為替相場展望2018年12月号

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為替相場展望2018年9月号

為替相場展望2018年10月号

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株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

株式市場 米国株 年末商戦や金利動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米中首脳会談への期待から上昇米国株式市場は上昇しました 前半は中間選挙の結果が市場の事前想定通りとなったことなどから安心感が広がり株価は上昇しました 中旬では一部のハイテク企業が需要見通しを引き下げたこと

Invesco Premia Plus Fund

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

株式市場 米国株 国内外の政治動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 好調な企業決算発表を受けて上昇米国株式市場は上昇しました 月前半までは2017 年 1-3 月期の決算発表内容が総じて好調であったことが株価を支えました 月半ばには コミー前 FBI( 連邦捜査局 )

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

株式市場 米国株 高値警戒感の高まりなどから上昇一服も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました トランプ政権で閣僚などの人事において一部で混乱が見られましたが トランプ大統領の発言などにより減税 金融規制緩和などへの期待が高まったことや 発表された米国企

Outlook201812

平成30年度第1四半期における運用状況等

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

PowerPoint プレゼンテーション

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

PowerPoint プレゼンテーション

株式市場 米国株 新政権の政策期待による上昇も一服 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました ISM( 全米供給管理協会 ) 指数など月初に発表された経済統計がおおむね良好であったことを受け 月前半の株式市場は堅調に推移しました 月半ば以降は 高値警戒感な

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

退職等年金給付積立金 平成30年度第2四半期運用状況

目次 概況 p.1~ トピックス1: 米中貿易摩擦が本格化 p.3 トピックス :~6 月期以降 個人消費は持ち直しに転じる見込み 景気 金利見通し p. p.5 Fed Watch:18 年の利上げペースが注目点に p.6 調査部マクロ経済研究センター ( 欧米経済グループ ) 研究員長野弘和 (

株式市場 米国株 先行き不透明感強いがファンダメンタルズは良好 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました 堅調な経済指標の発表を受けて米国の年内利上げ観測が高まったことで 金利動向の影響を受けやすいディフェンシブセクターの一部が軟調に推移しました また 米

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

今月の経済金融情勢2018年12月25日号

今月の経済金融情勢2018年11月30日号

Outlook201806

untitled

特別勘定の内容 目標値 110% または 120% の場合の特別勘定 種類 特別勘定の名称 投資対象となる投資信託 TMA 日本株式インデックスVA * 運用会社 資産運用関係費用 ( ( 年率 ) 注 ) 総合型 世界バランス 40TMA TMA 外国株式インデックスVA * TMA 日本債券イン

Currency201207

Microsoft Word ECB利下げ.doc

外為マンスリービュー 1月号 【ドル/円・ユーロ/円】

第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

Microsoft PowerPoint - ï¼fiã••PAL镕年+第ï¼fiQ;ver5.pptx

Outlook201901

PowerPoint プレゼンテーション

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

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TFX_フィスコ通貨ウォッチャー

PowerPoint プレゼンテーション

マネーマーケットマンスリー 2018年3月

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変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

今月の経済・金融情勢

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

2016 年 メキシコペソ もとの状況と今後の 通し <メキシコペソ / 円は下落 > < 政策 利とインフレ率の推移 > メキシコペソは もとまで軟調に推移してきました しかし 原油先物価格は2016 年 2 に安値をつけて下落が続いてきた理由として 1 統領選 2メ以降 持ち直す展開

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Outlook201609

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一部新興国市場が動揺 アルゼンチンは前四半期から経済危機に陥っていましたが トルコでは 6 月に再選された大統領が米国と対立したこと等を契機に 8 月に通貨が急落しました ブラジルや南アフリカ インドの通貨も下落が加速する局面が見られ 中国元も緩やかに値を下げました これまでのところ個別国の問題とい

金融市場2018年12月号

当ページは 各種の信頼できると考えられる情報源から取得した情報に基づき アクサ生命保険株式会社が作成し提供するものです 情報の内容に関しては万全を期しておりますが その正確性 完全性については これを保証するものではありません 日本株式市場 運用環境 [ 2015 年 4 月 ~2016 年 3 月

