1 2013 年 3 月この度 准坊守 稲垣由樹世が得度をすることになった 得度 を調べると 出家し剃髪して仏門に入ることをいう 総合佛教大辞典 法蔵館 とある 浄真宗は出家も剃髪もしないが 簡潔にいえば 僧侶になる ということだ 形式的にいえば真宗大谷派の得度式を受けて僧侶の資格を得ることになる 得度するにいたる経緯は 詳しくは今月の 准坊守のつぶやき に書いてあるが 通覚寺の准坊守となって浄真宗というものと出会っていく中で そうせざるを得なくなってきた 時機が熟したのだと思う 真宗というものに遇うと何かを求めざるをえなくなるのだろう または 求めさせるものを真宗というのだろう 得度する人と成る 親鸞いちにんがためなり 375 真宗大谷派至心山通覚寺寺報二〇一三年四月号通覚寺ホームページは 通覚寺または URL http//:tsukakuji.sakura.ne.jp で検索写真上春彼岸法要の青樹伸和師法話の様子左上法語カードが入ったお菓子左下法要の風景
ともしび 375 2 2013 年 4 月それで その得度式を受けるために練馬の真宗会館で一泊二日 得度研修 を受けることとなり 私も准坊守の付き添いとして研修に参加した 研修の内容は講義や声明 読経 の練習 座談などである 結論からいうと 研修はとても貴重な時間となった ただ単に 准坊守が得度研修に参加するための付き添い というだけでなく 自分自身にとって 大谷派では親鸞聖人が九歳で得度したことに倣って 九歳から得度式を受けられる 本願寺派では十五歳 今回の研修も大人だけでなく子どもたちも参加していた 約二〇年前 私も九歳の時に得度した この寺報 ともしび で剃髪したクリクリ頭の私と弟と住職を目にされた方もおられるかもしれない 九歳だったから 得度とはいったい何なのかまったく分からないまま得度式を受けた だから今回の研修に参加しながら 私も一緒に得度をするような気持ちになった 自分の得度について思い起こしてみれば 分からないうちに得度式を受けたことに対して 卑怯だという気持ちもあった その後 中学生高校生になるにつれて 自分が望んだことでないのに ということに苦しんできたりもした 思えば 得度式を受ける以前からそうだ 幼く 何も分からない私に 仏様に手をあわせてなんまんだぶして と促されてきた 京都大谷専修学院へ行っても 入学式で まずこの宣誓文を読んで といわれ よくわからないまま 真宗精神を体得すべく努力精進することを誓います と誓った しかし今 私が望むかどうか 分かるかどうかに先立って 私に どうか念仏申してくれ どうか得度してくれ と呼びかけられ促されてきたことが 頼もしく 有難いことであったと感じる わかってから 望むなら では間に合わないからだ そして頼もしいと同時に 申し訳ない気持ちがしてくる 大きな勘違いをしてきたからだ それは その呼びかけが自分のためであったにもかかわらず そうとは知らずに 親のため 寺のため と思ってきたことだ のために これは寺や親に対してだけでない 会社のため 社会のため 世のため人のため と様々な形で表れてくる 他のために これは一見 立派な姿のようにも思えるが ともすると悲劇を生む のせいで と自分の現実を引き受けられないあり方だ 親鸞聖人の言葉として 歎異抄 後序では次のように述べられている 弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば ひとえに親鸞一人がためなりけり されば そくばくの業をもちける身にてありけるを たすけんとおぼしめしたちける本願のかたじけなさよ
ともしび 375 5 2013 年 4 月 現代語訳 阿弥陀如来が五劫という長い時間をかけて 全ての存在を救おうという深い思いから建てられた誓願を よくよくこの身に引き当ててみると それはひとえにこの親鸞一人を救うためであったのだ 思えば はかり知れない罪業をもったこの身であるのに たすけようと思い立ってくださった本願の なんともったいないことか 現代語歎異抄 親鸞仏教センター 親鸞聖人は阿弥陀の 生きるもの全てを救う という願いを 私のために と受け取っている まず他でもないあなたが救われよ ということだろう 寺のために親のために 人のためにということが大切なきっかけでもある しかし 自分のため ということが抜け落ちたら ほんとうの意味で 他のため ということは成り立たないのではないか 別の言い方をすれば この私が救われれば それは他のものも救われるということだ この私というものは 自分では思いもよらないほどに 深く広い内容をもった存在ということだろう そうとは知らずにいたことが かたじけなくも申し訳ない 付き添いだったはずの得度が 准坊守と子どもたちの姿によって 思いもかけない貴重なものをいただいた 研修の講義の中で武田定光師は 得度するということは人と成るということです と言われた 得度することは 僧侶の資格を得ることであるが その内容は特別なことでない あなたは人と成っていますか との呼びかけを聞き続けることが大切なことだろう 私はすでに得度式を受けていたが その内容は得度 した とは言えるだろうか 得度し僧侶となり 人と成る 誰の上にも成り立つ一生の課題だ 副住職 稲垣和弘 准坊守は今後 得度考査 受式許可テスト を受け 得度式を受けることとなります こうご期待! 右得度研修の風景 声明のお稽古はとても丁寧に教えて下さいました 副住職の声明も 知らず知らずのうちに自己流になっている部分があったことが確認できました 貴重な機会です
