三菱商事株式会社の企業分析 3
目次 1. はじめに 2. 企業概要 3. 財務分析 4. 経営戦略と今後の展望 5. 参考文献 1 はじめに 現在 三菱商事をはじめに総合商社の事業スタイルが形を変えつつある もとは物の売り手と買い手の間に入って手数料を得る仲介や 顧客に金融機能を提供する商社金融が事業の中心であった 1990 年代に入って生産者と消費者を締結する情報技術が発達し 経済のグローバル化によって業界が激しい国際競争の中に巻き込まれると コスト削減のため 中間業者の商社を中抜きする動きが産業で強まった そこで 商社たちが取り組んだのは事業投資である つまり 自らリスクを取って資源権益や企業に投資し 配当などの形で利益を得る 三菱商事は総合商社のトップとして 2004 年度から 2007 年度までの 4 年間の中期経営計画である INNOVATION 2007 の期間を終え 2008 年度および 2009 年度の 2 年間の新たな中期経営計画である INNOVATION 2009 を策定した INNOVATION 2007 の基本的な考え方を継承し グローバルな総合事業会社として 連結ベースの企業価値向上と持続的成長を図りながら 社会の持続的発展に貢献していくことを目指す また ますます高まる社会からの要請に応えるために CSR( 企業の社会的責任 ) への取組みを従来以上に強化し ビジネスを通じた環境への貢献など 環境分野を中心に 社会の持続可能な発展や成長を目指した事業も展開されている 本文は主に三菱商事の財務状況をみながら 今後の経営戦略を分析する 2 企業概要 基本理念三菱商事は 創業以来の社是である 三綱領 を拠り所に 公正で健全な事業活動を推進しています 企業行動の指針としての 企業行動指針 の制定 法
令遵守関連社内諸規定の整備 コンプライアンス オフィサー制の導入 危機管理体制の充実など 常にコンプライアンスの充実を図ってきました また コンプライアンスを徹底するために 法規制や国連が定めた世界人権宣言や国際労働機関の国際労働基準等の国際ルールを社員一人ひとりが 遵守するとともに 社会規範に沿った責任のある行動をとることを定めた 三菱商事役職員行動規範 に宣誓 署名しています 三綱領 三綱領 は 1920 年の三菱四代社長岩崎小彌太の訓諭をもとに 1934 年に旧三菱商事の行動指針として制定されたものです 旧三菱商事は 1947 年に解散しましたが 三菱商事においてもこの三綱領は企業理念となり その精神は役職員一人一人の心の中に息づいています 事業を通じ 物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に かけが えなのない地球環境の維持にも貢献する 公明正大で品格ある行動を旨とし 活動の公開性 透明性を堅持する 全世界的 宇宙的視野に立脚した事業展開を図る 企業行動指針 1. 企業活動の目的我が社は 事業を通じ 企業価値の向上を図るとともに 有用なサービス 商品を安全性にも配慮して創出 提供し 物心共に豊かな社会の実現に努める 2. 公明正大な企業活動我が社は 企業活動の展開に当たり 諸法規 国際的な取決め及び社内規程を遵守するとともに 社会規範に沿った責任ある行動をとる 3. 人権 社員の尊重我が社は 人権を尊重し 差別を行わない また 人材育成を通じて企業活力の維持 向上を図るとともに 社員の人格 個性を尊重する 4. 情報の管理 公開
我が社は 企業情報を適切に管理するとともに ステークホルダーを含め社会一般からの正しい理解を得 透明性の保持を図るため 情報を適時 適切に公開する 5. 地球環境への配慮我が社は 地球環境に配慮しない企業は存続しえないとの認識に立ち 企業活動のあらゆる面において地球環境の保全に努め 持続可能な発展を目指す 6. 社会貢献活動我が社は 社会の一員として より良い社会の実現に向けて積極的に社会貢献活動を行う また 社員による自発的な社会貢献活動を支援する http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/philosophy/ より引用 三菱商事の沿革設立 ~ 1970 年代 1954 年 総合商社 三菱商事が新発足し 東京 大阪両証券取引所に株式上場 1967 年 当社初の経営計画を発表した 1968 年 拡大する組織 事業に対応した商品本部制を導入 同年 エネルギー安定供給の一翼を担うため 初の大型投資となるブルネイでの LNG 開発事業への投資を決定した また オーストラリアやカナダの鉄鉱石 原料炭 メキシコの塩田事業に代表される 単なる商取引にとどまらない開発投資型ビジネスをグローバルに展開 1971 年 英文社名として Mitsubishi Corporation を採用 1973 年 社会環境室を設置し 企業の社会的責任を果たす姿勢を明確した 1980 年代石油危機で日本経済が低迷する中 新たな収益体制の構築に向け 徹底した業務の合理化 効率化に着手した 1986 年 社内に売上高より収益重視の方針を徹底 同時に 商権構造の再構築 事業領域の選別と機能の高付加価値化に重点を置いた経営計画 K-PLAN を策定 また 1989 年には ロンドン証券取引所に上場した 1990 年代グローバリゼーションが加速する中 1992 年 健全なグローバル エンタプライズ を目標とする経営方針を発表した 連結重視と資産の優良化を進めるとともに 組織 人材のグローバル化を強化 日本経済が金融システム不安に揺
