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2 イエスの戒めを守るなら イエスの愛に留まることになる (2) その教えを話した理由は 弟子たちが喜びに満たされるためである 1イエスは 自分が経験している喜びを弟子たちに与えようとしている 2イエスの喜びは 父なる神への従順 ( 喜ばせること ) によって生まれる 3ヘブ 12:2 Heb 12

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韓国 朝鮮籍市民は 過去の歴史的な経緯から 従来 非常に高い割合を占めていましたが 昭和 60 年 (1985 年 ) の国籍法の改正や日本国籍の取得 ( 帰化 ) 高齢化の進行などにより減少傾向となっています また 1980 年代以降 政府による中国帰国者及びインドシナ難民の受け入れなどもあり 中

2018 年 5 月 27 日 ( 日 ) 28 日 ( 月 ) 14 回 ペテロの第 2 のメッセージ (2) ペテロの第 2 のメッセージ (2) 使徒 3:17~26 1. はじめに (1) ペンテコステの日に教会が誕生した 1ペテロの第 1 回目のメッセージにより 3,000 人ほどの人たち

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

も少なくありません こうした状況に鑑み 舞鶴市は 言語としての手話の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図ることにより 全ての市民が障害の有無によって分け隔てられることなく 自分らしく安心して暮らすことができる地域社会を実現するため この条例を制定するものです 2. 条例の


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2012 年 1 月 15 日 ( 日 ) 16 日 ( 月 )53 ローマ人への手紙 14:13~15:3 キリスト者の自由 1. はじめに (1) 文脈の確認 11~8 章が教理 29~11 章がイスラエルの救い 312~16 章が適用 (2)12 章は 基本的には教会内の行動についての勧めであ

2019 年 5 月 経営 Q&A 回答者 永浦労務管理事務所 特定社会保険労務士永浦聡 外国人材の受入れ対策講座 ~ 外国人労働者の現状 ~ Question 当社は 地方都市でホテルを数軒経営しています 法律の改正もあり 今後日本には外国人労働者が増えてくるというニュースを新聞 テレビ等で目にし

* ユダヤ人の歴史家ヨセフスもまた同じような書き方をしている 5 テオピロは ルカの執筆活動を支援するパトロンであった可能性が高い 6 もしそうなら テオピロはローマ人クリスチャンであったと思われる (2)1~2 節は ルカの福音書の要約である 1 前の書 というのは ルカの福音書 のことである 2

2014 年 10 月 7 日 ( 火 ) 60 分で分かる創世記 60 分で分かる創世記 1. はじめに (1) 60 分で分かる〇〇 のシリーズを開始する 11 節 1 節の解説も重要であるが 鳥瞰図的な理解も必要である 2その場合重要なのは センス オブ プロポーション である (2) 創世記

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のために必要な条件を整えるという使命を担うすべての人にとって 政治の役割と責任と は 絶え間ない挑戦です 人間のいのちと自由 尊厳に対する根本的な敬意のもとに行わ れるとき 政治は愛のわざの卓越したかたちとなるにちがいありません 3. 人権と平和に寄与する政治にとっての愛のわざと人間的徳教皇ベネディ

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2011年度 牧羊者 第Ⅳ巻

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な取組 日本や東京の文化 歴史を学び 日本人としての自覚と誇りを涵養主な取組 東京都国際交流委員会 * を再構築し 外国人への生活サポートを推進主な取 様々な広報媒体の活用などによる障害者への理解促進主2020 年に向けた取組の方向性 1 オリンピック パラリンピック教育を推進するとともに 多様性を

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2011 年 06 月 26 日 ( 日 ) 27 日 ( 月 )26 ローマ人への手紙 7:14~25 律法からの解放 (3) ロマ書 7 章クリスチャン 1. はじめに (1) 聖化 に関する 5 回目の学びである 1 最大の悲劇は 律法を行うことによって聖化を達成しようとすること 2この理解は

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2011 年 10 月 16 日 ( 日 ) 17 日 ( 月 )42 ローマ人への手紙 11:25~36 拒否の解決 (3) イスラエルの救い 1. はじめに (1)10 月 13 日 ( 木 ) の日没から仮庵の祭りが始まった 1 第 7 の月の 15 日 満月 2 満月を眺めながら イスラエル

イエスさまの公的な活動は 2 年から 3 年と言われます その短い時間の中で人々に与えた影響は 考えられないほど大きいものでした ここに今日 わたしたちが集まって礼拝しているのも そのせいです けれどもその 2 年ないし 3 年のイエスさまの活動はずっと順調であったわけではありません イエスを愛し慕

全国担当者2009 プレゼン資料

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2.10 暮らしやすい社会 現在の堺市での暮らしの満足度 さかいしげん 38 あなたは堺市での現在 ざいの暮 くまんぞくらしに満足していますか ひとつに 現在の堺市での暮らしについて 満足している 人は 38.2% まあまあ満足している 人は 47.4% 合 わせて 85.6% が満足

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2019 年 7 月 28 日 ( 日 ) 29 日 ( 月 ) 70 回 12 人の弟子たちの救い 12 人の弟子たちの救い 使徒 19:1~7 1. はじめに (1) 第三次伝道旅行が始まった 1 使 18:23~21:17( 紀元 53 年の春から 56 年の春 ) 2パウロは ひとりで出かけ

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

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2 あなたの年齢はおいくつですか 3 あなたのお仕事についてお伺いします

