く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

Similar documents
( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http


学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

<4D F736F F D20312E834C B548DD CC82CD82BD82E782AB82F092B290DF82B782E98EF CC95AA8E7182F094AD8CA92E646F63>

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

免疫再試25模範

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

[ 別紙 1] 論文の内容の要旨 論文題目 NK 細胞受容体 NKG2 の発現解析および KIR (Killer cell Immunoglobulin-like receptor) の遺伝的多型解析より導き出せる 脱落膜 NK 細胞による母児免疫寛容機構の考察 指導教官 武谷雄二教授 東京大学大学

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

<4D F736F F D DC58F49288A6D92E A96C E837C AA8E714C41472D3382C982E682E996C D90A78B408D5C82F089F096BE E646F6378>

Untitled

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

Untitled

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

著者 : 黒木喜美子 1, 三尾和弘 2, 高橋愛実 1, 松原永季 1, 笠井宣征 1, 間中幸絵 2, 吉川雅英 3, 浜田大三 4, 佐藤主税 5 1, 前仲勝実 ( 1 北海道大学大学院薬学研究院, 2 産総研 - 東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ, 3 東京大学大

1. 免疫学概論 免疫とは何か 異物 ( 病原体 ) による侵略を防ぐ生体固有の防御機構 免疫系 = 防衛省 炎症 = 部隊の派遣から撤収まで 免疫系の特徴 ⅰ) 自己と非自己とを識別する ⅱ) 侵入因子間の差異を認識する ( 特異的反応 ) ⅲ) 侵入因子を記憶し 再侵入に対してより強い反応を起こ

PowerPoint プレゼンテーション


1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

Untitled

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 山田淳 論文審査担当者 主査副査 大川淳野田政樹 上阪等 論文題目 Follistatin Alleviates Synovitis and Articular Cartilage Degeneration Induced by Carrageenan ( 論文

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

論文の内容の要旨

Untitled

がん免疫療法モデルの概要 1. TGN1412 第 Ⅰ 相試験事件 2. がん免疫療法での動物モデルの有用性がんワクチン抗 CTLA-4 抗体抗 PD-1 抗体 2

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

Untitled

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

研究の背景 1 細菌 ウイルス 寄生虫などの病原体が人体に侵入し感染すると 血液中を流れている炎症性単球注と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し 感染局所に集積します ( 図 1) 炎症性単球は そこで病原体を貪食するマクロファ 1 ージ注と呼ばれる細胞に分化して感染から体を守る重要な働きをしています

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 神谷綾子 論文審査担当者 主査北川昌伸副査田中真二 石川俊平 論文題目 Prognostic value of tropomyosin-related kinases A, B, and C in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨

平成24年7月x日

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

ゲノム編集技術を用いて 拒絶反応のリスクが少ない ips 細胞を作製 ポイント 細胞移植の際 レシピエントとドナー注 1) 注 2) の HLA 型が一致しないと 移植したドナー細胞はレシピエントのキラー T 細胞注 3) からの攻撃を受ける また ドナー細胞の HLA が消失していると ドナー細胞

度に比しあまりにも小さい2 階建てのその建物に驚いた これは分子生物学のパイオニアであり ノーベル医学生理学賞受賞者でもあったスタンフォード大学の教授である Arthur Kornberg と Paul Berg そして Charley Yanofsky らが 分子生物学を応用科学に役立てたいと考え

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

従来のペプチド免疫療法の問題点 樹状細胞 CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL 腫瘍組織 腫瘍細胞を殺す 細胞傷害性 T 細胞 (CTL) の大半は 腫瘍の存在に気づかず 血管内を通り過ぎている! 腫瘍抗原の提示を考えると それは当然! 2

読んで見てわかる免疫腫瘍

記載例 : ウイルス マウス ( 感染実験 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 組

ヒト胎盤における

Research 2 Vol.81, No.12013

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

2. Tハイブリドーマによる抗原認識二重特異性を有する (BALB/c X C57BL/6)F 1 T 細胞ハイブリドーマを作製した このT 細胞ハイブリドーマは I-A d に拘束された抗原 KLH と自己の I-A b 単独を二重に認識した 外来抗原に反応するT 細胞が自己のMHCによって絶えず

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

<4D F736F F F696E74202D2093AE95A88DD C88A77824F F B C68DD D B8CDD8AB B83685D>

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

博士学位論文審査報告書

無顆粒球症

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

研究成果報告書

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

< 研究の背景と経緯 > 私たちの消化管は 食物や腸内細菌などの外来抗原に常にさらされています 消化管粘膜の免疫系は 有害な病原体の侵入を防ぐと同時に 生体に有益な抗原に対しては過剰に反応しないよう巧妙に調節されています 消化管に常在するマクロファージはCX3CR1を発現し インターロイキン-10(

