資料 9 異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の日本農林規格に係る規格調査結果 独立行政法人農林水産消費安全技術センター 1 品質の現況 (1) 製品の流通実態異性化液糖は でん粉を原料に製造される甘味料である 低温でより甘みが増すことから 清涼飲料水 氷菓子等に使用されている また 砂糖の代替甘味料としてパン 調味料等にも幅広く使用されている 使用先のほとんどがメーカー向けの原料であることから 消費者が直接使う機会はない 異性化液糖は 主に果糖とぶどう糖の混合品であるため 甘みの質はしょ糖と異なる 異性化液糖は 果糖含有率 ( 糖のうちの果糖の割合 ) の違いによって ぶどう糖果糖液糖 果糖ぶどう糖液糖 及び 高果糖液糖 に分けられる 1 ぶどう糖果糖液糖は 果糖含有率が 50% 未満のもの 2 果糖ぶどう糖液糖は 果糖含有率が 50% 以上 90% 未満のもの 3 高果糖液糖は 果糖含有率が 90% 以上のもの 砂糖混合異性化液糖は 3 種類に分けられる 1 砂糖混合ぶどう糖果糖液糖は ぶどう糖果糖液糖の糖の量を超えない量の砂糖を加えたもの 2 砂糖混合果糖ぶどう糖液糖は 果糖ぶどう糖液糖の糖の量を超えない量の砂糖を加えたもの 3 砂糖混合高果糖液糖は 高果糖液糖の糖の量を超えない量の砂糖を加えたもの -1-
(2)JAS 規格の基準 JAS 規格で定められている主な品質項目は 以下のとおり 表 1 品質項目及びその設定理由 品質項目設定理由 糖 分 糖分は重要な品質指標であることから 一定量 (70%) 以上 含まれることを規定 電気伝導率灰分 精製度を示す品質指標のため規定 果 糖 含 有 率 甘み度に関連するものであり 異性化液糖の主成分である果糖 が一定以上含まれることを規定 糖のうちのぶどう糖及でん粉を酸又はアミラーゼ等で加水分解し液状ぶどう糖とするび果糖以外の還元糖のが この液状ぶどう糖は10% 程度のその他の還元糖 ( マルト割合ース等 ) を含有する 異性化液糖の原料である液状ぶどう糖に純度の高いものを使用することは 異性化液糖の純度に直結するため規定 水素イオン濃度 異性化液糖は 酸性条件下では安定 アルカリ条件下では不安定という性質がある このため 異性化液糖の品質の安定性を保持できる酸性の範囲を維持するために上限値を また経時変化の指標として下限値を規定 着色度保存中に徐々に褐変することから その指標として規定 濁 度 濁りの原因となる微量の不溶化物が 精製工程で除去されてい ることを担保するために規定 (3) 品質の実態異性化液糖は 缶 タンクローリー 液体コンテナーで業者間で取引される 取引先の要望により ぶどう糖及び果糖以外の還元糖の割合 が JAS 規格の基準を満たしていない製品も存在している 異性化液糖は 全て業者間で取引されるもので 消費者向けの製品はない なお 異性化液糖の加工品 ( コーヒーシロップなど ) には 消費者向けの製品がある JAS 品とそれ以外のもの ( 以下 非 JAS 品 という ) の品質差を確認するために JAS 規格で規定している項目について調査を行った 糖分 及び 糖のうちのぶどう糖及び果糖以外の還元糖の割合 について 非 J AS 品で規格値を満たしていない製品があった 別添 2 2 生産の現況 (1) 生産の状況 -2-
1 生産方法異性化液糖は ぶどう糖と果糖を主成分とする液状の糖であり とうもろこし ばれいしょあるいは甘しょなどのでんぷんを原料としている 一般的な製造方法は以下のとおり コーンスターチ等の精製でん粉 酵素反応 (α-アミラーゼ) 液 化 酵素反応 ( グルコースイソメラーゼ ) 糖 化 ろ 過 脱色 ろ過 脱 塩 脱色 ろ過 濃 縮 ぶどう糖液 酵素反応 ( イソメラーゼ ) 異 性 化 脱色 ろ過 脱 塩 濃 縮 クロマト分離 ぶどう糖果糖液糖 高果糖液糖 果糖 : 約 42% 果糖 : 約 92% 果糖ぶどう糖液糖果糖 : 約 55% 2 生産量平成 22 年の生産数量は112.8 万トンであり 過去 5 年間大きな変動はない 表 2 生産数量の推移 ( 平成 18 年 ~ 平成 22 年 ) -3-
