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学報_台紙20まで

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パンフレット2013最終版

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る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

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臨床研究に関する研修会1

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

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臨床的な使用確認試験 評価表

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は


界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

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医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

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01事務局頭紙(千葉大) 千葉大確認後 修正

Interview Zero bleedingeding -- ここ 10 年を振り返っても 血友病の治療は大きく進歩していますね 最も大きな進歩は 遺伝子組換え凝固因子製剤が普及したことでしょう これにより 安全性や安定供給に関する心配が大きく減りました そして昨年には 従来の製剤に比べて長時間作

表面から腫れがわかりにくいため 診断がつくまでに大きくなっていたり 麻痺が出るまで気付かれなかったりすることも少なくありません したがって 痛みがずっと続く場合には要注意です 2. 診断診断にはレントゲン撮影がもっとも役立ちます 骨肉腫では 膝や肩の関節に近い部分の骨が虫に食べられたように壊されてい

2. 検討 ~ 医療に関する事故の特殊性など (1) 医師等による医療行為における事故 医師等が患者に対してどのような医療行為を施すべきかという判断は 医師等の医学的な専門知識 技能に加え 医師等の経験 患者の体質 その時の患者の容態 使用可能な医療機器等の設備等に基づきなされるものである ( 個別

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

( 参考 ) 国民年金法施行令別表 厚生年金保険法施行令別表第 及び第

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8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

Transcription:

[ 記者発表資料 ] 2011 年 9 月 9 日東京大学医学部附属病院 鼻変形の治療用再生軟骨を開発し 世界初の臨床研究を開始 インプラント型再生軟骨で口唇口蓋裂による高度な鼻変形を治す 患者さんの耳からわずかな軟骨を取って 鼻のかたちの軟骨を再生させる技術 ( インプラント型再生軟骨 ) を 東京大学医学部附属病院顎口腔外科 歯科矯正歯科教授高戸毅 ティッシュ エンジニアリング部特任准教授星和人 ( 軟骨 骨再生医療寄附講座 ) らが開発しました さらに 再生軟骨を口唇口蓋裂の患者さんの鼻に用いる 世界初の臨床研究がスタートしました これまで 顔面の軟骨の変形や欠損を治療するためには 身体の他の部位の軟骨や骨を移植する方法などが行われてきましたが 鼻の高度な変形を治せるような大きな軟骨を採取することはできませんでした この再生軟骨を用いることにより 耳の目立たない部位からわずかな軟骨を採取するだけで鼻の高度な変形を治せるようになると期待されます また この技術は耳の変形 気管の軟骨の欠損 そして将来は関節の軟骨の再建などに応用できると期待されています 日時 2011 年 9 月 9 日 ( 金 )10 時 30 分 ~11 時 30 分 ( 開場 :10 時 15 分 ) 発表者 高戸毅東京大学医学部附属病院顎口腔外科 歯科矯正歯科教授星和人東京大学医学部附属病院ティッシュ エンジニアリング部軟骨 骨再生医療寄付講座 ( 富士ソフト ) 特任准教授 会場 東京大学医学部附属病院管理 研究棟 2 階第一会議室 背景 軟骨は鼻や耳の形を保ったり 関節のなめらかな運動を維持したりするために重要な組織です しかし 軟骨は 先天性の異常や老化に伴う病気で一旦 欠損や変形ができてしまうと自然には治らず 顔の形が保てない 生活や仕事での動作ができない などといった日常生活に著しい不自由を生じます わが国では 口唇口蓋裂の鼻の変形や小耳症 変形性関節症などを合わせると 2000 万人以上の方々が 軟骨の何らかの病気にかかっている

といわれています 再生医療は 患者さんの身体の細胞や組織の一部を取って試験管の中で培養し 必要な組織や臓器を再生させて治療に使う新しい医療です 自己修復する力に乏しい軟骨に対しては 体外で培養して人工的に軟骨をつくる再生医療の導入が期待されています 現在 液状あるいはゲル状の再生軟骨が使用可能になっていますが 硬さがないため顔面の高度な変形には直接使用できないのが現状です そのため 鼻や耳の形をした 十分な硬さと弾力性を持つ再生軟骨の開発が待たれていました このような形や硬さのある再生軟骨は 顔面の軟骨以外に 気管の軟骨や 将来的には患者さんの数が多い関節の軟骨にも応用できる可能性があるため その実現が待たれています 内容 発表者らは 鼻に適した硬さと形をもった再生軟骨を開発しました 患者さんの血液の一部を使って 患者さんの耳から採取した細胞を培養し コラーゲンと体の中で吸収されるプラスチックでできている特殊な素材 ( 足場素材 ) と組み合わせる方法で実現しました 発表者らはこの再生軟骨を 注入するのではなく 手術で埋め込む ことができるという意味から インプラント 型再生軟骨と呼んでいます 再生軟骨の大きさは 長さ約 50 mm 幅約 6 mm 厚さ約 3 mm です ( 図インプラント型再生軟骨の概要 ) インプラント型再生軟骨の概要 再生軟骨組織 < 拡大図 > アテロコラーゲン耳介軟骨細胞ポリ乳酸でできた多孔体

