様式第 19 別紙ロ 整理番号 SG150145 活動番号 002 科学研究実践活動のまとめ 1. タイトル 高知県産ゆずを化学する ゆずに含まれるビタミン のヨウ素滴定 2. 背景 目的高知県には, ゆずや文旦, ポンカンなど様々な柑橘系の果物がたくさんある それらには私たちの生活には欠かせない様々な栄養素が含まれている その中でもビタミン ( アスコルビン酸 ) は, 多くの柑橘系果物に含まれていて, 私たちにもっとも身近に感じられるもの栄養素の一つである そこで, 私たちは, ビタミン がどれくらい食品の中や高知県の代表的な柑橘系の果物である ゆず の中に含まれているかを調べて見ようと思った また, ビタミン が加熱や時間経過によってどのように変化していくかを調べ, 私たちの日常生活のどのようなことに生かせるかを考えていこうと思った 図 1 高知県産のゆず 3. 方法ビタミン を定量する方法を調べる中で, うがい薬に含まれるヨウ素でビタミン ( アスコルビン酸 ) を定量できることがわかった うがい薬に含まれるヨウ素は褐色であるが, 酸化剤としてはたらくと, ヨウ化物イオンに変化し無色になる ビタミン には還元作用があるため, ヨウ素と酸化還元反応を起こす したがって, 褐色が消えるまでに必要としたうがい薬の量からビタミンの量を算出することができるという方法である ヨウ素滴定反応 H2OH H OH O O H HO OH アスコルビン酸 ( 還元型 ) ( 酸化型 ) H2OH H OH H O O O デヒドロアスコルビン酸 O 今回のヨウ素滴定では, 還元型のアスコルビン酸をうがい薬に含まれるヨウ素で還元することによって定量をおこなった 酸化剤 I 2 +2e - 2I -, 還元剤 6 H 8 O 6 6 H 6 O 6 + 2H + +2e - 6 H 8 O 6 + I 2 6 H 6 O 6 + 2HI このことから, アスコルビン酸とヨウ素は 1:1 の物質量の比で反応することがわかった
実験 1 ヨウ素によるビタミン ( アスコルビン酸 ) の滴定 使用したもの L- アスコルビン酸 ( 6 H 8 O 6 )[ 図 2] 純水 ポビドン G うがい薬 ( ヨウ素 7mg/mL を含む )[ 図 3] ビーカー メスフラスコ マイクロピペット (100~1000μL) 広口共栓瓶 図 2 ビタミン 方法 L- アスコルビン酸 1.0g を電子天秤で正確にはかりとる これを 250mL のメスフラスコに移し, 標線まで蒸留水を少しずつ加えてよく溶解させる 次に, その溶液を 1.0mL ビーカーに入れる ビーカーにうがい薬をマイクロピペットで 0.1mL ずつ いれて, うがい薬の色 ( 褐色 ) に変わるまで加える 図 3 うがい薬 これを標準溶液 A として使用することとし, 広口共栓瓶に入れ, 常温で保存した 図 4 標準溶液 A 実験 2 清涼飲料水に含まれるビタミン の滴定 使用したもの 1000 ビタミンレモン うがい薬 ビーカー マイクロピペット (100~1000μL) 方法炭酸飲料 1000 ビタミンレモン 1.0mL をビーカーに入れる ビーカーにうがい薬をマイクロピペットで 0.1mL ずつ入れて, 炭酸飲料の色が褐色に変わるまで加える 図 5 使用した炭酸飲料と成 分表
実験 3 ゆずに含まれるビタミン の滴定 使用したもの ゆず ( 黄色, 緑色 ) うがい薬 ビーカー マイクロピペット (100~1000μL) 果汁しぼり器 方法黄色いゆずと緑色のゆずをそれぞれ果汁しぼり器で絞り [ 図 5], 目の細かいザルで裏ごしをした後, 得られた果汁 5.0mL をビーカーに入れる 次に, ビーカーにうがい薬をマイクロピペットで 0.1mL ずついれて, 果汁の色が褐色に変わるまで加える [ 図 6] ゆずからとれる果汁の量が十分でなかったため, 少量の果汁でも滴定ができることを確かめるため, 次の 2 つの実験を行った 図 6 ゆずをしぼっている様子 図 7 ヨウ素液の滴定の様子 実験 A 同じゆずからとれた果汁 2.0mL,5.0mL について, うがい薬を用いて滴定を数回行い, 平均値を求めた 実験 B 実験 A と同じゆずからとれた果汁 2.0mL,5.0mL について, 5 倍に希釈したうがい薬で滴定を数回行い, 平均値を求めた 実験 ゆずの成熟度により, 含まれているビタミン の量に違いがあるかどうか確かめるために, 外皮の色の違いよって, 熟したゆず, 未熟のゆず, 超未熟のゆずに分類し, 滴定を数回行い, 平均値を求めた 実験 4 時間経過によるビタミン の損失について 使用したもの 標準溶液 A うがい薬 ビーカー マイクロピペット 方法標準溶液 A1.0mL を試験管に入れる 次に, 試験管にうがい薬をマイクロピペットでいれて, 果汁の色が褐色に変わるまで 0.02mL ずつ加える
