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特集 歩み始めたパリ協定 早川光俊 (CASA 専務理事 ) 土田道代 (CASAスタッフ) 11 月 7 日から モロッコのマラケシュで開催された気候変動枠組条約第 22 回締約国会議 (COP22) は 11 月 15 日にパリ協定の第 1 回締約国会合 (CMA1) を開催し パリ協定の運用ルールを2018 年までに合意することを決めました 歴史的なパリ協定が 合意からわずか1 年足らずで発効し その歩みが始まったことを 心から歓迎したいと思います パリ協定は 工業化以前からの平均気温の上昇を 2 を十分に下回り 1.5 未満に向かう努力を継続することを目的とし 先進国だけでなく 途上国も含めて 21 世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロとする脱炭素社会の構築を目標とする歴史的な合意です パリ協定が発効し CMA1が開催され パリ協定が歩み始めたことでCOP22は歴史的なCOPになりました COP22 の概要 2016 年 11 月 7 日から18 日 モロッコ マラケシュでCOP22が開催され 政府代表団 NGO メディアなど約 2 万 2,500 人が参加しました 昨年のCOP21で採択されたパリ協定が11 月 4 日に発効することが決まり COP22でパリ協定第 1 回締約国会合 (CMA1) が開催されることになりました この結果 今回は以下の6つの会議が並行して開催されました 1 気候変動枠組条約第 22 回締約国会議 (COP22) 2 京都議定書第 12 回締約国会合 (CMP12) 3パリ協定第 1 回締約国会合 (CMA1) 4 科学的 技術的助言に関する補助機関 (SBSTA) 5 実施に関する補助機関 (SBI) 6パリ協定特別作業部会 (APA) CMA1は11 月 15 日に閣僚級会合に出席する各国の閣僚に加え て モハメッド6 世モロッコ国王 パン ギムン国連事務総長を迎えて開幕し 短時間で終了したのち そのまま閣僚級会合へと移行しました 会期 3 日目に パリ協定からの離脱を公言するドナルド トランプ氏がアメリカ大統領選挙に勝利したという衝撃的なニュースが飛び込んできました このことがCOP22での交渉に悪影響をもたらすかが懸念されましたが 報道をうけてすぐ 中国政府代表団が気候変動問題はすでに国益にかかわる問題であり 何ら変わりなく対策を進めていくとの強い意思を表明したほか 各国からパリ協定を支持する発言が続き パリ協定を批准する国は増え続けました 気候変動の影響に最も脆弱な国々 47ヵ国からなる気候脆弱国連合 (CVF) が 遅くとも 2030 ~ 2050 年までに再エネ100% を実現するという野心的な目標を発表するなど 気候変動問題に対する取 り組みをさらに進めていこうとする動きも目立ちました COP22は 19 日未明に決定を採択して閉幕しました COP22 で決まったことパリ協定特別作業部会 (APA) APAは 議題番号 3~8についての非公式協議 ( インフォーマル コンサルテーション ) がもたれ パリ協定のルールづくりに向けた議論が進みました 表 1にあるように 次回 2017 年 5 月のAPAでさらに議論を進めるために何をするか それまでに何をするかに合意し APAは11 月 14 日に閉会しました 非公式協議での議論は 2 名ずつ配置されたファシリテーターによってインフォーマル ノートに整理されています 今回の APAの成果概要は APA 共同議長がインフォーマル リフレクショ 2 Letter No.93 (2016.12)

ン ノートとしてまとめる予定に くりのスケジュールに合意するこ させ パリ協定が発効するという なっています 今回のAPAセッ とでした 流れが想定されていました とこ ションで決定文書案としてCOPに もともとパリ協定は2020年か ろがパリ協定が記録的短期間で発 送られたのは 議題番号8 b で らスタートする新たな国際枠組み 効するといういわば 嬉しい誤 議論されてきたCMA1招集に関 であり 発効まで一定の時間が 算 によって持ち上がったのが する議論についてのみで この決 かかることが想定されていまし COP22でCMA1を開幕したあと 定案はCMAで適用される事務的 た そのため COP21決定では どうするか という問題でした な手続きに関するごく一般的な内 COPのもとにパリ協定特別作業 これは APAでルールづくりの 容です 部 会 APA を 設 置 し APAで 交渉が始まったばかりであるこ パリ協定の運用ルールを交渉し と パリ協定の大事なキーワード CMA1 の 開 催 と 中 断 パリ協定のルール づくり CMA1 が 開 催 さ れ るCOPで 運 のひとつである すべてのステー 用ルールを採択すること それを クホルダー 利害関係者 の参加 もってAPAは作業を完了するこ inclusiveness の実現という COP22の課題は CMA1を開 ととされていました また各国 観点などから COP22ではCMA 幕し パリ協定のルールブックづ は その期間に批准手続きを完了 を開幕して いったん 中断す 表1 APAの議題番号3 7のテーマと今後のスケジュール Letter No.93 (2016.12) 3

