米国家計のバランスシート問題の動向

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別紙2

News Release No.214(14-5) 2014 年 ( 平成 26 年 )6 月 13 日 東商記者クラブ 日銀クラブで 資料投函させていただいております 平成 26 年 5 月度貸金情報統計概況 貸金業法の指定信用情報機関シー アイ シー (CIC) は 毎月 貸金情報統計を公表して

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15 図表 1. 住宅投資 ( 季調値 指数 212 年 =) 14 図表 2. 住宅着工戸数と建設許可件数 ( 季調値年率 万戸 ) :1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:2 18:3 ( 資料 )BEA

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けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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Transcription:

日銀レビュー 1-J-1 米国家計のバランスシート問題の動向 Bank of Japan Review 国際局東将人 * 片桐達平 ** *** 稲村保成肥後雅博 1 年 7 月 米国家計のバランスシート動向をみると 1 住宅ローン金利が大幅に低下し 所得対比の元利払い比率が低下しているほか 株価の回復を受けて家計の純資産も改善しており 家計の過剰な債務負担は 全体では和らぐ方向に向かっている もっとも 住宅ローンを抱える低 中間所得層の家計を中心に 信用力が劣り 低利ローンへの借換えが容易でない世帯や 金融資産の保有額が少なく 株価上昇の恩恵を受けにくい世帯がいるなど 金利低下や株高の効果波及にばらつきが生じているため その改善は限定的に止まっている 先行き 差し押さえ物件など潜在的な在庫を含めた住宅在庫は なお高水準にあるため 住宅価格上昇のモメンタムは 当面抑制される 家計のバランスシート調整が進捗し その重石が住宅ブーム以前の水準まで軽減されるには なお時間を要すると考えられる はじめに 金融危機から数年を経て 米国経済は 緩やかに回復している しかし 過去の景気回復局面と比較すると 米国経済の約 7 割を占める個人消費は 今もなお過去の回復テンポを下回って 推移している ( 図表 1) 個人消費の回復が緩やかな 図表 1 米国の個人消費 ( 過去局面との比較 ) 1 115 11 15 95 ( 景気回復初期 =) 過去の景気回復局面レンジ 今次局面 (9/3Q~) 期 1 3 5 7 8 9 1 ( 注 ) 過去局面は 197 年以降の 5 回の景気回復局面 ( 出所 )BEA ものに止まっている背景には 住宅を中心とする家計のバランスシート問題が存在する 米国では 年代初頭から半ばにかけて 住宅価格の高騰により 家計がホームエクイティーローンを通じて借入れ余力を拡大させる中で 家計債務が大幅に増加した その後の住宅バブルの崩壊と金融危機によって 家計の住宅ローンの返済負担が高 まったことに加え 住宅価格の下落による逆資産効果によって 家計の支出が下押しされてきた 住宅ローンの有無が 所得に占める消費支出の割合にどのように影響したかをみると 住宅ローンを抱える家計 ( 全家計の約 %) では 住宅価格が下落に転じた 年頃から 消費支出の割合がはっきりと低下しており バランスシートの重石が作用してきたことを物語っている ( 図表 ) 図表 住宅ローン有無に基づく消費性向 (%) (%) 7 8 7 8 持ち家世帯 ( 住宅ローン有 ) 持ち家世帯 ( 住宅ローン無 右目盛 ) 3 年 5 7 8 9 1 ( 注 ) 年次家計調査ヘ ースのため GDP ヘ ースと水準は異なる ( 出所 )BLS 金融危機後の債務圧縮 ( デレバレッジ ) の動きをみると 所得対比の債務比率は 新規借入の抑制やデフォルトによる住宅ローン償却もあって ピーク時の 13% 台半ばから およそ % ポイント低下している ( 図表 3) 1 もっとも デフォルトによる償却の場合 ノンリコース型の住宅ローンの残債務が免責されるにしても デフォルトし 8 8 78 7 7 1