スライド 1

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経済金融・情勢資料  15年7月 

Microsoft Word

円 N 先週のメキシコペソ相場今週の見通し 12 月 17 日 - 12 月 21 日取引レンジ 5.53 円 円想定レンジ 5.50 円 円 対円レートは強含み 大幅な歳出拡大計画の発表が期待されており 歳出拡大による景気浮揚への期待が高まったことから 投機的なペソ売り

2019年はどんな年? 金融市場のテーマと展望

日経平均株価 22,27.3 NY ダウ工業株 3 種 25,9.32 米ドル 2, 2, 22, 円 2, 1, 1, 1, 12, 1,,, 2, 22, 1, 1, 1, 21 年 月 2 日発行休場の場合は直前の営業日までのデータ 長期 ( 週次ベース ) (27 年 1 月第 1 週末 ~

nichigingaiyo

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

Outlook201501

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

金融政策決定会合における主な意見

マネーマーケットマンスリー

日経平均株価 22,97. 2, 2, 22, 円 2, 1, 1, 1,, 1,,, 21 年 7 月 23 日発行休場の場合は直前の営業日までのデータ 長期 ( 週次ベース ) (27 年 1 月第 1 週末 ~21 年 7 月第 3 週末 ) 短期 ( 日次ベース ) (217 年 1 月初

スライド 1

untitled

Invesco Australian Bond Fund (Monthly)

2012 年 10 月 15 日号

スライド 1

人民元週間レポート 2019 年 3 月 29 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

スライド 1

Microsoft Word doc

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

平成23年11月1日

日経平均株価 21,1. NY ダウ工業株 3 種 2,.31 米ドル 2, 2, 22, 円 2, 1, 1, 1, 12, 1,,, 22, 1, 1, 1,, 21 年 1 月 29 日発行休場の場合は直前の営業日までのデータ 長期 ( 週次ベース ) (27 年 1 月第 1 週末 ~21

オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

月例経済報告

Outlook201601

Microsoft Word - 21年度資産運用概況.doc

○ 資産運用状況(平成15年度)

月例経済報告

Outlook201805

2006年2月3日

Microsoft PowerPoint - Pictet_Market_Flash_ (直近の下落).pptx

Microsoft Word - 44_2

Transcription:

相場展望 2018 年 12 月 調査部マクロ経済研究センター https://www.jri.co.jp/report/medium/exchange

目次 回顧 p. 1 ドル円分析 : 米中の貿易摩擦激化や景気に対する懸念が重石 p. 2 ユーロ分析 : ユーロ安圧力は緩和も 当面の反発余地は小 p. 3 見通し p. 4 調査部マクロ経済研究センター副主任研究員井上肇 ( Tel: 03-6833-0920 Mail: hajime.inoue@jri.co.jp ) 本資料は 2018 年 12 月 7 日 9:00 時点で利用可能な情報をもとに作成しています 本資料は 情報提供を目的に作成されたものであり 何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません 本資料は 作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが 情報の正確性 完全性を保証するものではありません また 情報の内容は 経済情勢等の変化により変更されることがありますので ご了承ください

回顧 : ドル円相場 ユーロ相場ともに横這い圏での推移が持続 11 月のドル円相場 7 日の米国中間選挙が事前予想通りの結果となり 投資家のリスク選好の動きが強まったほか 7~8 日の米 FOMC で漸進的な利上げを続ける方針が維持されたことなどから 114 円台までドルが上昇 もっとも その後は 米中の貿易摩擦や原油価格の下落などを背景に米国株式市場が軟調な展開となるなか リスク選好の動きは続かず 20 日にかけて 112 円台までドルが反落 その後 米国の年末商戦への期待などを背景に株式市場が持ち直し リスク回避の動きが和らいだことで 28 日には一時 114 円台乗せ 月末にかけては 同日のパウエル FRB 議長のハト派的な発言を受けて 早期利上げ打ち止め観測が高まり 113 円台中心にドルの上値の重い展開 11 月のユーロ相場対ドルでは 米国中間選挙を無難に通過し 欧州でも株式市場が持ち直したことで 7 日に 1.15 ドル前後までユーロが反発 もっとも イタリア政府が修正した予算案を欧州委員会に再提出する期限 (13 日 ) が近づくなか イタリア政府が修正に応じない姿勢を示したことなどから 12 日にかけて 1.12 ドル台前半までユーロが下落 その後 米国で景気 企業業績の先行き懸念などが高まり 一時 1.14 ドル台半ばまでユーロが反発 月末にかけては イタリア政府と EU との対立や 英国の 合意なし EU 離脱に対する懸念が払拭されないなか 1.13 ドル台を中心にユーロの上値が重い展開 対円では 11 月の米国中間選挙後に投資家のリスク選好の動きが強まり 円売りが優勢となったことから 7 日に 130 円台までユーロが上昇 その後は 欧州の政治情勢などを巡る不透明感が払拭されないなか 128 円台を中心に一進一退 ドル円相場 ユーロ円相場の推移 140 ユーロ円相場 135 130 125 120 ドル円相場 115 110 105 100 17/12 18/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ユーロドル相場の推移 ユーロドル相場の推移 ( ドル ) ユーロ高 1.15 ユーロ安 1.10 17/12 18/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ( 資料 )Bloomberg L.P. - 1 -