具体的な作製方法は まず 患者さんの耳の裏から少量 (5-10 mm) の軟骨を採取して軟骨細胞を取り出します この軟骨細胞を 患者さんから採血した血液の血球以外の成分を使って培養し 最終的には細胞を数にして約 1000 倍にまで増やします その細胞を アテロコラーゲンハイドロゲル (*1) とポリ乳酸多孔体 (*2) によって構成される再生医療用の特殊な素材 ( 足場素材 ) に投与してインプラント型再生軟骨を作ります ( 図インプラント型再生軟骨の製造方法 ) 患者さんの軟骨は耳の裏から少量採取するだけなので 手術の傷は目立たず 耳の変形もほとんど残りません インプラント型再生軟骨の製造方法 1) 耳の軟骨の採取少量 2) 再生軟骨の作製軟骨細胞 増殖培養 血液の成分 ( 血清 ) 患者 培養開始 細胞回収 3) 再生軟骨の移植 5 cm インプラント型再生軟骨培養細胞 約 30 日 + 足場素材 このインプラント型再生軟骨を鼻の高度な変形を患う口唇口蓋裂の患者さんに用いる 世界初の臨床研究がスタートしました 口唇口蓋裂は先天性異常の一つであり 生まれつき唇の一部や上あごが裂けている病気です 鼻は顔の中心部に位置するため 鼻の変形の修正は患者さんにとって非常に重要な治療です 今までは 鼻の高度な変形を治せるような大きな軟骨を身体から採取することができませんでした しかし この再生軟骨を用いて治療することにより 目立たない部位からわずかな軟骨を採取することにより高度な変形が治せるようになると期待されます この臨床研究では 口唇口蓋裂による高度な鼻変形の患者さん3 人にインプラント型再生軟骨を移植し 安全性や有効性を確認します ( 図インプラント型再生軟骨の使用方法 )

インプラント型再生軟骨の使用方法 対象患者 : 口唇口蓋裂における鼻変形のうち 隆鼻術および鼻尖形成が必要な 高度な変形を有する患者 (20 歳以上 ) 鼻骨 鼻尖 上唇 インプラント型再生軟骨移植 必要に応じて 鼻尖 鼻翼や口唇の修正も行います この臨床研究は 厚生労働省 ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針 (*3) にのっとった審議を経て 東京大学大学院医学系研究科ヒト幹細胞を用いる臨床研究審査委員会の承認を受けています 今年 4 月に患者さんへ移植する臨床研究を開始し 1 人目の患者さんが移植を終え 現在順調に経過しています 現在 2 人目の患者さんへの移植準備をしています なお このインプラント型再生軟骨の基礎技術の開発は 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構健康安心イノベーションプログラム 三次元複合臓器構造体研究開発 文部科学省科学技術振興調整費 組織医工学における材料 組織評価法の確立 厚生労働省厚生労働科学費補助金事業 3 次元再生軟骨 骨組織における安全性と有効性の確立 および富士ソフト株式会社からの寄付金 といった研究助成により行われました この臨床研究が終了した後には 臨床試験 ( いわゆる治験 ) を実施してインプラント型再生軟骨がより多くの患者さんに使用できるようにしてゆく予定です また より安全で簡便な再生医療を可能にするため 培養期間をできるだけ短縮し できれば少量の細胞を移植しただけで 生体内で自律的に再生が起こる次世代機能代替技術も開発して行きます ( 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 生体内で自律的に成熟する臓器再生デバイスのための基盤研究開発 )

注釈 (*1) アテロコラーゲンハイドロゲルアテロコラーゲンは コラーゲンを特殊な酵素で処理して生体内での炎症反応を最小限に抑えた生体材料です 現在 陥凹した組織の補填剤として治療に用いられています アテロコラーゲンハイドロゲルは アテロコラーゲンをゲル状にした素材のことです (*2) ポリ乳酸多孔体ポリ乳酸は体内で吸収されるプラスチックです 骨折などの治療において 骨をつなげるためのスクリューやプレートとして使われています 本臨床研究に用いたインプラント型再生軟骨では ポリ乳酸をスポンジのような構造にしたポリ乳酸多孔体を 細胞の足場素材として用いました (*3) 厚生労働省 ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針 再生医療の安全性と有効性を確保するための指針 再生医療を臨床応用するための規則 参照 URL 顎口腔外科 歯科矯正歯科 http://plaza.umin.ac.jp/~oralsurg/ ティッシュ エンジニアリング部 http://square.umin.ac.jp/t-e/ -------------------------------------------------------------------------------- 本件に関するお問い合わせ 東京大学医学部附属病院顎口腔外科 歯科矯正歯科教授高戸毅電話 :03-5800-8943( 直通 ) FAX:03-5800-6832 E-mail:takato-ora@h.u-tokyo.jp 東京大学医学部附属病院ティッシュ エンジニアリング部軟骨 骨再生医療寄付講座 ( 富士ソフト ) 特任准教授星和人電話 :03-5800-9891( 直通 ) FAX:03-5800-9891 E-mail:pochi-tky@umin.net 取材に関するお問い合わせ 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター担当 : 小岩井 渡部電話 :03-5800-9188( 直通 ) E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp --------------------------------------------------------------------------------