Microsoft Word - 鉄鋼シャースリット業.doc

Similar documents
( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

企業経営動向調査0908

社団法人日本生産技能労務協会

Microsoft Word - ₥+ èª¿æŁ»ï¼›ï¼“çŽºè¡¨å¾„èª¤åŁŠä¿®æŁ£.docx

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

< 業種別 > D.I. 2 製造業主要判断 D.I. の推移 製造業 30/ /9 見込 /12 予想 < 製造業 > 当期 は 24.5( 前期比 +0.8) と景況感は横ばいであった

Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 30 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 30 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 30 年 1~3 月期 来期平成

Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 28 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 28 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 29 年 1~3 月期 来期平成

中小企業の雇用・賃金に関する調査結果(全国中小企業動向調査(中小企業編)2015年10-12月期特別調査)

ニュースリリース 中小企業の雇用 賃金に関する調査結果 ( 全国中小企業動向調査 2013 年 月期特別調査 ) 年 4 月 8 日株式会社日本政策金融公庫総合研究所 3 割の企業で正社員は増加 3 社に 1 社で給与水準は上昇 従業員数 2013 年 12 月において

01Newsletterむさしの7.indd

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

Newsletterむさしのvol_9.indd

トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の


平成22年7月30日

Microsoft PowerPoint - 3rdQuarterPresentations2013_J03.ppt

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

<4D F736F F D208E9197BF D D88DDE C9F8FD892B28DB882CC8EC08E7B8FF38BB52B2B2E646F63>

景気動向調査平成 3 年 1~12 月期実績 平成 31 年 1~3 月期予想 概況 業況 DI は改善 来期は悪化するもプラスを維持する見込み 今期の全業種総合業況判断 DIは 前期比 2.5 ポイント上昇の 9. と改善した 製造業は前期比 1.5 ポイント上昇の 14. 非製造業は同 2.9

untitled

1.1 テーラードブランクによる性能と歩留りの改善 最適な位置に最適な部材を配置 図 に示すブランク形状の設計において 製品の各 4 面への要求仕様が異なる場合でも 最大公約数的な考えで 1 つの材料からの加工を想定するのが一般的です その結果 ブランク形状の各 4 面の中には板厚や材質

PowerPoint プレゼンテーション

Ⅱ 取組み強化のためのアンケート調査等の実施 (1) 建設技能労働者の賃金水準の実態調査国土交通省から依頼を受けて都道府県建設業協会 ( 被災 3 県及びその周辺の7 県を除く ) に対し調査を四半期ごとに実施 (2) 適切な賃金水準の確保等の取組み状況のアンケート調査国は 平成 25 年度公共工事

Newsletterむさしの_2.indd

2011年3月期決算説明会

Q8: 為替変動が売上収益に与えたインパクトはどの程度か? A: 為替変動により 当第 4 四半期における売上収益は前年同期比で 49 億円増加しました また 通期では 為替変動により 売上収益は前年同期比で 565 億円増加しました HR テクノロジー事業 Q9:( 通期 ) 売上収益が米ドルベー

201903掯泆æ—�調æ�»éłƒè¨‹ï¼‹ã…¡ã…¼ã…«ï¼›.xls

Newsletterむさしの11.indd

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

Newsletterむさしの12.indd

平成10年7月8日

通期 連結の売上高 営業利益 経常利益としては 過去最高 のれん及び固定資産に係る減損損失を特別損失として 517 億円計上 当期純利益が 3 月 30 日付での予想数値より増加したのは 予想数値公表時の見込み額と比べ 最終決算数値により確定した減損損失額が 53 億円 減少したことによる 事業環境

部品メーカーの状況 自動車部品メーカー 75 社の 2017 年度通期 (2017 年 年 3 月 ) の業績は 以下のとおりとなった 1. 決算状況 1 日本基準適用企業 63 社 ( ) 前年同期差 前年同期比 売上高 14,135,817 15,044, ,912 +

2018年3月期 決算説明会

第 2 四半期累計として 連結の売上高 営業利益 経常利益 四半期純利益とも 過去最高 上期で初の売上高 1 兆円を達成 4 月 27 日に発表した連結業績予想数値との比較でも それぞれプラス 事業環境に関する認識と確認 ( 物流業界の状況 ) 国内外ともに 景気の回復基調は続き 荷動きは おおむね

Microsoft PowerPoint _FY162Q決算説明会プレゼン資料QQ_final_web

< F2D CF6955C925A8AFA8EF98B8B8CA992CA82B54850>

2019 年 3 月期第 3 四半期決算 ご参考資料 2019 年 1 月 31 日日本通運株式会社経営企画部

平成22年7月30日

結果概要 Ⅰ 人手不足への対応について 1. 人員の過不足状況について 社 % 不足している 1, 過不足はない 1, 過剰である 合計 2, 全体では 半数以上の企業が 不足している と回答 n =2,

