0 平成 27 年度事業成果報告会資料 地熱発電技術研究開発事業 地熱貯留層掘削技術への取り組み 地熱部地熱技術課 2016 年 6 月 3 日
地熱貯留層掘削技術背景および目的 1 3 万 kw の地熱発電所建設に係るコスト試算例 地表設備 ( 発電タービンなど ) (71%)[186 億円 ] 地下調査と探査 (28%) [73 億円 ] 坑井掘削 (97%) [71 億円 ] 環境影響評価 (1%) 地表調査 (3%) [2 億円 ] 地熱発電所 3 万 kwモデルケース 調査 開発 73 億円 うち地表調査 2 億円 坑井掘削 71 億円 環境影響評価 3 億円 地上設備建設 183 億円 総額 259 億円 地下の調査 探査に要するコストのうち 坑井掘削にかかるコストが大半を占める 坑井掘削のコストを抑える必要性 掘削作業を短期間で仕上げる 短期間にすることで機器損料を削減する ( 地開協 第 3 回調査価格等算定委員会資料より )
地熱貯留層掘削技術背景および目的 2 掘削作業の短期間化を目指すには 掘進能率を向上させること 掘進能率を向上させるには PDC ビットが解決策のひとつとなりうる PDC:Polycrystalline Diamond Compact( 多結晶人工ダイヤモンド焼結体 ) 1973 年に実用化された PDC カッターは PDC ビットとして石油井の掘削に実用化されている 従来から使用されてきたローラーコーンビットと比べ PDC ビットは掘削速度が速く ビットライフも長い この石油用の PDC ビットは 地熱井の地層にマッチングする場合 しない場合があり 地熱に特化した PDC ビットの開発が必要である
地熱貯留層掘削技術目標 - 地熱用 PDC ビットの開発 3 地熱井用 PDC ビットを開発する PDC ビット PDC カッターをビットボディに埋め込んだビット 回転部分なし ローラーコーンビット 坑井の掘削に広く使用されている 回転部分あり
地熱貯留層掘削技術技術的な課題 4 目標は 地熱井用の PDC ビットの開発 これを達成するため (1)PDC カッターの開発 (2) そのカッターを装着したビットの試作を実施 PDCカッターの課題 耐摩耗性に優れていること 耐欠損性に優れていること 耐熱性に優れていること PDCビットの課題 掘進能率が優れていること 耐久性 ( ビットライフ ) が優れていること
地熱貯留層掘削技術平成 27~29 年度スケジュール 5 項目平成 27 年度平成 28 年度平成 29 年度 (1)PDC カッターの開発 カッターの製作 評価カッターの改良 評価カッターの改良 評価 (2)PDC ビットの試作 カッター試験用コアリングビット製作 フィックスドカッタービットの製作 評価 フィックスドカッタービットの製作 評価 (3)PDC ビットの実証試験 コアリングビットの室内試験 評価 室内試験地熱フィールドにおける試験 地熱フィールドにおける試験
地熱貯留層掘削技術目標 ( 平成 27 28 年度 ) 6 平成 27 28 年度の本技術開発の目標は 地熱用の PDC カッターを開発すること 平成 27 年度は PDC カッターを用いたコアリングビット ( 右図 ) を製作し 室内実験により PDC カッターの評価を行う PDC カッターの平成 27 28 年度目標値 一軸圧縮強度 200MPa(29,000psi) の花崗岩を使用して以下の最終目標値を設定する 掘削速度 : 掘進長 : 最大摩耗幅 : 7cm/min(4.2m/h) 160m 以上 約 4~5mm
