Taro-自立活動とは

Similar documents
第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

補足説明資料_教員資格認定試験

資料3-1 特別支援教育の現状について

< F2D93C195CA8E BB388E78AD68C578E9197BF2E6A7464>

第 1 章 通級による指導 ~ 開始前に知っておくべき基礎知識 ~ 1 通級による指導とは 通級による指導とは 通常の学級に在籍する障がいのある児童生徒が 各教科等の大部分の授業を通常の学級で受けながら 一部の授業について 障がいに応じた特別の指導を 通級指導教室 といった特別な場で受ける指導形態の

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

自立活動の内容

自立活動とは

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3

< F2D318BB388E789DB92F682CC8AC7979D F >

特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編(幼稚部・小学部・中学部・高等部)

資料4 高等学校における「通級による指導」の導入について

Q1 診断書等がない子どもへの合理的配慮はどう考えたらよいのか A1 診断書や障がい者手帳等の有無が 合理的配慮の提供に関する判断の基準ではありません 教育支援資料 ( 文部科学省平成 25 年 10 月 ) において 各障がいは以下のように定義されています ( 参考 ) 教育支援資料における各障が

2 具体的な指導内容について 各教科等を合わせた指導 としては これまで 特別支援学校 ( 知的障害 ) において 日 常生活の指導 生活単元学習 遊びの指導 作業学習 等が実践されています 1 日常生活の指導 日常生活の指導は 児童生徒が毎日の生活で繰り返す様々な活動を 日常の生活の流れにそって働

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

教育支援資料 ~ 障害のある子供の就学手続と早期からの一貫した支援の充実 ~ 平成 25 年 10 月 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

010国語の観点

資料5 親の会が主体となって構築した発達障害児のための教材・教具データベース

No_05_A4.ai

3 情緒障害 選択性かん黙等のある児童生徒については 情緒障害の状態になった時期や その要因などに応じて中心となる指導内容が異なります 例えば カウンセリング等を中心とする時期 緊張を和らげるための指導を行う時期 学習空白による遅れなどを補いながら心理的な不安定さに応じた指導を行って自信を回復する時

PowerPoint プレゼンテーション

Taro-【完成版】01 現職教育資料 第473-1号(小学校)

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

3 義務教育に関する規定第 16 条保護者 ( 子に対して親権を行う者 ( 親権を行う者のないときは, 未成年後見人 ) をいう 以下同じ ) は, 次条に定めるところにより, 子に9 年の普通教育を受けさせる義務を負う 第 17 条保護者は, 子の満 6 歳に達した日の翌日以後における最初の学年の

特別支援教育 教育経営研修班個人研究テーマ 教職員研修における特別支援教育に関する調査研究 高等学校教職員研修実施状況や意識調査を通して 指導主事仲本邦也 Ⅰ テーマ設定の理由 平成 19 年 4 月に 学校教育法等の一部改正に関する法律 が施行され 盲学校 聾学校 養護学校 ( 以下盲 聾 養護学

平成21年度「研究の手引き」の解説(案)

第 2 部 東京都発達障害教育推進計画の 具体的な展開 第 1 章小 中学校における取組 第 2 章高等学校における取組 第 3 章教員の専門性向上 第 4 章総合支援体制の充実 13

平成31年4月1日から新特別支援学校高等部学習指導要領が適用されるまでの間における現行特別支援学校高等部学習指導要領の特例を定める件

Taro-07_学校体育・健康教育(学

教職課程を開設している学部・学科の専任教員数及び授業科目等_2018

Microsoft Word - 目次・奥付.doc

愛媛県学力向上5か年計画

No_05_A4.ai

<4D F736F F D D E83678CA48B8695F18D908F91955C8E DA8E9F814591E687548FCD E C95742E646F63>

校外教育施設について

特別な支援を必要とする 子どもの受け入れと対応

資料 Ⅱ-2 養護学校における知的障害を伴う自閉症児を教育する場合の自立活動の目標と内容の解説 Ⅰ 自立活動の目標 1 幼稚部教育要領自立活動 1 ねらい個々の幼児が自立を目指し, 障害に基づく種々の困難を主体的に改善 克服するために必要な知識, 技能, 態度及び習慣を養い, もって心身の調和的発達

幼稚園前半CS2.indd

ICTを軸にした小中連携

資料5 特別支援教育に係る教育課程について

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

目次 第 1 章自立活動の基本的な考え方 1 自立活動の位置付け 1 2 自立活動の目標 1 3 自立活動の内容とその取扱い 2 4 障がいのとらえ方と自立活動の指導 3 5 知的障がいのある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の自立活動の考え方 4 第 2 章実態把握から評価の仕方まで 1 児童