プレゼン

Microsoft Word - 5_‚æ3ŁÒ.doc

Microsoft PowerPoint - 決算説明資料2(日).ppt

企業と外国人留学生を結び付ける 出会いと理解 推進事業 外国人採用に関するアンケート調査報告書 平成 25 年 6 月 特定非営利活動法人人材育成センター

がある 3 改正の必要性ア. あるべき姿と現状のギャップ我が国皮革製品産業は 高付加価値化やコスト削減などの構造改善を進めることにより 欧州から輸入される高価格の製品と 主にアジア諸国から輸入される低価格製品に対抗できる競争力の確保を図る必要がある しかしながら 近年 アジア諸国においては欧州及び米

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

第2部

2018年度 第3四半期累計 1-9月 実績 2017年 19月期 2018年 19月期 増減 () 9,302 9, % +4.1% 営業利益 % 0.0% % +9.7% 親会社の所有者に 帰属する四半期利

<8A C52E786C7378>

<4D F736F F D F28955C8E86298AD690BC926E88E690DD94F5938A8E918C7689E692B28DB E646F6378>

全建事発第 号 平成 30 年 12 月 27 日 各都道府県建設業協会会長殿 一般社団法人全国建設業協会会長近藤晴貞 公印省略 高力ボルトの需給安定化に向けた対応について ( 協力要請 ) 平素は本会の活動に対しまして 格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます さて 標記につきまして 国

2017年度 決算説明会資料

目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

プレゼン

回答者のうち 68% がこの一年間にクラウドソーシングを利用したと回答しており クラウドソーシングがかなり普及していることがわかる ( 表 2) また 利用したと回答した人(34 人 ) のうち 59%(20 人 ) が前年に比べて発注件数を増やすとともに 利用したことのない人 (11 人 ) のう

プレゼン

第2部

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

2018 Brother Industries, Ltd. All Rights Reserved 年度第 3 四半期連結業績概要 16Q3 増減 増減率 () は為替影響 除く増減率 売上収益 1,878 1, % (+6.4%) 事業セグメント利益 224

消費税増税後の仕入・販売単価に関する東北6県企業の動向調査

愛媛の工業 ( 速報 ) - 平成 30 年工業統計調査 ( 速報 ) 結果から - 平成 29 年の愛媛県の製造業について ( 従業者 4 人以上の事業所 ) この速報は 平成 30 年 6 月 1 日現在で実施した 平成 30 年工業統計調査 をもとに 愛媛県内の製造事業所 ( 従業者 4 人以

(2) 直接的な被害 影響の内容第 図および第 表は 直接的な被害 影響を受けた事業所の具体的な被害 影響の内容を示したものである 全体では 支店 営業店 倉庫 工場等の損壊 が 51.8% で最も多く 商品 仕掛品 原材料等の損壊 が 23.5% となっている 産業分類別で

H 以前の認定計画を H の申請様式にしたがって変更申請する場合 別紙 ( 変更 ) ( 別紙 ) 経営力向上計画 申請日平成 年 月 日 変更申請日を記入してください 1 名称等 事業者の氏名又は名称 株式会社 METI 代表者名 ( 事業者が法人の場合 ) 代表取締役

製造業3. 東北の産業構造 ( 製造業 ) (1) 製造業 1 概況 製造品出荷額等は 16 兆 7,600 億円で前年比 6.2% の増加 平成 26 年の東北地域の製造品出荷額等は 16 兆 7,600 億円で前年比 6.2% と3 年連続の増加となった また 全国に占める割合は5.5% と前年

平成 29 年度下期新潟市景況調査 ( 本報告 ) Ⅳ テーマ別調査結果 93

平成29年度     地域経済動向調査      調査報告書


(Taro-\222\262\215\270\225[.A4\207B.jtd)

<4D F736F F D CD CC88DB8E9D814188C092E882D682CC8EE682E DD82C98AD682B782E98BD98B7D B F578C768C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

2014(平成26)年度決算 確定拠出年金実態調査 調査結果について.PDF

Newsletterむさしの_7.indd

PowerSteel 活用例集

01Newsletterむさしの6月.indd

PowerPoint プレゼンテーション

12大都市の経済動向

2018年度第2四半期 決算概要

化繊輸入は 近年上昇を続けており 2016 年は前年比 10% 増の 43 万トンとなりました 素材別には ポリエステル F 長繊維不織布が中心ですが 2016 年はポリエステル S の輸入も大幅増となりました 化学繊維輸出推移 化学繊維輸入推移 生産が微減 輸出が横ばい 輸

