糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

採択演題一覧

づけられますが 最大の特徴は 緒言の中の 基本姿勢 でも述べられていますように 欧米のガイドラインを踏襲したものでなく 日本の臨床現場に則して 活用しやすい実際的な勧告が行われていることにあります 特に予防抗菌薬の投与期間に関しては 細かい術式に分類し さらに宿主側の感染リスクも考慮した上で きめ細

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3. 本事業の詳細 3.1. 運営形態手術 治療に関する情報の登録は, 本事業に参加する施設の診療科でおこなわれます. 登録されたデータは一般社団法人 National Clinical Database ( 以下,NCD) 図 1 参照 がとりまとめます.NCD は下記の学会 専門医制度と連携して

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に


CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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進行膵癌に対する膵頭十二指腸切除後のGEM化学療法の有効性


ワークショップの概要と 診療ガイドライン作成の全体像

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TOHOKU UNIVERSITY HOSPITAL 今回はすこし長文です このミニコラムを読んでいただいているみなさんにとって 救命救急センターは 文字どおり 命 を救うところ という印象が強いことと思います もちろん われわれ救急医と看護師は 患者さんの救命を第一に考え どんな絶望の状況でも 他

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094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

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要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

は関連する学会 専門医制度と連携しており, 今後さらに拡大していきます. 日本外科学会 ( 外科専門医 ) 日本消化器外科学会 ( 消化器外科専門医 ) 消化器外科領域については, 以下の学会が 消化器外科データベース関連学会協議会 を組織して,NCD と連携する : 日本消化器外科学会, 日本肝胆

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

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2015 年 7 月 8 日放送 抗 MRS 薬 最近の進歩 昭和大学内科学臨床感染症学部門教授二木芳人はじめに MRSA 感染症は 今日においてももっとも頻繁に遭遇する院内感染症の一つであり また時に患者状態を反映して重症化し そのような症例では予後不良であったり 難治化するなどの可能性を含んだ感

3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

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172 第 3 部附録と GRADE profiler の用語集 附録 H QUOROM から PRISMA へ 従来,RCT に関するメタアナリシス報告の質を向上させるため,QUOROM (The Quality of Reporting of Meta-Analyses: メタアナリシス報告の質


II III I ~ 2 ~

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1 (1) (2)

がん登録実務について

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

70 頭頸部放射線療法 放射線化学療法

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

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要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

図 3 エビデンスプロファイル

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訪問審査当日の進行表 審査体制区分 1: 主機能のみ < 訪問 2 日目 > 時間 内容 8:50~9:00 10 分程度休憩を入れる可能性があります 9:00~10:30 薬剤部門 臨床検査部門 画像診断部門 地域医療連携室 相談室 リハビリテーション部門 医療機器管理部門 中央滅菌材料部門 =

2005年勉強会供覧用


糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

2. 延命措置への対応 1) 終末期と判断した後の対応医療チームは患者および患者の意思を良く理解している家族や関係者 ( 以下 家族らという ) に対して 患者が上記 1)~4) に該当する状態で病状が絶対的に予後不良であり 治療を続けても救命の見込みが全くなく これ以上の措置は患者にとって最善の治

(別添様式1)

【1

Yonago Medical Center Magazine ARCUS #20 May 2018

-TG18 新基準掲載 - [ 第 3 版 ] 急性胆管炎 胆囊炎診療ガイドライン 2018 主催 : 急性胆管炎 胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会 共催 : 日本肝胆膵外科学会日本腹部救急医学会日本胆道学会日本外科感染症学会後援 : 日本医学放射線学会帝京大学グループ 医学図書出版株式会社

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下鼠径 ヘルニア修復術を導入 認定資格 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会指導医 専門医 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 外科医長 渡邉 卓哉 東海中央病院では 3月から腹腔鏡下鼠径ヘルニ ア修復術を導入し この手術方法を

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

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山形医学 (ISSN X)2018;36(1):22-28 急性胆嚢炎に対する早期 LCの有用性 DOI / 急性胆嚢炎に対する早期腹腔鏡下胆嚢摘出術の有用性の検討 野津新太郎, 渡邊利広, 佐藤多未笑, 菅原秀一郎, 安次富裕哉, 蜂谷修, 平井一郎


医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

花粉症患者実態調査(平成28年度) 概要版

中医協総会の資料にも上記の 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス から一部が抜粋されていることからも ガイダンスの発表は時機を得たものであり 関連した8 学会が共同でまとめたという点も行政から高評価されたものと考えられます 抗菌薬の適正使用は 院内 と 外来 のいずれの抗菌薬処方におい