ドル円分析 : 米中の貿易摩擦激化や景気に対する懸念が重石 米中貿易摩擦を巡る懸念は払拭されず米中貿易摩擦や景気の先行きに対する不透明感が払拭されないなか ドル円相場は 113 円台を中心とする神経質な展開が続く見込み 12 月 1 日の米中首脳会談では 米国が中国製品に対して 2019 年 1 月 1 日から予定していた関税率の引き上げを 90 日間猶予することなどで合意 もっとも 中国による強制的な技術移転や知的財産保護などに関する協議が進展しなければ 関税率を引き上げると警告しており 予断を許さない状況 景気の先行きに対する懸念も一方 米国内の動向に目を向けると 11 月入り後 景気や企業業績の先行き不透明感が強まるなか パウエル FRB 議長のハト派的な発言なども加わり 早期利上げ打ち止め観測が台頭 パウエル議長は 10 月 2 日の講演で 政策金利は景気に対して緩和的でも引き締め的でもない中立水準から 程遠い と発言していたものの 11 月 28 日の講演では 政策金利は中立水準を わずかに下回る と発言に変化 直近 9 月時点の FOMC 参加者の見通しでは 19 年は 3 回程度の利上げが想定されていたものの 足許の市場が織り込む 19 年の利上げ回数は 1 回台前半と両者の乖離が拡大 さらに イールドカーブのフラット化が進むなかで 3 年債利回りが 5 年債利回りを上回る 逆イールド が出現 長短金利差のより代表的な指標である 10 年債利回りと 2 年債利回りの差もプラス幅が縮小 過去には逆イールドが景気後退の予兆となったこともあり 市場の一部では景気失速に対する懸念が強まる格好に 実際には 足許の景気指標が大きく悪化しているわけではないため 12 月 18~19 日の FOMC では 政策金利見通しが据え置かれてもおかしくはない状況 この場合 市場では米金利の上振れがドル買いにつながるとみられるものの 利上げ継続が景気をオーバーキルするとの懸念が強まれば 株安に伴うリスク回避の円買いが優勢となる可能性も 2018 年 4 3 2 1 0 1 2 3 米中の貿易戦争を巡る動き 7 月 6 日 8 月 23 日 9 月 24 日 12 月 1 日 2019 年 3 月 1 日 米国が対中輸入品 340 億ドル相当に25% の追加関税を発動 ( 対中関税第 1 弾 ) 中国が対米輸入品 340 億ドル相当に25% の報復関税を発動米国が対中輸入品 160 億ドル相当に25% の追加関税を発動 ( 対中関税第 2 弾 ) 中国が対米輸入品 160 億ドル相当に25% の報復関税を発動米国が対中輸入品 2,000 億ドル相当に10% の追加関税を発動 ( 対中関税第 3 弾 ) 中国が対米輸入品 600 億ドル相当に報復関税を発動米中首脳会談 :1 米国が対中輸入品 2,000 億ドル相当の関税引き上げを90 日間猶予 2 中国の対米輸入拡大 3 知的財産権などに関する構造協議開始 で合意米中通商構造協議の交渉期限 交渉が進展しなければ 対中関税第 3 弾の関税率引き上げの可能性 ( 資料 ) ホワイトハウス USTR 各種報道等を基に日本総研作成 米国の長短金利差 5 年債利回り -3 年債利回り 10 年債利回り -2 年債利回り 4 1985 90 95 2000 05 10 15 ( 資料 )NBER FRB Bloomberg L.P. を基に日本総合研究所作成 ( 注 ) シャドー部は景気後退期 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 FOMC 参加者の長期見通し ( 中立水準 レンジ ) FOMC 参加者の各年末時点の見通し ( 中央値 ) FF 金利先物 (2018 年 12 月 6 日時点 ) 実際の FF 金利 先行き 0.0 15 16 17 18 19 20 ( 資料 )FRBを基に日本総研作成 ( 年 / 月 期 ) ( 注 )FOMC 参加者の見通しは 2018 年 9 月時点 ( 円 / ドル ) 116 114 112 110 108 106 米国の政策金利 ドル円相場の実績値と推計値 ドル円相場の実績値 ドル円相場の推計値 ドル円相場と日米金利差 米国株価の関係 104 18/3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ( 資料 )Bloomberg L.P. を基に日本総研作成 ( 注 ) 推計式は ln( ドル円 )=3.78+0.10* 日米 2 年国債金利差 +0.08*ln(S&P500 種株価指数 ) 推計期間は2018 年 3 月初 ~11 月末 - 2 -

