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Title 皮膚表面における温冷感 湿潤感の部位差を探る Author(s) 田村, 照子 Citation 日本官能評価学会誌 (2) (2007-0) pp.8-88 Issue Date 2007-0 URL http://hdl.handle.net/0457/888 Rights http://dspace.bunka.ac.jp/dspace

apanese Journal ofsensor y Evaluation 2007, VoL, No. 2, 8-88 皮膚表面における温冷感 湿潤感の部位差を探る 文化女子大学 文化 衣環境学研究所田村照子. はじめに 衣服や暖冷房は, 人体の周囲に不均一な温熱環境を 形成する. この皮膚表面の温熱情報は, 皮膚の感覚受 容器でキャッチされ, 中枢に伝達 統合されることに より, 自律性体温調節を駆動し, 同時に温冷感 快適 感を惹起する. 人体各部に負荷される温熱刺激がヒト の体温調節や局所および全身温冷感や快適感にどのよ うな影響を及ぼすかを追究するに当たって, その入り 口である皮膚における感覚感受性の部位特性を把握す ることは, 環境設計上重要と考えられる. 著者らは, 衣服設計の基礎とすべく, 皮膚表面における温度感受 性の部位差, 人体の局所加温 局所冷却に対する生理 反応, 暑熱時の不快感に関連する湿潤感の感知構造, これらの加齢変化等について研究を継続してきたが, 本稿ではこのうち温冷感の部位差 湿潤感の感知構造 を中心に述べる. 2. 温点 冷点分布密度の部位差の探索 ヒトの皮膚には触 温 冷 痛の 4 つの感覚がある こと, 皮膚の小さな領域を針, 毛, 温めたまたは冷や した真鍮の円錐の先で触れたとき, それぞれ痛 触 温 冷覚を生じる感覚点が存在すること, 各点は独立 で, その密度は人体の部位によって異なること, 各感 覚はそれぞれに固有の解剖学的構造を持つ受容器で受 容されていることなどが H:elmholz, Blix, von Frey 等の研究者によって発見されたのは 9 世紀末のこと lii itti邑価 ermisヒer them meter 韮十 skin 一φ3., 爾 一一卿 water flow siticon tube ゆやセガ 鍵 P mp - 70 〆冒虹琶撃thermisieT thermometer watcr bath 図 花王型水循環方式温点測定装置 である ).von Frey の刺激毛による実験手法は現在も 精神物理学の標準ツールとなっている. その後 Dallenbach2) 等によって冷点 温点密度の測定におけ る, 環境温度刺激温度, 刺激圧, 負荷時間などの影 響が検討された. 現在,2cm 2cm 枠内の 00 個の格 子に微小な冷 温刺激を負荷し, 冷 温感覚をマッピ ングする方法が確立されている. その後冷点密度につ いては Strughold と Porz による 例の結果 ( 岩村吉晃 3)) がまた村田と入来 4) の 8 部位における青年 20 人と老 人 30 人の結果が報告されているが, 温点密度については Rein5) の報告しか見当たらない. そこで著者らは改めて衣服設計の立場から, 全身部 位を対象とした調査に着手し, 李と田村 6) は, 市販の 温覚計に改良を加えた刺激装置を用いて若年女子 9 名 の全身 25 部位を対象に冷点密度の測定を, また, 田村と李 7) は, 刺激温度の微調整が可能な水循環式刺激 装置 ( 図 ) を用いて, 若年女子 0 名の全身 25 部位 を対象に温点密度の計測を実施した. 環境条件はいず れも人工気候室の気温 28±O.5, 湿度 50±0%, 気 流 0.2m/sec 以下, 着衣条件はブラジャーとショーツ, 姿勢は臥位, 測定順序はランダムとした. 測定部位は front Foreherur 2 Cheek 3 Chin q Neck 5 SinovideT 6 Ctsest 7 Up. aboetnen 8 Atxtoman 9 lipperarta 0 Fetearm halm 2 lhigh i3 leg 4 Foot vi 蝿縫 6 V 聾 7 難 8 3 9 聯 o 2 t 23 i9 v 25 図 2 温度点測定部位 5 v back 5 Neck 6 Shoulder 7 Upper beck 8 Back 9 Loin ZO Upperarm 2 Ferearm 22 Hand 23hi 帥 24 leg 25 Se)e 8

