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新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

平成24年7月x日

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

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11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

エネルギー代謝に関する調査研究

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

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Microsoft Word - 【最終】Sirt7 プレス原稿

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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生物時計の安定性の秘密を解明

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

「肥満に伴う脂肪組織の線維化を招く鍵分子を発見」【菅波孝祥 特任教授】

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

Microsoft Word CREST中山(確定版)

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx


作成要領・記載例

Microsoft Word - 01.doc

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

報道関係者各位

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

平成 2 3 年 2 月 9 日 科学技術振興機構 (JST) Tel: ( 広報ポータル部 ) 慶應義塾大学 Tel: ( 医学部庶務課 ) 腸における炎症を抑える新しいメカニズムを発見 - 炎症性腸疾患の新たな治療法開発に期待 - JST 課題解決型基

汎発性膿庖性乾癬の解明

学位論文の要約

Microsoft Word - リリース文書.doc

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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平成14年度研究報告

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

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Microsoft Word - プレスリリース最終版

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

平成24年7月x日

Microsoft Word - tohokuniv-press _01.docx

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

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Microsoft Word - 手直し表紙

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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論文の内容の要旨

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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肥満における慢性炎症の新規発症メカニズムの解明 1. 発表者 : 門脇孝 ( 東京大学大学院医学系研究科糖尿病 生活習慣病予防講座特任教授 ) 窪田直人 ( 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科病態栄養治療部准教授 ) 窪田哲也 ( 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科 / 理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チーム上級研究員 ) 2. 発表のポイント : 抗炎症作用を有する M2a マクロファージ ( 注 1) の活性が 肥満の時に減弱するメカニズムを明らかにしました 肥満に伴う高インスリン血症が インスリン受容体基質 -2(Irs2; 注 2) の発現を低下させ IL-4 による M2a マクロファージ活性を減弱させる分子機構を明らかにしました 慢性炎症の新しい分子機構が解明され 糖尿病や脂質異常症等 肥満関連代謝疾患の新たな治療薬の開発につながることが期待されます 3. 発表概要 : 肥満に伴う糖尿病や脂質異常症などの代謝異常の原因として 脂肪組織における抗炎症作用を有する M2a マクロファージの活性低下による慢性炎症が注目されておりますが なぜ肥満で M2a マクロファージ活性が減弱しているのか その分子機構は不明でした 東京大学大学院医学系研究科糖尿病 生活習慣病予防講座特任教授門脇孝 医学部附属病院病態栄養治療部部長窪田直人 理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チーム上級研究員窪田哲也らは 肥満 インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症が マクロファージのインスリン受容体を介してインスリン受容体基質 -2(Irs2) の発現を低下させ その結果 Irs2 を介した IL-4 による M2 a マクロファージ活性化が減弱し 慢性炎症が惹起されることを発見しました 肥満に伴う慢性炎症の新しい分子機構の解明により 肥満を解消せずとも糖尿病や脂質異常症等 肥満関連代謝疾患を改善できる新たな治療薬の開発につながることが期待されます 本研究成果は 日本時間 11 月 19 日に英国の科学雑誌 Nature Communications にて発表されました 4. 発表内容 : 研究の背景 代謝異常を伴う肥満患者と代謝異常を伴わない肥満患者の比較から 肥満に伴う代謝異常の基盤病態として 慢性炎症の重要性が示唆されています 慢性炎症を制御するマクロファージは 大きく炎症性サイトカイン ( 注 3) を分泌する M1 マクロファージと抗炎症性サイトカイン ( 注 3) を分泌する M2 マクロファージに分類され 脂肪細胞の肥大化に伴う M1 マクロファージの増加と M2 マクロファージの減少が慢性炎症の原因と考えられています これまで慢性炎症の分子機構については主に M1 マクロファージ活性化機構を中心に解析されてきました