る という手順を踏むこととし 以降 2017 年のCOP23で再開し再び中断 2018 年のCOP24で再開することに合意しました パリ協定のルールづくりは引き続き APAで交渉されることが確認され 2018 年までにその作業を終えることが合意されました 2017 年のCOP23ではCOPとCMAが合同で作業プログラムの実施状況を確認することになっています 京都議定書の場合 ルールの政治的合意までに3 年 7ヵ月 法的文書にするまでに4 年かかりました すべての締約国が参加するパリ協定の運用ルールは 京都議定書より包括的で 利害関係も複雑であることは間違いなく そのパリ協定の運用ルールに2 年間で合意するというのは 極めて野心的なスケジュールです COP22は CMA1をスムーズに開幕 中断することに成功し パリ協定の運用ルールづくりのスケジュールに合意し パリ協定が順調に歩みはじめたという点で 大きな成果を収めたと評価してよいと思います 促進的対話 パリ協定は京都議定書と異なり 各国の目標は各国が自主的に決める目標とされ 達成できなくても制裁はありません このため パリ協定の目的 目標を達成するには 各国が自国が掲げた目標を達成するための国内対策を策定 し 誠実に実施していくことが不可欠です 各締約国は NDCと呼ばれる削減目標や削減行動を提出しています しかし 現在の各国の削減目標や削減行動では2 未満は達成できないことが分かっており 各国の削減目標や削減行動の引き上げが必須です パリ協定は締約国に5 年ごとに目標を提出することを求め また新たに提出する目標は それまでのその国の目標を超えるもので その国ができる最も高い削減水準であることを求めています そして それらの目標が パリ協定の目的 目標に沿ったものになっているかの検証を5 年ごとに行うことにしています この 5 年ごとの 検証 は グローバル ストックテイク と呼ばれています このグローバル ストックテイクは 各国が提出している削減目標や削減行動の パリ協定が掲げる目的や目標に対する全体の進捗状況を確認するもので 2023 年に第 1 回目を開催することになっています 最初の目標の提出は2020 年とされており 2025 年目標を掲げている国は新しい目標の提出を 2030 年目標を掲げている国は目標の確認または新しい目標の提出を要請されています しかし 2020 年の目標提出に2023 年実施のグローバル ストックテイクでは間に合わないので 2018 年にグローバル ストックテイクに代わる 促進的 対話 が行われることになっています 促進的対話 と名称は違っていますが その役割はグローバル ストックテイクと同じです こうしたことから 今回 私たち環境 NGOがもっとも注目していたのが 2018 年に予定されている促進的対話についての交渉でした 私たち環境 NGOは2018 年の 促進的対話 で 全体の進捗を確認し その結果が2020 年の目標提出に向けた各国の目標水準を引き上げる機会として十分に活用されるために COP22で促進的対話に関する決定が必要だと考えていました その理由は 急速に進行している気候変動に対処するためには 一刻も早い各国の削減目標や削減行動の引き上げが必要であり その最初の機会が2020 年だからです 結果は 当初は議題にすら上がっていなかった 促進的対話 に関する決定が COP22 決定に書き込まれることになりました その内容は 2017 年 5 月の補助機関会合およびCOP23の会期中に COP22 議長とCOP23 議長が協力して 促進的対話 をどのように行うかについて締約国間の協議を行い 2017 年のCOP23でその準備状況について報告を行うよう要請するとされ これらが明記されたことは大きな成果です 4 Letter No.93 (2016.12)

特集歩み始めたパリ協定 資金問題 最近の試算によれば 2020-2030 年の間に70ヵ国あまりの途上国のNDCを実施するだけで4 兆ドルもかかるとされています また これから数年の間に大幅な支援とキャパシティ ビルディング ( 能力強化 ) が必要で パリ協定の実施に関しても 資金問題は極めて重要な課題になっています パリ協定と資金問題 昨年のCOP21でも資金問題は最後まで揉めたテーマのひとつでした COP21での資金問題の論点は 1 先進国が主張していた資金提供国の拡大と 2 2020 年以降の資金規模の拡大が交渉の論点でした 1については 先進国は従来の先進国だけでなく すでに先進国なみの経済力をもつ一部の途上国も資金供与をすべきだと主張していました これについては 先進国の資金提供義務 ( パリ条約 9 条 1) に加えて 他の締約国が自発的に引き続き支援を提供することができる (9 条 2) とされ 先進国以外の 他の締約国 