Economic Indicators   定例経済指標レポート

( 億円 ) 売上高 ( 億円 ) 15, 1, 金 12, 8, 額 9, 6, 営業利益 売上高営業利益率 経常利益 売上高経常利益率 当期利益 売上高当期利益 1.% 8.% 6.% 6, 4, 4.% 3, 2, 2.% '13- 上 '13- 上 '13- 上 '13- 上.% 売上高につ

<4D F736F F D2091E593638BE65F92868FAC8AE98BC68C698BB592B28DB85F95F18D908F BD90AC E348C8E C8E8AFA816A2E646F63>

<8A C52E786C7378>

Microsoft Word - 報告書.doc

図 12 HACCP の導入状況 ( 販売金額規模別 ) < 食品販売金額規模別 > 5,000 万円未満 ,000 万円 ~1 億円未満 億円 ~3 億円未満

目次 1. テクノプロ ホールディングスってどんな会社? 2. 技術人材サービスとは? 3. 経営ビジョンは? 4. 市場環境 成長性は? 5. 技術人材サービスが安定的に成長している理由 6. どんな仕事をしているの? 7. 業績は? 8. 今後の見通しは? 9. 計画達成の道すじは? 10. 重

質問1

調査の目的 全国の自動はかりの設置 使用状況等の実態把握 この度の計量制度見直しにより 平成 年 月より順次 取引又は証明に使用される自動はかりを検定の対象とすることとなった 検定システムを構築するには これらの 自動はかり の全国的な設置状況の実態を把握し 検定に必要なリソースを検討するため 全国

鉄骨工場加工組立 1 Structural steel framing of shop-fabricated steel (S 造工場副資材費 間接費含む鋼材費 溶接費 塗装費等別途 ) ( 単位 : 円 /t) (Fabrication yard, incl. subsidiary materia

<4D F736F F F696E74202D A4A8EA A F AFA96968C888E5A90E096BE89EF C835B83938E9197BF5F5A5A35>

PowerPoint プレゼンテーション

図 2 製材品の流通経路 供給者 ( 製材工場 ) 製材品出荷量 (1+2+3) 製材品計 943 万 4 千m3 (100.0%) 国産材計 644 万 6 千m3 ( 68.3% 56.9%) 外材計 298 万 8 千m3 ( 31.7% 43.1%) 1 建築業者等 ( 需要者 ) への出荷

ワークス採用見通し調査

2. 中途採用をしたことがあるか 中途採用をしたことがある企業は 全体の 95% で あった 調査対象を 右表の 7 つの業種グループに 分類してそれぞれの傾向を分析すると 建設業 運 輸業 サービス業ではすべての企業が中途採用をし たことがあると回答した その他の業種グループで も 9 割前後の企

<8AEE967B925089BF88EA C81698CF6955C A E786477>

の差については確認できないが 一般的に定温で流通している弁当の管理方法等についてアンケートにより調査した その結果 大部分の事業者が管理温度の設定理由として JAS 規格と同様に食味等の品質の低下及び微生物の繁殖を抑えることを挙げ 許容差は JAS 規格と同様に ±2 としていた また 温度の測定方

2017年度第1四半期決算説明会

CW6_A3657D13.indd

Transcription:

鉄鋼シャースリット業 受注は 建設機械 工作機械 自動車向けなどの輸出が好調なことから増加基調で推移している 収益率は 鋼板の仕入価格上昇を製品価格に十分に転嫁できていないため低下しているものの 量産効果から収益額は堅調に推移している 各企業とも設備投資や雇用を活発化させている 後継者難の関連企業から事業を譲渡され 二次加工を充実させ 付加価値の取り込みを図っている企業もみられる 当面 受注は堅調に推移すると見込まれるが 鋼板の仕入が円滑に進むことが増産の前提条件となる 業界の概要鉄鋼シャースリット業は 主として他から受け入れた広幅帯鋼 帯鋼 鋼板の切断 ( 溶断を含む ) を行う事業所をいう 加工対象となる鋼板は 薄板 ( 厚さ3 ミリ未満の鋼板 ) 中板( 同 3ミリ以上 6ミリ未満 ) 厚板 ( 同 6ミリ以上 ) に分けられるが 板厚 3ミリ以上の鋼板を厚中板 または単に厚板と呼ぶ 鉄鋼シャースリット業は 加工対象や生産設備の違いなどから 主に厚中板を切断加工する 厚板シャーリング業 コイル状の薄板を切断加工する コイルセンター 小型の加工設備で薄板を切断加工する 薄板シャーリング業 の三つに分かれる 鉄鋼シャースリット業は 鉄鋼メーカーの最終工程を代替するところから発祥し 鉄鋼メーカーの大量生産による効率性追求に資する一方で 資材の形状や納期面で多様化した需要家のニーズを取り持つ機能を果たしている 1