人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

茨城県における 通級による指導 と 特別支援学級 の現状と課題 IbarakiChristianUniversityLibrary ~ 文部科学省 特別支援教育に関する調査の結果 特別支援教育資料 に基づいて茨城キリスト教大学紀要第 52 ~号社会科学 p.145~ 茨城県における 通

Microsoft Word - 1.doc

Microsoft Word - ●資料2「児童自立支援施設について」

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(幼稚部・小学部・中学部)

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

県立学校職員 ( 趣旨 ) 第 1 条この要綱は 地方公務員法 ( 昭和 25 年法律第 261 号 ) 第 15 条の2 第 1 項第 5 号の規定に基づき 山形県教育委員会における職員 ( 学校教育法 ( 昭和 22 年法律第 26 号 ) 第 7 条に規定する校長及び教員等 ) の標準職務遂行

はじめに 我が国においては 障害者の権利に関する条約 を踏まえ 誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い 人々の多様な在り方を相互に認め合える 共生社会 を目指し 障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みである インクルーシブ教育システム の理念のもと 特別支援教育を推進していく必要があります

123

資料4 特別支援学校の教育課程について

特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(幼稚部・小学部・中学部)

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

17 石川県 事業計画書

「標準的な研修プログラム《

北見市特別支援教育の指針 平成 25 年 11 月

鎌倉市関谷小学校いじめ防止基本方針 平成 26 年 4 月 鎌倉市立関谷小学校

平成29年度通級による指導実施状況調査結果について(別紙2)

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

1 大学等を卒業して小学校教諭普通免許状を取得する ( 免許法別表第 1) 基礎資格 種類 基礎資格 専修 修士の学位 ( 大学 ( 短期大学を除く ) の専攻科又は大学院に1 年以上在学し,30 単位以上修得した場合を含む ) 一種 学士の学位 ( 学校教育法第 102 条第 2 項により大学院へ

③専門B.indd

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

2018(H30)学則別表2新 コピー.xls

通常の学級における

01 表紙(進路調査編)

新しい幼稚園教育要領について

活実態と関連を図りながら重点的に指導していきたい また, 栄養教諭による給食献立の栄養バランスや食事によるエネルギー量を基盤として, グループごとに話合い活動を取り入れるなどの指導の工夫を行いたい また, 授業の導入にアイスブレイクや, カード式発想法を取り入れることにより, 生徒が本気で語ることが

主な取組 質の高い幼児教育の推進 幼稚園教育要領の内容の定着を図るため幼稚園において 幼児の実態等を踏まえた適切な教育課程を編成し 家庭や地域と連携 協力しつつ幼児教育を推進します 幼稚園において運動遊びを充実させ 幼児の体力向上を目指します ふかやこども園モデル園運営事業に係る3 歳児受入れ 平日

資料3-3 関係データ集(特別支援教育について)

2 平成 27 年度に終了した研究課題について 研究成果報告書サマリー集や研究成果 ( 別紙 1 参照 ) の内容は 例えば下記のような場面で用いられ 貴機関や学校等での課題の改善に活用できましたか? 活用の場面研修会やセミナー所管する学校 教職員への情報提供関係機関 ( 医療 保健 福祉 教育 労

<4D F736F F D20906C8CA08BB388E E646F63>

tokusyu.pdf

資料7 特別支援教育部会報告資料(2)

平成29年度 中学校英語科教育 理論研究

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

第4章 道徳

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

聴覚障害特別支援学校(聾学校)で取り扱われる特徴的な自立活動の内容に関する調査

出時に必要な援助を行うことに関する知識及び技術を習得することを目的として行われる研修であって 別表第四又は別表第五に定める内容以上のものをいう 以下同じ ) の課程を修了し 当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者五行動援護従業者養成研修 ( 知的障害又は精神障

はじめに都立町田の丘学園では 保護者や関係者へ十分な説明責任を果たすとともに 情報の発信を地域の特別支援教育のセンター校として取り組んでいます しかし 特別支援教育に関しては 公立の小 中 高等学校で使われている教育に関する用語と比較して 日頃から聞きなれない用語も数多く出てきます 保護者会及び本校