すなわち先進国なみの経済力をもつ一部の途上国も 自発的 に資金を提供できると記述することにより妥協が図られました 2の 2020 年以降の資金供与の規模については 具体的な数値目標は記載されませんでしたが COP 決定で 2025 年まで 先進国が1,000 億ドルの資金動員を引き続き行う意思があること (COP21 決定パラ54) を確認し 2025 年までに CMAが1,000 億ドルを下限とする資金の世界目標を設定する ことを決定しています このことは 2020 年までに 1,000 億ドルを拠出するという従来の合意は維持しつつ 2020 年以降の資金については 引き続き気候資金の動員を先導することが先進国の義務とされ このような気候資金の動員はそれまでの努力を超える前進を示す (progression beyond) とされました (9 条 3) 今回のCOP22で問題になったのは 2020 年までに年間 1,000 億ドルに到達するまでのロードマップ ( いつまでにいくらの気候資金を確保するのか 確保できるかを示す工程表 ) と適応基金の位置づけです 1,000 億ドル到達へのロードマップ ロードマップについて 今年 10 月にOECDがまとめた 1,000 億ドルへのロードマップ (Roadmap to US$100 Billion) では 2013 年の時点で年間 520 億ドルだったものが 2014 年には年間 620 億ドルに増え 2020 年に1,000 億ドル達成は可能としています しかし 気候資金の定義がはっきりして いないこともあって この620 億ドルには開発援助 (ODA) 案件が多く含まれており 企業の海外進出のための商業ベースの融資も含まれている可能性が高いと言われており 途上国から620 億ドルの試算方法に疑問が出されていました また このロードマップでは 1,000 億ドルのうち適応分野の金額は5 分の1にとどまっていることも問題になっていました 気候変動による被害はすでに発生しており 今後こうした被害に適応するのに必要な費用は巨額になると予想されます さらに 適応を超えた 損失と損害 ( ロス & ダメージ ) に関する費用は 適応に関する費用を上回ると考えられており そのため適応に関する資金の割合を増加させることが途上国側の強い要求になっています COP 決定に ロードマップ をどう位置づけるかが問題になりました 先進国側は ロードマップ の試算方法を今後の 気候資金 の試算方法にするよう主張しましたが 途上国側は ロードマップ をCOP 決定に位置づけてしまうと その試算方法が公式に認められることになると問題にしたことから COP22 決定には ロードマップ についての言及はなく 決定の脚注に ロードマップ のウェブアドレスが書き込まれるだけにとどまりました Letter No.93 (2016.12) 5

適応基金 適応基金は 京都議定書のもとに設置されている基金です COP22では 適応基金とパリ協定との関係やその規模などについても問題になりました 適応基金は 途上国における具体的な気候変動の悪影響に適応するための事業や計画に拠出されることになっています その資金源は 先進国の自主的な資金拠出のほかに クリーン開発メカニズム (CDM) 事業における認証排出量 (CER) の利益の一部 (CERの 2%) が適応基金に入れられることになっています 京都議定書は 2020 年にパリ協定が始動することにより その役割を終えることから 適応基金を京都議定書からパリ協定の下に移行させるかが問題となりました 適応基金はまだ規模は小規模ですが 適応事業に供与されることになっていること 資金源が確保されていることから これをパリ協定の下で位置づけたいという途上国の要求は当然だと思います 結果は 適応基金をパリ協定の下に位置づけることが決まり 適応基金の組織 体制 規則や運用指針などについて APAで議論し 2018 年のCMAで決定することになりました また 各国が 2017 年 3 月 31 日までに意見提出 することになっています トランプ問題 会期 3 日目の朝 アメリカの大統領選挙でトランプ候補が勝利したという衝撃的なニュースが飛び込んできました トランプ候補は パリ協定は時代遅れの規制だと言い放ち 大統領に就任したらパリ協定から離脱すると公言していました パリ協定は 協定を批准した国にとって効力が発生した日から3 年を経過した後には脱退の通告を行うことができ 通告してから1 年を経過すると脱退できるとしています * このことは トランプ政権の第 1 期任期中には パリ協定から脱退できないことを意味します しかし 同時にパリ協定は 気候変動枠組条約から脱退する締約国は パリ協定からも脱退したものとみなす としており その国にとって条約が効力を発生した日から3 年を経過すると脱退の通告を行うことができ 通告してから1 年を経過すると脱退できるとしています このパリ協定と条約の規定から トランプ次期米大統領は条約からの脱退を通告し その通告の日から1 年後には条約を脱退でき これによりパリ協定からも脱退できることになります