(3) 障害を理由とする差別障害を理由とする不当な差別的取扱いを行うこと又は合理的配慮の提供をしないことをいいます (4) 障害を理由とする不当な差別的取扱い客観的にやむを得ないと認められる特別な事情なく 障害又は障害に関連する事由により障害者を区別し 排除し 又は制限すること 障害者に障害者でない

㈫シノドス第15回通常総会準備文書日本語訳

ANNUAL REPORT

大泉町手話言語条例逐条解説 前文 手話は 手指の動きや表情を使って視覚的に表現する言語であり ろう者が物事を考え 意思疎通を図り お互いの気持ちを理解しあうための大切な手段として受け継がれてきた しかし これまで手話が言語として認められてこなかったことや 手話を使用することができる環境が整えられてこ

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岐阜県手話言語の普及及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関 する条例 目次前文第一章総則 ( 第一条 - 第八条 ) 第二章基本的施策の推進 ( 第九条 - 第十六条 ) 附則 ( 前文 ) 手話が言語であることは 障害者の権利に関する条約において世界的に認められており わが国においても

一 マリヤへの恵みある教会に 何かというと 恵まれた女よ おめでとう と言う人がいました 女性のための聖書のクラスで 誰かが正しい答えを言ったら 恵まれた女よ おめでとう 感謝なことの証しをしたら 恵まれた女よ おめでとう 誰かが牧師に祈ってもらっている姿を見たら 恵まれた女よ おめでとう 彼女はい

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序文 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会 ( 以下 協議会 という ) は キャリアコンサルタントの養成等に関わる団体を会員とし キャリアコンサルティング技能検定の実施 キャリアコンサルタントの能力の維持 向上 キャリアコンサルティングの普及啓発等の事業に取り組んでいます この度 勤労

(2) 施策目標 施策目標 1 日本人と外国人が共に活躍できる環境の整備 東京で暮らす外国人が日本人と同様に能力を最大限発揮し 活躍できるよう 子供の教育支援等に着実に取り組む また 外国人ビジネスパーソン等の生活に関するサポートや外国人留学生等に対する就業 起業支援等を行い 外国人が東京で一層活躍

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2018 年度 ( 平成 30 年度 ) 事業計画書 協会自主事業 公益財団法人和歌山県国際交流協会

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第 2 職場移転の自由の保障前述のとおり技能実習制度では, 原則として職場移転の自由が認められていない この点, 改正法案では, 入国 在留を認めた分野の中での転職を認めることとされており, 一定の評価に値する ただし, 職場移転の自由を実質的に確保し, 保障するためには, ハローワーク等が特定技能

中学校第 3 学年社会科 ( 公民的分野 ) 単元名 よりよい社会をめざして 1 本単元で人権教育を進めるにあたって 本単元は 持続可能な社会を形成するという観点から 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を設けて探究し 自分の考えをまとめさせ これらの課題を考え続けていく態度を育てる

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はじめに サントリーグループは 企業理念として定める 人と自然と響きあう と Growing for Good 及びサントリーグループ企業倫理綱領に基づき 安全 安心で高品質な商品 サービスをお届けするために 国連グローバル コンパクト 署名企業として公正 公平な取引を実施し サプライチェーン上のお

[ 参考 ]: 平成 11 に実施された堺市市民意識調査 ( 外国人市民編 ) における 市政情報の入手について の回答結果では 入手方法として 広報さかい (48.7%) が最も多く 次いで 自治会の回覧板 (39.9%) 新聞 テレビなどのマスコミ報道 (35.2%) の順となっていました 国籍

授業概要と課題 第 1 回 オリエンテェーション 授業内容の説明と予定 指定された幼児さんびか 聖書絵本について事後学習する 第 2 回 宗教教育について 宗教と教育の関係を考える 次回の授業内容を事前学習し 聖書劇で扱う絵本を選択する 第 3 回 キリスト教保育とは 1 キリスト教保育の理念と目的

5 トピック 名古屋市におけるベトナム人住民およびネパール人住民 外国人住民の増加数全体に占めるベトナムとネパール両国籍の住民増加数は 56.9% を占め ました 増加が顕著な両国籍について取り上げます (1) ベトナム人住民 ( 第 4 表 第 4 表の2 第 4 表の3 第 4 表の4 第 4

2002 年 2 月 全国の 20~69 歳の男女 598 名に聞いた 外国人労働者に関する意識調査 第一生命保険相互会社 ( 社長森田富治郎 ) のシンクタンク ライフデザイン研究所 ( 所長千葉商科大学学長加藤寛 ) では 全国の 20 ~ 69 歳の男女 598 名を対象に標記についてのアンケ

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必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

コミュニケーションを意識した授業を考えるーJF日本語教育スタンダードを利用してー

外国人との共生・交流社会づくり推進指針(仮称)素案

Heb 11:7 信仰によって ノアは まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき 恐れかしこんで その家族の救いのために箱舟を造り その箱舟によって 世の罪を定め 信仰による義を相続する者となりました (1) ノアは 神から警告を受けた 1 創 6:17 Gen 6:17 わたしは今 いの

としたこと それに対してイエスは 今は 止めないでほしい 正しい ことをすべて行うのは 我々にふさわしいことです ( マタイ 3 15) と 言って ヨハネから洗礼をお受けになったと伝えています しかしマルコ福音書は そういうことは何も伝えていません イエス は ユダヤの全地方から集まって来た大勢の

