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薬剤耐性 (AMR について 背景 抗菌薬が効かなくなる薬剤耐性 (AMR 感染症が世界的に拡大 公衆衛生および社会経済的に重大な影響を与えている 一方で 新規の抗菌薬等の開発は近年停滞 このままでは AMR に対する対抗手段が枯渇 米国における新規抗菌薬剤数と薬剤耐性菌の出現傾向の推移 国際社会の

薬剤耐性 (AMR) に起因する死亡者数の推定 0 年現在の AMR に起因する死亡者数は低く見積もって 0 万人 何も対策を取らない場合 ( 耐性率が現在のペースで増加した場合 ) 00 年には 000 万人の死亡が想定される ( 現在のがんによる死亡者数を超える ) 欧米での死亡者数は 0 万人

項目 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランについて 耐性菌の基礎知識 薬剤耐性モニタリング (JVARM) の成績 コリスチン耐性について 薬剤耐性菌のリスク分析 動物用医薬品の慎重使用について 2

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プランの策定の支援などが議論されました こうした状況を踏まえ 我が国においても薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランを取りまとめるべく G7 ドイツ ベルリン保健大臣会合後の昨年 2015 年 11 月 厚生労働省に薬剤耐性 (AMR) タスクフォースを設置し 有識者ヒアリング等による検討を重ね

平成 29 年度感染症危機管理研修会資料 2017/10/11 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランの進捗 厚生労働省健康局結核感染症課 アウトライン 1. 現状と動向 2. アクションプラン 3. 施策と進捗状況 4. 今後の方向 1

図 1 薬剤耐性菌とは? 抗菌剤 ( 抗生物質や合成抗菌剤 ) が効かない細菌のことです 抗菌剤 抗菌剤があっても生存 増殖 ( 薬剤耐性菌 ) 抗菌剤により死滅 ( 感受性菌 ) (2) 薬剤耐性問題と畜産との関わり 物を安定生産するために必要不可欠な資材で す しかし 抗菌剤の使用により 薬剤耐

家畜衛生分野における薬剤耐性菌調査 (JVARM: Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System:1999~ ) 動物用医薬品製造販売業者 抗菌剤販売量の調査 製薬 野外流行株の薬剤耐性調査 食品媒介性病原菌 指標菌の薬

資料 2-1 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン に基づく施策のフォローアップについて ( 概要 ) 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン ( 平成 28 年 4 月 5 日国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議決定 ) に記載の取組について 昨年のフォローアップ以後の各府省における

薬剤耐性対策の今を知る会 ~ 世界の動き 日本の動き ~ 2018 年 12 月 2 日 ( 日 )13:00~17:00 東京大学弥生講堂一条ホール 薬剤耐性を巡る国際的な動き : ワンヘルスの視点から 農林水産省消費 安全局畜水産安全管理課課長補佐岡村行岳 1

は AMR 率は今から 2030 年までの間に OECD 諸国に比べ 4~7 倍速い速度で広がると予想される 既に予算の制約によっ て弱体化している医療制度にあってこのように耐性が高まっていることは 多数の死亡者が出る状況を生み出すことになり 主に 新生児や乳幼児 高齢者が犠牲となるおそれがある 効

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中医協総会の資料にも上記の 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス から一部が抜粋されていることからも ガイダンスの発表は時機を得たものであり 関連した8 学会が共同でまとめたという点も行政から高評価されたものと考えられます 抗菌薬の適正使用は 院内 と 外来 のいずれの抗菌薬処方におい

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背景 ~ 抗菌薬使用の現状 ~ 近年 抗微生物薬の薬剤耐性菌に伴う感染症の増加が国際的にも大きな課題の一つに挙げられている 欧州及び日本における抗菌薬使用量の国際比較 我が国においては 他国と比較し 広範囲の細菌に効く経口のセファロスポリン系薬 キノロン系薬 マクロライド系薬が第一選択薬として広く使


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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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目次はじめに... 4 略称... 6 我が国における薬剤耐性の現状とその課題... 8 我が国における薬剤耐性の現状... 8 我が国における薬剤耐性対策の取組 新たな薬剤耐性 (AMR) 対策の方向性 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン ( )..