実験 5 加熱によるビタミン の損失 使用したもの 黄色いゆず うがい薬 ビーカー 試験管 温度計 電気コンロ マイクロピペット 2 本 (100~1000μL,20~200μL) 果汁絞り器 ラップフィルム 図 9 加熱の様子 図 8 加熱した試験管に滴定を している様子 方法ゆずを果汁絞り器で絞り, 目の細かいザルで裏ごしをした後, 得られた果汁と標準溶液 A をそれぞれ 1.0mL ずつ試験管にとり, 試験管の口をラップフィルムで閉じたものを数本ずつつくる 次に, 試験管を 90 で湯煎し [ 図 7], 加熱時間を変えて取り出し, うがい薬をマイクロピペットでいれて, 果汁の色が褐色に変わるまで加える [ 図 8] 実験 D 果汁は,2 日間冷凍保存したもの, 常温保存したものを使用した 実験 E 果汁は, 当日絞ったものを使用した 実験 F 標準溶液は, 実験 1 で作成した標準溶液 A と, アスコルビン酸 0.40g に蒸留水を加えて 250mL にした標準溶液 B を使用した 4. 結果 実験 1 ヨウ素によるビタミン ( アスコルビン酸 ) の滴定 結果 回数 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目平均値 うがい薬の量 ml 0.9 0.9 0.8 0.9 1.0 0.9 ビタミン 算出方法 ( 分子量 : アスコルビン酸 6 H 8 O 6 =176, ヨウ素 I 2 =254) うがい薬を用いて測定した標準溶液 1mL 中のビタミン の質量 ポビドン G うがい薬は 成分表によると, 有効ヨウ素が 7mg/mL 含まれている 実験結果から滴定にはうがい薬が 0.9mL 必要であったので 0.9 0.007 254 = 2.5 10-5 mol
176 2.5 10-5 = 0.0044 溶液 1.0mL 中に含まれるビタミン の量 1.0 1 2.3 10 --5 mol 176 250 176 2.3 10-5 = 0.0040 実験 2 清涼飲料水に含まれるビタミン の滴定 結果回数 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目平均値うがい薬の量 (ml) 1.56 1.56 1.54 1.52 1.56 1.55 清涼飲料水に含まれるビタミン の算出 1.55 0.007 254 = 4.27 10-5 mol 4.27 10-5 176 140 = 1.052 1000 ビタミンレモンの成分表示より,140mL 中にビタミン が 1.000g 含まれるので, 測定値との誤差は 5.2% であった よって, うがい薬によりビタミン の定量ができることが分かった 実験 3 ゆずに含まれるビタミン の滴定 結果 熟したゆずのうがい薬 ( 原液 ), うがい薬 (5 倍希釈 ) での滴定 ( 滴定量は平均値 ) 熟したゆず 1 熟したゆず 1 熟したゆず 2 熟したゆず 2 熟したゆず 3 2.0mL 5.0mL 2.0mL 5.0mL 5.0mL うがい薬 ( 原液 ) ml うがい薬 (5 倍希釈 ) ml 1 回目 0.2 0.5 2 回目 0.2 0.5 1 回目 1.0 2.5 1.0 2.5 2.9 2 回目 1.0 2.5 1.0 2.5 2.7 未熟ゆずのうがい薬 ( 原液 ), うがい薬 (5 倍希釈 ) での滴定 ( 適定量は平均値 ) 未熟ゆず1 2.0mL 未熟ゆず2 3.0mL 未熟ゆず3 5.0mL 超未熟ゆず 5.0mL うがい薬 (5 倍希釈 ) 1 回目 1.3 1.8 2.8 2.5 ml 2 回目 1.3 1.8 2.8 2.5
実験 4 時間経過によるビタミン の損失について 結果 うがい薬 ( 原液 ) ml 10 月 23 日 10 月 25 日 10 月 27 日 10 月 30 日 11 月 1 日 0.9 0.74 0.66 0.65 0.64 10 月 25 日に関しては,5 倍希釈のうがい薬を使用した 実験 5 加熱によるビタミン の損失について 結果 実験 D 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 5 分 10 分 20 分 40 分 60 分 80 分 冷凍保存のゆず (10/27 測定 ) 常温保存のゆず (10/27 測定 ) 0.52 0.50 0.42 0.40 0.38 0.28 0.42 0.40 0.40 0.34 0.32 0.32 0.30 実験 E 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 5 分 10 分 20 分 40 分 60 分 80 分 ゆず果汁 (10/29 測定 ) ゆず果汁 (10/30 