課題名

虎ノ門医学セミナー

(案の2)

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

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症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

2006 年 3 月 3 日放送 抗菌薬の適正使用 市立堺病院薬剤科科長 阿南節子 薬剤師は 抗菌薬投与計画の作成のためにパラメータを熟知すべき 最初の抗菌薬であるペニシリンが 実質的に広く使用されるようになったのは第二次世界大戦後のことです それまで致死的な状況であった黄色ブドウ球菌による感染症に

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

外科領域の専門医共通 領域講習の開催一覧 (2018 年 5 月現在 ) ( 現行制度下の外科専門医更新の研修実績としては 一律 1 回あたり 3 単位を算定します ) 開催日 主催学会 講習会名称 開催地 種別 単位 2016 年 4 月 14 日日本外科学会 特別企画 外科医に求められる医療安全

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

Transcription:

2018 年 12 月 19 日放送 急性胆管炎 胆嚢炎診療ガイドライン 2018 国際医療福祉大学消化器外科教授吉田雅博ガイドラインの作成経過急性胆道感染症 ( 急性胆管炎 急性胆囊炎 ) は急性期に適切な対処が必要であり 特に 急性胆管炎 なかでも重症急性胆管炎では急性期に適切な診療が行われないと早期に死亡に至ることもあります これに対し 2005 年に出版されたガイドライン初版によって世界に向けて診断基準 重症度判定基準が示されたことで 急性胆道炎診療の標準化が急速に進み さらに 2013 年に出版された国際版の急性胆管炎 胆嚢炎診療ガイドライン TG13 とその日本国内版ガイドラインによって世界共通 日本共通の診断基準 重症度判定基準が改訂され 現在世界的に広く臨床で活用されています 2013 年版ガイドラインでは 診断基準 重症度判定が改訂されましたが 限られた報告に基づくものでした これに対し その後 大規模な臨床研究データ (Big data) が報告されました また 本診療ガイドガイドラインの推奨のもと 臨床では急性胆嚢炎に対して腹腔鏡下手術が多くの施設で行われるようになってきました しかし 胆管損傷等の手術合併症は減少したとは言えず 患者安全 医療安全の面でさらなる充実が求められてきています さらに 内視鏡治療の進歩も著しく 臨床研究報告も活発です このような背景から今回 2018 年版ガイドライン (TG18)

作成を行いました 重要な臨床課題ガイドライン作成の中心的なテーマを決めるために現在の胆道炎の臨床医療で Key clinical issues: 重要な臨床課題 は何か? を検討しました TG18 の重要臨床課題としては 1. 抗菌薬治療 2. 治療の流れ ( フローチャート ) 3. 内視鏡を用いた治療 4. 胆嚢炎の安全な腹腔鏡下手術 5. 診断基準 重症度判定基準を内蔵したアプリの提供 -の5 項目があげられました 次に これらの重要臨床課題を 正確に臨床質問 (CQ) にするために 私たちは PICO フォーマットを用いました ガイドライン作成にあたっては偏りのない作成方法を用いることを重視しました 作成方法の見直しと推奨の作成まず エビデンス ( 根拠 ) の検索 評価 統合いわゆる論文のシステマティックレビューは GRADE system を用いました 論文内容を吟味して 1バイアスの程度 2 非直接性 3 非一貫性 4 不精確性 5 出版バイアスを検討し エビデンスの総体として評価しました エビデンスの強さは 強い 中等度 弱い とても弱いの4 段位階としました すべてのメタ解析は 当委員会の メタ解析チーム で行われました 推奨の強さは1エビデンス 2 益と害 3 患者の希望 4 経済評価や資源の利用を参考にして 委員会によるコンセンサス会議と投票によって決定しました 可能な限りのエビデンスを提示した上でその他いろいろな要素を勘案して推奨度が設定されました この作業経過に関する詳細な資料を 日本肝胆膵外科学会ホームページに掲載しました TG18 における推奨度の表示方法は 強く推奨する場合は 推奨度 1 限定的または 弱く推奨する場合は 推奨度 2と表示しました