セ o戯 o職切 囲o 激 猛 li 陣i聾 m2闘4c 糞 ε2 m2嵩q0/c 一冒一 @ 購 m5 @ 鴫畏鷺 隻 6 2 日本官能評価学会誌 Vol. No.2 濯饗 圏燃 i 艶叛 塗典 図 32cm 枠 4cm 枠内冷点マッピング例 図 2 に示す通りである. 測定に先立って,2cm 枠におけるマッピング結果 と同部分を含む 4cm 枠におけるマッピング結果の再 現性を確認した. 前額 胸 前腕 大腿のマッピング 結果を図 3 に示す. 同一部門を繰り返しマッピングし たときの一致率を見ると, 冷点では前額 84%, 胸 69%, 前腕 77%, 大腿 66% と比較的高い再現性を示している.2cm 枠と 4cm 枠の結果を比較すると, 冷 点は散在する点としてではなくあるまとまりのあるパ ターンとして存在することが確認された. 冷点密度の 測定面積としては現状の 2cm 枠が妥当であるといえる. 一方温点のマッピングでも一致率は 69% から 00% と高い. しかし温点は冷点に比して出現数が少 ないため, 少しの位置のずれが個人差や測定誤差を生 じやすいことが示唆された, 温点密度の測定には 4cm 枠の利用が妥当かもしれない. 冷 温点密度の 結果を図 4 に示す. 横軸の数字は図 2 に示す測定部位 を表わしている. 図の結果を見ると, 冷点は 8~23 個 /cm2 に分布し, の前額が最大,3 の下腿が最小 値を, 全体としては顔面部, 体幹部, 頚部, 上肢部, 下肢部の順に低下した. 温点は ~6 個 /cm2 に分布し, 冷点に比して約 4 分の と少ないが,2 の頬部と 0 の前腕部が比較的高い値を示している. 日常生活にお 喰 み 2 日レ 2α祠 仙のコ6 89 59Front as Front 為自 差,5 壽E 旧睾5v5 M 磁 S 側mg site va bun t s.p. 2 日 @2 給曽z隠匿 2 S A s e 7 9 9 te tl 2 t3 t4 Measuring sites 茜 59E3eck a器四p50 %笏 5 己,, 書竃 聾圃 5 t6 tl le te N at me 23 24 ee Measur ifig site va nettn ± S.D. 四6 巴ρ呂鳴冒霞595舳欲 e MeasuriTig s i tes 図伽 n 伽田, き s,d 図 4 人体各部の冷 ( 左 ) 温 ( 右 ) 点密度 82

皮膚表面における温冷感 湿潤感の部位差を探る いて, 赤ちゃんのミルクの適温を調べる際哺乳瓶を頬 に当てたり, 沐浴の四温を調べる際前腕を湯に浸した りする行為との関連を示す結果である. 3. 冷点 温点密度と冷 温感受性との関係 冷点 温点密度は, 人体各部位の温度受容器の密度 を反映すると考えられるが, 各部位の温度感受性との 関係はどうであろうか. 生理学分野では赤外線放射や 特殊冷却スーツを用いて人体の局所加温 局所冷却が 引き起こす皮膚温 発汗 呼吸 代謝等生理反応への 影響を調査した研究は見られるが, 冷点 温点密度を 調査した部位の温度感受性を調査した研究は見当たら なかった. そこで李と田村 8) は, 図 5 に示すような直 径 20mm, 高さ 08mm の鉄製プローブを用いて, サーストンの一対比較法による官能検査を実施した. 0 の恒温冷水中に放置したプローブを使用直前に 2 本取り出し, 吸水シート上で水分を吸収させた後異 なる任意の部位に同時に 3 秒間接触させ, 冷感覚がよ り強い部位を申告させた. 同様の方法で, プローブを 入れる恒温水槽の温度を 40 に調整することで温感 受性の強さについても検討を加えた. 