聖書 : ピリピ 3:1~3 説教題 : 神の御霊による礼拝 日時 :2017 年 2 月 26 日 ( 朝拝 ) ピリピ人への手紙第 3 章に入ります この手紙は全部で 4 章からなっていますので 今日から後半部に入ることになります パウロは 最後に 私の兄弟たち と始めます この手紙はまだ半分ま

G4-2,G4-DMA ト 1 方針 2 Hondaの 3 4 メ ス ィ メント 6 ンス 1 環境 2 安全 3 4 人 社会 6 ラ ン 7 8 三 ラ ン対 務関 デ Honda は 人間は本 やを いてその実現のために思 し 創 する自由で個性的なである とています こうした人間が い 自

化共生推進プランは 2012 年に基本計画として策定された 期間は平成 24 年から平成 28 年の 5 年とされ 言葉 制度 こころという 3 つの壁を解消するということを重要な課題としている その中で特に重要視されていると考えられるのは制度の壁である これは 3 つの課題に対して考えられたそれぞ

で宣教していると非難されないように そういう恐れがあるところでは一切 献金を受 けませんでしたが ピリピ教会との間にその心配はなかったのです このことから見て も いかにパウロと良好な関係にあった教会だったかが分かります さてパウロはこの手紙の執筆時 どこにいたのでしょう この手紙から分かることは

の詩や歌があるかもしれません もちろん 賛美歌が挿入されることもあります しかし ほとんど の場合 礼拝のこの部分は 信経または信仰の宣言をそのクライマックスとして持つことが適切です 準備言葉の典礼が明らかになると それに対する準備とそれに対する祈りの反応がどのように適合しているかが分かりやすくなり

第 11 回中央執行委員会確認 / 外国人材の受入れに関する新たな在留資格の創設 に対する当面の取り組み Ⅰ. はじめに 6 月 15 日 政府は 経済財政運営と改革の基本方針 2018 において 専ら人手不足対応の観点から 即戦力となる外国人材を幅広く受け入れ るための新たな在留

年齢別では 10 才代では 知っている人は 40.0% であるのに対し 30 才代以上では 7 割以上の人が 知っていると回答しています 図表 3 おおきな地震が起きると考えられていることを知っているか ( 年齢別 ) 10 才代 (N=10) 40.0% 50.0% 10.0% 20 才代 (N=

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2017年度税制改正 相続税・贈与税国外財産に対する納税義務の範囲の見直し

2013 年 3 月 24 日 ( 日 ) 25 日 ( 月 ) 52 回目 Ⅵ-054 八福の教え 八福の教え 054 マタ 5:3~12 ルカ 6:20~26 1. はじめに (1) 文脈の重要性 1 文脈を無視して 山上の垂訓のある言葉を取り出すことが余りにも多い 2イエスは 神の国の福音をも

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

Rev 7:1 この後 私は見た 四人の御使いが地の四隅に立って 地の四方の風を堅く押さえ 地にも海にもどんな木にも 吹きつけないようにしていた (1) この後 私は見た 1 物事の時間的流れではなく ヨハネが見た幻の順番を示している 2この幻は 神の裁きが迫っていることを示唆している 3 地の四方

2. アウトライン (1) 過去の回顧 (1~4 章 ) (2) 律法の解説 (5~26 章 ) (3) 未来の展望 (27~30 章 ) (4) 指導者の交代 (31~34 章 ) 3. 結論 (1) 律法の本質 (2) イスラエルの将来 (3) 申命記とイエスの教え 申命記を通して イエスの教え

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第 1 表 国籍 地域別在留外国人数の推移 国籍 地域 平成 20 年末平成 21 年末平成 22 年末平成 23 年末平成 24 年末平成 25 年末平成 26 年末平成 27 年末平成 28 年末平成 29 年末平成 30 年 (2008) (2009) (2010) (2011) (2012)

外国人労働者の現状 資料 1


1 説 教 聖日礼拝 北浜チャーチ 黒田 禎一郎 2017 年 6 月 4 日 ( 日 ) 主 題 : すべてを感謝しましょう! テキスト :1コロサイ人への手紙 3 章 17 節 はじめに たった一度しかない人生 私たちはどのように生きているでしょうか? 生き方を知っている人は幸いです しかし 多

今日 復活日の聖書日課には三人のマリアが出て来ました 日曜日の朝早く イエスの墓に行った二人のマリア マグダラのマリアともうひとりのマリア さらにもうひとりのマリアがその前に登場していました 旧約聖書 出エジプト記第 15 章 20 節です アロンの姉である女預言者ミリアムが小太鼓を手に取ると 他の

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

2012 年 2 月 26 日 ( 日 ) 27 日 ( 月 )59 ローマ人への手紙総まとめ 総まとめ 1. はじめに (1) 執筆の意図 1 使徒としての使命 * 所々 かなり大胆に書いた (15:15) 2 使徒としての奉仕の原則 * 他人の土台の上に建てない (15:20) * これまで ロ

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

第 4 章基本的な考え方 1. 計画推進の基本的な視点 本計画は 以下に示す基本的な視点をふまえて 各施策 事業の展開を図っていきます 協働とパートナーシップにもとづく活動の充実地域福祉の主役は その地域に暮らす市民です 地域福祉の取り組みを進めていくためには 市民 事業者 行政がお互いに理解し 尊