平成 18 年平成 19 年平成 20 年平成 21 年平成 22 年 異性化液糖生産数量 944 960 968 912 950 ( 千トン )(A) 砂糖混合異性化液 172 183 181 175 178 糖生産数量 ( 千ト ン )(B) 合計 ( 千トン ) 1,116 1,143 1,149 1,087 1,128 (A)+(B) 特記事項 製造事業者数は 16 社である ( 平成 22 年現在 ) 国内生産数量 : 農林水産省 ( 生産局農産部地域作物課 ) 調べ ( 砂糖年度 :10 月 ~9 月 ) 製造事業者数 : 日刊経済通信社調べ (2) 格付の状況異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の認定製造業者数は平成 24 年 6 月現在 15 であり 格付数量は過去 5 年間大きな変動はなく 格付率は 90% 以上を維持している また 全ての認定製造業者において平成 22 年度に JAS 格付を実施しており 上位 5 者で全格付数量の 79% を占めている JAS 格付は 業務用の製品のみに対して行われている JAS 格付の内訳は 果糖ぶどう糖液糖が約 63% で半数以上を占めている その次にぶどう糖果糖液糖が約 18% 砂糖混合ぶどう糖果糖液糖が約 12% である また 砂糖混合高果糖液糖については過去 3 年間格付実績がない 表 3 格付状況の推移 ( 平成 18 年度 ~ 平成 22 年度 ) 平成 18 年平成 19 年平成 20 年平成 21 年平成 22 年増減度 (A) 度 (B) 度 (C) 度 (D) 度 (E) (E)-(A) 認定製造業者数 14 14 14 14 15 1 格付数量 ( 千トン ) 1,056 1,081 1,081 1,026 1,067-11 格付率 (%) 94.6 94.6 94.1 94.4 94.6 0 特記事項 認定製造業者数は平成 24 年 6 月現在 15である 国内の認定製造業者全てがJAS 格付を実施している 上位 2 社は資本金が1 億円を超える大企業である -4-
認定製造業者数 格付数量 : 農林水産省 ( 消費安全局表示 規格課 ) 調べ格付率 (%): 格付数量 / 生産数量 100 表 4 種類別格付数量内訳 ( 平成 20 年度 ~ 平成 22 年度 ) 平成 20 年度 平成 21 年度 平成 22 年度 ( 千トン ) ( 千トン ) ( 千トン ) 異性化液糖 909 861 899 ぶどう糖果糖液糖 176 185 192 果糖ぶどう糖液糖 704 647 672 高果糖液糖 29 29 36 砂糖混合異性化液糖 172 165 168 ぶどう糖果糖液糖 126 122 126 果糖ぶどう糖液糖 46 43 42 高果糖液糖 0 0 0 農林水産省 ( 消費安全局表示 規格課 ) 調べ 表 5 認定製造業者別格付状況 ( 平成 22 年度 ) 認定製造業者 ( 上位 5 者 ) 当該製造業者の異性化液糖 全格付数量に対する割合 及び砂糖混合異性化液糖の (%) 格付数量 ( トン ) A 社 278,186 26.1 B 社 194,190 18.2 C 社 186,737 17.5 D 社 93,294 8.7 E 社 88,445 8.3 合計 840,852 78.8 当該製造業者の格付数量 : 財団法人日本穀物検定協会調べ -5-
(3) 規格の利用状況取引において JAS 品を指定されることから 製造においても JAS 規格を利用している状況であった 製造業者の 93% が規格は必要であるとしていた その主な理由は 規格化 標準化できるということであった 別添 1 3 取引の現況 (1) 取引の状況生産数量の全てが加工食品の原料等の業務用である 取引としては 卸業者を通じて販売されるものと相対取引のものがある 相対取引先は 飲料製造業者が主である (2) 規格の利用状況取引の際に JAS 品を指定される場合がある また 非 JAS 品においても JAS 規格値を引用する等 規格を利用している製造業者も存在している 4 使用又は消費の現況 (1) 使用又は消費の状況異性化液糖は 低温下において甘みが増すという特性をもっているため 清涼飲料水や冷菓などに多く利用される 用途別販売先は 清涼飲料 菓子類 パン類などの業界が主な取引先である (2) 規格の利用状況業務用のみであることから消費者が店頭で製品を目にすることはない 実需者は JAS 品を指定することで製造業者の差なく製品を使用できることをメリットとしていた 実需者の 76% が規格を必要としていた その理由は 規格による品質の保証を期待していた 別添 1 5 将来の見通し異性化液糖の生産数量は 過去 5 年間に大きな変動はなく今後も同様と見込まれる 認定製造者数と格付率についても同様に大幅な増減はないものと見込まれる 6 国際的な規格の動向平成 24 年 6 月現在 異性化液糖に関する CODEX 規格等国際的な規格は制定されていない 7 その他業界団体として 業界内の連絡調整を行う日本スターチ 糖化工業会 ( 会員 11 社 ) 及び全日本糖化工業会 ( 正会員 6 社 ) がある -6-
