モンテローザ (Dufourspitze) 2017.8.2 Y O( 記 ) モンテローザ小屋を出たのは午前 3 時 3 分 サマータイムが採用されているここでは 日の出までにまだ 3 時間ある 真っ暗な道をヘッドランプの灯りを頼りに進む 昨日下見をしておいたので 迷うことなく Obere Plattje に着いた ガチャを身につけ ロープを結び合う 今日山頂を目指すのは全部で 10 名 我々を含む 2 人パーティーが 3 組 3 人パーティーが 1 組 そして単独が 1 名 他に東洋人はいない 氷化した斜面は足跡が残りにくく 先行のトレースが追いにくい クレバス帯の通過で左へと進み クレバスの中へ踏み込みそうになってちょっと焦った もう少し早く 右にルートをとるべきだった 西洋人は皆 足が速い 最後尾を進む 前のパーティーとは 15 分差ぐらいだろう 3800m 付近で少し頭痛がして心配になったが 知らないうちに治ってしまった 徐々に夜が明ける 天候は悪くないが すっきり晴れているわけでもない 山頂は雲間に見え隠れしている 昨日は風が強くて誰も登れなかったらしいが 今日はどうだろうか この頃 途中で引き返した単独登山者とすれ違う クレバス帯の通過 山頂は雲の中 午前 9:00 にザッテル (4356m) に着いた ここまで標高差 1500m を登った あと 300m だ 稜線に出て風が出てきたが それほど強くはない 行けそうだ 前衛峰 (4499m) に向けて急斜面を登る 足元は雪ではなく氷だ アイゼンが効くので慎重に行けば問題はないが スリップしたら止まらない 使う使わないはともかくとして アイススクリューを持参すべきだった その後は 両側が切れ落ちた岩稜帯を進む 高度間が凄い 全く気が抜けないが 難しくはないので 慎重に進めば問題ない たぶん 宝剣岳の稜線の縦走の方が難しい ( 個人の意見です ) いよいよ 山頂直下 前を行く 3 人パーティーに追いついた 抜け口がやや難しい
ようで 少してこずっている しばらく待つ 稜線上の小ピーク 山頂直下の岩場 最終ピッチはスタカットで登る 11 時 20 分 山頂 (4634m) に着いた 3 パーティー 7 名が山頂に揃った が まだ下山があるので 喜んでばかりもいられない 下山路は 2 つある ひとつは 今登ってきた往路を戻るルート もうひとつは 東に少し進んでから北面を下りるルート 山頂で居合わせた 2 パーティーは往路を戻るという 先頭の 1 パーティーだけが 北面ルートを選択したようだ 我々も北面へ進むことにする 山頂にて 山頂のレリーフ 下降路は雪のナイフエッジから始まった 天気がだんだんよくなってきて 太陽が照りつける 気温も高め おかげで雪が腐っている たかだか数メートルだが このナイフエッジはどうにも立って渡ることができず 馬乗りになって進んだ 小さなピナクルを越えると 懸垂下降の支点が見えた 太いフィックスロープがあるという話だが見当たらない 少し下から始まっているのだろうか まあいい とり
あえず懸垂下降しよう 快調に下降する しかし 25m いっぱいに下りても次の支点が見当たらない ロープは 50m が 1 本しかないので これ以上は下りられない しばらく周りを見渡したが やはり支点はない 困った 先行パーティーの足跡が残っているので ルートを誤ったわけではなさそうだ 仕方がない 下を見ると 何とかクライムダウンできそうだ Y さんには上でだいぶ待ってもらってしまったが 下降を始めてもらった そんなわけで 下降 2 ピッチ目はクライムダウン 残念なことに 着いた先にも支点はなかった 下降 3 ピッチ目もクライムダウンで行くしかない Y さんが先行し 慎重に下って行く ふと ビレイしながら顔を上げると 3m 先にペツルの立派な下降支点があるではないか なんで気がつかなかったんだろう! Y さんに登り返してもらい 3 ピッチ目の下降を懸垂下降でやり直し 4 ピッチ目は残置スリングで懸垂下降 5 ピッチ目はペツルの支点で懸垂下降 50m ロープが 2 本あれば 全てペツルの支点で下降できるようだ 6 ピッチ目 雪に埋まった残置ロープで懸垂下降しようとしたが 強く引っ張ったら