する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

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平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

平成  年(オ)第  号

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

できない状況になっていること 約 6 分間のテレビ番組中で 2 分間を超える放映を し たこと等を理由に損害賠償請求が認容された X1 X2 および Y の双方が上告受理申立て 2 判旨 :Y1 敗訴部分破棄 請求棄却 X1,X2 敗訴部分上告却下ないし上告棄却最高裁は 北朝鮮の著作物について日本国

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併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

最高裁○○第000100号

た本件諸手当との差額の支払を求め ( 以下, この請求を 本件差額賃金請求 という ),2 予備的に, 不法行為に基づき, 上記差額に相当する額の損害賠償を求める ( 以下, この請求を 本件損害賠償請求 という ) などの請求をする事案である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりであ

平成  年(オ)第  号

平成 30 年 ( 受 ) 第 269 号損害賠償請求事件 平成 31 年 3 月 12 日第三小法廷判決 主 文 原判決中, 上告人敗訴部分を破棄する 前項の部分につき, 被上告人らの控訴を棄却する 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする 理 由 上告代理人成田茂ほかの上告受理申立て理由第

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成  年(行ツ)第  号

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

平成18年1月13日 最高裁判所は,貸金業者の過払い金の受領は違法と知りつつなされたことを推定するとした判例です

利子相当額 という ) を加えた額に相当する金額 ( 以下 退職一時金利子加算額 という ) の返還に関し, その経過措置を定める 厚生年金保険法等の一部を改正する法律 ( 平成 8 年法律第 82 号 以下 厚年法改正法 という ) 附則 3 0 条 1 項の委任に基づいて定められた, 厚生年金保

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

Taro-婚姻によらないで懐妊した児

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

し, これを評点 1 点当たりの価額に乗じて, 各筆の宅地の価額を求めるものとしている 市街地宅地評価法は,1 状況が相当に相違する地域ごとに, その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,2 標準宅地について, 売買実例価額から評定する適正な時価を求め, これに基づいて上記主要な街路の

裁判所は, 同年 9 月, 被上告人に対し, 米国に被拘束者を返還することを命ずる旨の終局決定 ( 以下 本件返還決定 という ) をし, 本件返還決定は, その後確定した (4) 上告人は, 本件返還決定に基づき, 東京家庭裁判所に子の返還の代替執行の申立て ( 実施法 137 条 ) をし, 子

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

れぞれ求める住民訴訟である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 市は, 鳴門市公営企業の設置等に関する条例 ( 平成 16 年鳴門市条例第 3 8 号 ) により, モーターボート競走法に基づくモーターボート競走の開催及びこれに附帯する業務を行うため, 競艇事業を設置し

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

平成  年(あ)第  号

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

裁判年月日 平成 20 年 4 月 16 日 裁判所名 大阪高裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ツ )7 号 事件名 管理費等請求上告事件 裁判結果 上告棄却 文献番号 2008WLJPCA 兵庫県西宮市 以下省略 上告人大阪市 以下省略 被上告人上記代表者理事長上記訴訟代理

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

平成  年(オ)第  号

本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

4. 韓国併合後の我が国においては 内地 朝鮮 台湾等の異法地域に属する者の間で 身分行為 があった場合 その準拠法は 共通法 ( 大正 7 年法律第 39 号 )2 条 2 項によって準用される法例 ( 平成元年法律第 27 号による 改正前のもの 以下同じ ) の規定によって決定されることとなり

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

平成  年(オ)第  号

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べき標準的な事例における処分の標準例を定めたところ, 公務外非行関係の事由である 痴漢 わいせつ行為 による処分の標準例は, 免職又は停職とされている そして, 本件指針においては, 具体的な処分の量定を決定するに当たり,1 非違行為の動機, 態様及び結果,2 故意又は過失の度合い,3 職員の職務上