測定 ) ゆず果汁 ゆず果汁 ( 黄色 ) (11/2 測定 ) ゆず果汁 ( 緑色 ) (11/2 測定 ) 0.56 0.58 0.44 0.42 0.42 0.42 0.40 0.46 0.48 0.46 0.46 0.44 0.42 0.36 0.42 0.40 0.40 0.40 0.38 0.36 0.48 0.5 0.50 0.48 0.44 0.32 0.48 0.48 0.50 0.48 0.44 0.44 実験 F 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 5 分 10 分 20 分 40 分 60 分 80 分 標準溶液 A (10/29 測定 ) 0.62 0.68 標準溶液 A (10/30 測定 ) 標準溶液 B 0.65 0.66 0.64 0.62 0.60 0.60 0.58 0.70 0.68 0.64 0.66 0.64 0.62 この結果を受けて次の実験 G~I を行った
実験 G ゆず果汁と標準溶液 A,B の入った試験管を 90 で湯煎し,2 分ごとに試験管を取り出し, うがい薬をマイクロピペットでいれて, 果汁の色が褐色に変わるまで加える ゆず果汁 1 ゆず果汁 2 標準溶液 A 標準溶液 B 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 2 分 4 分 6 分 8 分 10 分 0.52 0.42 0.58 0.58 0.60 0.58 0.42 0.40 0.42 0.40 0.38 0.38 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 2 分 4 分 6 分 8 分 10 分 0.64 0.60 0.58 0.55 0.60 0.58 0.70 0.64 0.64 0.62 0.60 0.54 実験 H ゆず果汁と標準溶液 B の入った試験管を 40 で湯煎し, 加熱時間を変えて取り出し, うがい薬をマイクロピペットでいれて, 果汁の色が褐色に変わるまで加える ゆず果汁 標準溶液 B 1 回目 標準溶液 B 2 回目 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 5 分 10 分 20 分 40 分 60 分 0.4 0.44 0.42 0.42 0.42 0.42 0.64 0.68 0.68 0.66 0.68 0.7 0.64 0.66 0.54 0.66 0.64 実験 I ゆず果汁と標準溶液 B の入った試験管を 40 で湯煎し,2 分おきに試験管を取り出し, うがい薬をマイクロピペットでいれて, 果汁の色が褐色に変わるまで加える ゆず果汁 1 ゆず果汁 2 表の数値はうがい薬の量 ml 0 分 2 分 4 分 6 分 8 分 10 分 0.4 0.48 0.48 0.5 0.48 0.48 0.4 0.44 0.48 0.48 0.48 0.48
5. 考察実験 4より 保存した標準溶液 A に含まれるビタミン の量が減少したのは ビタミン が空気中や 水に溶けた酸素と反応し酸化されたためと思われる さらに 冷蔵保存のゆず果汁のほうがビタミン の減少量が少なかった理由は 常温保存したゆず果汁では細菌等が繁殖し ゆず果汁の腐敗が進んだためと思われる 次に 実験 5に関して 体温と同等の 40 ではビタミン は変化しないが 90 ではビタミン が壊れることにより量に変化が見られたものと思われる 90 での実験では 一度滴定に必要なうがい薬の量が増え ビタミン の量が増加したように見られる しかし これは加熱により 酸化還元反応を示す還元型アスコルビン酸に平衡が偏ったからではないかと思われる 6. 結論実験の結果から 時間経過 加熱の両方でビタミン の量に変化が見られた しかし 酸化型アスコルビン酸を薬品で処理することで精度の高い測定結果を得られるということを実験後に知ったため 今後 大学に協力を仰ぎながらより正確な測定をしていきたい また 90 における加熱で滴定に必要なうがい薬の量が増えた原因を調べていきたい 今回は ゆずの表皮の色で完熟か半熟かを区別した 今後は 収穫後熟成したものや 木になったまま熟成したものを使ってビタミン の量を測定していきたい 常温保存のゆず果汁にはカビが生えてしまったため 長期保存に適するように塩を加えるなどの工夫をしていきたい また 塩以外に代用できる物質には何があるか考えていきたい 7. 参考文献等 ビタミネ ビタミン の構造と種類 ( アスコルビン酸 ) 化学基礎 数研出版 ダイナミックワイド図説化学 東京書籍 http://vitamine.jp/bita/bitac04.html 8. 成果発表実績 高大連携化学系研究フォーラム 2015 での発表を行った