図表 3 家計債務の対可処分所得比率 1 1 8 た債務者は 信用履歴が悪化する この結果 新たな借入が長期に亘って困難となり 消費への下押し圧力が残存することになる また 現状の債務比率は 住宅ブーム以前と比べれば なお高めであり 債務の過剰感が解消されたとはいいがたい ストック面でみれば 家計のデレバレッジは なお調整途上にあるといえる もっとも 住宅価格が下落に転じてから 5~ 年の歳月が経つ中 市場では バランスシート調整が何某か進捗しつつあるとの前向きな評価もみられている とくに 1 家計の債務水準はなお高めながら 住宅ローン金利の大幅低下を受けて 家計の元利返済負担が相応に減少するなど フロー面での負担軽減を指摘する声が多い ( 図表 ) また 住宅価格の下落ペースは緩やかになる一方で 株価の回復を受けて家計が保有する金融資産の価値が上昇し 家計の純資産が増加に転じている点を重視する見方も目立っている 以下では このようなつの見方がどの程度妥当するのか という問題意識を念頭に 米国家計のバランスシート調整の進捗度合いを点検していくこととしたい 図表 元利払いの対可処分所得比率 15 (%) 1 (%) 8 年 85 9 95 5 1 ( 注 ) 直近は 1/1Q ( 出所 )BEA FRB 家計の元利払い負担は軽減しているのか? ( 所得対比の元利払い比率の推移 ) 家計の債務返済負担を 所得対比の元利払い比率 ( 元利払い / 可処分所得 ) でみると 年代初頭までは 振れを伴いつつも 11~1% 近辺で推移していた これは 上昇トレンドにあった所得対比の債務比率とは 対照的な姿である ( 前掲図表 ) 家計債務は 規制緩和や金融機関の貸出積極化などの要因から増加を続けていたが ディスインフレのもとで長期金利が低下したこともあって 所得対比の元利払い比率は安定的に推移し 家計の返済負担は 歴史的にみても高くはなかった もっとも 年代入り後は 所得対比の債務比率に加え 所得対比の元利払い比率も上昇に転じた ( 前掲図表 ) 住宅価格の高騰や証券化商品に対する投資家ニーズの拡大などを受けて 金融機関の与信基準を一段と緩和する中 住宅ローンが急増したためである また その中でもサブプライムローンの中には 返済初期の返済額が少なく その後 急激に返済額が上昇する特性のローンが多かったことも影響しているとみられる しかし 家計は 住宅価格が上昇を続けたこの時期に 増加した元利払い負担を直ちに重石とは認識しなかったと考えられる 多くの家計が 住宅価格の上昇期待を背景に 住宅の高値売却による債務返済やホームエクイティローンの新規借入が可能と見込み 消費の拡大を続けていた ( 危機後の元利払い比率の低下とその評価 ) その後 7 年以降の住宅価格の急落によって 住宅価格上昇を前提としたローン返済や新規借 図表 5 延滞発生率と失業率 (%) (%) 11 延滞発生率 9 失業率 ( 右目盛 ) 13 7 1 11 1 8 年 85 9 95 5 1 ( 注 ) 直近は 1/1Q ( 出所 )BEA FRB 年 8 1 1 ( 注 ) 延滞発生率は 正常な債務者が 3~ 日延滞へ下方遷移する確率 直近は 1/1Q ( 出所 )BLS FRB 5 3