2(1) 所得税法 34 条 2 項は, 一時所得の金額は, その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額 ( その収入を生じた行為をするため, 又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る ) の合計額を控除し, その残額から所定の特別控除額を控除した金額とす

最高裁○○第000100号

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

9( 以下, 併せて 上告人 X1ら という ) は, 平成 19 年 9 月 30 日まで, 旧公社の非常勤職員であったが, 同年 10 月 1 日, 被上告人との間で有期労働契約を締結して, これを7 回から9 回更新し, 上告人 X1, 同 X2, 同 X3, 同 X5, 同 X6 及び同 X

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

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原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

うものと推認することができる しかしながら, 被告人は, インターネットを通じて知り合ったAから金を借りようとしたところ, 金を貸すための条件として被害女児とわいせつな行為をしてこれを撮影し, その画像データを送信するように要求されて, 真実は金を得る目的だけであり, 自分の性欲を刺激興奮させるとか

(イ係)

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

除されたものを除く ) について 1 本件は, 被上告人を定年退職した後に, 期間の定めのある労働契約 ( 以下 有期労働契約 という ) を被上告人と締結して就労している上告人らが, 期間の定めのない労働契約 ( 以下 無期労働契約 という ) を被上告人と締結している従業員との間に, 労働契約法

平成 22 年 ( 行ヒ ) 第 102 号神戸市外郭団体派遣職員への人件費違法支出損 害賠償等, 同附帯請求事件 平 24 年 4 月 20 日第二小法廷判決 主 文 1 原判決中上告人敗訴部分を破棄し, 同部分につき第 1 審判決を取り消す 2 前項の部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却す

長澤運輸事件(東京地判平成28年11月2日)について

Microsoft Word - 一弁知的所有権研究部会2017年7月13日「商標登録無効の抗弁」(三村)

被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

- 2 - り 又は知り得る状態であったと認められる場合には この限りでない 2~7 略 (保険料を控除した事実に係る判断)第一条の二前条第一項に規定する機関は 厚生年金保険制度及び国民年金制度により生活の安定が図られる国民の立場に立って同項に規定する事実がある者が不利益を被ることがないようにする観

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

 

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

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1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

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かった その後, 市は, 同年 11 月 14 日, 本件土地につき, 予定価格を非公表とし, 再度一般競争入札に付したが, 申込みをした者はいなかった (3) ア大願寺地区には, 平成 25 年 4 月までに小中学校を移転することとされていたところ, 市議会においては, 防犯や児童生徒の安全のため

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01 契約書(案)

最高裁○○第000100号

業務委託基本契約書

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〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

民事訴訟法

平成 30 年度新潟県自殺対策強化月間テレビ自殺予防 CM 放送業務委託契約書 ( 案 ) 新潟県 ( 以下 甲 という ) と ( 以下 乙 という ) とは 平成 30 年度新潟県自殺対 策強化月間テレビ自殺予防 CM 放送業務について 次の条項により委託契約を締結する ( 目的 ) 第 1 条

日弁連総第 110 号 2016 年 ( 平成 28 年 )3 月 31 日 徳島刑務所長竹中晃平殿 日本弁護士連合会 会長村越 進 警告書 当連合会は,X 氏申立てに係る人権救済申立事件 (2014 年度第 6 号 ) につき, 貴所に対し, 以下のとおり警告する 第 1 警告の趣旨再審請求弁護人

市町村合併の推進状況について

Transcription:

主 文 1 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号上告人 同第 603 号被上告人の上告に基づき, 原判決中, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号上告人 同第 603 号被上告人の敗訴部分を破棄する 2 前項の部分に関する平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人の請求を棄却する 3 原判決中予備的請求に関する部分についての平成 2 1 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人の各上告を却下する 4 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人のその余の上告をいずれも棄却する 5 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号上告人 同第 603 号被上告人と平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人との間における控訴費用及び上告費用は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人の負担とし, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号上告人 同第 603 号被上告人と平成 2 1 年 ( 受 ) 第 603 号上告人との間における上告費用は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人の負担と - 1 -