H30全国HP

スライド 1

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Home Page http://www.kyoto.catholic.jp 4345 はじめにここ数年 日本は外国人旅行者が急増し 全国各地で外国人と日常的に出会う時代となりました 2020年には東京オリンピック パラリンピックを控えています グローバリゼーションが進んだ現代は世界的な移住の時代であり 移住現象は 時のしるし と言えます この50 年で世界の移民は約3倍に増加し 2億人を超える移住者が母国以外で暮らしています この移住問題に取り組むため 国際カリタスのマイグレーションキャンペーン Share the journey (日本では 排除ZEROキャンペーン~国籍をこえて人々が出会うために~ )が実施されています(2017年9月27 日~2019年9月まで) 京都教区においても ベトナム フィリピンの技能実習生が小教区のミサに参加するようになりました わたしたちは今まで以上に多国籍多文化の共同体づくりについて深く考え 積極的に行動する時だと思い 今年の年頭書簡のテーマを難民移住移動者のことにしました 最初に 聖書の中での外国人に対するおきてを確認し 次に京都教区のこれからの教会共同体づくりについて 基1 2019 12 頁 国籍を越えた神の国をめざして 改訂版2019年司教年頭書簡教会の もてなし の使命~国籍を越えた神の国をめざして~カトリック京都司教パウロ大塚喜直2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (1) http://www.kyoto.catholic.jp 京都教区広報委員会 ( 編集長村上透磨 ) 京都教区本部事務局京都市中京区河原町通三条上る TEL 075 211 3025 FAX 075 211 3041 honbu@kyoto.catholic.jp 点訳版 無料 ご希望の方は点訳ネット レジナ 代表嶽崎 ( たけざき ) 裕子さんまでお申込みください TEL FAX 079 431 8601

本的ないくつかの精神について 述べてみたいと思います なお 日本カトリック司教協議会の社会司教委員会の 国籍を越えた神の国をめざして 2016年改訂版を掲載しますので 合わせてお読みください 1.旧約聖書の外国人旧約聖書の中心舞台となるパレスチナは エジプトからバビロンを結ぶ回廊地域にあり 常に複数の民族や部族が行き交い この移住現象が救いの歴史の舞台となりました 当時は国ごと民族ごとに固有の神(神々)をもつ宗教国家でしたから 自国以外に住むことは すなわち 異教の地 に住むことであり 外国人は宗教的にも社会的にも不安定な状態でした ヘブライ語聖書では 外国人の呼び方に ザール (恐るべき外国人) ノクリ (避けるべき外国人) トーシャーブ (歓待される外国人) ゲール (尊重される外国人)と4つの言い方がありました このことは 歴史状況によって イスラエルの外国人に対する関係が 恐れ から 尊重 へ 敵 から 客 さらに 友人 と見なされていったことを表しています 自分の本来の場所 祖国 家から離れて生きる辛さの体験が聖書の人々の原体験であり それがまさにアブラハムの子孫のエジプトでの奴隷生活でした この体験は神のおきての一つと結びつき かつての自分たちの境遇を思い起こさせるだけではなく その時々の神の働きをも思い起こさせるものとなりました 寄留者を虐待したり 圧迫したりしてはならない あなたたちはエジプトの国で寄留者であったからである (出エジプト22 20 参照 申命記10 19 レビ記19 33 ~34 ) また イスラエルの神は 外国人(寄留者)だけでなく 孤児や寡婦など身寄りのない 貧しい人々の叫びに特に耳を傾けられるので イスラエルの人々には そのような人々を擁護するおきてが与えられました 主はこう言われる 正義と恵みの業を行い 搾取されている者を虐げる者の手から救え 寄留の外国人 孤児 寡婦を苦しめ 虐げてはならない またこの地で 無実の人の血を流してはならない (エレミヤ22 3) 2.新約聖書の もてなし のおきて新約の時代になると キリストの十字架のあがないによって 散らされている神の子たちが一つに集められ(ヨハネ11 52 参照) イスラエルとそれ以外の2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (2) http://www.kyoto.catholic.jp

民を分ける隔ての壁は打ち壊されました(エフェソ2 14 参照) ペトロがこう説教しています 神は人を分け隔てなさらないことが よく分かりました どんな国の人でも 神を畏れて正しいことを行う人は 神に受け入れられるのです (使徒言行録10 34 ~35 ) キリスト者は 一つのキリストのからだの一部分として生きているのであり キリストと一つになることで兄弟であり 同じ父の息子となるのです(ローマ8 14 ~16 ガラテヤ8 26 4 6参照) そこで新約聖書の中では 旅人への もてなし がキリスト教的生活の規範の一つとされました(ローマ12 13 ヘブライ13 2 Ⅰペトロ4 9) さらに もてなし は 教会リーダーの資質として挙げられ(Ⅰテモテ3 2 5 10 テトス1 8) 隣人愛を実践する方法として すべてのキリスト者に強く勧められました(ローマ12 13 ) 自国に来た外国人を 先入観と恐れを乗り越えて受け入れることは 人をあたたかく迎え入れるという 人としての当然の義務であるばかりでなく キリストの教えに忠実であるための信徒のつとめとなりました わたしは これを今 教会の福音的 もてなし の使命と呼びたいと思います 3.福音的 もてなし 聖書がいう もてなし とは 単に友人を家に招く接待以上に 深い意味を持っています もてなし のギリシャ語 フィロクセニア の意味は 見知らぬ人を愛する です もてなしなさい というおきては 自分から困っている人々のところに行き その人と人間関係を築きなさい という呼びかけとなります わたしの隣人とはだれか との質問を受けたときのイエスは 逆に問い返す形で答えられました(ルカ10 25 ~37 参照) わたしの隣人とはだれか ではなく わたしはだれの隣人になるべきか と問うべきではないのか たとえ見知らぬ人であっても 助けを必要としている人こそ わたしが手を貸すべき隣人であると サマリア人にとって 強盗に襲われ瀕死のユダヤ人は 外国人 ですが サマリア人がこのユダヤ人の 隣人になる という行動をとるための基準は 国籍ではありませんでした わたしたちを必要とする人 またわたしたちが助けることのできる人はだれでも わたしたちの隣人なのです(教皇ベネディクト十六世 回勅 神は愛 15 参照) わたしの隣人とはだれか と問うこと自体 すでに限度や条件を設けようとしていることになります 善きサマリア人のたとえは そうすることが正当かどうかという枠をこえて みずから進んで 限度を決めずに その人との関わりを大切にすることを教えています キリスト者は外国人に対してだけ この福音的 もてなし を実践するのではなく 人生で出会うすべての人に もてなし の手を差し伸べる使命を帯びているのです つまり もてなし は 人間のいのちに仕えるキリスト者の尊い使命なのです 4.キリストとの出会い福音的 もてなし は 相手に対する愛を表し キリストに対する愛を示善きサマリア人のたとえ ( フィンセント ファン ゴッホ ) 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (3) http://www.kyoto.catholic.jp