り入れが困難となった 住宅価格の高騰期に増加した元利払い負担の増加が ここに至って重くのしかかることとなった これに加えて 金融危機後の雇用環境の急速な悪化から 所得が減少した多くの家計で返済が困難となり 住宅ローンの延滞は 7 年以降 急激に増加した ( 図表 5) 一方 所得対比の元利払い比率は 債務残高の緩やかな減少に加え FRB の金融緩和を受けた長期金利の大幅な低下などから 金融危機以降 かなり速いテンポで低下してきている 7 年のピークには 1% 近くあった同比率は 3% ポイント低下し 1 年には 1% 台と 198 年以降のボトム圏で推移している ( 前掲図表 ) こうした金利低下による返済負担の軽減は 住宅ローンの新規破綻の抑制に寄与しつつある 7 年以降 急上昇していた家計の延滞 デフォルト率は 所得対比の元利払い比率の低下から数四半期程度のラグを伴って 9 年前半に 低下に転じた ( 前掲図表 5) 3 マクロでみた貯蓄率も 金融危機後のデレバレッジの動きを受けて 一旦 % を越える水準まで上昇したが その後は 緩やかに低下している 景気回復による雇用環境の緩やかな改善に加えて 金利低下による住宅ローンの元利払い負担の軽減が 家計支出の増加を後押ししていると考えられる ( 留意点 1: 財政移転による所得の嵩上げ ) もっとも こうしたプラス評価には 不確実な部分や留意すべき点もある まず第 1に 元利払いの原資である可処分所得は 金融危機後 政府からの財政移転によって 嵩上げされている点である 雇用者所得の回復ペースは緩やかであり 11 11 18 1 1 1 98 9 9 9 図表 可処分所得の推移 ( 実質 5 年 =) 5 年 7 8 9 1 11 1 可処分所得 ( 雇用者報酬等 + 移転所得 - 税金 社会保障負担 ) 雇用者報酬等 ( 注 ) 直近は 1/Q(-5 月 ) ( 出所 )BEA 減税 移転所得 金融危機前の水準まで戻っていない しかし 可処分所得は 減税や失業保険給付などの財政移転による押し上げが寄与し 危機前の水準まで回復している ( 図表 ) 今現在 議論の途上ではあるが 仮に現行法のまま 1 年末を迎えると ブッシュ減税など大規模な所得税減税や失業保険の給付延長が 一斉に失効することになる ( いわゆる財政の崖 <Fiscal Cliff>) 米国の議会予算局によれば これらの財政移転が一斉に終了すると マクロでは可処分所得が 3% 程度減少すると試算されており 所得対比の元利払い比率が相応に上昇することが見込まれる 所得階層別では 低所得の家計ほど 財政移転による嵩上げ寄与が大きいことから ( 図表 7) 財政移転が打ち切られた場合 住宅ローンを持つ低所得の家計では 支払い負担が重くなるとみられる 図表 7 所得階層別の可処分所得の増減 1..8.... -. -. -. -.8-1. (7 年から 1 年の累積変化率 %) 第 1 階層 3 5 低所得層 中間層 高所得層 ( 出所 )BLS 社会保障負担 + 税金雇用者報酬等 移転所得可処分所得 ( 留意点 : 住宅ローンの借り換え制約 ) 第 に 歴史的な金利低下の恩恵が 家計の住宅ローンの借り換え制約などによって 家計セクター全体には行き渡っていない点である 米国の住宅ローンは 固定金利型が一般的であることから 住宅ローンを持つ家計が 金利低下のメリットを享受するには 既存の住宅ローンを低利ローンに借り換える必要がある しかし 金融危機後 住宅価格の大幅な下落などに伴って 金融機関の住宅ローンの与信条件が厳格化しており 借入制約に直面する家計が増加している 実際 借り換えを行うことができた住宅ローン債務者の信用力評点 (FICO スコア ) の平均値は 金融危機後上昇を続けている これは 住宅ローンを借り換えることができる家計が 信用力の相対的に高い家計に限定され 信用力の劣 3

る家計が ローンの借り換えを拒絶されていることを示している ( 図表 8) 5 住宅ローン金利が歴史的低水準にあり 借り換えによる金利負担軽減効果が大きいにも拘わらず 家計の借り換えの動きは 過去 例えば長期金利が大きく低下した 3 年頃 と比べて 盛り上がりに欠けている ( 図表 9) 実際 ローン支払金利の低下度合いや FICO スコア別の借り換え実績などをみる限り ローンの借り換えができた家計の比率は 低位に抑えられているとみられる マクロでは 長期金利の大幅な低下によって 家計の元利支払負担はかなり軽減されている しかし その恩恵は優良な家計に限定されており 信用力が劣り なお延滞 デフォルトに陥るリスクに直面している家計には 金利低下の恩恵が十分には及んでいない 8 図表 8 借換対象者の平均 FICO スコア 7 7 8 7 年 8 9 1 11 1 ( 注 ) 直近は 1/ 月 ( 出所 )FHA 図表 9 リファイナンス率とモーケ ーシ 金利 (3 年 Q=) 1 95 年 97 99 1 3 5 7 9 11 リファイナンス率 3 年固定モーゲージ金利 ( 右目盛 ) ( 注 ) 直近は 1/1Q リファイナンス率は リファイナンス指数 / 居住用モーケ ーシ 残高を指数化したもの ( 出所 )Bloomberg FDIC 家計の純資産は回復しているのか? (%) 1 9 8 7 5 今次回復局面において 米国の株価は 堅調に推移する企業収益と緩和的な金融環境に支えられ 金融危機前の水準を超えるまでに回復している こうした株式市況の動きを受け 家計の保有する株式や年金積立金の時価は増加している 家計の純資産をみると 住宅価格の大幅な下落から ピークであった 7 年時点をなお下回っているが 株式資産の時価増加によって 最近では ピーク時対比の純資産減少額はかなり縮小している ( 図表 1) ボトムとなった 9 年初時点での純資産減少額 (1 兆ドル ) のうち 直近では 分の 3 程度 (1 兆ドル ) を取り戻している これは 家計の年間の可処分所得に相当する額であり 株価をドライバーとする純資産の改善は 個人消費の緩やかな回復を後押ししているとみられる -1-1 - 図表 1 家計の純資産の推移 ( 兆ドル ピーク <7/Q> からの変化幅 ) - -8 7 年 8 9 1 11 1 その他資産 負債 株式 ( 含む年金 ) 不動産 純資産 ( 注 ) 直近は 1/1Q ( 出所 )FRB ( 留意点 1: 株価上昇効果は高所得層に限定 ) もっとも こうした評価についても 一定の留保が付くと考えられる 第 1に 株価上昇による純資産の改善効果は 家計セクター全体には 十分に行き渡っていない点である 所得階層別で株式 年金資産の保有状況をみると 株式 年金の保有は 上位の所得層に集中している ( 図表 11) 高所得層は 債務額はそれなりに高いが 株式など金融資産保有額も大きいことから 相対的に厚めの純資産を有している 一方 低 中間所得層は 多額の住宅ローンを持つ一方で 金融資産保有額が少ない このため 先行き 株価の上昇が続いたとしても その効果は 高所得層に限られ 住宅ローンを持つ多くの低 中間所得層にさほど波及しないと考えられる ( 家計部門における純資産の推移 )