そのロープはどこにもつながっていなかった 危ない危ない! こんな支点で降りようとするなんて どうかしている 懸垂の失敗は大事故につながる 支点は 目視で安全性が確認できるものに限る 氷の斜面を慎重にクライムダウン 徐々に傾斜が緩み Nordend と Dufourspitze とのコルに着いた 結局 あるはずのフィックスロープはどこにも見当たらなかった 懸垂下降開始 中央のルンゼを下りて来た コルで一休みしてから 先行のトレースをたどる しかし トレースは途中で分岐 し 右へ行ったり左へ行ったり 右のトレースをたどると 途中で途絶えていた ク レバスが渡れなかったらしい で 左へ行ってみると やはり途絶えている 中央を
下ってみると これも途絶えている どうすればいいのだろう? Y さんが クレバスの下に先行のトレースを見つけた どうやってあそこへ? クレバスの中へ下りて行くしかなさそうだ クレバスに沿って少し登り返したところに クレバス内部に降りられそうな所があった 中へ下り コンテでクライムダウンして行く だが クレバスの中には先行のトレースが見当たらない ここでいいのか? まあいいか 下りられそうだし 無事にクレバスを抜けると 10 メートルほど先に先行のトレースがあった まるで空から降ってきたかのように 氷のオーバーハングの下から 足跡が忽然と始まっている いったい 彼らはどこから来たのだろう 飛んで来たとしか思えない! クレバス内をクライムダウン 後ろの裂け目から出てきた この後にも厳しい所があると嫌だな~と思いながら進む 幸いなことに 難所はここまでだった 暑い 雪が腐ってズボズボ 寒さに備えて厚着しすぎたようで 脱水気味で下る 下りの標高差も 1800m 長いな~ ホントに Obere Plattje 手前のクレバス帯の通過にもう一苦労 最後は結構大胆に クレバスの中に下りて行ったり 意外に固いのだ ここも 早めに右方面へトラバースするのが正解のようだ やっと雪氷面から抜けた ロープを解いて あとは休み休み下った 午後 7 時前に小屋に到着 16 時間の行程だった 小屋で先行パーティーに聞いたところ 彼らはアイススクリューを残置して クレ バスの縁からオーバーハングを懸垂下降したとのこと 足跡が忽然と始まっていたの はそのためだったのだ 合点がいった 本当に空から舞い降りたのだ
クレバス帯を見上げる グレンツ氷河とモンテローザ小屋 小屋の夕食は今日もフルコース 食欲がなく スープ以外は随分と残してしまった 早々にベッドに入るが 疲れ過ぎたのか いっこうに眠くならない 喉の渇きを癒すために枕元に置いた コーラのペットボトルの中で炭酸がプチプチと消えてゆく音が やけにはっきりと聞こえてきた ------------------------------------ インターネットにない周辺情報 文中にも書きましたが 山頂からの北面下降ルートにフィックスロープはありません 山頂の直前 登りの最後の岩場にも 以前はフィックスがあったようですが 今はありません 小屋で情報を仕入れてから行きましょう 北面下降ルートのペツルの懸垂下降の支点は 色が岩に同化していて 結構見つけづらいです スクリューやカムも持っていった方がよいです 今回 Y さんがカムを持っていて助かりました モンテローザ小屋ではクレジットカードが使えます ツェルマットのキャンプ場には Free Wi-Fi 環境があります スマホはトイレで充電できますが 差込口が 6 つしかなく 結構埋まっています 女性トイレの方が空いているようです ツェルマットのキャンプ場の 2 軒隣に スーパー DENNER があります 8:00~20:00 の営業 2016 年にできたばかりのようです また テッシュ方面に 5 分ほど下った所に駐車場併設の売店があり こちらは早朝からやっているようです 天気予報は https://www.zermatt.ch/en/weather-forecast の情報が良く当たるような気がします 日本円 スイスフラン (SFR) の両替率は 現金で 124/SFR ATM でのキャッシングで 120/SFR クレジットカードで 117/SFR という感じでした 現金はレートが悪いです おわり