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平成 31 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日まで 63 歳平成 34 年 4 月 1 日から平成 37 年 3 月 31 日まで 64 歳 4 定年について 労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません ( 均等法第 6 条 ) ( 退職 ) 第 48 条前条に定める

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第 3 章 雇用 労働 1 在留資格 外国人の方は, 許可された在留資格の範囲内において, 日本で活動することが認められています 就労できるかどうかに着目してみると, 大きく次の 3 種類に分けられます 在留資格で定められた範囲で就労できる在留資格外交, 公用, 教授, 芸術, 宗教, 報道, 高度

契約の終了 更新18 無期労働契約では 解雇は 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当であると認められない場合 は 権利濫用として無効である と定められています ( 労働契約法 16 条 ) 解雇権濫用法理 と呼ばれるものです (2) 解雇手続解雇をする場合には 少なくとも30 日前に解雇の予告

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平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

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4-1 育児関連 休業期間を有給にするか 無給にするかは 就業規則等の定めに従います また 雇用保険に加入している労働者には 国から給付金が支給されます (P106 参照 ) 産前産後休業期間中及び育児休業期間中は 労働者 使用者とも申請により社会保険料が免除になります 育児休業の対象者 ( 第 5

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8-1 雇用保険 雇用保険の適用基準 1 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること 31 日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き この要件に該当することとなります このため 例えば 次の場合には 雇用契約期間が31 日未満であっても 原則として 31 日以上の雇用が見込まれるもの

3 育児 介護 112

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育児休業をすることができる有期契約労働者の範囲 申出の時点で 次の12の両方を満たす方です 同一の事業主に引き続き 1 年以上雇用されていること 子が1 歳 6か月に達する日までに 労働契約 ( 更新される場合には 更新後の契約 ) の期間が満了することが明らかでないこと ご注意 :1 歳以降の育児

労働基準関係法令に違反するおそれがある事項 労働時間 15 タイムカード等の客観的な記録から確認するなどにより 実際に働いた時間を適正に把握していますか 16 準備や片付けの時間 ( 学習塾等の場合 授業以外に行う質問対応 報告書の作成等に要した時間 ) を労働時間としていますか 賃金 17 賃金を


育児休業制度の概要

その他のチェックポイント 次ページ ➊~➎ のチェックポイントについて ご説明します 受付年月日 紹介期限日 受付年月日は 求人の申込書を安定所が受理した日です 紹介期限日は応募の締切日のことではなく 最大限公開可能な期限であり 採用者が決定した場合 や 求人者から募集打ち切りの連絡を受けた場合 な

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

労働相談とはなにか

必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

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( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

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短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

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社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 平成年月日 会社名 あなたから平成年月日に 育児 介護 休業の 申出 期間変更の申出 申出の撤回 がありました 育児 介護休業等に関する規則 ( 第 3 条 第 4 条 第 5 条 第 7 条 第 8 条及び第 9 条 ) に基づき その取扱いを下のとおり通

【全文】就業規則(今井保育園H29.1.1)


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育児休業申出書式例

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題名

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第 1 章育児休業 第 1 条 ( 対象者 ) 生後 1 年未満 ( 第 5 条による育児休業の場合は 1 歳 6 ヶ月 ) の子と同居し養育する従業員であって 休業後も引き続き勤務する意思のある者は 育児のための休業をすることができる ただし 日々雇用者 期間雇用者 ( 申出時点において雇用期間が

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

 

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定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

2 正社員 契約社員 アルバイトの場合 ( 直接雇用の場合 ) 賃金の支払い仕事上の指揮命令 直接雇用の場合 労働者と労働契約を結ぶのは ( 雇用主は ) 労働者派遣とは 自己の雇用する労働者を その雇用関係の下に 他人の指揮命令を受けて その他人のために労働に従事させることをいいます 直接雇用の場