ユーロ分析 : ユーロ安圧力は緩和も 当面の反発余地は小 市場は ECB の利上げ開始後ずれを予想米国で FRB の早期利上げ打ち止め観測が高まるなか ドル高に伴うユーロ安圧力は和らいでいるものの ユーロ圏では ファンダメンタルズや政治情勢を巡る不透明感が払拭されないなか 少なくとも当面はユーロの上値の重い展開が続く見込み まず ファンダメンタルズについてみると ユーロ圏の 7~9 月期の実質 GDP 成長率は 1% 台半ばとみられる潜在成長ペース以下に減速 GDP との相関が高い総合 PMI は 11 月にかけて低成長が続いていることを示唆 また 賃金面からのインフレ圧力は強まりつつあるものの ECB が重視する基調的なインフレ率は依然として 1% 前後で伸び悩み こうした状況下 金利先物市場が織り込む ECB の利上げ開始時期は 2019 年末以降に後ずれ EC B が想定しているとみられる 19 年秋頃の利上げ着手を織り込むには 景気や基調的なインフレ率が上向くことが不可欠 伊財政や Brexit 問題がユーロ下振れリスク政治面では 財政政策を巡るイタリア政府と EU との対立が継続 欧州委員会は イタリア政府の 19 年予算案が EU の財政協定から逸脱しているとして 11 月 13 日までに修正 再提出を求めていたものの イタリア政府は応じず これを受けて 欧州委員会は 財政ルールに違反した加盟国に適用する制裁措置である 過剰財政赤字是正手続き (ED P) 開始が正当化されるとの見解を表明 その後 イタリア政府は 19 年予算案の財政赤字目標の小幅な修正に応じる姿勢を示したものの EU は財政赤字目標の大幅な修正がなければ 制裁を回避できないとの見解 当面は両者が妥協点を見出すことができない状況が続く見通し このほか 英国の EU 離脱 (Brexit) を巡っては 11 月 25 日の臨時 EU 首脳会議において英国と E U が離脱協定案で合意したものの 協定案の英国議会での可決の見通しが立たない状況 英国の 合意なし EU 離脱に対する懸念が高まる場面では ユーロ圏経済も混乱に巻き込まれるとの懸念などから ユーロがポンドに連れ安する公算大 60 58 56 54 52 100 ユーロ圏の実質 GDP と購買担当者景気指数 ( ポイント ) 90 80 70 60 50 40 30 実質 GDP( 前期比年率 右 ) 総合 PMI( 左 ) 50 14 15 16 17 18 ( 資料 )Eurostat IHS Markit 2019 年 9 月会合まで 2019 年 10 月会合まで 2019 年 12 月会合まで 20 18/6 7 8 9 10 11 12 ( 資料 )Bloomberg L.P. を基に日本総研作成 ( 注 ) 預金ファシリティー金利について 現行の 0.4% から 0.3% 以上への引き上げが決定されている確率 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 ( 年 / 月 期 ) 金利先物から算出される ECB の利上げ確率 - 3-4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 ( ドル / ユーロ ) 1.15 1.10 1.05 ユーロ圏の労働コスト指標とコア物価 ( 前年比 :%) 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 ( 資料 )Eurostat ECB ユーロ相場とポンド相場 ( 対ドル ) 英 EU 離脱国民投票 (16/6/23) 1.00 16 17 18 ( 資料 )Bloomberg L.P. コア消費者物価 ( 左 ) 協約賃金 ( 左 ) 雇用者報酬 ( 左 ) 時間当たり労働コスト ( 左 ) 単位労働コスト ( 右 ) ユーロ相場とポンド相場 ( 対ドル ) ユーロドル相場 ( 左 ) ポンドドル相場 ( 右 ) ユーロ安 ポンド安 ( 前年比 %) 1 ( ドル / ポンド ) 1.50 1.45 1.40 1.35 7 6 5 4 3 2 1 0 ( 年 / 期 )