測定部位は 25 部位, 被験者は若年女子 0 名. 測定条件は冷感受性 における実験の環境気温を 25±O.5,30±O.5 の 2 条件としたほかは前実験と同様である. いずれも前 面 後面別にサーストンの方法に基づく距離尺度構成 を行った. 各部位の冷感受性尺度構成値と, 先に得られた冷点 密度の関係を図 6 に示す. 冷感受性は, 前面では前額, 頬, 手掌, 下腹が高く, 下腿がもっとも低い. 後面でうなじは項, 腰が高く, 下腿, 前腕が低い. 前 後面共に冷 感受性の高い部位は, 下腹項, 腰など, 日常冷えを 感じやすい, あるいは冷やしてはいけないとされてい ぜ r 施,rd C. 輪講欝, 蓋. 脚幅撫蜘鰍. 懸グぎ粛 図 5 部位別温度感受性の一対比較 る部位である. 手掌と足底は四肢でありながら特異的 に高い感受性を示した. 冷点密度との相関は前面で r =0.6, 後面で 0.40 と高くないが, 全体の中で冷感受 性が非常に高い手掌と足底の 2 部位を除くと r=o.7~ O.8 が得られ, 両者間に危険率 % 以下の有意な相関 が認められた. 有毛部と無毛部では表皮の構造や厚さ が異なることが 因と考えられる. 一方, 温感受性も 前額や頬 下腹で高く足部や下腿で低く, 温点密度と の相関は後面では 0!70 と高いが前面では 0.42 と低い 結果となった. 一般に, 温度感覚は中枢神経系にインパルスが十分 な頻度で達したときにのみ生じる. 温点分布密度と温 感受性の相関が低いことの理由としては, 岩村 9) が指 摘するように, 温点がない部位にも受容器がないわけ ではなく温点の数より受容器の数のほうが多いが, 温 覚が生じるには一度に広い面積が刺激されて複数の温 受容器の興奮による空間加重が起こる必要があると思 われる. IS.,Lii llfi 薫,.2 器 藁 8 :: Fron 七 OpeIm ノ. e.f 冶 h 剛 der e 日 2B 2.8 ユぶ釧.4!2 屋 霧 9.8 署巳 6 Q 日.4 0,2 巳 Orereheed 咄鑓 /. ウ鋤cm n Cold spot per cmi r=o 6 C p e.os l 墨 sole Back lneck 0in ぬロロめさヒ靴 high bend ts k N pcore rvhou d er Sleq e 廻 rorear 29 Cold spot per cm2 r= O 4 図 6 冷点密度と冷感受性の関係 4. 温冷覚閾値測定装置の開発 以上, 古典的な手法によって温度感覚の研究を進め 83

日本官能評価学会誌 Vol No.2 生体面 皮離度センサー 辱 jl 藩 一一 _ -ny = コント a 一ルボックス n-t 一一一一 l バネ l カンタ Lmh 一 図 7 温冷覚閾値測定装置の構成 500 000 婁} 500 o 菟一 500} s::gg i 2 3 Time (sec-) 図 9 繰り返し測定結果の例 図 8 温冷覚閾値実験風景 てきたが, これらは測定に時間を要するばかりではなく, 何よりも被験者への負担が大きい. 今後, 性別 年齢別に感覚特性を明らかにしょうとするとき, 測定方法の簡便化が最重要課題となった. そこで, より簡便で測定時間が短縮され被験者への負担が小さく, しかも高精度, 再現性に優れる温冷覚閾値測定装置の開発を試みた. 田村と小田 0 ) により開発された装置の構造を図 7 に示す. 本装置はプローブ, サーマルコントローラ, 解析制御部から構成されている. 基本原理は, 熱流センサーと温度センサーを組み合わせたセンサー部分の下に熱伝導板を配し, ペルチェ素子からの高熱によって皮膚 プローブ間に熱流を発生させ, 温度センサーにて皮膚温度を, 熱流センサーにてプローブ 皮膚間の熱流値を出力するものである, まずプローブを対象 皮膚に接触させ, 接触部のプローブ温度を当該皮膚温 と等温レベルに調整した後プローブ温を適当なスピードで ( 通常 0. /sec) 上昇または下降させ, 被 験者が温覚または冷覚を感じたときにスイッチボタン を押させる. このときの閾値を, 温覚 冷覚独立に, しかも温度差, 熱流量, 熱流積分等によって多様に評 価することができる. プローブからの熱流はコンパク トな空冷式で除去し, 演算 データ表示 パラメータ 設定等はコンピュータ制御することができる. 図 8 に 実験風景を, 図 9 に繰り返し実験結果の例を示す. 5. 温 冷覚閾値の部位差とその加齢変化 開発した温 冷覚閾値測定装置を用いて,20 歳代 から 80 歳代までの各年代別温 冷覚閾値を, 全面 4 部位, 後面 2 部位計 26 部位について精査した. 環境 84