仕入形態は 自社のリスクで鉄鋼卸売業者から仕入れ 在庫しておく 店売り 形態が多い 小口需要家に対しては 需要を取りまとめて鉄鋼メーカーに母材を発注するなど 流通業者としての性格が強い コイルセンターでは 需要家がメーカーや商社から鋼板を手配し 加工のみを依頼するいわゆる ヒモ付き 形態も多い 販売経路と加工内容厚板シャーリング業の需要分野は 鉄骨 橋梁など の建設向けが 45.5% と最も大きな割合を占め 次いで 建設機械 産業機械が 31.2% を占める ( 全国厚板シヤ リング工業組合 厚板シヤリング業界の現状第 17 次実態調査報告書 平成 18 年 9 月 ) 一方 コイルセ ンターの主な需要先は 自動車 電気機械などである シャーリングの切断方法には 刃物によって鋼板を切断する せん断 と 熱を用い材料を局部的に溶融又は燃焼して切断する 溶断 がある 溶断には ガス切断機 プラズマ切断機 レーザー切断機などが用いられる 近年 厚板についてはシャーリングマシン ( せん断機 ) による切断は少ない これは 寸法精度が劣る 人手を要する せん断できる板厚に限りがあるなどの問題があるためである 現在 主な切断方法はガス切断であり 重量ベースで7 割近くを占めている 近年 増加しているのはレーザー切断である これは 熱歪みが少なく 精密な切断が可能で 無人 無監視運転が行いやすいなどの利点があるからである コイルセンターの主な設備は レベラーライン スリッターラインである レベラーラインは コイルの巻き癖を矯正して任意の長さに切断し 板状に加工する設備であり スリッターラインは コイルを巻戻し 2

縦方向に連続して分割切断しながら 同時にその製品を巻取る設備である 大阪の地位と立地分布平成 17 年の大阪府における鉄鋼シャースリット業の事業所数は 421 従業者数 4,572 人 出荷額 2,563 億円となっており 対全国シェアはそれぞれ 19.3% 15.0% 13.8% である ( 大阪府 大阪の工業 経済産業省 工業統計表 ( 産業編 ) ) 一事業所当り従業者数は 全国で 14.0 人であるのに対して 大阪府では 10.9 人であり 小規模な事業所が多く立地していることが特徴である 府内における事業所の分布については 大阪市の住之江区 大正区などの臨海部と西区に多く 門真市 大東市 東大阪市など府内東部への立地もみられる 受注は増加基調 近年における厚中板の切断量は 平成 16 年に微減と なったものの 17 年 18 年と増加が続き 19 年に入ってからも堅調に推移してきたが 夏には足踏みの状況にある これは 需要の大きな部分を占める建築関連の受注が建築基準法の改正に伴い建築着工に遅れが生じたことによる 需要部門別にみると 橋梁向けは 近年 公共工事の削減等から需要が低調で 特に 17 年には受注が落ち込んだ しかし 18 年にはその反動から受注が増加し 19 年に入ってからも底堅く推移している 建設機械関連は ユーロ高の欧州向けや資源高を背景にした鉱山開発等により建設 鉱山機械の輸出が好調であることから受注が増加している また 工作機械 産業機械向けも好調に推移している 地域的には こうした需要家が集積する東海 北陸地方からの受注が多い 3

造船も好調であり 造船業が盛んな中国 四国地方か らの受注が活発である コイルセンターの出荷量についても 平成 14 年度以 降 強弱はあるものの増加基調で推移している 地域別にみると 東海地区で一貫して出荷が堅調に増加しているのに対して 関東 ~ 北海道や関西では一進一退の動きとなるなど地域差がみられる 需要部門別にみると ビル建設が活発なことから鋼製家具向けが 堅調に推移している ただし 新建築基準法の施行に伴う建築確認手続きに手間取ったことから 夏場に受注が一服した 家電向けは 需要家が海外生産を進めてきたことや 国内生産においても 鋼板のスリットを自社で内製することが多く 弱含みである 一方 自動車部品関連は 堅調に推移している また シャーリングと同様に 産業機械や建設機械関連等の需要が活発であることから 関西における受注が今年度に入ってから活発化している 収益も堅調近年 鉄鋼の受給が世界的に引き締まり 鋼板価格が上昇基調にある 店売り の場合には 仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁する必要があるが 全額を転嫁することができずに収益率が低下し 減益となっている企業がみられる ただ 売上げが数量ベースでも前年比で数 % 多い所では2 割近く増加している企業もあり こうした増収効果の方が大きい企業は増益となっている 設備投資や雇用に動き好調な需要を背景に 設備投資の動きも ここ数年活発である 各企業とも ガス溶断機 レーザー加工機 レベラーなどの更新により 加工効率や加工能力 4

