部員各位

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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)


参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

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緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

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お知らせ

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

第1章

Monitoring National Greenhouse Gases

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平成20年度税制改正(地方税)要望事項

問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

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参考資料3(第1回検討会資料3)

スライド 1

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新とする理由⑴ 政策目的 車体課税については 平成 23 年度税制改正大綱において エコカー減税の期限到来時までに 地球温暖化対策の観点や国及び地方の財政の状況を踏まえつつ 当分の間として適用される税率の取扱いを含め 簡素化 グリーン化 負担の軽減等を行う方向で抜本的な見直しを検討 することとされて

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資料1 美しい星へのいざない「Invitation to 『Cool Earth 50』」~3つの提案、3つの原則~」

LED 照明の種類 LED 照明は主に器具と光源が一体化したシーリングライトなどの LED 照明器具 と白熱電球や蛍光灯の光源部分を LED に置き替えた LED ランプ に分類されます ( 図 2-1) 省エネ性と環境性が重視され 公共建築物で使用された LED 照明器具の採用機種数は 2010

揮発油税等の当分の間税率とその環境効果 揮発油税の概要 揮発油税及び地方揮発油税の税率は 昭和 49 年度税制改正において税率引上げが行われた際に 暫定的な措置として 租税特別措置法により税率の特例措置が講じられて以来 平成 20 年度改正において平成 30 年 3 月末までの 10 年間の措置とし

電気自動車・燃料電池車の普及について

資料2-1 課税段階について

地球温暖化対策のための税の効果について 1. 平成 20 年 11 月中央環境審議会グリーン税制専門委員会 環境税等のグリーン税制に係るこれまでの議論の整理 より 税収を温暖化対策の費用に充てる 又は温暖化対策に係る減税に活用する場合 CO 2 削減に関し大きな効果が見込める ( 前略 ) 環境利用

PowerPoint プレゼンテーション

地球温暖化に関する知識

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

2007年12月10日 初稿

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資料 3 ー 1 環境貢献型商品開発 販売促進支援事業 環境省市場メカニズム室

東洋インキグループの環境データ(2011〜2017年)

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PDF目次


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取組概要 ( 申請書からの転記 ) 全 般 排 出 量 の 認 識 取組名称 認証取得者名取組の概要 適用したカーボン オフセット第三者認証基準のバージョン認証の有効期間オフセット主体認証ラベルの使途 認証対象活動 認証番号 :CO 有効期間満了報告書受領済み 持続可能な島嶼社会の発展に

平成 30 年度事業報告について ( 平成 30 年 4 月 1 日 ~ 平成 31 年 3 月 31 日 ) ( 特定非営利活動に係る事業 ) 1. 特定非営利活動に係る事業 (1) 事業の成果 地球温暖化対策の推進に関する法律 第 24 条の規定に基づき 川崎市において設置された 川崎市地球温暖

(1) 住民は有料化をどう考えているか 循環型社会の形成に関する世論調査 ( 内閣府平成 13 年 ) ごみ問題にどの程度関心があるか 非常に関心がある (32) ある程度関心がある (58) あまり関心がない (8) まったく関心がない わからない (2) ごみの有料化 に対してどのように思うか

図 表 2-1 所 得 階 層 別 国 ごとの 将 来 人 口 の 推 移 ( 億 人 ) 開 発 途 上 国 中 間 国 先 進 国

090108

今日お話しすること 1. 家庭部門の温室効果ガス排出 エネルギー消費の動向 2. 環境省うちエコ診断の概要と成果から見た家庭の対策 3. 家庭部門の対策の推進のための自治体に期待すること 2

図 12 HACCP の導入状況 ( 販売金額規模別 ) < 食品販売金額規模別 > 5,000 万円未満 ,000 万円 ~1 億円未満 億円 ~3 億円未満

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3 地球温暖化対策の推進に関する方針及び推進体制 (1) 地球温暖化対策の推進に関する方針 [ 基本理念 ] 人類が自然と調和し 未来にわたり持続可能な発展を実現するため NTT グループ地球環境憲章に則り NTT 西日本はグループ会社と一体になって 全ての企業活動において地球環境の保全に向けて最大

1999

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1 平成 22 年度の取組み結果 平成 22 年度の取り組み結果は 下記のとおりです 温室効果ガスの総排出量 平成 22 年度 温室効果ガス総排出量 (t-co2) 26,876 27, % 具体的取り組み 平成 22 年度 電気使用量 (kwh) 37,334,706 38,665,4