皮膚表面における温冷感 湿潤感の部位差を探る 条件 被験 : 者の着衣 姿勢等は前実験 : 条件と同様であ る. ここでは 20 歳代 0 名をコントロール群としたと きの,60 歳代 0 名,70 歳代 0 名,80 歳代 8 名の被験者群の冷覚閾値の結果 ( 内田と田村 2 りを示す. 図 0 が示すように冷覚閾値の平均値は,20 代若年女子 で一〇.29~ 一.45,60 代高齢女子で一〇 52~ 一 3.34, 70 代高齢女子で一〇 52~ 一 3.20,80 代高齢女子で 一〇.54~ 一 3.53 の範囲に分布し, 全体として若年女 子に比べ高齢女子では冷覚閾値が増大している. 全身 の冷覚閾値の部位差をみると, 若年女子, 高齢女子群 ともに, 前額, 頬, 顎等顔面部の閾値は小さく, 下腿, 足背, 足底等下肢部では大きく, 体幹部 上肢部では 顔面と下肢の中間的な値を示した. ただし肩部の冷覚 閾値は例外的に大きい傾向がみられた. 図中の *,* * 印は 20 代若年女子と高齢女子 60 代,70 代,80 代との間の多重比較の検定結果を部位別に示したもので ある.20 代と 60 代では下腿前面の 部位で,20 代と 70 代では腹部, 下腿前面, 下腿後面, 足底の 4 部位で, 20 代と 80 代では腹部, 上腕前面, 下腿前面, 足背, 肩甲, 腰, 轡部, 下腿後面, 足底の 9 部位で有意差が みられ, 年齢の上昇と共に有意な変化を示す部位が下 腿 足部から全身へと拡大している. 温覚閾値についてもほぼ同様の結果が得られた. 図 に, 主な測定部位における温覚閾値の加齢変化お Cold thresholds(ec) 一 4 一 3 一 2 一 0 2 s 一 s 一 4 一 3 一 2 一 OLO一 Φ9 くり=欄Oα切=旧 コO扇O LO旧しOFOOn 囎伽鵡鵬麟km簡噂kgkm幽晦km認km認kg蹄20 s 一 5 一 4 一 3 一 2 一 O MiTN-!II[I[レII菅ヒ苦 I I I ト l 釜逐 I r 菅 II I I I I Ih l I u I I rトi I l [ [ Ih I I h I III l l IIl I堰 @I h I I IlIl 目江 一 6 一 5 一 4 一 3 一 2 一 O 2 rγ 一一 I l l l I I I l I I I l I I I I I l I I I l I i l Il l l I l [ i l l 戟 @l h l i l 曇 I[ i I l 管 2 I I I [ しIh I I [Ih I I r l [ II I l [ I I : 管 ll[ lli h l li I辛 円 ll I l I i I I [ I I l l 曇 l l E l I I l I 聾 ぼ80 図 0 年代別冷覚閾値の分布 85 I60 s 70 s

日本官能評価学会誌 Vol.:No.2 8 フ(9 )ωコ 8 5 誌30 0りヨク87(O )ωコ28 5量β0便043ウ68 7 066 茎 5 蓄 4?o 謹 3s一 Forehead 十 Cheek 一 トー Chin 幽 一 20 s 60 s 70 s 80 s 一 Chest 一 u 一一一 L 一一一 L-Jr 一 十 Abdomen 一 Back 一 Loin 20 s 60 s 70 s 80 s 一 ト Upper -Palm Leg 十 Foot ar 一貫 }i 三 **r 進 20 s 60 s 70 s 80 s 図 温覚閾値の加齢変化 よび高齢女子 60 代,70 代,80 代間における有意差検 定結果を示す. 