すことを意味します 見よ わたしは戸口に立って たたいている (黙示録3 20 ) 外国人がわたしたちの家の扉をたたくとき それはイエス キリストと出会うための大切な機会です 信仰者にとって 他者を受け入れるということは単なる博愛主義ではなく すべての人の中でキリストと出会うことを意味します キリストは わたしたちの隣人の中で とくに貧しい人 助けを必要としている人 弱く 無防備で 社会から除け者にされている人の内にいて 救いの手が差し伸べられるのを待っているのです こうして わたしたちは 生涯が終わるとき 兄弟姉妹の もっとも小さな者 のために果たした愛の実践によって 裁きを受けることを忘れてはなりません(マタイ25 31 ~45 参照) 旧約時代は アブラハムの子孫たちにとって 約束の地カナンでは外来者 巡礼者でした 土地はわたしのものであり あなたたちはわたしの土地に寄留し 滞在する者にすぎない (レビ25 23 ) 新約時代のわたしたちは どこで生まれ どこで暮らしていても 天の母国の住民であり 聖なる民に属する者 神の家族として(エフェソ2 19 ) 地上に永住するところはなく 旅人として生き(Ⅰペトロ2 11 参照) いつも最終目的地へ向かいつづける巡礼者としての存在です 第二バチカン公会議は次のように断言しています 神は全人類を地上の至るところに住まわせられたので(使徒言行録17 26 参照) すべての民族は一つの共同体をなし 唯一の起源を有する また すべての民族は唯一の終極目的をもっており それは神なのである (第二バチカン公会議 キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言 1) このように 福音的 もてなし は 地上を旅する神の民の使命として 現代の移住の時代にあって ふたたび重要性をもつようになってきました 5.移住する権利人には 自分の祖国を持ち 自分の国に自由に住み 自国の言語的 文化的 倫理的遺産を保ち発展させ 自分の宗教を公に告白し いかなるときにも人間としての尊厳を認められ ふさわしく扱われる権利があります 一方 人には移住する権利もあります カトリック教会も あらゆる人に いろいろな動機で外国の方と共に ( 山城ブロック ) 難民移住移動者セミナー in 京都 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (4) http://www.kyoto.catholic.jp

自分の国から出る可能性と よりよい生活条件を求めて他の国に入る可能性の両面があることを認めています(教皇ヨハネ パウロ二世 回勅 働くことについて 23 ) 昨今の移住時代にあって 他国に移住していく権利を認めるとともに 他国から移住してくる権利を 国際社会は法的にも認めなければなりません 教会は 自国では生活できずに安定を求めてやって来る外国人を より豊かな国々は可能な限り受け入れる義務があると教えています( カトリック教会のカテキズム 2241) 6.移住者に無関心ではいけないナザレの聖家族が初めにどのような拒絶を体験したかを思い浮かべましょう マリアは泊まる場所がなかったので 初めての子を産み 布に包んで飼い葉桶に寝かせました (ルカ2 7) イエスとマリアとヨセフは ヘロデの権力欲に脅かされ エジプトに逃れて避難し 祖国を離れて移住者となる経験をしました(マタイ2 13 ~14 参照) 現代のキリスト者にとって 移住者の存在は 福音的なチャレンジを促します 移住者の中には 劣悪な生活条件やあらゆる種類の危険から逃れようとしている難民も含まれています お前たちは わたしが飢えていたときに食べさせ のどが渇いていたときに飲ませ 旅をしていたときに宿を貸し 裸のときに着せ 病気のときに見舞い 牢にいたときに訪ねてくれた と イエスは困窮する人は自分のことだと言います(マタイ25 35 ~36 ) 教会は このキリストの教えを絶え間なく提示するだけではなく その教えを 時のしるし に適合させていかなければなりません 教皇フランシスコは 世界各地で莫大な難民が日々こうむる非人道的なあつかいを憂い あなたの兄弟に何をしたのか お前の弟は どこにいるのか お前の弟の血が わたしに向かって叫んでいる という創世記の問い(4 9~10 参照)が時を超えて 国際社会に向けられていると警告されます 移住者冷遇は偽善です 主は わたしたちの目を通して 兄弟姉妹たちの困窮を見つめ わたしたちが手を差し伸べ わたしたちが声を上げて不正義に抗議することを望んでおられます 沈黙は共犯です と断言されます(2018年7月6日 難民たちのためのミサ) わたしたちは ニュースで報じられる世界各地の難民と避難民に無関心であってはなりません 生命の危険と不安定な状況の中で生活し 社会から取り残され 排斥される最も弱く無防備な人々を見捨てておくわけにはいきません 移住者の困難な実情と 難民の過酷な状況について 常に関心をもっていることは わたしたちキリスト者の務めです 7.国境のない普遍的教会教会はカトリック(普遍的)であるので 一致と愛と平和を世界に広め 宗教の違いをこえ あらゆる民族的な排除や人種差別をなくし 地元民も移住の外国バンギの難民キャンプ 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (5) http://www.kyoto.catholic.jp