目 次 1. トップランナー制度について 1トップランナー制度の概要について 3 2トップランナー基準に関する基本的な考え方について 5 3トップランナー基準に関する主な規定について 8 4トップランナー基準策定及び運用の流れについて 9 2. ラベリング制度について 1ラベリング制度の概要について

京都メカニズムの仕組み

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知っておこう

世界の CO2 排出量と東京都 2013 年度は 東京 63.8 百万トン シンガポールフィンランドポルトガルスウェーデンデンマーク < 東京 < マレーシアベルギーオーストリア 2

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

企業ネットワークによる地球温暖化に関する政策提言についてのアンケート

Executive summary

国民 1 人当たり GDP (OECD 加盟国 ) ( 付表 2)OECD 加盟国の国民 1 人当たりGDP(2002~2009 年 ) 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 1 ルクセンブルク 58,709 ルクセンブルク 59,951 ルクセンブルク 64,016 ルクセンブル

Microsoft Word - (基本計画)民間主導による低炭素技術普及促進事業(set)

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

C A B A = B (conservation of heat) (thermal equilibrium) Advanced m A [g], c A [J/(g K)] T A [K] A m B [g], c B [J/(g K)] T B [K] B T E [K] T

目次 1. 奈良市域の温室効果ガス排出量 温室効果ガス排出量の推移 年度 2010 年度の温室効果ガス排出状況 部門別温室効果ガス排出状況 温室効果ガス排出量の増減要因 産業部門 民生家庭部門

宮下第三章

二国間クレジット制度について

パワーシフト ビル トッテン

( 別紙 ) 中国電力株式会社及び JFE スチール株式会社 ( 仮称 ) 蘇我火力 発電所建設計画計画段階環境配慮書 に対する意見 1. 総論 (1) 石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し 本事業を検討すること 本事業を実施する場合には 本事業に伴う環境影響を回避 低減するため

CONTENTS

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UIプロジェクトX

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%


本日の説明内容 1. グリーン購入法の概要 2. プレミアム基準策定ガイドライン

地球上に存在しているバイオマス資源量(森林や植物等の資源量)については 一九七五年の調査に基づいてバイオマスハンドブックが作成されていますが その内容を新エネルギー開発機構が 以下のように取りまとめています)1 ( バイオマス資源の総量は乾燥重量で約二兆t その内約九〇%が森林資

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クリエイティブネットワークセンター大阪 メビック扇町

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2017 年訪日外客数 ( 総数 ) 出典 : 日本政府観光局 (JNTO) 総数 2,295, ,035, ,205, ,578, ,294, ,346, ,681, ,477

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政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

セーレングループ環境データ集 2018

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Q1 1

幸福度指標の持続可能性面での指標の在り方に関する調査研究報告書

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経済学 第1回 2010年4月7日

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RIETI Highlight Vol.66

Transcription:

部員各位平成 25 年 10 月 5 日梁セン ( 商 1) 目次 1. はじめに 2. 環境税 ( 炭素税 ) とは 3. 日本の環境税をめぐる動き 4. 地球温暖化対策のための税 5. 環境税のメリット デメリット 6. 賛成派の言い分 反対派の言い分 7. 環境税以外の環境対策方法 8. 世界各国の環境税 9. 論点 10. 参考文献 11. 環境税に対する世論調査 地球温暖化と環境税 - 導入すべきか否か?- 1 はじめに 経済成長と大量消費社会の到来 それは人類の生活を急激に豊かにした一方で 様々な環境問題を引き起こした 地球温暖化 それは全世界が直面しているもっとも深刻な危機のひとつである 地球温暖化の原因は温室効果ガス (CO2 やメタンガスなど ) の排出によるものである 経済成長にともない 化石燃料 ( 石油 石炭 天然ガスなど ) の使用増加 自動車の増加や森林の減少が温室効果ガスを急激に増やした 地球温暖化が進むと 多くの問題が引き起こされる 例えば 海水面の上昇による島の沈没で環境難民が発生すること 降水量の変化により 地域によって干ばつや洪水が起こること 気候の変化によって生態系が大きな被害を受けることなどが予測される IPCC( 気候変動による政府間パネル ) の調査によると 気温が 1 上昇することで 30% の動植物が絶滅すると予測されている 1