図表 11 所得階層別の資産 負債残高 (% 所得対比) その他資産 5 不動産株式 年金 負債 3 % ~ ~ ~ 8~ 9~ 未満 39.9 59.9 79.9 89.9 低所得層中間層高所得層 ( 注 )1 世帯当たり保有資産 ( 負債 ) 額中央値に資産 ( 負債 ) 保有家計比率を掛けたものを 所得対比で示した値 ( 出所 )FRB ( 留意点 : なお残る住宅価格の下落リスク ) 第 に 住宅価格の下落テンポは緩やかになっ てきているが はっきりと持ち直しの動きがみられていない点である これまでの大幅な住宅価格の下落の影響から 住宅ローンを抱える家計の 3% 程度が 保有する住宅の資産価値が住宅ローン元本を下回る 債務超過 ネガティブ エクイティ に陥った状態が続いている 株価上昇の恩恵を受けにくい低 中間所得層を中心に 純資産の面で厳しい状態となっているが この状態を解消するには 債務返済の進捗に加えて 住宅価格が持ち直していくことが不可欠である 住宅市場をみると 中古住宅販売に持ち直しの動きがみられるなど 一部に明るさもみられている 新築 中古住宅の販売在庫も 8 年頃をピークに緩やかに減少しており 年代初めの水準に近づきつつある しかし これまでの販売在庫の減少には 住宅販売の持ち直しに加え 金融機関が保有する差し押さえ物件の処理が いわゆるロボサインなど金融機関の手続きを巡る問題から遅延し 7 当該物件が販売市場に放出されていなかったことが影響している点は 割り引いておく必要があろう 実際 差し押さえや延滞物件など 将来市場に放出される可能性がある 潜在的な在庫 も含めた広義の 住宅在庫 を試算すると その水準は狭義の販売在庫のほぼ 倍まで拡大する ( 図表 1) 試算した 広義の住宅在庫 は 1 年をピークに減少しているが その水準は 年代初めに比べるとなお高い 住宅価格は 最近では下落率が縮小し 指標に よっては幾分上昇するなど ひと頃と比べると落ち着いた動きとなりつつある ( 図表 13) しかし こうした潜在的な在庫圧力を受けて 先行きの住宅価格には 下落リスクが残っている 価格上昇のモメンタムは 当面 抑制されると考えられる 1 8 図表 1 潜在住宅在庫の水準 ( 万戸 ) 新築 + 中古 新築 + 中古 + 潜在在庫 99 年 1 3 5 7 9 11 ( 注 ) 直近は 新築 + 中古 + 潜在在庫が 11/Q 新築 + 中古が 1/1Q 潜在在庫は 9 日延滞件数と差し押さえ件数と再デフォルト件数の合計 再デフォルトは 金利減免債権のデータなどを基に試算 ( 出所 )NAR Census Bureau MBA FDIC IMF 5 5 175 15 15 75 5 (/1 月 =) 図表 13 住宅価格 ( 注 ) 直近は 1/ 月 ( 出所 )S&P CoreLogic FHFA ケース シラー指数 (1 大都市 ) FHFA 指数 ( 除くリファイナンス ) LoanPerformance 指数 年 8 1 1 結びにかえて : 現時点での評価と先行きの展望 ( 着実に進捗しつつもなお重石として作用 ) 本稿では 所得対比の元利払い比率や家計の純資産という切り口から 米国家計のバランスシートの重石がどの程度緩和してきたか を点検した 住宅ローン金利の低下を受けて マクロでみた元利払い負担は低下してきており また株価の上昇により 純資産も全体として回復している この点 金融危機直後と比べて 家計のバランスシートの重石は 全体では 着実に和らいでいると評価できよう 5