この原稿を書いている12 月 10 日の段階では トランプ次期米大統領は環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) からの離脱は公約どおり実行するとしていますが パリ協定については 決めていない (open mind) としています トランプ次期米大統領が今後 パリ協定から脱退するかどうかは予測できませんが 思い出すのは 2001 年にブッシュ大統領が当選し 京都議定書交渉から離脱した時のことです しかし 2001 年のときとは大きく状況が異なっています ブッシュ政権が京都議定書交渉から離脱したときは 京都議定書はまだ発効していませんでした しかし 今回は日本を含む116ヵ国が批准し (2016 年 12 月 10 日現在 ) パリ協定はすでに発効しています また ブッシュ政権が京都議定書交渉から離脱した当時と 国際的な力関係が大きく変化しています 中国 インド ブラジルや南アフリカなどの新興国が国際的な地位を高め 国際交渉での交渉力を増しています 一方 その分 アメリカの影響力が低下しています パリ協定が合意された背景には 省エネや再生可能エネルギーの世界的な急速な普及があります 国際エネルギー機関 (IEA) は 2015 年の全世界の発電量のう * 批准した国は批准後 30 日でその国に効力が発生します 脱退条項は 締約国は 自国についてこの条約が効力を生じた日から3 年を経過した後いつでも 書面による脱退の通告を行うことにより この協定から脱退することができる となっています パリ協定発効の30 日以上前に批准した国は パリ協定発効の日にその国にとってパリ協定が効力を生じるので パリ協定の発効から3 年たつと脱退を通告できます 6 Letter No.93 (2016.12)

特集歩み始めたパリ協定 ち23% を再生可能エネルギーが占め 石炭火力を抜いて最大の電源になったとし さらに2021 年には 28% まで上昇すると予測しています 中国やインドを含め 世界は化石燃料から再生可能エネルギーへ舵を切るエネルギー大転換に向かっており この動きは止まりません さらに ビジネス界もパリ協定が掲げる21 世紀後半に二酸化炭素 (C O2) 排出量の実質ゼロに向けた取り組みを始めています なによりも COP22で 中国をはじめとして 各締約国からパリ協定を支持する発言が相次ぎました トランプ次期米大統領の影響は極めて限定的であり またそうしなければならないと思います 日本の課題 日本は パリ協定の批准が遅れ CMA1に締約国ではなくオブザーバーとしての参加になってしまっただけでなく 石炭火力を 推進していることで世界から非難を浴びています 11 月 17 日には石炭火力問題で化石賞を受賞しました 日本のエネルギー政策は 原発と石炭火力をベースロード電源とし 2030 年の再生可能エネルギーの割合は22 ~ 24% ですが 石炭火力の割合は26% になっています 福島原発事故前の石炭火力の割合は24% だったので 2030 年に石炭火力の割合を増やす計画で これはパリ協定に明らかに逆行しています このようなエネルギー政策は直ちに改定されなければなりません また 日本の削減目標は 2020 年に1990 年比で5.8% 増 2030 年に2013 年比で26% 削減 (1990 年比で18% 削減 ) という先進国で最低レベルです しかも 2020 年目標はすでに達成済みです 2020 年までにまだ3 年あり 2020 年目標の引き上げは可能です 日本 の2050 年目標は80% 削減とされており このままでは2030 年から2050 年までの20 年間に50% 以上の削減が必要になり 将来世代に大きな負担を強いることになります 2030 年目標の引き上げが 早急に検討されなければなりません 科学と市民がパリ協定実施の鍵 これまで気候変動問題に関する国際交渉が進展してきたのは IPCCに代表される科学と市民の関心の高さです 科学に裏付けられた交渉は大きく後戻りすることはなく また市民の関心の高さが交渉を前進させてきました 気候変動問題は 私たちの子や孫などの将来世代の生存に関わる問題です パリ協定の確実な実施こそ 私たち世代の責務だと思います COP22 募金への協力の御礼 CASAでは 皆様にCOP22への代表派遣の募金のお願いをし 10 団体 73 人の方から76 万 6,000 円のご協力をいただきました 本当にありがとうございます CASAは COP22で世界の環境 NGOネットワークであるCANや CANの日本組織であるCANジャパンと協働で日本政府や各国政府に働きかけるとともに ブースでCASAが独自に開発した CASA2030モデル での日本における二酸化炭素削減可能性についての試算結果を展示し 現地から マラケシュ通信 を6 号まで発行しました パリ協定の実施のためには CASAなどのNGOの活動がますます重要になっていると思います 今後とも CASAの活動にご支援 ご協力をよろしくお願い致します Letter No.93 (2016.12) 7