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(1) 出産予定日前に子が出生したこと (2) 配偶者が死亡したこと (3) 配偶者が負傷又は疾病により,1 週間を超える期間継続して, 通院, 加療, 入院又は安静を必要とする状態となり, 育児休業申出に係る子を養育することが困難になったこと (4) 配偶者が育児休業申出に係る子と同居しなくなった

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一公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律案目次第一章総則 ( 第一条 第二条 ) 第二章立候補休暇 ( 第三条 第六条 ) 第三章雑則 ( 第七条 第九条 ) 附則第一章総則 ( 目的 ) 第一条この法律は 立候補休暇の制度を設けることにより 公職の候補者となる労働

無期契約職員就業規則

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今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

支給開始日以前に カ月の標準報酬月額がある場合 06 年 月 日まで 06 年 4 月 日以降 休んだ日の標準報酬月額 0 日 / 支給開始日以前の継続した カ月間の各月の標準報酬月額の平均額 0 日 / ( 例 ) 支給開始日以前の継続した カ月間に 標準報酬月額が 6 万円の月が カ月 0 万円

ただし 日雇従業員 期間契約従業員 ( 法に定める一定の範囲の期間契約従業員を除く ) 労使協定で除外された次のいずれかに該当する従業員についてはこの限りではない (2) 週の所定労働日数が2 日以下の従業員 (3) 申出の日から93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員 2 要介護状態に

025 of 訪問介護員のための魅力ある就労環境づくり

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原

育児休業及び育児短時間勤務に関する規則

労働者派遣とは て その他人のために労働に従事させることをいいます 正社員 契約社員 アルバイトの場合 ( 直接雇用の場合 ) 賃金の支払い仕事上の指揮命令 派遣の場合派遣契約 A 社派遣先 A 社約労働者派遣とは 自己の雇用する労働者を その雇用関係の下に 他人の指揮命令を受け 働契勤務労労働者

2 就業規則について 労働条件は個別に労働者に説明しているため 就業規則は作成していない 常時雇用している労働者が 10 人未満の場合は除く 就業規則について 使用者が一方的に作成しており 労働者からの意見は聴いていない 就業規則を作っているものの 担当者が管理しており 労働者が自由に見られるように

深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

3 労働時間 と 休憩 休日 は決められている 働く時間や休憩 休日については 法律で基準が決められています < 労働時間 >( 労働基準法第 32 条 ) 会社の指揮監督の下にある時間で 始業時刻から終業時刻まで 原則として1 日の法定労働時間は休憩時間を除き8 時間以内 1 週間の労働時間は 4

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あおもり働き方改革推進企業認証制度 Q&A 平成 29 年 12 月 14 日 Vol.1 目次 1 あおもり働き方改革推進企業認証制度全般関係 Q1 県外に本社がある場合はどのように申請できるのか P1 2 あおもり働き方改革宣言企業関係 Q2 次世代法に基づく一般事業主行動計画とはどういうものか

育児のための両立支援制度 制度の概要 ( イメージ ) 出生 1 歳 1 歳 6か月 3 歳就学 パパ ママ育休プラス 1 歳 6 か月延長 ( 子の年齢 ) ⑴ 育児休業 Ⅰ Ⅱ 努力義務 ⑵ 短時間勤務制度 ⑶ 所定外労働の免除 努力義務 努力義務 ⑷ 子の看護休暇 ⑸ 法定時間外労働の制限 ⑹

申出が遅れた場合は 会社は育児 介護休業法に基づき 休業開始日の指定ができる 第 2 条 ( 介護休業 ) 1 要介護状態にある対象家族を介護する従業員 ( 日雇従業員を除く ) 及び法定要件を全て満たした有期契約従業員は 申出により 介護を必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲で

別紙 1 妊娠 出産 育児休業 介護休業等に関するハラスメントとなり得る具体的言動例 1. 制度等の利用への嫌がらせ型 教職員が産休や育児業 介護休業等の制度の利用を請求したり 制度を利用したことに関して 上 司が解雇等の不利益な取扱いを示唆したり 上司 同僚が 繰り返し又は継続的に嫌がらせ等を行い