第 1 部第 3 章特別支援教育推進計画 ( 第二期 ) の基本理念と施策の方向性 1 東京都特別支援教育推進計画 ( 第二期 ) の基本理念東京都特別支援教育推進計画 ( 前計画 ) の基本理念発達障害を含む障害のある幼児 児童 生徒の一人一人の能力を最大限に伸長するため 乳幼児期から学校卒業後ま

特別支援学校 教育要領・学習指導要領

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 National Institute of Special Needs Education 資料 3-4 特別支援教育における ICT 活用についての情報提供ー現状及び NISE の活動を踏まえてー 平成 30 年 1 月 11 日 ( 木 ) 於 : 第 3

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

スライド 1

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

Transcription:

e-learning: 特別支援教育自立活動とは障害のある児童生徒が自立し社会参加するためには 知識や技能を習得していく各 教科等の指導の他に 学習上又は生活上の困難さに対応する力を獲得することができ るようにする自立活動の指導が必要です ここでは 自立活動とは何か どうして自立活動が必要なのか 自立活動をどのよ うに教育課程に位置づければよいのかについて解説します 1 はじめに特別支援教育対象者の増加 図 1 義務教育段階における特別な支援を要する児童生徒の割合平成 24 年度に文部科学省が行った調査によれば 義務教育段階において通常の学級に在籍し LD( 学習障害 ) ADHD( 注意欠陥多動性障害 ) 高機能自閉症と推定され特別な教育的支援を必要とする児童生徒の割合は 6.5% と示されています 義務教育段階における特別支援教育の対象者は 特別支援学校 0.63% 特別支援学級 1.58% 通級による指導対象者 0.69% の合計 2.90% それに通常の学級で LD 等が疑われる児童生徒 6.5% が加わり これらの数値を合わせると9.4 0% になります LD 等が推定される児童生徒の全てが支援を必要とする訳ではありませんが 義務教育段階では 約 10% の児童生徒が特別な教育的支援を必要とする可能性があることが考えられます これらの児童生徒は 就学前の段階 また高等学校段階においても何らかの教育的支援を必要とすることが考えられます - 1 -

自立活動とは 自立活動の目標は 特別支援学校小学部 中学部 高等部学習指導要領に次のように 記されています 個々の児童又は生徒が自立を目指し 障害による学習上又は生活上の困難を主体 的に改善 克服するために必要な知識 技能 態度及び習慣を養い もって心身の 調和的発達の基盤を培う 自立活動の内容は 人間として基本的な行動を遂行するために必要な要素と 障害による学習上又は生活上の困難を改善 克服するための必要な要素で構成しており それらの代表的な要素である26 項目を六つの区分に分類 整理されています 指導に当たっては 個々の児童生徒の指導上の課題を基に 六つの区分の下に示してある項目の中から必要とされる項目を選定し それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することになります 1 健康の保持生命を維持し 日常生活を行うために必要な身体の健康状態の維持 改善を図る観点 (1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること (2) 病気の状態の理解と生活管理に関すること (3) 身体各部の状態の理解と養護に関すること (4) 健康状態の維持 改善に関すること 2 心理的な安定自分の気持ちや情緒をコントロールして変化する状況に適切に対応するとともに 障害による学習上又は生活上の困難を改善 克服する意欲の向上を図る観点 (1) 情緒の安定に関すること (2) 状況の理解と変化への対応に関すること (3) 障害による学習上又は生活上の困難を改善 克服する意欲に関すること 3 人間関係の形成自他の理解を深め 対人関係を円滑にし 集団参加の基盤を培う観点 (1) 他者とのかかわりの基礎に関すること (2) 他者の意図や感情の理解に関すること (3) 自己の理解と行動の調整に関すること (4) 集団への参加の基礎に関すること - 2 -