が M2 マクロファージ 特にその中でも中心的な役割を果たしている M2a マクロファージ活性が 肥満においてなぜ障害されるのか その分子機構は全く不明でした 研究の内容 M2a マクロファージは主に IL-4/IL-4 type1 受容体 ( 注 4) STAT6 やインスリン受容体基質 -2(Irs2) を介して活性化されます 肥満モデルマウスのマクロファージでは IL-4 による STAT6 活性 ( 注 5) は保たれていましたが Irs2 の蛋白レベルが低下しており Irs2 を介したシグナルの減弱が認められました そこでマクロファージにおける Irs2 の役割を明らかにするために ミエロイド特異的 Irs2 欠損 (MIrs2KO) マウス ( 注 6) を作製し 高脂肪食負荷を行い解析しました 肥満の程度や脂肪細胞のサイズには差はありませんでしたが このマウスではインスリン抵抗性や耐糖能異常を認め F4/80 陽性のマクロファージ集簇に伴う crown-like structure(cls)( 注 7) の有意な増加と炎症性サイトカインの上昇を呈しました FACS 解析を実施すると M2 マクロファージ 特に M2a マクロファージ関連遺伝子の発現が著明に低下しており Irs2 が M2a マクロファージ活性化に重要な役割を果たしていることが明らかとなりました 次に IL-4-Irs2 を介した遺伝子発現調節機構について EMSA Chip-qPCR 共免疫沈降法を用いて解析したところ FoxO1/HDAC3/NCoR1 が Corepressor Complex を形成していること ( 注 8) IL-4 刺激が入ると Irs2/PI3K/Akt を介して FoxO1 がリン酸化され FoxO1/HDAC3/NCoR1 Corepressor Complex が解離し M2a マクロファージが活性化されることが明らかとなりました 一連の解析から肥満では IL-4 による STAT6 活性化は変化しませんが Irs2 の発現が低下するために Irs2 を介する IL-4 シグナルが減弱し FoxO1/HDAC3/NCoR1 Corepressor Complex の乖離が十分に起こらないため M2a マクロファージ活性が障害されていることが明らかとなりました 次にIrs2 が肥満で低下するメカニズムを検討するために インスリン受容体を介したインスリンシグナルに着目し ミエロイド特異的インスリン受容体欠損 (MIRKO) マウス ( 注 9) を作製し解析を行いました 興味深いことにこのマウスでは MIrs2KO マウスとは逆の表現型を呈し インスリン感受性を示し炎症性サイトカインも低下し M2a マクロファージ関連遺伝子の発現も有意に上昇していました MIRKO マウスのマクロファージでは Irs2 の発現が有意に上昇しており Irs2 の発現低下は肥満に伴うインスリン受容体を介した高インスリン血症によるものであることが示唆されました 実際 細胞を用いた実験からコントロールマウスではインスリン添加により Irs2 の発現は低下しましたが MIRKO マウスではこうした低下は認められませんでした 以上の結果から 肥満 インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症はインスリン受容体を介して Irs2 の発現を低下させ IL-4 による Irs2 を介した M2a マクロファージの活性化が障害されることにより 慢性炎症や代謝異常が引き起こされていることが明らかとなりました 考察と治療への応用 本研究により 肥満に伴う高インスリン血症は Irs2 の発現低下による IL-4 を介した M2a マクロファージ活性化障害を引き起こし これが慢性炎症や肥満に伴う種々の代謝異常の原因となっていることが明らかとなりました 食事療法や運動療法 既存の薬剤等による高インスリン血症是正の重要性が改めて示されるとともに マクロファージの Irs2 の働きやその下流のシグナルを活性化させるような薬剤が 肥満を解消せずとも糖尿病や脂質異常症等 肥満関連代謝疾患を改善できる新たな治療薬の開発につながることが期待されます