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せて 1 審原告ら という ) が, 朝鮮民主主義人民共和国 ( 以下 北朝鮮 という ) で製作された原判決別紙映画目録 1 記載 1nの映画 ( 以下 本件映画 という ) の一部を1 審原告らの許諾なく放送したAを承継した平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号上告人 同第 60 3 号被上告人 ( 以下 1 審被告 という ) に対し,1 主位的に, 本件映画を含む北朝鮮で製作された同目録 1ないし3 記載の各映画 ( 以下 本件各映画 という ) は北朝鮮の国民の著作物であり, 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 ( 以下 ベルヌ条約 という ) により我が国が保護の義務を負う著作物として著作権法 6 条 3 号の著作物に当たると主張して, 本件各映画に係る1 審原告 X2の公衆送信権 ( 同法 23 条 1 項 ) が侵害されるおそれがあることを理由に,1 審原告 X2において本件各映画の放送の差止めを求めるとともに,Aによる上記の放送行為は, 本件各映画について1 審原告 X2が有する公衆送信権及び1 審原告 X1が有する日本国内における利用等に関する独占的な権利を侵害するものであることを理由に, 上記各権利の侵害による損害賠償を請求し,2 原審において, 予備的に請求を追加し, 仮に本件映画が同法による保護を受ける著作物に当たらないとしても, 上記放送行為は,1 審原告らが本件映画について有する法的保護に値する利益の侵害に当たると主張して, 不法行為に基づく損害賠償の支払を求める事案 - 2 -

である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 本件各映画は, いずれも北朝鮮において製作された著作物であり, このうち, 本件映画は, 昭和 53 年に,Bにより製作された2 時間を超える劇映画である (2) 1 審原告 X2は, 北朝鮮の民法によって権利能力が認められている北朝鮮文化省傘下の行政機関であり, 同省により, 本件各映画について北朝鮮の法令に基づく著作権を有する旨が確認されている 1 審原告 X1は, 平成 14 年 9 月 30 日,1 審原告 X2との間で, 映画著作権基本契約 ( 以下 本件契約 という ) を締結し, 本件各映画につき, 日本国内における独占的な上映, 放送, 第三者に対する利用許諾等について, その許諾を受けた (3)Aは, 平成 15 年 12 月 15 日, スーパーニュース と題するテレビニュース番組において, 北朝鮮における映画を利用した国民に対する洗脳教育の状況を報ずる目的で, 本件映画の主演を務めた女優が本件映画の製作状況等についての思い出を語る場面と本件映画の一部とを組み合わせた内容の約 6 分間の企画を放送した 上記企画において, 合計 2 分 8 秒間本件映画の映像が用いられた ( 以下, 上記企画で本件映画を放送した部分を 本件放送 という ) Aは, 本件放送について1 審原告らの許諾を得ていなかった (4) 1 審被告は, 平成 20 年 10 月 1 日, 会社分割により,Aのグループ経営管理事業を除く一切の事業に関する権利義務を承継した (5) ベルヌ条約は, 昭和 50 年 4 月 24 日に我が国について効力を生じた - 3 -