しかし 住宅ローン金利の低下や株価上昇の恩恵は 信用力の高い高所得世帯に限定されている 低 中間所得層では 与信の厳格化によって 低利の住宅ローンへの借り換えが困難であるほか 純資産でみても 住宅市況の低迷からネガティブ エクイティの状態を抜け出せない家計が多い このような金利低下や株高の波及効果のばらつきから 家計のバランスシート調整において 家計の二極化 が目立ってきている 家計のバランスシートと消費を紐付けた個表データや 信用力に関する家計分布データなどが入手できないこともあり こうした二極化の影響を定量的に把握することは難しい もっとも 定性的には バランスシート問題により家計が二極化した経済では 以下に述べるつの点から バランスシート問題が存在しない経済と比べて 総需要の回復ペースが弱くなると考えられる 第 1に バランスシート問題を抱える家計は 所得に対する限界的な消費性向が低くなる 住宅の資産価値が住宅ローン元本を下回る 債務超過 家計では 1 追加の借入が困難であることから 予備的動機から手元流動性を積み増す必要がある さらに 予備的動機が充足されても 債務水準が過大であることから 家計は 所得が増えた場合でも消費には回さず 債務返済を増加させる 債務超過 家計では 債務超過を解消すれば 住宅ローンの借り換えが可能となり 金利負担を一気に軽減できるほか 3 住宅を売却して転居することが可能となり より賃金水準の高い職業に転職する機会を得ることもできる などメリットが大きいことから 家計は 消費を抑制して 債務返済を優先させるインセンティブがある 第 に 延滞や破綻に至った家計 ( デフォルト家計 ) は 信用履歴の悪化などにより 借入制約に長期間服することになるため 履歴の悪化が回復するまで長期に亘り 消費に下押し圧力がかかる点である 過去のデフォルト増加の影響が一巡するまで マクロの消費の伸びが抑制されることとなる ( バランスシート調整を左右するポイント ) 先行きを展望すると 雇用の改善や株価の上昇などを受けて 元利払い負担は抑制され 純資産面でも緩やかに改善を続けるとみられる このように 家計のバランスシートの重石は 引き続き 緩やかに和らいでいくと考えられる もっとも 差し押さえ物件など潜在的なものを含めると 住宅市場の在庫圧力はなお大きい このため バランスシートの本格的な改善のカギを握る住宅価格上昇のモメンタムは 当面抑制されるとみられる バランスシートの重石が 年代の住宅ブーム以前の水準までに軽減されるには なお時間を要すると考えられる 米国のバランスシート調整の先行きは 不確実性が高いとみられるが その進捗度合いを左右するポイントを3 点指摘しておきたい 第 1は 雇用の改善度合いである バランスシートの改善には 債務返済の原資となる雇用者所得の増加が不可欠であるほか 雇用の改善度合いは 住宅の最終需要を決める世帯数の増加ペースも左右する 住宅市場の需給バランスは 差し押さえ物件など在庫圧力に左右されるほか 世帯数の増加ペースも大きく影響する 米国の世帯数は 199 年代以降 年 1% 強 ( 万世帯 ) のペースで増加していたが 金融危機を契機にそのペースが大きく鈍化している ( 図表 1) これには.5. 1.5 1..5. 図表 1 米国の世帯形成 ( 前年比 %) 9 年 93 9 99 5 8 11 ( 注 ) 直近は 1/1Q ( 出所 )Census Bureau 若年層の雇用環境が悪化し 当該層が親世代から独立して世帯を形成できないことも影響しているとみられる 8 最近の着実な雇用拡大から 世帯数の増加ペースが上向く兆しもみえているが こうした傾向が持続していくかがポイントである 第 に 緩和的な金融環境の波及度合いである 特に 長期金利は大幅に低下し 歴史的な低水準となっている 堅調な企業収益 貸家など建設投資の持ち直し 消費者ローンの増加など 金利低下の効果は 緩やかではあるが着実に拡がりつつある もっとも 保有する住宅の資産価値が低下する中 信用力が劣る低 中間所得層では 金利