5. 発表雑誌 : 雑誌名 :Nature communications( オンライン版 :11 月 19 日 ) 論文タイトル :Downregulation of macrophage Irs2 by hyperinsulinemia impairs IL-4-indeuced M2a-subtype macrophage activation in obesity 著者 :Tetsuya Kubota*, Mariko Inoue*, Naoto Kubota*, Iseki Takamoto, Tomoka Mineyama, Kaito Iwayama, Kumpei Tokuyama, Masao Moroi, Kohjiro Ueki, Toshimasa Yamauchi, Takashi Kadowaki* (*co-first authors, co-corresponding authors) DOI 番号 :10.1038/s41467-018-07 358-9 6. 問い合わせ先 : 研究に関するお問合せ先 東京大学医学部附属病院病態栄養治療部准教授窪田直人 ( くぼたなおと ) 電話 :03-5800-9447( 直通 ) e-mail:nkubota-tky@umin.ac.jp 広報担当者連絡先 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター ( 担当 : 渡部 小岩井 ) 電話 :03-5800-9188( 直通 ) e-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp 理化学研究所広報室報道担当電話 :048-467-9272 e-mail:ex-press@riken.jp 7. 用語解説 : 注 1)M2 マクロファージ M2 マクロファージは M2a M2b M2c M2d と少なくとも 4 つの subtype マクロファージに分類される IL-4 によって活性化されるものは M2a マクロファージのみであり アルギナーゼ 1 Ym1 FIZZ1 といった炎症を抑制する遺伝子を発現している 注 2) インスリン受容体基質 -2(Irs2) インスリンによりインスリン受容体に引き続き活性化される分子で 肝臓や膵臓など広範な組織分布を示し インスリン作用の主要な担い手と考えられている マクロファージではインスリンに加えて IL-4 によっても活性化されることが知られている 注 3) 炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカイン MCP-1 や TNFαといった生体内において炎症症状を引き起こすサイトカインを総称して炎症性サイトカインと呼び Arginase1 や YM1 といった炎症を抑制するサイトカインを総称して抗炎症性サイトカインと呼ぶ 注 4)IL-4 受容体 IL-4 の受容体には Type-1 と Type-2 の 2 つの受容体が存在する Type-1 受容体は IL-4Rα と commonγ(γc) Type-2 受容体は IL-4Rα と IL-13Rα1 で形成され IL-4 は主に Type1 受容

体に結合する 結合した後 JAK1 を介して IL-4Rα が活性化され STAT6 をリン酸化するとともに γc に存在する JAK3 を介して Irs2 がリン酸化され 下流にシグナルが伝達される 注 5)STAT6 IL-4 受容体の主要な細胞質内シグナル伝達物質の1つである IL-4 により JAK1 を介してリン酸化されると二量体となって核内へ移行し M2a マクロファージの遺伝子の転写を活性化させる 注 6) ミエロイド特異的 Irs2 欠損 (MIrs2KO) マウスマクロファージのみを特異的に欠損させることが技術的に困難なため マクロファージを含む顆粒球系細胞特異的に Irs2 遺伝子を欠損したマウス 注 7)crown-like structures(cls) 王冠様構造と呼ばれ 肥満に伴い肥大化した後 細胞死に陥った脂肪組織をマクロファージが取り囲んで貪食 処理している構造物 注 8)FoxO1/HDAC3/NCoR1 Corepressor Complex FoxO1 HDAC3 NCoR1 が直接結合することによって複合体を形成し 転写を抑制する因子として働くこと 注 9) ミエロイド特異的インスリン受容体欠損 (MIRKO) マウスマクロファージのみを特異的に欠損させることが技術的に困難なため マクロファージを含む顆粒球系細胞特異的に IR 遺伝子を欠損したマウス

8. 添付資料 : 健常者では IL-4 によって STAT6 とともに Irs2 が活性化され これによって M2a マクロファージ活性を抑制している Corepressor Complex である FoxO1/HDAC3/NCoR1 が乖離し M2a マクロファージ活性が誘導され 慢性炎症は抑制される ところが肥満者では インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症がインスリン受容体を介して Irs2 の発現を低下させるため FoxO1/HDAC3/NCoR1 Corepressor Complex の乖離が十分に起こらず M2a マクロファージ活性が障害され慢性炎症が惹起される