見通し : 当面はドルが底堅いものの 来年後半にはドル高一服へ ドル円相場 : ドルが底堅く推移米中貿易摩擦や景気の先行きに対する不透明感が払拭されないなか 少なくとも当面は113 円台を中心とする神経質な展開が続く見込み 今後 米中の貿易摩擦激化や景気の先行きに対する懸念が一時的に和らぐ局面では 日米金利差の拡大と株高によるリスク選好の動きに支えられる形で 円安ドル高が進みやすくなる見通し もっとも 12019 年春以降も米中の貿易摩擦が続くと見込まれること 2 財政拡大や金融緩和の効果が減衰するにつれて米国景気が減速し 19 年半ば頃にFRBが利上げを休止すると予想されること などから 来年後半にはドル高一服へ ユーロドル相場 : 短期的なユーロ反発余地は小米国の早期利上げ打ち止め観測などから ドル高に伴うユール安圧力は和らいでいるものの ユーロ圏景気や政治情勢に対する不透明感がくすぶるなか 当面はユーロの上値の重い展開が続く見込み 19 年入り以降は ユーロ圏景気が上向くなかで 秋以降の利上げ着手が意識されるECBと 利上げの打ち止めが意識されるFRBという金融政策の局面の違いを反映して ユーロが堅調さを取り戻していく見込み ユーロ円相場 : ユーロの上値の重い展開 ECBが利上げを急がない姿勢を示すなか 当面は対円でもユーロの上値の重い展開が続く見込み 年内はイタリアの財政問題やBrexit 交渉を巡る不透明感の高まりなどが リスク回避の動きを通じて折に触れ円高ユーロ安要因に 19 年入り以降は ユーロ圏景気が持ち直すなかで 金融政策の正常化を進めるECBと金融緩和の出口に向けて動けない日銀との金融政策の方向性の違いを反映して ユーロ高基調に復していく見通し ドル円相場見通し 2018 年 2019 年 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 期中平均 111.45 113 113 112 111 ( 高値 ) 113.73 ~117 ~118 ~117 ~116 ~レンジ ( 安値 ) 109.77 109 108 107 106 ( ドル ) 2018 年 2019 年 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 期中平均 1.1630 1.14 1.15 1.17 1.19 ( 高値 ) 1.1815 1.18 1.22 1.24 レンジ ( 安値 ) 1.1301 1.10 1.10 1.12 1.14 2018 年 2019 年 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 期中平均 129.62 129 130 131 133 ( 高値 ) 133.13 ~135 ~137 ~138 ~140 ~レンジ ( 安値 ) 124.90 123 123 124 126 ドル円相場見通し 120 115 110 105 ユーロドル相場見通し ユーロ円相場見通し 100 17/9 12 18/3 6 9 12 19/3 6 9 ( 年 / 月末 ) ( ト ル ) 1.15 1.10 17/9 12 18/3 6 9 12 19/3 6 9 ( 年 / 月末 ) 145 140 135 130 125 120 17/9 12 18/3 6 9 12 19/3 6 9 ( 年 / 月末 ) - 4 -