顔面部の前額, 頬, 顎では加齢による 大きな変化はみられないが, 躯幹部の胸部, 腹部, 腰 部では加齢による温覚閾値の増加がみられ, 四肢部で の変化はさらに大となる. 温覚閾値の変化がもっとも 大きい足背では,20 代若年女子が平均.04 で温覚 を感じているのに比べ,60 代高齢女子は 2.59,70 代高齢女子は 4.7,80 代高齢女子は 6.6 と閾値 が顕著に増大し,60 代 80 代間でも % の有意差が 認められた. 感覚閾値のエイジングについては既にいくつかの文 献が見られる.Kenshalo3) は 27 人の若年者 (9~3 歳 ) と 2 人の高齢者 (55~84 歳 ) で温度検知閾値の上昇を認めている. また,Stevens と Choo4) は 8 歳 から 88 歳の 60 人の被験者について, 人体の 3 部位 を対象に, ペルチェ刺激装置を用いて皮膚温を 33 から 2. /sec で上げるか.9 度 /sec で下げた時の温 度検知閾値を測定した. 結果, 温度感受性は部位によ り異なり 00 倍の差があること, 顔と口が感度よく四 肢で悪いこと, さらにどの部位でも冷覚の感受性のほ うが良いが, 冷感受性の良いところは温感受性も良い ことを報告した. 加齢変化については, 温覚冷覚とも 年齢と共に低下し, 四肢特に足で著しく閾値が上がる こと, 感受性の減少は個人差が大きいことを指摘して いる. 今回の結果はこれら先行研究と基本的な傾向は一致 している. しかし Stevens らの刺激装置は 33 を基 点としているが, 皮膚温度は, 人体各部位によって異 なり,33 では接触時にすでに温覚を生じる部位も多 いと考えられ, 閾値測定の条件としては問題がある. また 2. /sec,.9 /sec の変化速度は大きすぎる. 特に高齢者では運動機能 反応速度の遅れがあるため, それによる見かけの閾値拡大が懸念される. これが 00 倍という大きな差異をもたらしたとも考えられる. いずれにしても加齢に伴う温覚 冷覚の閾値低下は 予想を超えるものであった. この原因としては, 村 田 入来が身体各部の皮膚の冷点は加齢により減少す ることを報告している. また岩村 5) は皮膚温度受容器 である温点, 冷点の減少にくわえて, 受容器から中枢 神経感覚野に刺激が到達する神経伝達速度および神経 の変化をあげている. 触覚受容器のひとつであるマイ スナー小体の分布密度が加齢と共に減少することが確 認されていることからも, 今回得られた冷 温覚閾値 の加齢変化は温度受容器の減少が一つの要因ではない かと考えられる. Tochihara ら 6) は高齢者における寒冷 暑熱暴露 : 時 の温熱反応から, 高齢者では寒さに対する感受性に遅 延があること, 寒さの自覚のない高齢者では急激な血 圧上昇や体温低下の危険があることを指摘している. 寒さを自覚しにくい要因として, 本研究における皮膚 の温度感受性の低下が考えられ, その結果, 高齢者で は暑さ寒さに対する適切な行動がとりにくくなること が想定される. 高齢者の衣服を設計する際には, この 機能低下をカバーする方法の提案が必要である. また, 日常生活における入浴時の高すぎる湯温設定, 電気あ んか, 電気カーペット, 使い捨てカイロ等による低温 86

皮膚表面における温冷感 湿潤感の部位差を探る やけどなども温度感受性の低下が要因と考えられ, 高 齢者の QOL 低下防止に向けては特に下肢部における 温度感受性の低下を前提とした対策が必要である 6. 沮冷感と湿潤感 暑熱下では温冷感とともに湿潤感が問題となる. 衣 環境学のテキストには, 衣服内湿度が 60% 以上では 蒸れによる不快感を生じるため, 衣服素材には吸湿 吸水 通気性が求められると記述されている. ところ で, 温冷覚にはそれぞれ対応する受容器があり, 前述 のような研究が可能であったが, 湿潤を感知する受容 器は, 解剖学的にも生理学的にも発見されていない. 