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よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

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1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

Transcription:

資料 2 薬剤耐性 (AMR) の現状と対応 平成 28 年 12 月 5 日 健康局結核感染症課 1

薬剤耐性 (AMR:Antimicrobial Resistance) について 線は% 棒グラフは棒グラフ : 米国における新規抗菌薬上市数赤背景 抗菌薬等が効かなくなる薬剤耐性 (AMR) 感染症が世界的に拡大 公衆衛生および社会経済的に重大な影響を与えている 一方で 新規の抗菌薬等の開発は近年停滞 このままでは AMRに対する対抗手段が枯渇 米国における新規抗菌薬上市数と薬剤耐性菌の出現傾向の推移 国際社会の動向 昨年のWHO 総会でAMRに対するグローバル行動計画を採択 加盟国には 2 年以内に国家行動計画の策定 実行を要求 昨年のG7エルマウサミットでは AMR 対策を推進することで一致 今年のG7 伊勢志摩サミット及びG7 神戸保健大臣会合においても主要議題であった 今年 9 月の国連総会では AMRに関するハイレベル会合が開催された 我が国の対応 医療 農畜水産 食品安全の各分野において モニタリング ( 耐性菌の監視 ) 抗微生物薬の適正使用等の取組を実施 4 月 6 日に我が国の行動計画を策定し 分野横断的に取組 ( ワンヘルス アプローチ ) を推進 4 月 16 日に アジア太平洋地域の保健大臣らを招き WHOと共催でアジア AMR 東京閣僚会議を開催 G7 伊勢志摩サミット議長国として AMRについて国際協力を推進 米国病院の ICU におけるバンコマイシン耐性腸球菌の出現率 数年出典 : Schäberle TF, Hack IM, Trends Microbiol. 2014; 22: 165-167. 2

薬剤耐性の仕組み 自然耐性 耐性菌の選択と増加 環境下には ( ヒト 動物含め ) 必ず一定数の耐性菌が存在 抗菌薬投与で耐性菌のみ残る 耐性遺伝子 耐性遺伝子の獲得 抗菌薬 感受性菌 耐性菌 耐性菌 次の世代は耐性菌だけになる 感受性菌 耐性化 薬剤耐性遺伝子 3

薬剤耐性菌 ( 遺伝子 ) の伝播経路 選択圧 ヒト 医薬品 ヒト 食品 環境 動物 動物 選択圧 動物用医薬品抗菌性飼料添加物 4

2000 年から 10 年間のヒトにおける抗菌薬使用量の変化 日本 我が国の抗菌薬使用量は 2.5-4.0% 減少している 出典 : Van Boeckel TP et al., Lancet Infect Dis 2014; 14: 742-750. 5

薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン (2016.4.5) における数値目標医療分野における抗菌薬使用量 セファロスポリン その他の β ラクタムキノロンマクロライド等ペニシリンその他 Greece Romania Belgium Cyprus France Luxembourg Italy Ireland Portugal Malta Iceland Croatia Spain United Kingdom Slovakia Poland Finland Bulgaria Czech Rep. Norway Denmark Lithuania Germany Slovenia Sweden Austria Hungary Latvia Estonia Netherlands Japan 15.8 抗菌薬使用量は抗微生物薬適正使用 (AMS) の指標になる 日本は使用量自体は多くはないが 幅広い細菌に有効であるものが多いセファロスポリン キノロン マクロライドの使用割合が極めて高い 適正使用の推進により これらの使用量および使用割合を減らすことが重要 0 5 10 15 20 25 30 35 人口 1000 人あたりの平均一日抗菌薬使用量 ECDC AMR Surveillance report 2012, Muraki Y et. Infection. 2013; 41: 415-23. ( 欧州は 2010 年 日本は 2013 年 ) 6

