸出 ( 前年同月比 %) -1.5 -.3 7. -1.5 1.. 輸入 ( 前年同月比 %) 5.5 3. 1. 3..3 11.9 貿易収支 ( 億米ドル ) 3.9 39. 59.1-9.5 39. 3.5 新築商品住宅価格指数北京 ( 前年同月比 %).9. 7..1. 17. 新築商品住宅価格指数上海 ( 前年同月比 %) 3. 31.7.3 5. 19.. 商用不動産 着工面積 ( 前年累計比 %) 7..1 1. 11. 11.1 商用不動産 完工面積 ( 前年累計比 %)..1..1 1. 不動産販売面積 ( 前年累計比 %).3.5 5.1 19.5.7 不動産販売金額 ( 前年累計比 %) 37.5 3.. 5.1.1 ( 出所 ) 中国国家統計局 中国人民銀行 通関統計 中国国家エネルギー局 中国鉄路総公司 CEIC より大和総研作成

/ 9 主要経済指標一覧 ( 続き ) 1 鉱工業生産 ( 前年同月比 %) 1 電力消費量 ( 前年累計比 %) 1.7.5 ( 直近は 17 年 1- 月 ) ( 注 )1~ 月は ヵ月の平均値 直近は 17 年 月 3, 5, 新規融資額と M 新規融資額 ( 億元 左 ) ( 直近は17 年 月 ) M 伸び率 (% 右) 1 1 5 鉄道貨物輸送量 ( 前年同月比 %).5,, 1, 1.5 11, 1 1 1 5-5 -1 5, - ( 直近は17 年 月 ) - ( 注 ) 旧正月の時期による影響を避けるため1~ 月は平均値 17 年 1 月は単月の数値 1 小売総額 ( 前年同月比 %) 実質 9.7( 月 ) 名目 1.7( 月 ) 1 消費者物価指数 ( 前年同月比 %) CPI 全体食品非食品 9. 1. ( 注 1) 旧正月の時期による影響を避けるため 1~ 月は平均値 ( 注 ) 実質は 11 年 9 月以降は当局の発表による (17 年 3 月は未公表 ) それ以前は 名目伸び率から消費者物価上昇率を引いたもの - - - ( 直近は 17 年 月 ) -3.5 ( 出所 ) 中国国家統計局 中国人民銀行 通関統計 中国国家エネルギー局 中国鉄路総公司 CEIC より大和総研作成

9 / 9 主要経済指標一覧 ( 続き ) 1 工業製品出荷価格指数 ( 前年同月比 %) と交易条件工業製品出荷価格指数 ( 左 ) 工業生産者購入価格指数 ( 左 ) 交易条件 ( 右 ) 9. 1. 1. 5 貿易 ( 前年同月比 % 億米ドル) 貿易収支 ( 右 ) 輸出 ( 左 ) 輸入 ( 左 ). 11.9 1, 75 5. 1. 3 3.5 5 5 1. -5.9 - -5-1 ( 直近は 17 年 月 ).97.9-3 ( 直近は 17 年 月 ) -5 3 固定資産投資 ( 前年累計比 %) 新築商品住宅価格指数 ( 前年同月比 %) 5 固定資産投資.9 不動産開発投資 9.3 北京 上海 17.. 3 1 1 5 ( 直近は 17 年 1- 月 ) -1 ( 直近は 17 年 月 ) 5 商用不動産着工 完工面積 ( 前年累計比 %) 新規着工面積 完工面積 1 不動産販売 ( 前年累計比 %) 販売面積 販売金額 3 11.1 1 1..1.7-1 - - -3 ( 直近は 17 年 1- 月 ) - ( 直近は 17 年 1- 月 ) ( 出所 ) 中国国家統計局 中国人民銀行 通関統計 中国国家エネルギー局 中国鉄路総公司 CEIC より大和総研作成