内外市場データ ( 月中平均 ) _ 相場 国内市場 米国市場 欧州市場 商品市況 /$ / $/ 無担 O/N TIBOR 国債 日経平均 FF O/N LIBOR 国債 NYダウ S&P500 EONIA EURIBOR 独国債 英国債 ユーロ WTI COMEX (NY 終値 ) (NY 終値 ) (NY 終値 ) 3ヵ月 10 年物 株価 3ヵ月 10 年物 工業株 3ヵ月 10 年物 10 年物 ストックス50 原油先物 金先物 ( ドル ) ($/B) ($/TO) 15/12 121.58 132.51 1.0899 0.0749 0.17 0.30 19202.58 0.24 0.53 2.23 17542.85 2054.08 0.20 0.13 0.60 1.88 3288.63 37.33 1068.83 16/1 118.29 128.54 1.0867 0.0745 0.17 0.22 17302.30 0.34 0.62 2.08 16305.25 1918.60 0.24 0.15 0.51 1.74 3030.50 31.78 1096.42 16/2 114.67 127.31 1.1104 0.0325 0.11 0.02 16346.96 0.38 0.62 1.77 16299.90 1904.42 0.24 0.18 0.23 1.44 2862.59 30.62 1201.08 16/3 112.95 125.83 1.1142 0.0027 0.10 0.06 16897.34 0.36 0.63 1.88 17302.14 2021.95 0.29 0.23 0.22 1.47 3031.42 37.96 1243.96 16/4 109.58 124.25 1.1339 0.0366 0.08 0.09 16543.47 0.37 0.63 1.80 17844.37 2075.54 0.34 0.25 0.18 1.48 3031.18 41.12 1242.08 16/5 109.00 123.13 1.1298 0.0589 0.06 0.11 16612.67 0.37 0.64 1.80 17692.32 2065.55 0.34 0.26 0.16 1.44 2983.70 46.80 1256.37 16/6 105.46 118.55 1.1242 0.0553 0.06 0.16 16068.81 0.38 0.65 1.64 17754.87 2083.89 0.33 0.27 0.01 1.18 2910.80 48.85 1276.23 16/7 104.09 115.17 1.1064 0.0431 0.06 0.26 16168.32 0.39 0.70 1.49 18341.18 2148.90 0.33 0.30 0.09 0.79 2919.08 44.80 1339.84 16/8 101.31 113.51 1.1205 0.0434 0.06 0.09 16586.07 0.40 0.81 1.56 18495.19 2177.48 0.34 0.30 0.07 0.61 2992.87 44.80 1338.44 16/9 101.83 114.18 1.1213 0.0516 0.06 0.05 16737.04 0.40 0.85 1.62 18267.40 2157.69 0.34 0.30 0.05 0.77 3012.09 45.23 1326.45 16/10 103.85 114.48 1.1024 0.0368 0.06 0.06 17044.51 0.40 0.88 1.75 18184.55 2143.02 0.35 0.31 0.04 1.04 3042.33 49.94 1265.84 16/11 108.63 117.09 1.0786 0.0492 0.06 0.01 17689.54 0.41 0.91 2.15 18697.33 2164.99 0.35 0.31 0.24 1.34 3026.40 45.76 1234.22 16/12 116.12 122.35 1.0538 0.0440 0.06 0.05 19066.03 0.54 0.98 2.49 19712.42 2246.63 0.35 0.32 0.29 1.39 3207.27 52.17 1150.49 17/1 114.92 122.17 1.0632 0.0448 0.06 0.06 19194.06 0.65 1.03 2.43 19908.15 2275.12 0.35 0.33 0.35 1.37 3298.77 52.61 1192.47 17/2 112.99 120.23 1.0641 0.0381 0.06 0.09 19188.73 0.66 1.04 2.42 20424.14 2329.91 0.35 0.33 0.32 3293.10 53.46 1234.97 17/3 112.92 120.67 1.0687 0.0416 0.06 0.07 19340.18 0.79 1.13 2.48 20823.06 2366.82 0.35 0.33 0.39 3427.10 49.67 1231.31 17/4 110.04 117.93 1.0717 0.0545 0.06 0.03 18736.39 0.90 1.16 2.29 20684.69 2359.31 0.36 0.33 0.25 1.06 3491.83 51.12 1271.21 17/5 