研究の中間報告

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

Microsoft PowerPoint - 資料6-1_高橋委員(公開用修正).pptx

4. 発表内容 : [ 研究の背景 ] 1 型糖尿病 ( 注 1) は 主に 免疫系の細胞 (T 細胞 ) が膵臓の β 細胞 ( インスリンを産生する細胞 ) に対して免疫応答を起こすことによって発症します 特定の HLA 遺伝子型を持つと 1 型糖尿病の発症率が高くなることが 日本人 欧米人 ア

トピックスとして免疫学の基本原理を考えてみたいが これに関わる研究者の中でも ノーベル賞を受賞した人が何人かいる 今回は いわば ノーベル賞受賞者から学ぶ 免疫学の基本原理 ( 副題 ) 編でもある N 先生からの年賀状 今から7 8 年前の正月 恩師の一人でもある造血幹細胞を研究している N 先生

ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

(Microsoft Word - \226\306\211u\212w\211\337\213\216\226\ doc)

Microsoft PowerPoint - 市民講座 小内 ホームページ用.pptx

平成 28 年 2 月 1 日 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦至 ( なつめあつし ) 准教授 及び東北大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 下瀬川徹

U50068.indd

転移を認めた 転移率は 13~80% であった 立細胞株をヌードマウス皮下で ~1l 増殖させ, その組

記載例 : 大腸菌 ウイルス ( 培養細胞 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 ヒ

生物時計の安定性の秘密を解明

Transcription:

( 様式甲 5) 氏 名 山名秀典 ( ふりがな ) ( やまなひでのり ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 26 年 7 月 30 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Down-regulated expression of 学位論文題名 monocyte/macrophage major histocompatibility complex receptors in human and mouse monocytes by expression of their ligands ( ヒト及びマウス単球上の単球 / マクロファージ MHC 受容体の発現はそのリガンドの発現により抑制される ) 論文審査委員 ( 主 ) 教授林秀行 教授朝日通雄 教授廣瀬善信 学位論文内容の要旨 背景 脊椎動物は ウイルスや細菌感染を自然免疫と獲得免疫によって防御している 同種異系の被認識分子は 一次構造が非常によく似た主要組織適合性抗原 (MHC; マウスでは H-2 ヒトでは HLA) なので 病原体に共通する分子パターンを認識する自然免疫細胞上の Toll 様受容体ではその識別は難しい 従来 T 細胞が増殖 分化する胸腺を欠損したヌードマウスが同種異系移植片を拒絶できないことなどから 獲得免疫細胞であるキラー T 細胞 (CTL) が同種異系移植片を拒絶すると考えられてきた しかし 1980 年代後半に遺伝子ノックアウト技術が開発され 1996 年 同種異系移植片拒絶に CD8 + CTL は必須ではな - 1 -

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM) が同種異系 Meth A 腫瘍細胞を傷害すること 1997 年には AIM が同種異系皮膚移植片を MHC ハプロタイプ特異的に傷害することを明らかにした 2006 年 同種異系 MHC の H-2D d とH-2K d に対する受容体であるMMR1 および MMR2 のcDNA の単離に成功し また最近 マウス MMR1 のヒトホモログが単球上に発現する HLA-B44 特異的な受容体であることを明らかにした 目的 ヒト MMR2 のリガンドを特定し MMR の発現調節機構を調べる 方法 1. ヒト MMR2 のリガンドの同定 MMR2-GFP 融合蛋白を発現した HEK293T 細胞 MMR2-GFP 融合蛋白あるいは MMR2 を発現した EL-4 細胞と日本人の HLA-A の 99.4% HLA-B の 96.2% をカバーする HLA でコートした 80 種類のマイクロビーズとの結合をセルソーター (FACS) で解析した 2. ヒト単球上の MMR2 の性状ヒト MMR2 + 単球あるいは MMR2 単球と蛍光標識した HLA-B62 五量体との結合を FACS で解析した 3. リガンド発現による MMR 発現の制御 C57BL/6(H-2D b K b ) マウスに K d あるいは D d 遺伝子を移入し MMR1 および MMR2 mrna の発現を RT-PCR で解析した 4. ヒト単球での MMR の発現ヒト MMR1 + MMR2 + 単球あるいは MMR1 MMR2 単球と 80 種類の HLA でコートされた - 2 -