地球温暖化は今も進行し続けている IPCC の調査によると 2100 年の世界平均気温は 1990 年より 1.4~4.0 上昇すると予測されている また 平均気温 2 の上昇を食い止めるためには 先進国は排出量の 80% を削減しなければならない 温室効果ガス削減の手段の 1 つとして考えられるのが環境税なのである < 世界の CO2> 出典 )WMO 温室効果ガス年報 2 環境税 ( 炭素税 ) とは 環境税とは工場などからの汚染物質を削減するために 排出した汚染物質の量に応じて課金するシステムである 代表的なものとして炭素税がある 炭素税は化石燃料 ( 石油 石炭 天然ガス ガソリンなど ) の使用による CO2 排出削減のため 化石燃料に課す税金である 環境税は政府による直接規制と違い 温室効果ガスの排出上限が決められておらず 排出した量 ( 使用量 ) に応じて税金を払うことになる 3 日本の環境税をめぐる動き 1992 年 ブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミット ( 国連環境開発会議 ) において地球温暖化を世界全体で取り組むとして 国連気候変動枠組条約 が採択され 2

1995 年から気候変動枠組条約締結国会議 (COP) が開催されるようになった その第三回会議 (COP3) で日本主導のもと 京都議定書 が合意され 2005 年に施行された これは先進国の削減目標が明確に規定された初めての国際的な合意である点で非常に重要であり 温暖化対策の第一歩となった 削減目標は 2008~2012 年の 5 年間の平均で 1990 年と比べて日本 -6% EU-8% アメリカ-7%( 離脱 ) などで 先進国全体で少なくとも-5% 削減するという目標であった 環境税はこの削減目標を満たそうと 2004 2005 年に導入するかどうか検討された 日本の削減状況は 2002 年時点で目標値 +13.6% だったため このままいくと 2010 年では目標値 +10~11% となると予測された そこで環境税を導入することで 4% 温室効果ガスを削減できるとして導入が検討された しかし 産業界の強い反対と 2005 年の原油価格高騰などの理由により 導入が見送られたが 2012 年 10 月 1 日から 地球温暖化対策のための税 が導入された 4 地球温暖化対策のための税 京都議定書の第一次約束期間は 2008 年 ~2012 年だが 2013 年以降の温暖化対策についても様々な議論がなされてきた 2009 年 7 月の G8 ラクイラ サミットでは温室効果ガスを 2050 年までに世界全体で 50% 削減 先進国全体で 80% 削減する目標が支持された 世界の CO2 排出量が増加するなかで 日本でも 100 年あたり 1.2 の気温上昇 日降水量 100 ミリ以上の大雨や猛暑日の日数が増加しており これが人の健康や日本の生態系 農林水産業に影響を与えることが予想される このような環境対策の重要性から 2012 年の 10 月 1 日から 地球温暖化対策のための税 が導入された 3

出典 ) 環境省 5 環境税のメリット デメリット <メリット> 環境税は政府による直節規制と違い 各企業の排出上限が決められていないため 排出企業は 環境税を払った方が得か それとも 省エネ対策などで排出量を自力で削減し 環境税の負担を下げる方が得か その企業状況に応じて対策することが出来るので 削減技術を持っている企業が優先的に削減し 削減技術を持っていない企業が無理に非効率な削減をする必要がなくなる これによって社会全体で ある一定量の汚染を最小の費用で削減できるとされる 4

削減量が大きいほど支払う環境税が減るので 企業には削減技術開発を促進するインセ ンティブが強くなる 政府は環境税による税収が得られるため それを使ってさらに環境対策ができる 化石燃料の値段が上がるため 使用量を抑えられる < デメリット > 環境税により確実に企業や家庭の負担が増える コスト削減のために企業が環境税のない海外へ移転し 海外で多くの温室効果ガスを発 生させ 結果的に削減にならない可能性 企業の負担を増大させることで 国際競争で不利になる可能性 6 賛成派の言い分 反対派の言い分 < 賛成 > 化石燃料に税をかけることで 消費者は化石燃料の環境への負荷を知り 行動を変える きっかけとなる 家庭の省エネ化 企業の省エネ化が進む NGO 環境 持続社会 研究センター (JACSES) < 反対 > 家庭と企業の負担が増える { 原油価格の上昇による影響の調査 } 大企業の収益 : 大きく圧迫 39% やや圧迫 48% 影響なし 13% 中小企業の収益 : 大きく圧迫 27% やや圧迫 50% 影響なし 23% 国民生活への影響 : 大きな影響 8% やや影響あり 49% 影響なし 41% その他 2% 環境税導入による化石燃料価格の増加によってその使用量を抑えられるとしているが ガソリン価格は 2004 年以降 2 年半で 4 割上昇しているが それがガソリン消費量の抑制に 5