人も平和的に平等に共生する社会を築く使命を帯びています(教皇パウロ六世 回勅 エクレジアム スアム 参照) 日本の教会 というとき それは 日本人の教会 (Church of Japanese )ではなく 日本にある教会 (Church in Japan )という意味です 日本が多文化共生社会になっていく中 わたしたちキリスト者が福音的 もてなし を実践し 率先して 出会いの文化 を生み出す努力をしなければなりません これは教会にとって する しないの選択可能な付け足しの活動ではなく 教会の本来の使命として義務づけられたものです 今こそ すべての人に開かれた教会という本来の姿を証しするときです 自分たちの小教区に来る外国人の信徒は お世話をする対象という以上に 互いにキリストの兄弟姉妹として 一つの共同体を築く信仰の仲間なのです 京都教区のわたしたちも 外国籍の信徒への関心をつよめ 寛容さを示しながら お互いに対話の道を根気よく続けていくことが大切です 8. 気兼ねなく滞在できる家 小教区小教区を意味するギリシャ語の パロイキアparoikia (英語のparish の語源)は 新約聖書で寄留者の意味で最もよく使われる そばに住む (パロイケオparoikeo )という動詞から派生してできたことばです 小教区教会は やって来るすべての人を喜んで迎え入れて だれをも差別せず だれも部外者とならないところです 教会はすべての人のための家庭であり 特に労苦する人 重荷を負う人にとって 我が家のように安心してくつろげる場所でなければなりません 移住してきた信徒たちにとって 宗教(カトリック)は生活にとって欠かせないものであるだけでなく アイデンティティーや出身国の民族性の基盤であることも理解しましょう 移住家族に対しては 彼らがどこにいても教会の中に自分たちの故国を見いだすことができるように配慮すべきです これは多様性と一致のしるしである教会の本質的な務めです (教皇ヨハネ パウロ二世 使徒的勧告 家庭 77 ) 一つの小教区内で 地元の信徒と移住者のグループとの国際ファミリーデー外国の方と共に ( 三重北部ブロック ) 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (6) http://www.kyoto.catholic.jp

間で 便宜上の 棲み分け をしてはいけません それでは より深い交流の可能性を閉ざし 表面的な関係にとどまってしまいます むしろ 工夫と努力を惜しまず ともに活動する機会を重ねて 相互に信仰において豊かになる道を模索すべきです その一つの例として 京都教区でも ラテンアメリカからの移住信徒のおかげで 30 年前には知られていなかったブラジルの アッパレシーダの聖母 のお祭りや ペルーの セニョール デ ロスミラグロス (奇跡の主)のお祭りなどを一緒にお祝いするようになりました 地元の信徒はともに祝うことによって それぞれの国の教会の伝統と信心に触れ カトリックのより豊かな霊性を知り 教会の普遍性を体感できるようになりました 多国籍の共同体づくりで目指す交わりと一致とは 移住者の自らの文化的アイデンティティーを忘れ去ってしまうような同化を意味しているのではありません むしろ 地元信徒は 交流を通して移住者がもつ素晴らしい信仰のエネルギーを感じて 神の賜物としてのお互いの信仰のルーツをもっと良く知り合うようになります(教皇庁移住 移動者司牧評議会 指針 移住者へのキリストの愛 2 42 43 62 80 89 参照) 9.外国籍の信徒のみなさんへ京都教区の外国籍の信徒のみなさん あなたがたは カトリック信仰をもって日本に来たので 特別な意味で宣教師です 日本は みなさんの国のようにキリスト教文化の根がないので 信仰を生きようとすると難しさを感じるでしょう また 現代社会は ますます生活と人生から 神と教会の教えを排除しようとします そのような環境で 信仰の感覚を失ったり 教会の一員としての自覚を失ったりするような誘惑に負けないでください 京都教区のわたしたちは みなさんと出会って 信仰が人生にもたらす喜びと底力と 身についた信仰を日常で生きることの大切さを あらためて学んでいます 家族を大切にし 家庭で祈り こどもたちに信仰を伝え 生活のあらゆる場面で神の保護を祈り 感謝と希望を忘れない生き方は信者の模範です みなさんが母国語で霊的司牧と養成をより頻繁に受けたいという望みはよく理解しますが 地元の教会との交わりも大切にし より豊かな教会共同体づくりに協力してください 信仰の旅路で 亡命さえ体験したマリアは わたしたちの人生の旅路のあらゆる瞬間において 母として わたしたちのそばにおられます 主イエス キリストが 母マリアとともに 自分の土地を離れ 愛する人々と別れなければならなかったすべての人々の涙をぬぐい いやしを与えてくださいますように そして 世界中の旅路で 移動している人々の心に希望をもたらしてくださいますように 移民と難民のために働くすべての人とともに歩んでくださいますように 祈りましょう 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) (7) http://www.kyoto.catholic.jp