人間はどのようにして湿潤感を感知しているのか, そ のメカニズムを知ることは衣服設計上重要である. かつて Titchener7> とその弟子達は複雑な触覚体験をす べて温 冷 圧 痛の 4 つの古典的要素皮膚感覚で説 390轟轟g二藍$誤留還ε駆3,. 鱒 ミリ一亀 2 r ~ ら37 c 7 ケヨ幽 h. 駈つコの ノザ, 漣: 一転 幅 ム灘 亘0の聖ぢ タ卓ヴ弔 噸 鉢神弔賛 ζ 卓ヴ 費暫 Stl Pt 鋤唄 ロ.=Time (min.) rk.,,,.,.,.,.,,,!. r r i.,.,.,;....;..3.7. q. 3=O岬20補曲調野鶴0 一煙F=O le 20 so 40 so 臨 : ふλ: ふ ム ムA ムム嘱 A 鋤 A Al 別タ 虫挙虜..蛍タ舷事刈郵タ,..弘..憲払蜘沁25トO lb ab so op so Time ( rnin.) 3 屋冨 2 (a) 2-.eAx 9 身! い h 圃 d 一0 0 20 30 40 50,2-8L;;stpm.r. 呈Time ( rnin.) (b) 図 2 気温一定で変化する湿度条件曝露 : 時の湿潤感 温冷感変化 (a) 乾燥空気吸入による湿潤感の抑制 (b) 明しようとし, 濡れた感じは圧と冷の合成であり, 水 分の有無は必須条件ではない, 流動性は温度と圧の融 合統合であると述べている. しかし, 湿り気について は記述がなく, また湿潤感を定量的に確認した研究は 見当たらない. そこで湿潤感覚の感知メカニズムを探る目的で, 田村と小柴 8) は, まず人工気候室の気温を 25 3 37 それぞれ一定, 相対湿度を 30%~80% に変化さ せた条件下に, 成人女子 24 名を滞在させ, その間の 全身温冷感と全身湿り感を申告してもらった. また気 温 3 下の同様条件下で乾燥空気を吸入させる実験 を追加した. 結果は図 2 が示すように, 全身湿り感 は室温の上昇とともに上昇し, 乾燥空気を吸入させた 場合は湿潤感の上昇抑制が観察された. また別の実験 で小柴と田村は, 直径 3 コ口のカプセル内に相対湿度 0%~90% に調湿された空気を流通させ皮膚に接触さ せたとき, 皮膚面でその湿度の差を感知することがで きるか否かに関する官能検 : 査を, 湿度変動法および一 対比較法を用いて実施した ( 図 3). 被験者は 3 名, 対象部位は 6 部位である. 結果, 湿度差をわずかでも 感知しえたのは手掌のみで, 他の部位では 0% と 90% の湿度差があっても, 一人の被験者も感知しえな かった. さらに小柴と田村 9) は, 皮膚の濡れ感の支配 要因を探る目的で, 人体表面に, 面積の異なる濡れた 濾紙および水温 水量 荷重の異なる濡れた綿メリ ヤス布を接触あるいは移動させた際の濡れ感の変化を 測定し, 濡れ感の最大要因は接触部皮膚の温度と島流 変化であること, 濡れ感の強弱には触覚が関与するこ とを明らかにした. これらの結果を総合すると, 皮膚表面では, 水分そ のものの存在を感知することはできず, 私たちが感じ る湿潤感は, 水分の存在に伴う触感の変化, 皮膚表面 と環境の水蒸気圧差によって生じる水分移動の程度 およびその蒸発潜熱に伴う皮膚の温度変化速度などの Capsqle s Dry air Wet air 催白 Hygro meter J,M し 図 3 Humidity Air Air st Generator 局所湿り感覚の一対比較装置 Oesiccating agen 簡 87

日本官能評価学会誌 Vol. ll No.2 総合感覚であると考えられた. また, 全身の湿潤感に は, 著者の提案する湿り快適指数すなわち人体と環境との間の体熱平衡から要求される蒸発放熱量 (Ereq) と人体からの実際の蒸発放熱量 (Esk) の比 が大きく関与することが示唆された. 7. おわりに 今から 40 年以上前のことになるが, 文化女子大学 への着任を機に, 筆者はそれまで従事していた人体の 解剖学的な構造やこれに適した衣服パターンの研究か ら, 気候に適した機能衣服設計の研究へと方向転換を 余儀なくされた. そこで改めて考えたことは, 他の哺 乳動物と違って人間しか衣服を着ていないのはなぜだ ろう? 