肺炎球菌ペニシリン非感受性48% ヒトにおける薬剤耐性率 * 色ブドウ球菌メチシリン耐性薬剤耐性菌の検出割合 日本の 薬剤耐性菌の検出割合は ヒトにおいてはカルバペネム系抗菌薬以外は他国と比較して高いものが多い オランダエストニアベルギー中国オーストラリアチェコオーストリアノルウェーアメリカ合衆国カナダイギリスハンガリーデンマークスウェーデンドイツポルトガルスロベニアスロバキアラトビアフィンランドイタリアルクセンブルグアイスランドアイルランドブルガリアフランスリトアニアルーマニアクロアチアスペインポーランドキプロスマルタタイ日本 アイスランドノルウェースウェーデンオランダデンマークフィンランドエストニアラトビアスロベニアルクセンブルグオーストリアリトアニアドイツチェコイギリスポーランドベルギーフランスブルガリアアイルランドカナダスペインクロアチアハンガリータイスロバキアオーストラリアキプロスイタリア中国ギリシャポルトガル日本アメリカ合衆国マルタ韓国ルーマニア 率( %) 黄緑デンマークオランダイギリスノルウェースウェーデンアイスランドアイルランドエストニアフィンランドベルギーオーストリアブルガリアドイツチェコマルタ率フランス日本 17% ( %ルクセンブルグスペイン ) リトアニアキプロスポルトガルクロアチアスロベニアイタリアタイラトビアハンガリーポーランド 51% ギリシャスロバキアルーマニア 膿菌カルバペネム耐性率( %) ヒトにおける代表的な微生物の薬剤耐性率の国際比較 (2014 年 ) 出典 : Antimicrobial Resistance: Global report on Surveillance 2014, 世界保健機関 (WHO) 2014 年 7

畜産分野における薬剤耐性率 * * 検出された細菌のうち耐性菌の割合 日本の 畜産分野における薬剤耐性菌の検出割合は減少傾向にあり 大腸菌のテトラサイクリン耐性率は 2001 年の 59.0% から 2014 年の 45.2% へと減少した またヒト医療で極めて高度に重要とされる第 3 世代セファロスポリン及びフルオロキノロン系の耐性率は先進諸国と同様低水準である 代表的な畜産動物由来微生物の薬剤耐性率の国際比較 (2013 年 ) テトラサイクリン耐性率 (%) フルオロキノロンデンマーク耐性率 (%) 第 3 世代 米国 スイス セファロスポリン 米国 牛 デンマーク耐性率 (%) スイス牛 デンマーク オーストリア オランダ ハンガリー ドイツ クロアチア ベルギー ポーランド 日本 スペイン フランス 豚 0% 40% 80% 肉用鶏 米国 オランダ 日本 牛 豚 肉用鶏 0% 40% 80% フランス 日本 ドイツ オーストリア ベルギー ハンガリー スペイン 0% 40% 80% 豚 肉用鶏 耐性率 (%) 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 わが国の家畜由来大腸菌の薬剤耐性率の推移 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 テトラサイクリン 第 3 世代セファロスポリン フルオロキノロン 出典 : 平成 25 年度家畜由来細菌の抗菌性物質感受性実態調査結果 (JVARM), Animal Antimicrobial Resistance Annual Report 2013 (NARMS), Scientific Report of EFSA and ECDC EU Summary Report on Antimicrobial Resistance in Zoonotic and Indicator Bacteria from Humans, Animals and Food in 2013, DANMAP2013 - Use of Antimicrobial Agents and Occurrence of Antimicrobial Resistance in Bacteria from Food Animals, Food and Humans in Denmark 出典 : Report of the Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System -2000 to 2007 及び Report of the Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System -2008 to 2011- より算出 8

家畜とヒトの大腸菌の薬剤耐性率の推移 フルオロキノロン 1 セファロスポリン耐性は ヒトと肉用鶏で 2010 年頃までは急増 その後 養鶏団体による自主的使用制限導入後 肉用鶏の耐性率は急減した 一方 ヒトでは 増加傾向が続き ヒトと肉用鶏では異なる傾向が認められた 耐性菌の遺伝子解析でも ヒトと肉用鶏との関連性は否定的であった 30% セファゾリン ( 第 1 世代セファロスポリン ) 30% セフチオフル / セフォタキシム ( 第 3 世代セファロスポリン ) 25% 25% 20% 15% 10% 5% 1 20% 15% 10% 5% CTF 1 2 CTX 養鶏団体による自主的注意喚起 CTX 0% 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 0% 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 採卵鶏豚肉用牛肉用鶏 JANIS 採卵鶏豚肉用牛肉用鶏 JANIS(CTX) 出典 : JANIS, JVARM, 2003-2013 1 2007 年に JANIS の検査施設数を増加 (371 722) 2 2010 年より第 3 世代セファロスポリンの薬剤耐性の測定薬を変更 9