を高めたりしている ある企業では プラズマ加工機を導入することにより 切断速度が3 倍以上に向上し 効率化に寄与したという 別の企業では 市街地の工場では 夜間操業の難しいガス溶断機の代わりにレーザー加工機を導入し 臨海部の工場にガス溶断機を導入するなど 立地条件を考慮した生産機能の再配置を進めている 雇用は 正社員の新卒採用を積極的に行なっている しかし 雇用情勢が引き締まる中で 各社とも十分な 採用ができていない このため 定年退職者を 65 歳ま で再雇用し 意思と能力のある熟練工については そ の後も 70 歳までパートとして採用するなどにより 生 産労働者の確保に努めている 一方で 単純な工程については派遣社員やパートの活用を進めたり 鋼板のセッティングを自動で行ない切断する機器を導入するなど省力化に努めたりしている 事業の多角化と業界の再編業界では 鋼板の切断だけでなく 曲げ 穴あけ 溶接など二次加工を手がける企業も多く 付加価値を増加させる動きがみられたが 近年 事業譲渡を受け 多角化を一気に進める事例もみられる 造船や各種機械向けにシャーリングを行なう企業では 経営者が懇意にする建設機械部品の製造会社が後継者難であったことから 事業を引き継ぐことになった この企業では 譲渡された事業所を移転拡張し 北陸の生産拠点として 二次加工だけでなく シャーリング事業の拡大の拠点にも活用している 別の企業でも 受注先の協力会の仲間であった製罐 溶接工場が後継者難であったことから その経営を行なうことになり その後 合併により製罐 溶接 5

も含めた事業の多角化を図っている このような独立系企業の二次加工への進出に加えて 鉄鋼メーカー系列企業では 親会社の提携に合わせて 合併することにより 生産の効率化を進めている事例 もみられる 今後の見通し 造船 建設機械 工作機械 各種産業機械など輸出 関連の需要や自動車向けなどが好調である 建設関連 の受注についても 公共工事の水準は低いものの か つての落ち込みの反動増や 機械関連の受注が好調な 同業者からの発注を受けるなどにより 底堅く推移し ている 今後も 梅田北ヤードの再開発や臨海部にお ける大手家電メーカーの工場建設などに伴う需要が期 待できる こうしたことから 当面 受注は堅調に推 移するものとみられる ただ 鋼板不足から増産に支障をきたすこと 加工 コストが上昇する中で加工単価の引上げがどこまで可 能かということ 人材の確保 定着が懸念材料である 表 1 厚中板の切断量の推移 ( 単位 : 千トン %) 切板の出荷 賃加工 切断量 前年 ( 同期 ) 比 平成 14 年 2,030 309 2,339-8.8 15 2,103 361 2,464 5.3 16 2,075 366 2,441-0.9 17 2,041 476 2,517 3.1 18 2,064 505 2,569 2.1 平成 19 年 1~3 月 521 123 644 2.8 4~6 月 526 95 622 1.6 7~8 月 361 47 408-5.3 資料 : 全国厚板シヤリング工業組合 鋼板流通調査 ( 町田光弘 ) 表 2 コイルセンター出荷量の推移 ( 単位 : 千トン %) 全国 関東 ~ 北海道 東海 関西 中国 四国 九州 平成 14 年度 16,832 3.1 7,182 3.5 4,856 5.9 4,062-0.8 732 3.4 15 16,900 0.4 6,964-3.0 4,966 2.3 4,227 4.1 744 1.6 16 17,425 3.1 7,005 0.6 5,337 7.5 4,295 1.6 789 6.0 17 17,485 0.3 6,757-3.5 5,670 6.2 4,195-2.3 863 9.4 18 18,287 4.6 7,055 4.4 6,021 6.2 4,261 1.6 949 10.0 平成 19 年 4~6 月 4,531 2.6 1,715 0.6 1,498 3.1 1,085 4.5 234 5.6 7~8 月 2,972 1.7 1,148 0.0 945 0.7 725 5.9 154 3.0 資料 : 全国コイルセンター工業組合 流通調査結果 ( 注 ) 右の欄は 前年 ( 同期 ) 比伸び率 6