低下の恩恵を享受できていない 米国政府は 借り換え支援などローン債務者の負担軽減を図るプログラムを導入し その適用条件の緩和や金融機関へのインセンティブ付与に努めており 9 最近では 低迷していた利用実績も幾分ながらも持ち直しつつある こうした政策の効果が 今後 どの程度拡がるのかが注目される 1 第 3は 本年末に予定される財政移転措置の打ち切り ( 財政の崖 <Fiscal Cliff>) の動向である 低 中間所得層では 減税や社会保障給付による所得の嵩上げ効果はかなり大きい 同措置が打ち切られた場合 影響が大きくなる可能性がある 財政健全化を進め 財政の中長期的な持続可能性を高めることは重要であるが 同時に 米国経済の回復テンポを抑制している 家計の二極化 に対しても 一定の配慮が必要となる可能性もある * 現企画局 ** 現金融市場局 *** 現業務局 1 FRB がもつミクロの信用情報 (credit records) を用いた分析によれば 金融危機後の家計債務の圧縮は 新規借入の抑制やデフォルトによる償却で説明される部分が大きく 既存債務返済の積極化による寄与はそれほど高くない 詳しくは Neil Bhutta, Mortgage Debt and Housing Deleveraging: Accounting for the Decline in Mortgage Debt Using Consumer Credit Record Data, Mar. 1. を参照 例えば FICO スコアの場合 当初の信用力水準にも依存するが 破綻 (Bankruptcy) の場合は 5 年から 7 年 場合によっては 1 年近くまで 信用履歴の回復に時間を要することとなっている 3 所得対比の元利払い比率と家計の延滞リスクの間に 有意な正の関係があることを実証したものとして 例えば Juselius and Kim, Sustainable Financial Obligations and Crisis Cycles, May. 11. を参照 FRB のリッチモンド連銀によるスタッフペーパーでも 住宅価格の下落により 住宅価値が住宅ローンの残高を下回る状態 ネガティブ エクイティ ( 本文で後述 ) に陥った家計は 担保価値の不足からリファイナンスが難しい点を言及している 詳しくは Bauer and Nash, Where Are Households in the Deleveraging Cycle?, Jan. 1. を参照 5 FICO スコアとは フェアアイザック社により提供される 債務者の信用力を評価するスコアリングである 所得情報は利用されておらず 過去の支払 延滞情報など 信用履歴に基づくとされている 住宅金融市場の問題点を取り扱った FRB の提言書においても 同様の指摘がなされている 具体的には Federal Reserve System, The U.S. Housing Market: Current Conditions and Policy Considerations, Jan. 1. の p. 参照 7 ロボサイン問題とは 金融機関が差し押さえに係る契約内容を精査せずに機械的に処理した問題 同問題の表面化を受けて 大手銀行が一時差し押さえ手続きを中止したた め 1 年 3Q 以降 差し押さえ物件の処理が滞っていた 8 そのほかの要因として ネット移民 ( 流入 - 流出 ) の増加ペース低下も影響しているとみられる 9 オバマ政権は 住宅市場梃入れ策として 債務者の低利ローンの借換えを目的とした HARP(Home Affordable Refinance Program) と 延滞防止のために返済負担の軽減を図る HAMP(Home Affordable Modification Program) を導入している 当初は 厳格な適用条件 割高な利用手数料 不十分な金融機関へのインセンティブ付与などを背景に 利用実績が低迷していた その後 利用期限の延長や金融機関へのインセンティブ拡充などの見直しを図っており 今後の利用拡大が期待されている 1 また 差し押さえ物件などの空家を 現在需要が旺盛な貸家へ転換することで 潜在的な在庫圧力軽減を図ろうとする提言もある ( 例えば Federal Reserve System, The U.S. Housing Market: Current Conditions and Policy Considerations, Jan. 1. の p.8 参照 ) 日銀レビュー シリーズは 最近の金融経済の話題を 金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として 平易かつ簡潔に解説するために 日本銀行が編集 発行しているものです ただし レポートで示された意見は執筆者に属し 必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません 内容に関するご質問等に関しましては 日本銀行国際局肥後雅博 (E-mail: masahiro.higo@boj.or.jp) までお知らせ下さい なお 日銀レビュー シリーズおよび日本銀行ワーキングペーパー シリーズは http://www.boj.or.jp で入手できます 7