北朝鮮は, 平成 15 年 1 月 28 日, 世界知的所有権機関の事務局長に対し, 同条約に加入する旨の加入書を寄託し, 同事務局長は, 同日, その事実を同条約の他の同盟国に通告し, これにより, 同条約は, 同年 4 月 28 日に北朝鮮について効力を生じた (6) ベルヌ条約は, 同条約が適用される国が文学的及び美術的著作物に関する著作者の権利の保護のための同盟を形成すると規定し (1 条 ), いずれかの同盟国の国民である著作者は, その著作物について, 同条約によって保護される旨を規定する (3 条 (1)(a)) また, 同条約は, 同盟に属しないいずれの国も, 同条約に加入することができ, その加入により, 同条約の締約国となり, 同盟の構成国となることができる旨規定するが (29 条 (1)), 条約への加入について, 同盟国の承諾などの特段の要件を設けていない (7) 我が国は, 北朝鮮を国家として承認しておらず, また, 我が国は, 北朝鮮以外の国がベルヌ条約に加入し, 同条約が同国について効力を生じた場合には, その旨を告示しているが, 同条約が北朝鮮について効力を生じた旨の告示をしていない そして, 外務省及び文部科学省は, 我が国が, 北朝鮮の国民の著作物について, ベルヌ条約の同盟国の国民の著作物として保護する義務を同条約により負うとは考えていない旨の見解を示している 3 原審は, 上記事実関係の下において, 次のとおり判断して,1 審原告らの主位的請求及び1 審原告 X2の予備的請求を棄却すべきものとし,1 審原告 X1の予備的請求を12 万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容した - 4 -

(1) 我が国は, 我が国が国家として承認していない国 ( 以下 未承認国 という ) である北朝鮮の国民の著作物につき, ベルヌ条約 3 条 (1)(a) に基づき, これを保護する義務を負うものではないから, 本件各映画は, 著作権法 6 条 3 号の 条約によりわが国が保護の義務を負う著作物 とはいえず,1 審原告らの主位的請求は, その前提を欠き, 理由がない (2) ア本件放送は,1 審原告 X1が本件契約に基づき取得した日本国内において本件映画を利用することにより享受する利益を違法に侵害する行為に当たり,A には, 少なくとも過失があるから,1 審被告は, 民法 709 条に基づき,1 審原告 X1が被った損害を賠償する責任を負う イしかしながら,1 審原告 X2は,1 審原告 X1に本件各映画の日本国内における利用を委ねており, 本件映画の日本国内における利用について法律上保護に値する利益を有するものとはいえないから,1 審原告 X2の予備的請求は理由がない 第 2 平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告代理人齊藤誠, 同金舜植, 同石川美津子の上告受理申立て理由について 1 所論は, 本件各映画が著作権法 6 条 3 号の 条約によりわが国が保護の義務を負う著作物 とはいえないとした原審の判断には, 同号の解釈の誤りがあるというのである 2 一般に, 我が国について既に効力が生じている多数国間条約に未承認国が事後に加入した場合, 当該条約に基づき締約国が負担する義務が普遍的価値を有する一般国際法上の義務であるときなどは格別, 未承認国の加入により未承認国との間に当該条約上の権利義務関係が直ちに生ずると解することはできず, 我が国は, 当 - 5 -

該未承認国との間における当該条約に基づく権利義務関係を発生させるか否かを選択することができるものと解するのが相当である これをベルヌ条約についてみると, 同条約は, 同盟国の国民を著作者とする著作物を保護する一方 (3 条 (1)(a)), 非同盟国の国民を著作者とする著作物については, 同盟国において最初に発行されるか, 非同盟国と同盟国において同時に発行された場合に保護するにとどまる ( 同 (b)) など, 非同盟国の国民の著作物を一般的に保護するものではない したがって, 同条約は, 同盟国という国家の枠組みを前提として著作権の保護を図るものであり, 普遍的価値を有する一般国際法上の義務を締約国に負担させるものではない そして, 前記事実関係等によれば, 我が国について既に効力を生じている同条約に未承認国である北朝鮮が加入した際, 同条約が北朝鮮について効力を生じた旨の告示は行われておらず, 外務省や文部科学省は, 我が国は, 北朝鮮の国民の著作物について, 同条約の同盟国の国民の著作物として保護する義務を同条約により負うものではないとの見解を示しているというのであるから, 我が国は, 未承認国である北朝鮮の加入にかかわらず, 同国との間における同条約に基づく権利義務関係は発生しないという立場を採っているものというべきである 以上の諸事情を考慮すれば, 我が国は, 同条約 3 条 (1)(a) に基づき北朝鮮の国民の著作物を保護する義務を負うものではなく, 本件各映画は, 著作権法 6 条 3 号所定の著作物には当たらないと解するのが相当である 最高裁昭和 49 年 ( 行ツ ) 第 81 号同 52 年 2 月 14 日第二小法廷判決 裁判集民事 120 号 35 頁は, 事案を異にし, 本件に適切ではない 3 したがって, 本件各映画が著作権法により保護を受けることを前提とする1-6 -