(2)3 年以内の有期プロジェクト型業務 ( 同項第 2 号イ ) 事業の開始 転換 拡大 縮小または廃止のために必要な業務で 一定期間内で完了することが予定されている業務への派遣については その業務が完了するまでの期間であれば 受入期間の制限はありません (3) 日数限定業務 ( 同項第 2 号ロ

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第1章  目的

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目次 はじめに 第 1 章労働法について 1 労働法とはなんだろう 1 2 労働法の役割とは 1 3 労働組合とは 2 第 2 章働き始める前に 1 労働契約を結ぶとき 3 2 就業規則を知っていますか 6 3 安心して働くための各種保険と年金制度 7 第 3 章働くときのルール 1 労働条件が違っ

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4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

第 11 条育児休業を終了して復帰する教職員の年次有給休暇については 理事長が別に定める ( 育児短時間勤務 ) 第 12 条小学校就学の始期に達するまでの子と同居し 当該子を養育する教職員が申し出た場合には 当該子がその始期に達するまで 当該教職員の所定勤務時間を 6 時間とすること ( 以下 育

目 次 第 1 条 目的及び内容 1 第 2 条 育児休業 2 第 3 条 パパ ママ育休プラス 2 第 4 条 1 歳 6 か月までの育児休業 2 第 5 条 育児休業の申出の手続等 3 第 6 条 パパ休暇の特例 3 第 7 条 介護休業 3 第 8 条 介護休業の申出の手続等 4 第 9 条

審議するものとする 2 前項の審議は 当該任期付職員の在任中の勤務態度 業績等の評価及び無期労働契約に転換した場合に当該任期付職員に係る退職日までの人件費の当該部局における措置方法について行うものとする 3 教授会等は 第 1 項の審議に当たり 必要に応じて 確認書類の要求 対象者への面接等の措置を

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第 5 章 仕事を辞めるとき 辞めさせられるとき 1 仕事を辞めるには ( 退職 ) 労働者からの申し出によって労働契約を終了することを退職といいます 会社を退職することは労働者の自由ですが 予告もせず いきなり会社に行かなくなるというようなことはルール違反です 退職の意思を上司に伝え 書面で届け出る 仕事の引き継ぎをするなど社会的ルールを守って辞めることが大切です 一般的に就業規則 ( P.14 参照 ) などに 退職する場合は退職予定日の1ヶ月前までに申し出ること というように定めている会社も多いので 退職手続きがどうなっているか調べることも必要です また 退職の申し出にあたっては 契約期間の定めがある労働契約を結んでいた場合と そうでない場合とで法律上異なったルールが定められています 正社員などのように あらかじめ契約期間が定められていないときは 労働者は少なくとも2 週間前までに退職届を提出するなど退職の申し出をすれば 法律上はいつでも辞めることができます ( 会社の就業規則に退職手続きが定められている場合はそれに従って退職の申し出をする必要があります ) アルバイトでよくあるように 3か月間などあらかじめ契約期間の定めがあるとき ( 有期労働契約 ) は 契約期間の満了とともに労働契約が終了します 使用者が労働者に継続して働いてもらう場合は 新たに労働契約を締結する必要があります ( 労働者の同意が必要 ) 契約社員は契約期間に定めがあることが一般的ですが 派遣社員やパートタイム労働者の場合には 契約期間が定められていないこともあります 退職について わからないことがありましたら 労働基準監督署や総合労働相談コーナー (P.7 参照 ) までご相談ください 2 仕事を辞めさせられるとは ( 解雇 ) (1) 期間の定めがない場合会社からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが 突然 君はこの会社に合わないからもう来なくていいよ と言われてしまったら 労働者の生活はひどく不安定なものになってしまいますよね 解雇は 会社がいつでも自由に行えるというものではなく 解雇が客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当と認められない場合は 労働者をやめさせることはできません ( 労働契約法第 16 条 ) すなわち 解雇するには 社会の常識に照らして納得できる理由が必要なのです 43