つながったという明確な相関は見られない 環境税は企業の自主的な環境対策を阻害する可能性がある 中長期の視野で環境対策のために多額の投資をしてきた企業の負担をさらに増やすことになり 自主的な取り組みを阻害するのではないか コスト削減のために国内産業の海外移転が進み 産業の空洞化が進む可能性がある そして環境税のない海外での生産が増えれば 結果的に CO2 の量は増えてしまう 環境税の導入で国民の意識を改革し 国民の行動を変えるとしているが 実際そのようなアナウンスメント効果があるのかは疑問である 国民の理解と協力は課税によるものではなく 国民運動や普及啓蒙活動によって誠実に行われるべきではないのか 日本経済団体連合会 H18 温暖化対策は人類共通の課題であり 地球規模での取り組みが必要 全世界のうちわず か 5% しか CO2 を排出していない日本が新たに環境税を導入しても温暖化の解決にはつな がらないのではないか 新税の導入は日本のエネルギーコスト増大になり 産業の国際競争力をそぐことになり かねない また コスト転嫁が難しい中小企業に多大な負担がかかり これが地域経済や 雇用に大きな影響を与えることが懸念される 温暖化問題解決のためには アメリカや中国 インドなどの主要な排出国が参画した真 に公平で実効性のある枠組を作っていくことに日本政府は尽力するべきである 日本商工会議所 H16 6

出典 )JCCCA 全国地球温暖化活動防止センター 7 環境税以外の環境対策方法 1 直接規制 : もっとも伝統的な規制方法 政府が汚染発生者の行動を直接制限し 汚染物質の発生を抑える メリット 目的が明確で一般に受け入れ易いため 多くの国で用いられている 企業が削減目標を守る限り 確実に削減できる デメリット 汚染物質はそもそも有益な製品の副産物であることが多く 排出量を強制的に制限することは有益な生産自体を抑制してしまうことになりかねない 規制水準を一律に設けることになるが 削減費用の高い企業と低い企業があるので 社会的に多くの削減費用がかかる 排出基準を守らない企業が出てきたりして 政府が行政指導をする場合 莫大な金がかかるとともに 規制を守らないことを不当に放置する状況になる可能性がある 7

< 日本における直接規制の例 > 1993 年 ~ 環境基本法例 ) 二酸化硫黄 (SO2):1 時間値の1 日平均値が 0.04ppm 以下であり かつ 1 時間値が 0.1ppm 以下であること 一酸化炭素 (CO):1 時間値の1 日平均値が 10ppm 以下であり かつ 1 時間値の8 時間平均値が 20ppm 以下であること 2 自主規制 : 汚染者が自主的に削減目標を設定し 削減努力を行って 排出量を抑制する方法 強制力のない自主規制が有効であるかは疑問であるため 政府がかかわる強制力のある自主規制にする必要がある それで効果を上げているのが トップランナー方式 である <トップランナー方式 > 市場におけるもっともエネルギー効率の良い製品をベースに 今後予想される技術革新を顧慮して消費効率の基準値を決定する方法 これにより製造者は新しい技術開発を行わねばならず 経済的 技術的に負担がかかるが この基準に達しない製品を販売し続けて場合は社名と対象商品の公表 罰金が科されることがある { トップランナー方式によるエネルギー効率改善状況 } エアコン 67.8%(1997 2004) 電気冷蔵庫 55.2%(1998 2004) 電気冷凍庫 29.6%(1998 2004) ガソリン乗用自動車 22.8%(1995 2005) ディーゼル貨物自動車 21.7%(1995 2005) 自動販売機 37.3%(2000 2005) 他 13 品目 3 補助金 : 汚染を削減する排出者に対して補助金を与えることで 環境を改善しようとする手法メリット 開発費用の大きい環境技術( 太陽光発電など ) の育成に役立つ 環境産業に参入しようとする企業にも補助金が付加されるので 産業への参入が促進される デメリット 財源を確保する必要 8