4 環境の把握感覚を有効に活用し 空間や時間などの概念を手掛かりとして 周囲の状況を把握したり 環境と自己との関係を理解したりして 的確に判断し 行動できるようにする観点 (1) 保有する感覚の活用に関すること (2) 感覚や認知の特性への対応に関すること (3) 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること (4) 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること (5) 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること 5 身体の動き日常生活や作業に必要な基本動作を習得し 生活の中で適切な身体の動きができるようにする観点 (1) 姿勢と運動 動作の基本的技能に関すること (2) 姿勢保持と運動 動作の補助的手段の活用に関すること (3) 日常生活に必要な基本動作に関すること (4) 身体の移動能力に関すること (5) 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること 6 コミュニケーション場や相手に応じて コミュニケーションを円滑に行うことができるようにする観点 (1) コミュニケーションの基礎的能力に関すること (2) 言語の受容と表出に関すること (3) 言語の形成と活用に関すること (4) コミュニケーション手段の選択と活用に関すること (5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること 自立活動は 特別支援学校の教育課程において特設された指導領域であり その指導を行うことによって 幼児児童生徒の人間としての調和のとれた育成を目指しています 小 中学校等の教育は 幼児児童生徒の生活年齢に即して系統的 段階的に進められています そして その教育の内容は 幼児児童生徒の発達の段階等に即して選定されたものが配列されており それらを順に教育をすることにより人間として調和のとれた育成が期待されています しかし 障害のある幼児児童生徒の場合は その障害によって 日常生活や学習場面において様々なつまずきや困難が生じることから 心身の発達の段階等を考慮して教育するだけでは十分とは言えません そこで 個々の障害による学習上又は生活上の困難 - 3 -

を改善 克服するための指導が必要となります 学校教育法第 72 条では 視覚障害者 聴覚障害者 知的障害者 肢体不自由又は病弱者 ( 身体虚弱者を含む 以下同じ ) に対して特別支援学校は小学校中学校または高等学校に準ずる教育を施すとともに障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする と示されています これは特別支援学校だけでなく特別支援学級また通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対しても同様のことが言えます 自立活動では 図 2のように自立活動の時間における指導を中心とし 各教科 道徳 外国語活動 総合的な学習の時間 特別活動と密接な関連を保つことが重要であると示されています 障害のある児童生徒の教育 幼稚園 小学校 中学校又は高等学校に準ずる教育課程 障害による学習上又は生活上の困難を克服し 自立のために必要な知識技能を授ける 各教科 道徳 外国語活動 総合的な学習の時間 特別活動 密接に関連 自立活動 図 2 自立活動と各教科等の関連 すべての教員に知ってほしい自立活動の指導学校教育法第 72 条では特別支援学校は障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とすることが示されています このように 自立活動は 特別支援学校の教育課程において特別に設けられた指導領域であり その目標は特別支援学校の目的と一貫性のあるものです 一方 幼稚園 小学校 中学校 高等学校等の教育内容としては示されていませんが 小学校及び中学校の特別支援学級や通級による指導では 特別な教育課程を編成することによって取り扱うことができます 小学校及び中学校の通常の学級や幼稚園 高等学校については 自立活動の指導を行うことになってはいません しかし 障害により支援を必要としている子どもは どの学級にでも在籍しています したがって どこの学級でも障害のある子ども一人一人の困難に応じた指導が求められていることから すべての教員は自立活動の視点をもつことが必要です - 4 -

自立活動の教育課程上の位置付け 図 3 は 特別支援学校と小 中学校等における自立活動の取り扱いについて示した図 です 図 3 特別支援学校と小 中学校等における自立活動の取り扱い特別支援学校においては 前述のように自立活動は教育課程において特別に設けられた指導領域であることから 授業時間を特設して行う自立活動の時間における指導を中心とし 各教科等の指導においても自立活動の指導と密接な関連を図って行われなければなりません 小学校 中学校の特別支援学級や通級による指導においては 児童生徒の障害の状態等を考慮すると小学校又は中学校の教育課程をそのまま適用することが必ずしも適当ではなく 特別支援学校小学部 中学部学習指導要領に示されている自立活動等を取り入れた特別な教育課程を編成する必要性が生じる場合があります 学校教育法施行規則第 138 条 同第 140 条には 特別支援学級又は通級による指導において 特に必要がある場合は 特別の教育課程によることができると規定し 自立活動の内容も取り入れ 実情に応じた教育課程編成の必要性を示しています また 小学校又は中学校の通常の学級に在籍している児童生徒の中には通級による指導の対象とはならないものの障害による学習上又は生活上の困難の改善 克服を目的とした指導が必要となる子どもがいます こうした児童生徒の指導にとっても適切な指導や必要な支援を行うことが望まれます 2 自立活動の指導の特徴一人一人障害の特性に応じた指導 子どもの障害の状態は 一人一人異なっています 自立活動では それぞれの障害に よる学習上又は生活上の困難を主体的に改善 克服することを目標にしているので 必 然的に一人一人の指導内容 方法も異なってきます - 5 -