別添 1 第 1 アンケートによる調査 1 調査期間平成 22 年 9 月 21 日 ~10 月 12 日 利用実態調査の結果 2 調査内容異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の JAS 規格の見直しに資するため 当該 JAS 規格に関する意見をアンケート形式で聴取した 3 調査件数 調査先 調査数 回答数 回答率 実需者 390 221(181) 56.7% パン製造業者 19 13(12) 68.4% 菓子製造業者 59 26(16) 44.1% 飲料製造業者 285 161(137) 56.5% ジャム類製造業者 27 21(16) 77.8% 製造業者 15 14 93.3% ( ) 内は それぞれの調査対象のうち異性化液糖及び砂糖異性化液糖の取扱いがあると回答し た数 * 実需者の内訳パン製造業者 : 社団法人日本パン工業会の会員菓子製造業者 : 全日本菓子協会の会員飲料製造業者 : 一般社団法人全国清涼飲料工業会及び社団法人日本果汁協会の会員 一般財団法人日本清涼飲料検査協会の認定製造業者 4 調査結果 * 集計方法 有効回答数 ( 無回答などを除く ) のみで集計 4-1 異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の生産状況 回答のあった14 者すべて異性化液糖を製造しており 12 者がJAS 格付をしていた 砂糖混合異性化液糖は 13 者が製造しており 12 者がJAS 格付をしていた ( 選択回答 ) 製造実態がある JAS 格付がある 異性化液糖 14 12 砂糖混合異性化液糖 13 12 4-2 異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の JAS 規格の利用状況回答のあった実需者 221 者のうち 83% が異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖を使用していた -7-
業種別に見ると パン製造業者 飲料製造業者が多く利用している ( 選択回答 ) 使用実態がある 使用実態がない 使用の割合 実需者 181 36 83.4% パン製造業者 12 1 92.3% 菓子製造業者 16 9 64.0% 飲料製造業者 137 21 86.7% ジャム類製造業者 16 5 76.2% 4-3 異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖のJAS 規格の必要性及びその理由 使用実態があった実需者の76% が規格を必要としていた 製造業者の93% が規格を 必要としていた 実需者中で パン製造業者及び飲料製造業者が特に必要とした割合が多かった ( 選択回答 ) 必要 不要 必要の割合 実需者 159(139) 50(39) 76.1%(78.1%) パン製造業者 10(10) 2(1) 83.3%(90.9%) 菓子製造業者 13(9) 11(6) 54.2%(60.0%) 飲料製造業者 123(110) 30(26) 80.4%(80.9%) ジャム類製造業者 13(10) 7(6) 65.0%(62.5%) 製造業者 13 1 92.9% * 括弧内は 使用実態がある実需者の数 実需者が JAS 規格が必要であるとした一番多い理由は 規格による品質の保証であった 製造業者は 規格化 標準化できるという理由で JAS 規格を必要としていた ( 自由回答 ) 実需者 製造業者 品質の保持 31 - 表示 品質について 24 - 品質差の抑制 22 - 選択の目安 16 3 規格化 標準化 14 8 安心 安全 信頼 13 - 品質の区別 0 3 納入条件 - 2 その他 16 1 4-4 異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の JAS 規格の改正要望実需者及び製造業者から測定方法に関して改正要望があった 測定方法 ( 異物 ) 異物の検査方法をより具体的にすべき ( 実需者 ) 測定方法 ( 糖分 ) -8-