補助金を長い間支給し続けると 企業の新技術開発のインセンティブをそぐ可能性 4 排出量取引 : 企業 工場など各主体ごとに一定量の汚染物質を排出する権利を与え 実際の排出量が与えられた排出権に定められた量より多ければ 排出権が余っている他の企業からその分の権利を買い取ることができ 与えられた排出権より実際の排出量が少なければ 余った分を他の企業に売り渡すことが出来るという制度 メリット 政府が定めた排出量を各企業や工場に割り当てるため 市場全体の総排出量を政府がコントロールすることができ 削減効果が大きい 削減費用の安い企業が優先的に削減し 削減費用の高い企業は無理に削減せず 他企業から排出権を買い取るため 最小の削減費用で大きな効果を上げることができる 割り当てられた排出量を超えると その分の排出権を他企業から買わなければならず 排出抑制のインセンティブが働く デメリット 排出量の初期配分が難しい 配分方法にはグランド ファーザー方式とオークション方式がある グランド ファーザー方式は初期配分を各企業に無償で割り当てるが 環境対策に力を入れてきた企業など もともと排出量の少なかった企業には小さな排出枠しか与えられず 排出量が多かった企業には大きな排出枠が与えられるため 公平さにかける オークション方式は排出枠を有償にし 各企業に売りつける方式 オークション方式の場合 企業の負担が増える 排出量取引市場に参入する企業が少ない場合 少数の企業による排出権の買占めが起こり 新規参入企業に排出権を売ることを拒否する可能性があり 新規参入者の障害になる可能性がある 取引がちゃんと行われているか政府が監視するのに多くのお金がかかる < 日本と世界の排出量取引制度 > 日本 2005 年から自主参加型排出量取引制度 (JVETS) が始まった 2010 年に参加した 58 社は 2011 年時点で 2007~2009 年の三年間平均より CO2-14.6% の削減に成功した また 東京都でも 2010 年から環境税が導入され 燃料 熱及び電気等のエネルギー使用量が原油換算で年間 1500 キロリットル以上の事業所を対象とする 2011 年で基準値より約 23% の削減に成功した 9

日本以外の国 EU オーストラリア イギリス アメリカ カナダなど 8 世界各国の環境税 導入している国として スウェーデン ドイツ イギリス スイス イタリア オランダ デンマーク ノルウェー フィンランドがある 例 ) イギリス 2001 年 4 月から気候変動課徴金 (CCL) として導入された 2001 年において対象施設の 88% が削減目標を達成し エネルギー効率が 1998 年と比べて 14.5% 改善された 税収 1035 億円 (GDP0.04%) スウェーデン 1991 年から炭素税導入 円換算で 3261 億 (GDP0.81%) の税収 スウェーデンでは 1987~1994 年にかけて CO2 排出量が平均 19% 低下し このうちの 60% が炭素税によるものとされている 9 論点 環境税は導入するべきか 1. 賛成それはなぜか デメリットをどうするか 2. 反対それはなぜか 温暖化対策をどのように推進していくべきか 10 参考文献 栗山浩一 馬奈木俊介 環境経済学をつかむ 有斐閣 栗山浩一 環境経済学の基本と仕組みがよ~くわかる本 秀和システム みずほコーポレート銀行 みずほ情報総研 温室効果ガス削減と排出量取引 環境省 http://www.env.go.jp/ 10

EIC ネット [ 環境用語集 : トップランナー方式 ] http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1967 トップランナー制度 資源エネルギー庁 http://www.enecho.meti.go.jp/policy/saveenergy/save03.htm 経済的手法のメリットとデメリット 経済産業省 http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g10910f3j.pdf 排出量取引東京都環境局気候変動対策 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/large_scale/cap_and_trade/trade.html WMO 温室効果ガス年俸 http://www.jma.go.jp/jma/press/1211/20a/ghg_bulletin_8_press.pdf JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター http://www.jccca.org/ 地球温暖化対策に関する世論調査 内閣府 http://www8.cao.go.jp/survey/h19/h19-globalwarming/ 諸外国における環境関連税制等に関する資料 http://www.city.yokohama.lg.jp/zaisei/citytax/kenkyukai/pdf/02-07gaikokukankyou zei.pdf 環境税をめぐる状況 国立国会図書館 http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0665.pdf 地球温暖化対策における環境税 http://www.kankyo-planning.org/top_in/g_ronbun/pdf/06.pdf 11

11 環境税に対する世論調査 2007 年 8 月 12

13 出典 ) 内閣府