例えば 解雇の理由として 勤務態度に問題がある 業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが 1 回の失敗ですぐに解雇が認められるわけではなく 労働者の落ち度の程度や行為の内容 それによって会社が被った損害の重大性 労働者が悪意や故意でやったのか やむを得ない事情があるか等 さまざまな事情が考慮されて 解雇が正当かどうか 最終的には裁判所において判断されます また 労働契約法だけでなく他の法律においても 一定の場合については解雇が明示的に禁止されています ( 以下 主なもの ) 労働基準法 業務上災害のため療養中の期間とその後の30 日間の解雇 産前産後の休業期間とその後の30 日間の解雇 労働基準監督官に申告したことを理由とする解雇 労働組合法 労働組合の組合員であること 労働組合の正当な行為を行ったことなどを理由とする解雇 男女雇用機会均等法 労働者の性別を理由とする解雇 女性労働者が結婚 妊娠 出産 産前産後休業をしたことなどを理由とする解雇 育児 介護休業法 育児休業 介護休業 子の看護休暇 介護休暇 所定外労働の制限 所定労働時間の短縮等の措置等 時間外労働の制限及び深夜業の制限について申し出たこと 又は育児 介護休業等を取得したことを理由とする解雇また 会社は 就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません そして 合理的な理由があっても 解雇を行う際には会社は少なくとも30 日前に解雇の予告をする必要があります 予告を行わない場合には 30 日分以上の平均賃金 (= 解雇予告手当 ) を支払わなければなりません ( 予告を行う場合であっても その日数が30 日に満たない場合には その不足日数分の平均賃金を 解雇予告手当として支払う必要があります 例えば 解雇日の10 日前に予告した場合は 20 日 平均賃金を支払う必要があります )( 労働基準法第 20 条 ) さらに 労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には 会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません ( 労働基準法第 22 条 ) (2) 期間の定めがある場合 契約社員のように 期間の定めのある労働契約 ( 有期労働契約 ) についてはあらかじめ 会社と労働者が合意して契約期間を定めたのですから 会社はやむを得ない事由がある 44

場合でなければ 契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされています ( 労働契約法第 17 条 ) そして 期間の定めのない労働契約の場合よりも 解雇の有効性は厳しく判断されます また 有期労働契約においては 契約期間が過ぎれば原則 自動的に労働契約が終了することとなりますが 3 回以上契約が更新されている場合や1 年を超えて継続勤務している人については 契約を更新しない場合 会社は30 日前までに予告しなければならないとされています ( 有期労働契約の締結 更新及び雇止めに関する基準 厚生労働省告示 ) さらに 反復更新の実態などから 実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や 雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合 雇止め ( 契約期間が満了し 契約が更新されないこと ) をすることに 客観的 合理的な理由がなく 社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められません 従前と同一の労働条件で 有期労働契約が更新されることになります ( 労働契約法第 19 条 ) (P.46-47 もう一歩進んで14 整理解雇 参照 ) (P.47 もう一歩進んで15 退職勧奨について 参照 ) 3 会社が倒産したら 会社が倒産して給料を払えなくなったときのために 賃金の支払の確保等に関する法律により 政府が会社の未払いの賃金の立替払をする制度が設けられています 払ってもらえなかった賃金のうちいくらかが立替払されますので そういった場合には労働基準監督署 (P.7 参照 ) に相談してみましょう 4 基本手当 失業してしまった際には 雇用保険 ( P.16 参照 ) に加入していた場合 基本手当が受けられます 基本手当を受けるには 会社を辞めた日以前の2 年間に 11 日以上働いた月が12ヶ月以上あることが条件です ただし 辞めた理由が倒産や会社の都合による解雇 有期労働契約が更新されなかったためなどの場合 辞めた日以前の1 年間に 11 日以上働いた月が6ヶ月以上あれば 基本手当が受けられます また 失業した理由により 給付の開始時期や給付期間が異なります 給付が始まるのは ハローワークに求職申込みをして離職票 ( 労働者が会社を辞める際 会社に発行が義務づけられています ) が受理された日以後 失業の状態にあった日が通算して7 日間経過した後ですが 自己都合の退職や自分の責任による重大な理由により解雇された場合には さらに3ヶ月経たないと支給されません 45