地熱貯留層掘削技術目標 ( 平成 29 年度末時点 ) 7 平成 29 年度末時点における本技術開発の目標は以下のとおり ( 一軸圧縮強度が 100MPa 程度の地熱井を想定 ) 掘進能率 : 通常の 2 倍程度 8-1/2in 孔掘削の場合 60m/ 日 120m/ 日 耐久性 ( ビットライフ ): 通常の 5 倍増 8-1/2in 孔掘削の場合 150m/ 個 750m/ 個 8-1/2in 孔長 800m の場合 ( 地熱井 2000m の標準掘削 ) で ビット交換の掘具揚降管回数を 5 回から 1 回に削減する 成果の波及効果の見込み (8-1/2in 孔掘削の場合 ) 掘削コストの低減 500 百万円のうち 21~25 百万円削減 (4~5% 減 ) 掘削期間の削減約 100 日のうち 6~7 日削減 (6~7% 減 )
地熱井掘削用 PDC ビットの開発 * 宮下庸介 * 三菱マテリアル株式会社株式会社クリステンセン マイカイ国立研究開発法人産業技術総合研究所 1
報告内容 開発体制 実施内容 PDC カッターの開発 室内掘削性能評価 ( コアビット ) 岩石切削特性評価 (PDC カッター ) PDC ビットの開発 まとめと今後の予定 2 PDC : Polycrystalline Diamond Compact 多結晶ダイヤモンド焼結体
開発における各機関の連携 PDC カッター開発 ( 三菱マテリアル ) PDC ビット開発 ( クリステンセン マイカイ ) 掘削性能評価 ( 産業技術総合研究所 ) 3
平成 27 年度実施内容 地熱井の掘削コスト削減に向けた地熱井掘削用 PDC ビットの開発 平成 27 年度 PDC カッターの試作 PDC ビットの試作 試作ビットの室内掘削性能評価 工業所有権 技術動向調査 4
報告内容 開発体制 実施内容 PDC カッターの開発 室内掘削性能評価 ( コアビット ) 岩石切削特性評価 (PDC カッター ) PDC ビットの開発 まとめと今後の予定 5
Pressure (GPa) Pressure (GPa) ダイヤモンドの焼結 1 PDC : ダイヤモンドと Co の焼結体 35 30 25 20 diamond Co-C eutectic line 7 diamond 6 焼結領域 15 10 5 0 graphite 0 1000 2000 3000 4000 Temperature ( ) お 5 graphite 4 1200 1600 2000 Temperature ( ) 6 ダイヤモンド焼結における状態図
ダイヤモンドの焼結 2 ネッキング Diamond Diamond Diamond Diamond 溶融 Co ダイヤモンド粒子の焼結機構 7
超高圧発生装置 1. アンビル 2. シリンダー 3. 焼結素材 PDC 原料 ( ダイヤモンドと Co 等 )/ 超硬合金 4. NaCl 5. グラファイトヒーター 6. スチールリング 7. ガスケット 超高圧装置による PDC 焼結方法の概要 8
PDC カッターの作製 ダイヤモンド粉末 原料粉 超硬合金基体超硬合金台金 組み込み 超高圧焼結 9 PDC カッター 研磨加工 取り出し
PDC カッターの試作 PDC 層 超硬合金 PDC カッターの外観 (Φ8.2) 開発 PDC カッタ - 市販品 2 種類 ( 耐摩耗性重視型 耐衝撃性重視型 ) 10 室内掘削性能評価へ
PDC カッターの組織 耐摩耗性重視型 ( 市販 ) 耐衝撃性重視型 ( 市販 ) 20 μm 20 μm 11 黒色 : ダイヤモンド 白色 :Co 開発品 20 μm
報告内容 開発体制 実施内容 PDC カッターの開発 室内掘削性能評価 ( コアビット ) 岩石切削特性評価 (PDC カッター ) PDC ビットの開発 まとめと今後の予定 12
コアビット (Φ66mm 44.8mm) PDC カッター 13
室内掘削性能評価装置 計測 制御室 岩石供試体 14
室内掘削性能評価装置 仕様 ビット荷重 :30 tf トルク :300 kgf m ビット回転数 : 500rpm 掘削流体流量 : 220L/min 15 掘削性能評価条件 稲田花崗岩 ( 一軸圧縮強度約 220MPa) 掘進速度 : 7cm/cm 一定 ビット回転数 100rpm