ともしび 375 2 2013 年 4 月今年は寒い日が続きましたが ようやく寒さも和らいできたころ 春の彼岸となりました 三月十七日から二十三日までが春彼岸の期間で 春分の日である二十日 水 には通覚寺本堂にて 春の彼岸法要が開催されました ご参詣の皆様による同朋唱和のお勤めがあり 法話をいただきました 今年の春彼岸法要にはご講師として 副住職が卒業しました京都の大谷専修学院の先輩であり 主に池袋親鸞講座などの聞法の会で長年お世話になっている青樹伸和師にお越しいただき ご法話をいただきました 青樹伸和師のご法話をダイジェストでお送りします 文責は全て副住職 稲垣和弘 お釈迦様は三十五歳の時に悟りを開かれた 彼岸 仏の世界 へ渡ってみたら 此岸 人間の世界 迷いの世界 というところが火宅 家が燃えているのに燃えていることに気が付かずに 気持ちよく迷っているような状況が見えた 私たちが生活をしているところはやはりこの此岸なのです 此岸 世間を超えた教えですから 私たちにはなかなかわからない 話を聞いていて わかったと思った時には聞く耳がなくなっていく 親鸞聖人は生涯聞法された方です 道理 ご縁には善いも悪いもない 私は間違っていないという視点でものを見ていると本質が見えない 我々のもっている善人意識という問題 今日は ただ念仏 このことひとつを持って帰っていただきたい 今日ここに来るまでにを踏んできた人はいますか 私たちには がなくなってしまった 大地 生きるものを育てるもの 帰っていける場所がない 彼岸 浄のこころは えらばずきらわず見捨てず です 法語カード今年の春の彼岸法要の時には 新たな試みとして 法要に参詣してくださった方へお渡しするお菓子の袋の中に 法語カード を同封しました この 法語カード は副住職と准坊守が これまで様々なところで聞いてきた春の彼岸法要報告
ともしび 375 5 2013 年 4 月お話や 読んだ本の中などで出遇った言葉から 心に残った言葉を十個ほど選んでカードにしたものです 最終的にカードになった言葉は十個ですが 候補を二人で挙げていった時は五十個ほどありました 同じ言葉 似ている言葉もあれば 相手の出した言葉に そんな言葉もあったんだ と驚くこともありました この選定作業が面白かったです 十種類の法語カードが入ったお菓子はランダムに配らせてもらいましたので どの言葉が誰のもとへいくかはわかりません 言葉との出遇い これも一期一会ですから ビビっとくることもあれば そうでないこともあると思います もしかしたらお隣の方の言葉の方がピンとくるかもしれません このカードをもとに自分自身と出会い 人と出会い 交流が生まれる そんなきっかけになってもらえたら嬉しく思います 副住職 准坊守 東京教区児童教化連盟 親鸞聖人お誕生のつどい報告 4 月 4 日 5 日 本山 京都の東本願寺にて 親鸞聖人お誕生のつどいが開催されました このつどいは毎年 首都圏にて日帰り遠足として開催されてきましたが 今年は 全国から本山へ子どもたちが集まるイベント 子どものつどい in 東本願寺 へ参加することとなりました 当団体では子どもたちと本山へ行くのは久しぶりのこと 約十八年ぶりだそうです つどいでは 子どもたちと本山の中にある 同朋会館 へ一泊し 親鸞聖人ご旧跡めぐりとして 京都市内の六角堂 新京極などへ行きました 子どものつどい in 東本願寺 では たくさんのゆるキャラと共に京都駅前でパレードを行い 法要をお勤めしました また 東日本大震災復興の願いを込め 被災地の子どもも招待されました 境内では 全国から集まったボランティアの方々がブースを設置して 被災地で実施した炊き出しなどを再現し おでんやカレーライスなどが振る舞われました 人形劇や紙芝居 三輪車レースなどもありました この一泊二日は大変天候に恵まれ 晴れ渡る空のもと 東本願寺の境内が子どもたちでいっぱいになりました 子どもたちがこの先 何か大切なものに出あう小さなきっかけとなってくれたら嬉しく思います また今後も子ども会活動を続けていまいります ぜひともご参加下さい 副住職 稲垣和弘 子ども会のご案内
ともしび 375 2 2013 年 4 月今後のスケジュール 六月九日 日 子ども会 真宗会館 七月二十三日 火 二十五日 水 サマーキャンプ 2 0 1 3 静岡県御殿場市国立中央青少年交流の家申し込み お問い合わせは副住職まで 由樹世 得度研修に参加する の巻今年は桜の開花が早く 浅草の桜は三月に見頃を迎えました 去年は四月になっても桜が咲かなかったのに ちょっとびっくりしました しかし桜っていいですね 明るい気持ちになるし この時期限定で発売されるお菓子は桜模様のパッケージですごく可愛い さて タイトルの通りなのですが 私 先月 得度研修 に参加して参りました 得度 とは僧侶となることです そのための 手続き としては 得度考査 を受けて合格し 京都の本山で得度式に出て 得度 となります 今回の 得度研修 は 得度考査 のための研修でした 得度研修 は練馬にあります真宗会館で 2 日間行われました 研修に参加する前の事前準備としては 正信偈 草四准坊守のつぶやき 二〇一三年三月 上オープニングイベント右京都駅前からのパレード左子どもたちでいっぱいになった東本願寺境内