ビーズとの結合を FACS で解析した 結果 1. マイクロビーズと MMR2-GFP + HEK293T 細胞 MMR2-GFP 融合蛋白 MMR2 + EL-4 細胞との結合試験により HLA-A32 B13 と B62 がヒト MMR2 のリガンドであることが判明した 2.MMR2 + 単球は HLA-B62 五量体と Kd = 8.7 10 9 M で結合したが MMR2 単球には結合しなかった 3.C57BL/6(H-2D b K b ) マウスに K d ( あるいは D d ) 遺伝子を移入すると MMR2( あるいは MMR1) のみならず MMR1( あるいは MMR2) の発現も抑制された 4.MMR1 + MMR2 + 単球および MMR1 MMR2 単球は 計 80 種類の HLA 中 それぞれ 7 および 9 種類の HLA を認識した 考察 血清学的に HLA-A32 は A19 群 (19 29 30 31 32 33 74) に HLA-B62 は B15 群 (62 63 70 71 72 75 76 77) に分類されるが A32 と B62 だけがヒト MMR2 と結合した また HLA-B62 と B71 B13 A32 の間には それぞれ 97.8% 84.5% 84.0% のアミノ酸相同性があるが MMR2 は後 2 者のみと反応したので MMR2 による HLA の認識は HLA の一次構造に加えてその二次 三次構造にも依存していると考えられる C57BL/6(H-2D b K b ) マウスへの K( d または D d ) 遺伝子の移入は MMR1 および MMR2 の発現を抑制した また MMR2 ノックアウトマウスでは MMR1 の発現も減弱しており K d+ マウス皮膚移植片のみならず D d+ や D d K d+ マウス皮膚移植片が生着した これらの結果は MMR1 と MMR2 遺伝子の発現が連関しており しかもその連関が MMR のリガンド特異性に依存している可能性を示唆している CTL は 10 18 種類もの TCR によって同種異系 MHC 由来のペプチドを MHC 拘束性に - 3 -

認識している 一方 ヒト単球では 1 種類の MMR が MHC 非拘束性に TCR より約 100 倍強く数種の MHC に結合した したがって 自然免疫細胞である単球上の MMR による同種異系抗原の認識機構は 獲得免疫細胞である CTL 上の TCR とは全く異なることを示唆している MMR のリガンド結合領域が種々の免疫グロブリン様受容体と相同性がないことはこのことに合致している MMR は常在性マクロファージには発現していないが 同種異系細胞が移植されると AIM 上に誘導され 移植片の MHC ハプロタイプ特異的に細胞毒性を示す 一方 単球では リガンドの発現によって対応する MMR の発現が抑制され リガンド発現細胞に対する細胞毒性が回避された したがって 同種異型細胞に対する単球上の MMR の生理的役割は 移植片に浸潤するマクロファージ上の MMR の役割とは異なる可能性がある また 妊娠中 母と子の血液が混ざる可能性があるが この研究で明らかになった同種異型細胞に対する単球上の MMR の特性が 父から遺伝した胎児の HLA 抗原に対する母体の免疫寛容を説明する可能性がある 結論 ヒト MMR2 のリガンドは HLA-A32 B13 と B62 であり 単球上の MMR の発現が対 応するリガンドの発現によって抑制されるという制御機構が示唆された - 4 -

( 様式甲 6) 論文審査結果の要旨マウスの単球 / マクロファージ MHC 受容体 (MMR1 や MMR2) は マウスの MHC H-2D d や H-2K d に特異的であり 非 D d や非 K d マウスの単球上に定常的に発現している MMR1( または MMR2) は C57BL/6(H-2D b K b ) マウスによる D d ( または K d ) トランスジェニック C57BL/6 マウス皮膚の拒絶に必須である MMR のリガンドについては現在 HLA-B44 がヒト MMR1 の唯一のリガンドであることのみが分かっている そこで 申請者はヒト MMR2 のリガンドの探索と MMR の発現調節機構の検討を行い 以下の結果を得た 1. 全世界の HLA の 9 割以上をカバーする 80 種類の HLA 中 HLA-A32 B13 と B62 が MMR2-GFP + 細胞や MMR2-GFP 融合蛋白と特異的に結合した 2.HLA-B62 分子は MMR2 + 単球と Kd = 8.7 10 9 M で結合した 3.C57BL/6 マウスに K ( d あるいは D d ) 遺伝子を移入すると MMR2( あるいは MMR1) のみならず MMR1( あるいは MMR2) の発現も抑制された 4.MMR1 + MMR2 + 単球や MMR1 MMR2 単球は 80 種類の HLA 中 7 9 種類の HLA と結合した ヒト MMR は 単球上に 3 9 種類定常的に発現し MHC 非拘束性に T 細胞受容体より約 100 倍強く 7 9 種類の HLA と結合すると考えられる 従って その HLA 識別機構は T 細胞受容体とは全く異なることが示唆された 同種異系移植後 移植片の MHC に特異的な MMR を発現したマクロファージが移植部に浸潤し 移植片を拒絶する 一方 単球では リガンドの発現によって関連する複数の MMR の発現が抑制された 従って 同種異系細胞に対する単球上の MMR の生理的役割は 移植片に浸潤するマクロファージ上の MMR の役割とは異なる可能性がある また本研究結果は 胎児に対する母体の免疫寛容など同種異系移植拒絶反応の制御に関する知見を提供する可能性もある 以上により 本論文は本学大学院学則第 11 条第 1 項に定めるところの博士 ( 医学 ) の学位を授与するに値するものと認める - 5 -

( 主論文公表誌 ) Clinical and Experimental Immunology 178(1): 118-128, 2014-6 -