そのため 自立活動の指導に当たっては 個々の子どもの実態を的確に把握し 個別に指導の目標や具体的な指導内容を定めた個別の指導計画を作成します したがって 個別の指導計画に基づく自立活動の指導は 個別指導の形態で行うことが多くなります しかし 指導の目標を達成する上で効果的である場合には 集団を構成して指導することも考えられます 自立活動の指導計画は個別に作成されることが基本であり 集団で指導することを前提とするものではない点に十分留意することが重要です 弾力的な指導自立活動は 授業時間を特設して行う自立活動の時間における指導を中心としながら 各教科等の指導においても 自立活動の指導と密接な関連を図って行います 例えば 注意を集中させることが難しく 学習に取り組む時間が短い等の 障害による学習上又は生活上の困難 がある場合 この困難を克服 改善するために 時間割に位置付け 時間を特設して行う指導 ( 時間における指導 ) と各教科等 ( 教育活動全体 ) の中で行う指導との関連を図りながら指導することが大切です また 各教科等の中でも 必要に応じて 部分的に自立活動の指導を取り入れながら学習を進めていくことができます この場合は あくまでメインは教科学習であり 教科の授業の流れを完全に止めて行うものではなく 流れの中に滑り込ませるように指導を入れていくというイメージになります これらの指導は 教科の力を身に付けるための指導というよりも 障害による困難さを軽減するための指導といえますが 結果的には 教科の力を身に付けることにつながっていきます 3 特別支援教育の推進と自立活動の指導小 中学校等における特別支援教育の推進 通常の学級に在籍する障害のある子どもへの支援を行うことについて学校教育法では 次のように規定されています 学校教育法 第 81 条第 1 項 幼稚園 小学校 中学校 高等学校及び中等教育学校においては 次項各号のいずれ かに該当する幼児 児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児 児童及 び生徒に対し 文部科学大臣の定めるところにより 障害による学習上又は生活上の 困難を克服するための教育を行うものとする この規定は 特別支援学級の対象の児童生徒だけでなく 通常の学級に在籍する障害 により特別な支援を必要とする幼児児童生徒を指しています 特別支援学校の地域におけるセンターとしての役割 特別支援学校は 地域の小 中学校等を支援する役割が求められるようになりまし た 学校教育法では 次のように規定されています 学校教育法 第 74 条 特別支援学校においては 第 72 条に規定する目的を実現するための教育を行うほか - 6 -

幼稚園 小学校 中学校 高等学校又は中等教育学校の要請に応じて 第 81 条第 1 項に規定する幼児 児童又は生徒の教育に関し必要な助言又は援助を行うよう努めるものとする この規定により 特別支援学校は 特別支援学校に在籍する子どもに対する教育だけでなく 小 中学校等の要請に応じて 障害により教育的支援を必要としている子どもに関して 必要な助言 援助が求められていることになります このように 特別支援学校は 地域において特別支援教育のセンターとしての役割を果たしていくことなりました このことは 特別支援学校が より多様な障害の状態を示す子どもたちに対応することを意味しており より多様な障害の状態を示す子どもの支援に対する助言や援助を適切に行うことが求められます 特別支援学校は 地域における特別支援教育のセンター的機能を果たしていく上で 自立活動の指導の専門性の向上に努めていかなければなりません 参考文献 文部科学省.2009. 特別支援学校幼稚部教育要領 特別支援学校小学部 中学部学 習指導要領 特別支援学校高等部学習指導要領. コラム 自立活動の指導 は 給食 と同じ? ある栄養教諭さんは 給食では 子どもたちの成長に必要な栄養素を計算し 栄養バランスを考えた食材選び 調理法の工夫が大切だと言っていました これはまさに自立活動の指導と同じ考え方ではないでしょうか 自立活動の指導は 児童生徒の実態を捉え ( 栄養計算 ) 6 区分 26 項目の内容の中から必要な内容を選択し ( 食材選び ) 具体的に指導内容を設定 ( 調理 ) していきます さらに言うと 給食では 児童生徒に おいしく たのしく 進んで 食べてほしいと願い 調理法から提供の仕方まで工夫しています これは 自立活動の指導で大切にしている 主体的に という視点に通じます 自立活動の指導というと難しく考えてしまいがちですが 給食のように 必要な栄養をとるために 適切な食材を選び 調理法を工夫して 児童生徒の 食べやすさ を考えて提供するという視点で考えてみてはいかがでしょうか きっと児童生徒の実態に合った 児童生徒が主体的に取り組む自立活動の指導を作り上げることができるでしょう 作成 : 青森県総合学校教育センター特別支援教育課 - 7 -