審原告らの主位的請求は, その余の点について判断するまでもなく, 理由がないから, これと同旨の原審の前記第 1,3の (1) の判断は是認することができる 1 審原告らの論旨は採用することができない 第 3 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号上告代理人前田哲男, 同中川達也の上告受理申立て理由 ( ただし, 排除された部分を除く ) について 1 所論は, 本件放送が1 審原告 X1に対する不法行為を構成するとした原審の判断には, 民法 709 条及び著作権法 6 条の解釈の誤りがあるなどというのである 2 著作権法は, 著作物の利用について, 一定の範囲の者に対し, 一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに, その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で, 著作権の発生原因, 内容, 範囲, 消滅原因等を定め, 独占的な権利の及ぶ範囲, 限界を明らかにしている 同法により保護を受ける著作物の範囲を定める同法 6 条もその趣旨の規定であると解されるのであって, ある著作物が同条各号所定の著作物に該当しないものである場合, 当該著作物を独占的に利用する権利は, 法的保護の対象とはならないものと解される したがって, 同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は, 同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り, 不法行為を構成するものではないと解するのが相当である 3 これを本件についてみるに, 本件映画は著作権法 6 条 3 号所定の著作物に該当しないことは前記判示のとおりであるところ,1 審原告 X1が主張する本件映画を利用することにより享受する利益は, 同法が規律の対象とする日本国内における独占的な利用の利益をいうものにほかならず, 本件放送によって上記の利益が侵害 - 7 -

されたとしても, 本件放送が1 審原告 X1に対する不法行為を構成するとみることはできない 仮に,1 審原告 X1の主張が, 本件放送によって,1 審原告 X1が本件契約を締結することにより行おうとした営業が妨害され, その営業上の利益が侵害されたことをいうものであると解し得るとしても, 前記事実関係によれば, 本件放送は, テレビニュース番組において, 北朝鮮の国家の現状等を紹介することを目的とする約 6 分間の企画の中で, 同目的上正当な範囲内で,2 時間を超える長さの本件映画のうちの合計 2 分 8 秒間分を放送したものにすぎず, これらの事情を考慮すれば, 本件放送が, 自由競争の範囲を逸脱し,1 審原告 X1の営業を妨害するものであるとは到底いえないのであって,1 審原告 X1の上記利益を違法に侵害するとみる余地はない したがって, 本件放送は,1 審原告 X1に対する不法行為とはならないというべきである 4 以上と異なる原審の前記第 1,3(2) アの判断には, 判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,1 審被告の論旨は理由がある 原判決中,1 審被告敗訴部分は破棄を免れず, 同部分に関する1 審原告 X1の請求は理由がないから, 同請求を棄却すべきである 第 4 結論以上によれば,1 審被告の上告に基づき, 原判決中,1 審被告敗訴部分を破棄して, 同部分につき1 審原告 X1の請求を棄却し,1 審原告らは, 原判決中予備的請求に関する部分について上告受理の申立てをしたが, その理由を記載した書面を提出せず, 同部分についての上告は不適法であるから, 同部分についての1 審原告ら - 8 -

の各上告を却下し, その余の1 審原告らの上告をいずれも棄却すべきである よって, 裁判官全員一致の意見で, 主文のとおり判決する ( 裁判長裁判官櫻井龍子裁判官宮川光治裁判官金築誠志裁判官横田尤孝裁判官白木勇 ) - 9 -