糖分の測定方法が日常的に使用するには煩雑であり 日常的に使えるよう改正してほしい ( 製造業者 ) 第 2 聞取り ( ヒアリング ) による調査 1 調査期間平成 22 年 3 月 3 日 ~ 平成 22 年 9 月 17 日 2 調査の対象及び内容異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の日本農林規格の見直しに資するため 認定製造業者 (5 社 ) 登録認定機関 (1 機関 ) 及び業界団体 (2 社 ) に対し 現行規格に対する要望等について聞取り ( ヒアリング ) による調査を行った 3 調査結果異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の日本農林規格の改正要望について特になし -9-
別添 2 1 調査期間平成 22 年 5 月 6 日 ~11 月 30 日 品質実態調査の結果 2 調査内容異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の JAS 規格の見直しに資するため 当該 JAS 規格に規定されている品質項目等の分析を行った 調査対象は JAS マークの付された製品 ( 以下 JAS 品 という ) 及び JAS マークの付されていない製品 ( 以下 非 JAS 品 という ) とした 3 調査件数 JAS 品 非 JAS 品 合計 異性化液糖 16 2 18 砂糖混合異性化液糖 22 1 23 4 調査結果 4-1 糖分 (%) 非 JAS 品 1 件が JAS 規格を満たしていなかった 異性化液糖 JAS 品 16 76.0 76.9 75.6 70 % 以上 非 JAS 品 2 71.2 76.3 66.1 砂糖混合異性化液糖 JAS 品 22 76.1 77.3 75.4 非 JAS 品 1 76.7 - - 4-2 電気伝導率灰分 (%) 全製品が JAS 規格を満たしていた 異性化液糖 JAS 品 16 0.008 0.017 0.000 0.05 % 以下 非 JAS 品 2 0.010 0.014 0.006 砂糖混合異性化液糖 JAS 品 22 0.007 0.018 0.000 非 JAS 品 1 0.006 - - -10-
4-3 果糖含有率 (%) 全製品が JAS 規格を満たしていた 異ぶどう糖果糖液糖 JAS 品 9 41.9 43.9 38.6 35 % 以上 性 (50 % 未満 ) 非 JAS 品 1 35.5 - - ( かつ表 化果糖ぶどう糖液糖 JAS 品 6 56.3 58.3 55.1 示に適合 ) 液 (50 % 以上 90 % 未満 ) 非 JAS 品 1 57.8 - - 糖高果糖液糖 JAS 品 1 95.7 - - (90 % 以上 ) 非 JAS 品 0 - - - 4-4 糖のうちのぶどう糖及び果糖以外の還元糖の割合 (%) 非 JAS 品 ( 果糖含有率 40% 未満 )1 件が JAS 規格を満たしていなかった 果糖含有率 異性化液 40 % 未満 JAS 品 2 13.8 14.1 13.5 15 % 以下 糖 非 JAS 品 1 20.6 - - 40 % 以上 JAS 品 7 5.0 8.0 3.1 8 % 以下 50 % 未満 非 JAS 品 0 - - - 50 % 以上 JAS 品 7 4.0 5.8 1.0 6 % 以下 非 JAS 品 1 1.8 - - 4-5 糖のうちの砂糖の割合 (%) 全製品が JAS 規格を満たしていた 砂糖混合異性化液糖 JAS 品 22 25.2 51.1 10.0 10 % 以上 ( か 非 JAS 品 1 16.0 - - つ表示に適合 ) 4-6 水素イオン濃度全製品が JAS 規格を満たしていた 異性化液糖 JAS 品 16 4.28 5.23 3.83 3.5 以上 6.0 以 非 JAS 品 2 4.23 4.40 4.05 下 砂糖混合異性化液糖 JAS 品 22 4.30 4.78 3.85 非 JAS 品 1 4.33 - - -11-
4-7 着色度全製品が JAS 規格を満たしていた 異性化液糖 JAS 品 16 0.030 0.060 0.000 0.20 以下 非 JAS 品 2 0.031 0.057 0.004 砂糖混合異性化液糖 JAS 品 22 0.026 0.057 0.000 非 JAS 品 1 0.052 - - 4-8 濁度全製品が JAS 規格を満たしていた 異性化液糖 JAS 品 16 0.005 0.018 0.000 0.15 以下 非 JAS 品 2 0.003 0.004 0.001 砂糖混合異性化液糖 JAS 品 22 0.007 0.045-0.001 非 JAS 品 1 0.000 - - -12-