したがって 退職の際に 本当は会社都合の解雇や退職勧奨に応じた退職なのに 自己都合退職などとしてしまうと 基本手当受給の際に不利になってしまいますので 会社から離職票を受け取ったら 離職理由欄をしっかり確認し 理由が違っていた場合には その旨申立てましょう また 退職や解雇の理由についての証明書を会社からもらうこともできますので ( 労働基準法第 22 条 ) もらって確認しておくとよいでしょう 基本手当について わからないこと等がありましたら ハローワーク (P.7 参照 ) にご相談ください 5 ハロートレーニング ( 職業訓練 ) 訓練期間中の生活保障 希望する職業につくためには 必要とされる知識 技能を新たに身につけたり スキルアップを図ることが必要な場合があります このように 再就職に際して知識 技能を向上させたい場合は ハロートレーニング ( 職業訓練 ) の受講を検討してみましょう 雇用保険を受給できる場合は 基本手当を受給しながら 訓練を受けることができます また 基本手当を受給できない場合であっても 再就職に必要な場合は訓練の受講が可能です さらに 一定の要件を満たす場合は 訓練を受けている間に月 10 万円の受講手当や通所手当及び寄宿手当の給付 さらには貸付けを受けることができます ( 求職者支援制度 ) これらの受付はハローワーク(P.7 参照 ) で行っています もう一歩進んで 14 整理解雇 会社が 不況や経営不振などの理由により 解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます これは会社側の事情による解雇ですから 次の事項に照らして整理解雇が有効か否か厳しく判断されます 1 人員削減の必要性人員削減措置の実施が不況 経営不振などによる会社経営上の十分な必要性に基づいていること 2 解雇回避の努力配置転換 希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと 3 人選の合理性整理解雇の対象者を決める基準が客観的 合理的で その運用も公正であること 4 解雇手続の妥当性 46

労働組合または労働者に対して 解雇の必要性とその時期 規模 方法について納得 を得るために説明を行うこと もう一歩進んで 15 退職勧奨について 解雇と間違いやすいものに退職勧奨があります 退職勧奨とは 会社が労働者に対し 辞めてほしい 辞めてくれないか などと言って 退職を勧めることをいいます これは 労 働者の意思とは関係なく会社が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります 退職勧奨に応じるかは労働者の自由であり その場ですぐ答える必要もありませんし 辞め る意思がない場合は 応じないことを明確に伝えることが大切です 退職勧奨の場合は応じてしまうと 解雇と違って合理的な理由がなくても有効となってし まいます 多数回 長期にわたる退職勧奨が 違法な権利侵害に当たるとされた裁判例も あるので 執拗に退職を勧められたりして対応に困った場合には 労働組合 ( P.11 参照 ) や全国の総合労働相談コーナー ( P.7 参照 ) に相談しましょう なお 退職勧奨に応じて退職した場合には 自己都合による退職とはなりません 解雇されたことについて 決まりが守られていないと感じたら 労働基準監督署や総合労働相談コーナー (P.7 参照 ) までご相談ください コラム11 e-ラーニングでチェック! 今日から使える労働法 ~Let s study labor law~ 近年 若者を中心に労働条件などをめぐるトラブルがみられます このため 厚生労働省では就職を控えた方や 既に働いている方などが労働関係の法律の基礎をスマートフォンなどで気軽に学ぶことができる e-ラーニングシステムを運用しています それぞれの事例は 労働法を知らなくても気軽に学習を始めることができるよう マンガを使って紹介しています 事例は入門編と応用編の2 部構成となっていて 応用編ではチェックテストを使って それぞれの理解度も確認できます http://laborlaw.mhlw.go.jp/ 47