抗菌薬投与のポイント次にガイドラインの重要な点について説明します 抗菌薬投与のポイントは 1. 予防抗菌薬の投与に考慮すべき要素 市中感染か 医療ケア関連感染か 地域別 病院別の感受性パターンをチェック 胆嚢炎 胆管炎の重症度-の3 項目を十分考慮して抗菌薬を選択します 2. 次に抗菌薬投与期間について 急性胆管炎に対しては感染源の制御後 4-7 日間抗菌薬投与を推奨急性胆嚢炎に対しては 軽症 中等賞症では術前または術中のみの抗菌薬投与重症 Grade III では感染源の制御後 4-7 日間抗菌薬投与が推奨されています 診療ガイドラインには 抗菌薬使用例が 掲載されていますので どうぞご覧下さい 診療の流れを示すフローチャート次に 診療の流れを示すフローチャートを紹介します ガイドラインには 急性胆道感染症 ( 胆管炎 胆嚢炎 ) を疑った場合の 初期対応が示されています 診断基準を用いて 急性胆管炎 急性胆嚢炎 および他の疾患を診断し 診断された症例は重症度判定が施行されるべきです 重要度判定の結果に応じて 治療選択が行われます 必要に応じて高次医療施設への転送を考慮します

まず 急性胆管炎と診断された場合について説明します 急性胆管炎の治療の原則は抗菌薬投与 胆管ドレナージ 成因に対する治療ですが 総胆管結石による軽 中等症例に対しては 胆管ドレナージと同時に成因に対する治療を行ってもよいとされています この場合 抗菌薬投与開始前に血液培養の採取を考慮します ただし 中等症 ( Grade II) 重症 ( Grade III) 例には 血液培養は必須です なお 胆管ドレナージの際には胆汁培養を行うべきとしています 急性胆嚢炎診療フローチャート次に 急性胆嚢炎と診断された場合について 説明します急性胆嚢炎の基本的な治療方針は 胆嚢摘出術 特に腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LapC) の施行です 軽症の場合は 早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が勧められますが 併存疾患 ( チャ ルソンインデックス ) や全身状態 (ASA) の評価でリスクがあると判定された場合は 抗菌薬投与やドレナージを施行して 状態の改善を待って腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行されるべきです 中等症胆嚢炎の場合は 先ず抗菌薬投与や点滴などの初期治療を行い その効果が認められた場合には 併存疾患や全身状態の評価でリスクを評価して 早期 または待機の腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行されます 一方 抗菌薬投与や点滴などの初期治療が無効の場合は 胆嚢ドレナージを施行して 状態の改善を待って腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行されるべきです

重症胆嚢炎は 臓器障害を伴っているため 先ず抗菌薬投与と臓器サポートの治療を行います 次に 中枢神経障害 呼吸機能障害 黄疸などの致死性臓器障害の有無と 併存疾患や全身状態の評価 さらに集中治療を含めた全身管理可能かつ急性胆嚢炎手術に熟練した内視鏡外科医が勤務しているかの 3 項目が評価され これらの要素全て問題なしの場合に限って 早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術の施行が考慮されます もし これらのうち ひとつでも問題がある場合には 安全性に問題があると考えられるため 胆嚢ドレナージを施行して 状態の改善を待って腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行されるべきです 安全が最優先されるべきです 現在でも 胆嚢摘出術には 胆道損傷や血管損傷などの合併症が報告されています このため 診療ガイドラインには 安全な手術手順 (safe steps) が推奨されています 胆嚢の吸引 Calot 三角部の展開 Rouvière 溝の上で胆嚢表面を露出 胆嚢表面の層に沿った剥離 CVS (critical view of safety ) の作成などが 提示されています モバイルアプリケーションガイドライン作成委員会では モバイルアプリケーションを無料で提供しています この胆管炎ガイドラインは自動的に upgrade され 日本語 英語切り替え可能で 診断カルキュレーターを内臓し 自動的に 診断基準 重症度判定可能という特徴を持ち 世界的には

7 万 4 千ダウンロードされています このアプリは診断基準 重症度判定基準の判定機能はもとより フローチャートや推奨抗菌薬についても 検索可能です ダウンロードは 通常のアプリと同様に 1 Google play 経由で 無料ダウンロード可能であり 2 診療ガイドラインの裏表紙のQRコードを読み込むことでも容易にダウンロードできます 是非 ご利用いただきたいと思います まとめ最後に本日のまとめを申し上げます 1. 作成方法の見直しを行いました GRADE システムを理解し PICO-CQ 作成 システマティックレビューと推奨作成を実行しました 2. ガイドライン内容の臨床データに基づく検証を行いました (1) 国際的な多施設試験 Big Data などを行い その根拠を用いました (2)Tokyo Guidelines の内容に関する検証研究報告を調査し とり入れました (3) 診療フローチャートや推奨診療を提示するにあたっては 有効性の列挙ではなく 患者安全 を最重要課題としました 3. さらなる改訂に向けて 臨床研究国際プロジェクトが進行中です 最後に謝辞として TG 出版責任者高田忠敬教授をはじめ TG 作成に携われたすべての研究者に深く感謝いたします