112.24 124.09 1.1057 0.0527 0.06 0.04 19726.76 0.91 1.19 2.30 20936.81 2395.35 0.36 0.33 0.38 1.09 3601.87 48.54 1245.50 17/6 110.97 124.70 1.1238 0.0556 0.06 0.05 20045.63 1.04 1.26 2.18 21317.80 2433.99 0.36 0.33 0.29 1.05 3547.85 45.20 1259.99 17/7 112.38 129.59 1.1532 0.0542 0.06 0.08 20044.86 1.15 1.31 2.31 2158 2454.10 0.36 0.33 0.54 3483.89 46.68 1237.66 17/8 109.84 129.81 1.1818 0.0493 0.06 0.04 19670.17 1.16 1.31 2.20 21914.08 2456.22 0.36 0.33 0.42 1.10 3451.34 48.06 1284.21 17/9 110.81 131.93 1.1906 0.0579 0.06 0.02 19924.40 1.15 1.32 2.20 22173.41 2492.84 0.36 0.33 0.41 1.21 3507.10 49.88 1315.37 17/10 112.93 132.75 1.1755 0.0371 0.06 0.06 21267.49 1.15 1.36 2.36 23036.24 2557.00 0.36 0.33 0.43 1.35 3614.75 51.59 1280.89 17/11 112.82 132.48 1.1744 0.0483 0.06 0.04 22525.15 1.16 1.43 2.35 23557.93 2593.61 0.35 0.33 0.36 1.28 3601.43 56.66 1282.11 17/12 112.93 133.68 1.1838 0.0422 0.06 0.05 22769.89 1.60 2.41 24545.38 2664.34 0.34 0.33 0.35 1.22 3564.66 57.95 1267.01 18/1 110.97 135.28 1.2193 0.0396 0.07 0.07 23712.21 1.41 1.73 2.57 25804.02 2789.80 0.36 0.33 0.55 1.33 3612.16 63.66 1330.67 18/2 107.86 133.14 1.2344 0.0419 0.07 0.06 21991.68 1.42 1.87 2.86 24981.55 2705.16 0.37 0.33 0.72 1.57 3426.71 62.18 1331.70 18/3 106.10 130.87 1.2336 0.0617 0.07 0.04 21395.51 1.51 2.17 2.84 24582.17 2702.77 0.36 0.33 0.59 1.45 3374.30 62.77 1326.41 18/4 107.62 132.08 1.2273 0.0627 0.09 0.04 21868.79 1.69 2.35 2.87 24304.21 2653.63 0.37 0.33 0.55 1.44 3457.62 66.33 1335.00 18/5 109.71 129.59 1.1813 0.0612 0.10 0.05 22590.05 1.70 2.34 2.98 24572.53 2701.49 0.36 0.33 0.52 1.42 3537.09 69.98 1303.30 18/6 110.13 128.55 1.1672 0.0710 0.08 0.04 22562.88 1.82 2.33 2.91 24790.11 2754.35 0.36 0.32 0.40 1.32 3442.77 67.32 1280.40 18/7 111.47 130.27 1.1686 0.0700 0.09 0.05 22309.06 1.91 2.34 2.89 24978.23 2793.64 0.36 0.32 0.36 1.27 3460.89 70.58 1237.70 18/8 111.03 128.22 1.1548 0.0593 0.09 0.10 22494.14 1.91 2.32 2.89 25629.99 2857.82 0.36 0.32 0.36 1.31 3436.83 67.85 1200.43 18/9 112.05 130.62 1.1660 0.0586 0.06 0.12 23159.29 1.95 2.35 2.99 26232.67 2901.50 0.36 0.32 0.44 1.53 3365.23 70.08 1198.08 18/10 112.79 129.49 1.1480 0.0603 0.05 0.14 22690.78 2.19 2.46 3.16 25609.34 2785.46 0.37 0.32 0.46 1.56 3244.55 70.76 1215.35 18/11 113.37 128.80 1.1362 0.0701 0.05 0.10 21967.87 2.20 2.65 3.11 25258.68 2723.23 0.36 0.32 0.38 1.44 3186.40 56.69 1220.98