ともしび 375 5 2013 年 4 月句目下 念仏和讃 六首引 三淘 回向 浄三部経が読めるようにしていかなければなりません 得度 を決意したのは今年に入ってすぐだったので それからの練習となりました 正信偈は普段のお勤めで読んでいたので心配なかったのですが 念仏和讃 六首引 三淘 回向 浄三部経に関しては今回一からの練習だったのでちょっと不安でした 副住職に教えてもらったり C D を聴きながら練習したりしてなんとか準備していきました すごく不安だったのですが 得度研修 のお経の講義では先生がとても丁寧にわかりやすく教えてくださって感激しました 私が術後の身体で 得度研修 に参加したいと言い出した事で たくさんの方々にご心配をおかけしてしまいました 得度研修 の担当である真宗会館に勤めている 通覚寺副住職次男 貴弘さんをはじめ今回の 得度研修 に関わるたくさんのスタッフの方々が色々と事前に話し合い 準備してくださいました 研修の部屋を畳ではなく椅子とテーブルの部屋にしてくださったり 本堂でお勤めの際皆さんが正座の中 椅子を用意してくださったり 具合が悪くないか頻繁に声をかけてくださったり 私はこんなときだからこそ 前向きに頑張りたいと思っていましたが それは私ひとりの問題ではなく 大勢の方々の協力なしでは成し得なかったことに気づき 反省と感謝の気持ちでいっぱいになりました 本当にありがたいことだと思います 主人の副住職 和弘もはじめは反対していました ですが私の決意が固かったので理解してくれ とても心配しながらも研修には付き添いで来てくれてサポートしてくれました なぜ 得度 しようと思ったのか 少しだけ書きたいと思います 去年の手術直後 寝たきりで自力では水も飲めなかったとき ナースコールを握りしめながら苦しくて涙が出てしまいました そのとき ふっと口から出た言葉が 南無阿弥陀仏 でした 正直びっくりしました でもなんだかそれだけですごく安心したのです 結婚し 真宗大谷派のお寺に嫁いだ事で教えと出会いました この手術も 真宗の教えと出会えたからちゃんと向き合えたと思っています なのでこれからもずっと聞法しながら生きていきたい 真宗大谷派の准坊守としてもっと色々勉強もしていきたい そんな思いを募らせていたとき 副住職 和弘に それなら 得度 するといいかもしれないけど 今はちょっとまだ難しいよね と言われました すぐに弟の貴弘さんにきくと 得度研修は年に一度 三月の末とのこと 三月末なら術後四ヶ月以上たっているし いけるんじゃないか! と そういう流れで 得度 しようと思いました 思いたったら即行動! なところは子供の頃から少しも変わらずです 笑 得度研修 の講師は なんと嬉しいことに我が仏の親 武田定光先生でした
ともしび 375 2 2013 年 4 月 お仲人をしてくださった因速寺ご住職です 得度 というのは 手続きとして僧となることであるが 本当に成り立つには といったお話をしてくださいました 本当の意味で僧になるには それは一生の課題である 一生の課題を背負うことが 得度 である そうおっしゃっていました 親鸞を学ぶのではなく 親鸞の問いを学んでいくのだと 常に自分を問うていく 仏様に問われていく それが得度するということだと 講義を受けて 改めて 得度研修 に参加して良かったと思いました 去年 今年と私にとって 私達夫婦にとってなんだかターニングポイントとなる時期なのかもしれないと感じています こんな私でも大丈夫だよって大きなものに受け入れてもらえているような気がします プラス思考! 笑 皆様 これからもこんな私達をよろしくお願い致します 今月も私のつぶやきをお読みいただきありがとうございました この場所で私は皆さんにお育ていただいています 南無阿弥陀仏 准坊守 稲垣由樹世 通覚寺聞法会四月二十日 午後二時 四時日程勤行 法話 語らい参加費無料テキスト 親鸞聖人に人生を学ぶ テキストは差し上げます今年一月から聞法会を少しリニューアルして 親鸞聖人に人生を学ぶ というテキストをもとに開催しています 親鸞聖人が自らの人生において見いだされた課題は 親鸞聖人を通して現れた人間の課題です 親鸞聖人のお念仏の教えに自分自身の人生を学びませんか 事前申し込みは特に必要ありません どなたさまもお気軽にお越し下さい 来月以降の予定五月十一日 六月十五日 八月十七日 十一月十六日 十二月二十一日 いずれも午後二時 四時 五月の日程が変更になりましたご注意ください ともしび三七五号二〇一三年四月発行編集 発行通覚寺 一一一ー〇〇三五台東区西浅草一ー六ー六電話〇三 三八四四 〇〇八三 6 通覚寺の予定