2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) http://www.kyoto.catholic.jp (8) 国籍を越えた神の国をめざして 改訂版 国籍を越えた神の国をめざして 再版にあたって 日本カトリック司教協議会社会司教委員会は 1992 年 11 月 ₅ 日 国籍を越えた神の国をめざして というメッセージを発表 1993 年 ₁ 月 20 日付で冊子を作成し 日本の教会全体に呼びかけました 当時は日本に外国人移住者が増えつつあった時期であり 教会にも外国籍信徒が多く訪ねるようになりました それに対応して外国語ミサも定着し始めました 日本人の信者は同じ信仰を持つ仲間が増えることに喜ぶ一方で 異文化の受け入れにとまどいを感じ始めていました 地方の小さな教会では日本人よりも外国人のミサ参加者が多くなり 外国人中心の教会になるところも出てきました そのような状況の中で 日本の教会が難民移住移動者を友として受け入れ その思いに寄り添うように呼びかけたのです それから 20 年以上がたち 外国人の置かれている状況は大きく変わってきました リーマンショック後に多くの労働者が帰国されましたが 国際結婚などで定住する人も増え 移住者も世代交代が始まっています 自治体レベルでのサービスも充実してきました その一方で ヘイトスピーチなどの排外主義の広がりや外国人差別 政府の難民対策など 以前と変わらないもの 以前よりも悪化しているものもあります 社会司教委員会では日本の教会の皆さんにいま一度 多国籍 多文化の共同体のありかたについて考えていただくために 初版当時から事情が変わった部分を難民移住移動者委員会が確認し データや文章の一部修正 説明を加えて この冊子を再版する運びとなりました 当時と現在の状況を比べながら すでに実現されたこと いまだ実現されていないこと 近年あらたに課題となってきたことなどを共同体で分ち合い 考え行動につなげていただければ幸いです 2016 年 ₉ 月 25 日日本カトリック司教協議会社会司教委員会委員長浜口末男 兄弟姉妹である皆さん 教会は移動する人々をあたたかく迎え入れ 奉仕する使命をもっています わたしたち司教は これらの責務を改めて確認し ここにメッセージを発表することにいたしました 移住 出会いの旅 ₁. 移住 は 救いの歴史 また神の国の発展に深いかかわりがある社会的現象です 先祖アブラハムは神の命令により 祖国を離れてカナンの地へと旅立ちました それ

(9) http://www.kyoto.catholic.jp 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) は 救い主を準備したイスラエルの民がカナンの地に定着するためでした そして 救いの完成である神の国の到来まで 神の民の旅は続いています かつて日本が貧しかったとき 北米 南米 アジア諸国に およそ百万人もの人々が日本から移住しました 現在 日系人と呼ばれる人々の子孫は 350 万人余 ( 公益財団法人海外日系人協会ホームページより 2014 年現在推定 ) におよび そのなかにはカトリック信者も少なくありません 近年 豊かになった日本を訪れるさまざまな国籍の人々が急増しています そのうち 日本に在留している外国人は 非正規滞在者を含めておよそ 230 万人 ( 法務省ホームページより ) といわれています これらの人々のなかにはカトリック教会を訪れる人も多く カトリック信者は少なくとも 41 万人以上と推定されます 今日 日本の教会は次のような在日 滞日外国人と絶え間なく出会い とくにさまざまな理由で支援 保護 援助を必要としている人々とかかわっています 1 外国人移住労働者とその家族 2 国際結婚による外国人配偶者 3 外国にルーツをもつ子ども 4 技能実習生 5 留学生 6 戦前 戦中の植民地時代に出稼ぎ または強制連行によって日本に来た韓国 朝鮮 台湾 中国の人とその子孫 7 難民 8 寄港する各国の船員 9 人身取引の被害者 10 刑務所や入管施設に収容されている外国人このような人々との出会いによって わたしたちがともに祈り ともに生きる教会や社会をめざすならば 日本の教会と社会に福音的変革がもたらされると思います 出会いのなかのおもな問題点 ₂. 現実の日本の社会では 人種 性 言語 文化 生活習慣 宗教などの違いに対する無理解から 差別や排外主義をさらに深める現象が見られます 教会では外国籍信徒の増加にともなって理解が深まってきましたが まだそのような動きも見られます 一方 外国から移住してきた人々とその家族は 社会的基盤がなく 生活状況が不安定であるため 家庭 職場や地域社会から疎外されがちです 多くの人々が 日本の法律によって保護されていないために 弱い立場におかれ 非人道的な扱いを受けることもあります 現在 日本の 出入国管理及び難民認定法 ( 入管法 ) は 外国人の在留について 27 の資格を定めています また 在留資格ごとに許される活動を厳しく規制しています この 30 年の間に国際結婚などで定住 永住する人々も増加しましたが 彼 / 彼女らに 日本人と同等の権利は保障されていません このような状況のもとで多くの問題が生じています そのおもなものは 日本の労働力不足をおぎなうために苛酷な労働を強いられる技能実習生への搾取 国際結婚女性の地域での孤立やドメスティックバイオレンス (DV) などの暴力の被害 外国にルーツをもつ子どもたちの疎外 非正規滞在者の入管収容施設での非人道的な扱い 難民の認定の少なさなどです また近年 全国各地のヘイトスピーチに代表される排外主義の広がりが大きな社会問題となっています