16 掘削性能評価の様子
ビット荷重 [kn] ビット荷重の推移 60 50 40 30 耐衝撃性重視型 耐摩耗性重視型 結果 1) 掘削長の増大に伴って一定の掘削速度 (7cm/min) を保つために必要なビット荷重は増加 20 10 0 0 20 40 60 80 100 120 掘削長 [m] 開発品 2) 開発品を装着したコアビットが他のコアビットよりも低い ( 低いビット荷重で一定の掘削速度を維持できた ) 17
ビットトルク [kn m] ビットトルクの推移 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 耐摩耗性重視型 耐衝撃性重視型 開発品 結果 1) ビットトルクは耐摩耗性重視型が最も大きく 開発品と耐衝撃性重視型に大差はない 0.1 0.05 18 0 0 20 40 60 80 100 120 掘削長 [m]
開発試作品の刃先状態 (a) 19 (b) (a) (b) 結果 開発試作品の刃先状態は 市販品 ( 耐摩耗性重視型 ) と同程度 (a) では ダイヤモンド層にチッピングが見られ また肉眼で確認できる程度のクラックが発生 (b) では PDC カッターに生じた摩耗面が超硬合金層にまで及んでいることを確認
報告内容 開発体制 実施内容 PDC カッターの開発 室内掘削性能評価 ( コアビット ) 岩石切削特性評価 (PDC カッター ) PDC ビットの開発 まとめと今後の予定 20
切削特性評価 最適な ( 切削抵抗が最小となる ) レーキ角を検討 レーキ角 カッターの進む方向 切削抵抗の鉛直成分 ( 背分力 ) カッターの受ける抵抗 ( 切削抵抗 ) 切削抵抗の水平成分 ( 主分力 ) 21
切削特性評価結果 来待砂岩 ( 一軸圧縮強度約 54 MPa) 千草安山岩 ( 一軸圧縮強度約 185 MPa) 結果 岩石の種類によって異なる切削特性 岩種に応じた PDC カッターや PDC ビットの開発のためには より幅広い範囲のレーキ角での切削特性の取得が必要 22
報告内容 開発体制 実施内容 PDC カッターの開発 室内掘削性能評価 ( コアビット ) 岩石切削特性評価 (PDC カッター ) PDC ビットの開発 まとめと今後の予定 23
カッターの配置検討 1 PDC カッターの周回軌跡を考慮したカッター配置の割り出し 24
カッターの配置検討 2 25 PDC カッターへの負荷を均一化するための構造解析
掘削流体の流れの把握 3D 孔壁モデル 流入面 流出面 流体解析結果の一例 回転数 600rpm 送水量 1,200L/min 26
PDC ビット用モールド PDC ビット用のモールド試作品 27
PDC ビットの試作 試作した PDC ビット (6-1/4inch) の外観 28
報告内容 開発体制 実施内容 PDC カッターの開発 室内掘削性能評価 ( コアビット ) 岩石切削特性評価 (PDC カッター ) PDC ビットの開発 まとめと今後の予定 29
まとめ 開発した PDC カッターの掘削性能評価試験の結果 市販品と比較して 掘削長の増加に伴ってチッピングや摩耗が進展しながらもビット荷重の増加は少なく ビットトルクは同程度以下 PDC カッターの配置解析や掘削流体の可視化とともに 性能向上のため必要となる高精度なモールド製作手法を確立 その結果として 6-1/4 PDC ビットを開発 現時点で良好な掘削性能を確認 今後の課題 摩耗状況等の分析による改良点の抽出や改良方法の検討 PDC カッターの岩石切削抵抗データ等の蓄積によるレーキ角の最適化などの基礎データの蓄積 フィードバック これら成果を踏まえ 8-1/2 PDC ビットを開発 これら PDC ビットを用いた地熱井掘削現場での実証試験に向けた検討 30