れる中 1998 年 21 世紀への自己変革 を標榜する経営計画 MC2000 を策定 事業の選択と集中 戦略分野の強化 顧客志向重視の方針を打ち出し 足場固めに着手した 2000 年代世界経済復調の兆しの中 2001 年 新たな価値創造への挑戦 をテーマに経営計画 MC2003 を策定 バリューチェーンの拡大 収益力強化に加え 新規事業の創出を重点施策とするなど 攻めの経営 へ転じた 同年 戦略ミッションを明確化したビジネスユニット ( BU) 制を営業グループに導入 また客観的な業績評価指標 MCVA を設定し 経営資源の配分最適化につなげ 2004 年 未来を創造し 社会と共に成長する 新 産業イノベーター をビジョンとする経営計画 INNOVATION 2007 を策定 2007 年 イノベーション事業グループ 新産業金融事業グループを新設 2008 年 経営計画 INNOVATION 2009 を発表した 2009 年 4 月 全社的見地から新たなビジネスチャンスを迅速に捉えるため イノベーション事業グループを発展的に改組し 全社開発部門を設置した 三菱商事 HP より引用 3 財務分析 11100000 11050000 11000000 10950000 10900000 10850000 10800000 10750000 10700000 11078516 売上高 10890029 10880997 10832868 平成 17 平成 18 平成 19 平成 20 系列 1
営業利益 15000 10000 5000 0 系列 1-5000 -10000-15000 平成 17 年度平成 18 年度平成 19 年度平成 20 年度 総資産 6400000 6300000 6200000 6100000 6000000 5900000 5800000 系列 1 5700000 5600000 5500000 5400000 平成 17 年度平成 18 年度平成 19 年度平成 20 年度
当期純利益 350000 300000 250000 200000 150000 系列 1 100000 50000 0 平成 17 年度平成 18 年度平成 19 年度平成 20 年度 ( 注 : 全データの単位は百万円 ) 平成 17 年度から平成 20 年度まで 総資産が年々増加するのに対し 売上高と当期純利益は急減する傾向が見られる 特に営業利益は平成 20 年度にてマイナスに陥った その結果に対し 近年の経済不況が原因と考えられる また 平成 21 年度四半期報告により 純利益は高水準を維持した三菱商事だが 償却費用の拡大で当期純利益は平成 20 年度の同期より半減した この中で有価証券損益の欄に注目し 有価証券損益の悪化が減益の原因の 1つだと考えている したがって リーマン ショックに伴う下期の環境激変でさらなる減益が予想される 経営戦略と今後の展望 2009 年に入って 世界的な金融危機の影響で資源価格が下落し 今後の業績拡大にも障壁になる 資源エネルギー分野以外収益を強めるのが三菱商事を含む各商社にとって大きな任務であろう 今回はSWOT 分析を用いて主に新産業のイノベーション推進について分析を行う
強み 総合商社のトップ企業である 自己資本が潤沢なため リスク耐久力が高水準である 化学品や生活産業など非資源分野の収益も相当の規模があり 全体として高水準の収益力がある 機会 新興国での資源 エネルギー 鉄鋼製品 機械 プロジェクトの需要が拡大している 弱み 資源 エネルギー分野への依存度が高いため 市況の変動が業績に与える影響が大きい 三菱自動車工業への支援がリスク管理上の問題点となっている 脅威 世界的な経済不況 高騰していた商品市況が下落している 総合商社トップである三菱商事は化学品や生活産業では相当なシェアを持っているので これらの成長の良い優良分野に投資を継続すべく なぜなら 現在有する経営基盤をさらに強化することが足場を固めることにもなる なお 持続的な成長を図るために バランスの取れた収益基盤を構築する必要がある そのために 2つの法案が考えられる まず 全社基盤強化の観点から 国内外拠点の機能の高度化や内部統制などシステムインフラといった体制整備を連結ペースで進行させる 次に 新分野のイノベーション推進もきわめて重要である 下のグラフは過去分野別の収益の割合になる 分野別収益 100% 80% 60% 40% 20% 0% 2005 年度 2006 年度 2007 年度 2008 年度 科学 生活産業 イノベーション事業エネルギー 金属グループ
三菱商事は従来のエネルギー 科学 生活産業などの強い分野に投資を行ってきた しかし 環境 新エネルギー 医療周辺への投資は少なく 収益においても縮小する傾向にある 今後 新規事業分野として力を入れるのはバイオエタノールや太陽光発電などの新エネルギー分野や病院経営支援といった医療関連ビジネスである
5 参考文献 日本経済新聞社 日経就職ガイド 業界 MAP ( 株 ) 日経 HR 2009 年 9 月 29 日 http://www.brains-net.jp/bkn_date/1806.html 2009/5/20 大手商社の 09/3 期決算 連結損益計算書 分析 http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/ 中期経営計画 INNOVATION2009 ~ 未来を拓く ~ http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/fstatement/archives.html 2008 年度有価証券報告書 全文 PDF 2006 年度有価証券報告書 全文 PDF http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/fstatement/ 2009 年度第 1 四半期報告書 全文 PDF