2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) http://www.kyoto.catholic.jp (10) 違い を超えて 教会の普遍性のあかし ₃. わたしたちキリスト者は キリストにおいて一つとなるように招かれています 日本の教会にとって 今がその好機であることをけっして見失ってはなりません 教会はあらゆる世代の人々が 地域 生活習慣 文化の違いを超えて 互いの相違を包容していくべき共同体です 互いの違いから生じる摩擦と痛みを体験することにより 共同体として回心の機会が与えられます この回心を伴うかかわりによって 教会共同体は多様性による豊かさを身につけることができるのです このように違いをとおして生きようと努力することは 他者に対して自分の生活形態を押しつけるという同化を強いることではなく 共に生きる新しい社会 文化を生み出すことになるでしょう 教会にとって だれもがキリストにおける兄弟姉妹なのです 日本の教会は けっして日本人だけの教会ではありません その意味で難民移住移動者を歓迎するにとどまらず さまざまな違いを越えて ひとつの共同体をつくり上げていく努力によってこそ 普遍的な教会を社会にあかしすることができるのです 異なる国籍の人々との出会いをとおして 新しい人間性を築いていく神の国をあかししていきます ガラテヤの信者にあてた聖パウロの次の教えは まさに現在のわたしたちへのメッセージでもあります あなたがたは皆 信仰により キリスト イエスに結ばれて神の子なのです 洗礼を受けてキリストに結ばれたあなたがたは皆 キリストを着ているからです そこではもはや ユダヤ人もギリシア人もなく 奴隷も自由な身分の者もなく 男も女もありません あなたがたは皆 キリスト イエスにおいて一つだからです ( ガラテヤ ₃ 26-28) 教会を訪れる人 また教会がかかわるすべての人が キリストに出会う者の喜びを分かち合うことができれば幸いです 日本の教会の課題 ₄. 多くの国の人々が家族や祖国を離れ 民族 宗教 言葉 文化の異なる日本へ移って生活している現実は 今も変化し続ける 時のしるし です この 時のしるし は 国籍を越えた神の国をめざしている日本の教会にとってのこれからも続く挑戦でもあり 福音宣教の新しい展開の可能性を指し示すものでもあります 現に 日本の各地で多数の信徒 修道者 司祭が献身的なかかわりをもち続けていることは社会の中でも高く評価されています しかし 時のしるしへの対応は 一部の信者だけのわざでなく 日々日本の教会全体が取り組まなければならない課題です そのおもなものは次のとおりです a. 市民運動や行政とともに取り組む課題 1 多発している人権侵害に対して 率先して人権擁護のために働く 医療 労働災害 不当解雇 賃金不払い 就職 住居探し 超過滞在者の在留許可 収容 強制送還 国際結婚のなかの DV 外国にルーツをもつ子どもの教育などの間題のために働き 協力する

(11) http://www.kyoto.catholic.jp 2019 年 ₁ 月 ₁ 日発行 (494 号 ) 2 国際結婚の家庭に必要な支援について 彼 / 彼女らと対策を考える 日本で生活していくうえで助けとなる 法律の知識 日本の生活習慣や料理 日本語などについてのオリエンテーションやセミナーを企画する 3 シェルター ( 緊急避難所 ) を設置し 市民グループと連携して共同使用できるように努力する 4 現 出入国管理及び難民認定法 のもとで非正規とされ 人権を無視されている人々が 正規化 されるように取り組む 5 出入国管理及び難民認定法 が基本的人権に基づいた法令となるように取り組むと同時に 差別と排外主義をなくし 外国人の人権が尊重されるための基本法である 人種差別撤廃基本法 外国人住民基本法 の法制定に向けた運動に取り組む 6 1990 年 12 月 18 日国連総会で成立した すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約 について教会の信者も学び 日本においても批准されるように 市民の運動とともに取り組む 7 移住者の送り出し国 受け入れ国 通過国の諸関係そして経済的 政治的背景 その他の課題について 相互の理解を深め連帯していく b. 教会独自の課題 1 日本の教会が 多国籍 多文化の共同体であることをあかしできるようにさらに努力する 2 各教区および小教区は 難民移住移動者委員会 (J-CaRM) の協力のもと 次の具体策の実現に努力する 外国籍信徒が積極的に典礼や秘跡に参加できるように 彼らの信仰表現を尊重しながら共同体としてふさわしいあり方を築いていく 外国語の典礼書も備えつけ 信仰教育に必要な研修会なども計画する 国籍にかかわりなく小教区の一員であるので 互いのコミュニケーションを図っていく また誰もが共同体をともに作っていく責任があるので できるだけいずれかの小教区に籍を置くことができるよう働きかける 外国籍信徒が情報から疎外されることがないように できるだけ通訳 翻訳が行われるよう配慮する 誰もが母国語でミサに参加できるよう 外国語ミサ実施への配慮が必要である 外国語ミサは小教区が主体となって計画することが望ましい その際 小教区共同体と分離しないようにする 誰もが 特に外国籍信徒も教会の会議や行事に主体的に参加できるよう配慮する 各教区に相談窓口が開設され 具体的な対応がなされることが望ましい 教会としても 外国人が直面するさまざまな問題に対応できるような体制 ネットワークを作っていく 以上の事項について さまざまな場で 神学校や信徒 修道者 司祭の養成の場で 可能なことから積極的に実施していきましょう 国籍を越えた神の国の実現をめざすわたしたちの努力のうえに 全人類の父である神の豊かな祝福を祈りつつ 2016 年 ₉ 月 25 日日本カトリック司教協議会社会司教委員会