人間が裸で過ごせる気候範囲はどの程度で, も し道徳的な配慮がいらないとすると, 各種気候下の衣 服はどのようにあるべきか? 寒いときの保温のツボ, 暑いときの冷却のツボはあるのか? 冬に露出している 顔は寒くないのに衣服で包まれている体幹部が寒いの はなぜか? 等々の疑問であった. 以来, 衣服というより, 人間の温熱生理特性研究を 主要テーマのひとつとして今日に至っているが, 地球 温暖化が急速に進行する現在その対応策としての省 エネルギー型個別空調への要求から, 改めて, 人体表 面の部位別温冷感 湿潤感に関する研究が見直されて いる. 近年の精神物理学や神経生理学の進展は目覚し く, 現在温冷覚に関わる受容器も複数存在することが 明らかにされている. 今後はそれらの知見を視野にさ らなる研究が進められることを願っている. 文献 ) 岩村吉晃 : タッチ 医学書院,7(2003) 2) Dellenbach, K. M.:The temperature spots and end organs, J. Neurophysiol. 39, 402 一 427 (927) 3) 岩村吉晃 : 体性感覚野の階層構造, 科学,53,24-220 (983) 4) 村田成子, 入来正躬 : 老人の体温一皮膚感覚店分 布頻度に及ぼす加齢の影響, 日本老年医学会雑誌,, 57-63 (974) 5) Rein, F. H.:Uber die Topographie der Warmemphindung. Beziehunen zwischen lnnervation und Receptorischen Entorganen. Z. Biol, 82,55-535 (925) 6) 李旭子, 田村照子 : 人体表面の温度点分布 ( 第 報 ) 冷点分布密度の部位差, 人間と生活環境, 2-, 30-36 (995) 7) 田村照子, 李螺子 : 人体表面の温度点分布 ( 第 2 報 ) 温点分布密度の部位差, 人間と生活環境, 2-, 37-42 (995) 8) 李旭子, 田村照子 : ヒトの冷感受性の部位差について, 日本家政学会誌 46-,08-090(995) 9) 岩村吉晃 : タッチ 医学書院 20(2003) 0) 飯野理恵, 田村照子, 小田一之 : 人体の部位別温冷覚閾値計測の試み, 日本生理人類学会誌,4 一特別号 (999) ) 田村照子, 内田幸子, 岩崎房子, 小田一之 : 汎用型温冷覚閾値測定装置の開発と応用, 第 25 町人間一生活環境系シンポジウム,75-78(200) 2) 内田幸子, 田村照子 : 高齢者の皮膚における温度感受性の部位差, 日本家政学会誌 58-9,(2007) 3) Kenshalo, D R : Somesthetic sensitivity in young and elderly humams, Gerontol, 4, 732-742 (986) 4) Stevens JC, Choo KK:Spacial acity of the body surface over the life span, Somatosens Mot Res 3, 53-66 (996) 5) 岩村吉晃 : タッチ 医学書院 20(2003) 6) Tochihara, Y. Ohnaka T. Nagai, Y. Tokuda, T. and Kawashima, Y. : Physiological responses and thermal sensations of the elderly in cold and hot environments./. Them. Biol. 5/6 8, 355-36 (993) 7) 岩村吉晃 : タッチ 医学書院,9(2003) 8) 田村照子, 小柴朋子 : 人体の湿り感覚 (as 一一報 ) 全身の湿り感覚感受性, 繊維製品消費科学,36-, 25-3 (994) 9) 小柴朋子, 田村照子 : 皮膚濡れ感覚の支配要因, 繊維製品消費科学,36-,9-24(995),5-3 (994) 88