畜産 水産分野の抗菌剤の使用量 (2001 年 2013 年 ) 販売量 生産量より推計 ポリエーテル系 : 飼料用添加物として指定されている抗コクシジウム作用のある抗生物質 出典 : 農林水産省提供データ 10

薬剤耐性 (AMR) に起因する死亡者数の推定 2013 年現在の AMR に起因する死亡者数は低く見積もって 70 万人 何も対策を取らない場合 ( 耐性率が現在のペースで増加した場合 ) 2050 年には 1,000 万人の死亡が想定される ( 現在のがんによる死亡者数を超える ) 欧米での死亡者数は 70 万人にとどまり 大半の死亡者はアフリカとアジアで発生すると推測 交通事故 麻疹 2013 年 2050 年 ( 何も対策を取らない場合 ) 破傷風 がん コレラ (Antimicrobial Resistance in G7 Countries and Beyond, G7 OECD report, Sept. 2015) 下痢性疾患 糖尿病 出典 : Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations, the O Neill Commission, UK, December 2014 11

AMR に関する国際社会の動向 WHO の薬剤耐性に関するグローバル アクション プランの採択 (2015 年 5 月 ) 2015 年 WHO 総会において 全ての国に対し 世界行動計画の採択から 2 年以内に 国家行動計画を策定し 行動する ことが決議された 世界行動計画は 1 普及啓発 教育 2 動向調査 監視 3 感染予防 管理 4 抗微生物薬の適正使用 5 研究開発の 5 つの目標で構成 G7 エルマウ サミット首脳宣言 (2015 年 6 月 8 日 ) G7 エルマウ サミット (2015 年 6 月 8 日 ) の保健分野に関する声明では G7 諸国が協調して AMR 対策に取り組む方針が盛り込まれた G7ベルリン保健大臣会合 (2015 年 10 月 8 日 ) G7ベルリン保健大臣会合宣言文には AMR 対策の3 本柱として 以下の3 点が掲げられた 1 感染予防 感染制御 2 抗微生物薬の有効性の維持 3 研究開発の促進アジアAMR 東京閣僚会議 (2016 年 4 月 16 日 ) アジア太平洋地域でAMR 対策の重要性を確認し 協調して対策を推進するためのイニシアティブの創設を発表 G7 新潟農業大臣会合 (2016 年 4 月 23-24 日 ) 農業 畜水産産領域での抗菌剤の慎重使用 リスクアナリシスがない場合の成長促進目的での抗菌剤の使用の段階的廃止 衛生管理の向上などを通じた農業 畜水産領域での取組の推進を確認 G7 伊勢志摩サミット (2016 年 5 月 26-27 日 ) G7 が更に協調して対策に取り組む方針 9 月の国連総会における AMR に関するハイレベル会合における政治的コミットメントを支持 G7 神戸保健大臣会合 (2016 年 9 月 11-12 日 ) G7 が更に協調して対策に取り組む方針 9 月の国連総会における AMR に関するハイレベル会合に向けて協力することを確認 AMR に関する国連総会ハイレベル会合 (2016 年 9 月 21 日 ) AMR に関する問題を確認し 国及び国際社会のレベルにおけるコミットメントを宣言した 12

WHO 薬剤耐性 (AMR) に関するグローバルアクションプラン 加盟国に対し 以下の項目を対象にした 2 年以内の行動計画の立案と その履行を求める 行動計画の実行と達成度の評価を行う : 2 年ごとに各国は達成状況を WHO に報告 G7 は WHO のグローバルアクションプランを支持 普及啓発 教育 市民全体への啓発 ヒト 動物 農業 環境等のすべての分野の関係者への啓発 教育 トレーニング 動向調査 監視 ヒト 動物 農業等に対する薬剤耐性微生物 抗微生物薬使用量に関するサーベイランス モニタリング 検査室の機能強化と連携 感染予防 管理 効果的な衛生状況の改善や感染防止策の強化による感染症の罹患の減少 抗微生物薬の適正使用 ヒトや動物等への抗微生物薬適正使用 薬剤の質の担保 国内での管理 ( 処方外使用の禁止 等 ) 動物へのリスクアナリシスがなされない場合の成長促進目的での使用の段階的削減等 研究開発 対策のための持続的資金の確保と維持 新規抗菌薬 治療薬や予防薬の開発のための国際協力 13