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2. アジア諸国の食品市場の特徴と注目カテゴリー 企業へのヒアリングでは乳製品が今後有望なカテゴリーとして挙がった 著しい成長が見込まれているアジア諸国の食品市場において カテゴリー別の市場環境と企業占有率の状況を考察する 本節では 12013 年時点の市場規模が 10 億ドル以上であり 25 年ごとの年率成長率が 2003 年から継続して 加工食品全体の成長率を上回って市場規模が拡大しているカテゴリー の 2 つの条件を満たしている 4 つのカテゴリー (1 常温保存加工食品 2 乳幼児向け加工食品 3 缶詰等保存食品 4 冷凍保存加工食品 ) に 企業へのヒアリングで挙がった5 乳製品 を加えた 5 つのカテゴリーを取り上げる 図表 2-18: アジア地域の加工食品市場規模と年率成長率 (100 万ドル %) 2003 2008 2013 2018(E) 2003-2008 年率成長率 2008-2013 年率成長率 2013-2018 年率成長率 加工食品 23,723 42,338 71,007 106,989 12.3 10.9 8.5 常温保存加工食品 4,229 8,586 15,304 23,627 15.2 12.3 9.1 乳製品 4,024 6,906 11,473 17,121 11.4 10.7 8.3 パン類 3,689 5,930 9,457 13,715 10.0 9.8 7.7 乳幼児向け加工食品 1,760 3,656 6,332 9,691 15.8 11.6 8.9 油類 2,112 3,819 6,239 9,310 12.6 10.3 8.3 麺類 1,913 3,280 5,467 8,584 11.4 10.8 9.4 菓子類 1,824 3,055 4,672 6,543 10.9 8.9 7.0 調味料 1,835 2,922 4,614 6,803 9.7 9.6 8.1 スナック菓子類 1,586 2,677 4,433 6,727 11.0 10.6 8.7 缶詰等保存食品 778 1,401 2,487 3,797 12.5 12.2 8.8 冷凍保存加工食品 666 1,339 2,440 3,900 15.0 12.8 9.8 アイスクリーム 588 918 1,475 2,383 9.3 10.0 10.1 注 1: 網掛けの数値は加工食品全体の平均成長率を超える成長が予想されているカテゴリー 注 2: 予想は Euromonitor International 図表 2-19 19: スーパーマーケットの食パンコーナー ( インドネシア ) 23

(1) 常温保存加工食品 ( 麺類 ) 常温保存加工食品の企業ごとのは 市場規模が大きい麺類市場 (34%) の動 向を受けやすい 麺類市場は圧倒的な 最大手企業が各国に 存在する 麺類市場は 2003 年から 2008 年までの 5 年間で年率 11.4% 2008 年から 2013 年までの 5 年間では年率 10.8% で拡大 また 2018 年にかけても年率 9.4% で拡大を続ける見通し また 麺類市場の各国の企業占有率をみると マレーシアを除いた 5 ヵ国では 40% を超えるを獲得している圧倒的に優位な No.1 企業が存在している また 6 ヵ国共にトップ企業は市場で 2 位以下に倍以上の差をつけている アジア各国の麺類市場では 既に日系企業が大きなを獲得している シンガポールでは日清食品子会社が 46% を超えるを獲得し 他社を圧倒している 同社はインド インドネシア タイ ベトナム フィリピンに拠点を持ち アジア地域の事業拡大を図っている ベトナムではエースコックが 46% を超えるトップを獲得し 2 位以下に大きな差をつけている 図表 2-20 20: 常温保存加工食品市場の企業別占有率 (2013 ベトナム Acecook Co Ltd 45.3 16.8 11.1 5.7 4.5 フィリピン Monde Nissin Corp 43.7 13.9 4.7 3.9 3.0 インド Nestlé SA 25.8 13.0 12.5 6.1 6.0 マレーシア Padiberas Nasional Bhd (BERNAS) 20.6 13.1 9.1 8.2 3.8 インドネシア Indofood Sukses Makmur Tbk PT 19.6 4.0 3.0 2.1 0.8 タイ Saha Pathana Inter Holding Co Ltd (Saha Group) 15.6 7.6 6.8 5.9 5.7 シンガポール Hanwell Holdings Ltd 15.2 15.0 11.2 10.4 8.4 図表 2-21 21: 麺類市場の企業別占有率 (2013 インドネシア Indofood Sukses Makmur Tbk PT 71.8 14.8 2.9 2.7 1.8 インド Nestlé S.A. 60.3 10.7 5.4 3.8 2.7 フィリピン Monde Nissin Corp 59.9 18.5 5.4 2.0 0.2 シンガポール Nissin Foods Holdings Co Ltd 46.8 9.2 8.3 8.2 4.8 ベトナム Acecook Co Ltd 46.6 17.3 11.4 5.8 4.6 タイ Saha Pathana Inter Holding Co Ltd (Saha Group) 46.1 23.0 14.8 5.0 1.9 マレーシア Nestlé S.A. 38.7 17.2 13.6 11.2 6.4 24

図表 2-22 22: 伝統的な小型小売店で販売されるエースコックの商品 ( ベトナム ) 出所 : 大和総研 (2) 乳幼児向け加工食品 乳幼児 子ども向け産 業はビジネスチャン スあり アジア地域では年少人口が将来に向けて増加する見通しである また 中間所得層が増えてくると 子どもの養育に対する消費が増加する傾向にある 食品産業だけではなく 乳幼児向け 子ども向けの産業は アジア地域に大きなビジネスチャンスがあると言えよう 乳幼児向け加工食品の企業ごとの占有率は ネスレやダノンなど 欧州の企業がトップを獲得している 特にネスレはユーロモニターが調査したアジア 6 ヵ国全ての国において 占有率上位 5 位以内にランクインしている 現地でのヒアリングでは ネスレが外資系企業であると認識している消費者は少ないとの声も聞かれた 各国共に少数の大手 企業が市場を席巻し ている インド市場ではネスレが圧倒的な占有率を獲得 フィリピンではネスレと Mead Johnson Nutrition 社の 2 社で 9 割以上のを獲得する寡占市場となっている また タイ市場はネスレ ダノン Mead Johnson Nutrition 社の上位 3 社合計のが 90% を超え 3 社寡占状態にある マレーシア市場でも上位 5 社で 9 割を超える占有率となっている このように乳幼児向け加工食品市場では 少数の大手企業が圧倒的なを獲得していることが特徴である 図表 2-23 23: 乳幼児向け加工食品市場の企業別占有率 (2013 インド Nestlé S.A. 74.4 6.9 6.2 3.0 2.2 フィリピン Nestlé S.A. 47.5 43.3 3.9 1.2 - シンガポール Abbott Laboratories Inc 39.8 15.9 14.5 10.6 9.6 タイ Nestlé S.A. 38.3 31.9 20.9 2.2 1.9 マレーシア Danone 27.6 27.3 15.5 13.2 7.7 インドネシア Danone 27.3 27.0 13.1 11.7 6.1 ベトナム Vietnam Dairy Products JSC (Vinamilk) 26.8 22.0 13.7 12.5 11.1 25

図表 2-24 24: 粉ミルク 乳製品売場の様子 ( ベトナム フィリピン ) (3) 缶詰等保存食品 他のカテゴリーと比 較して参入企業数が 多い 企業別のでは Denis Freres SA 社 ( スイス ) がマレーシア シンガポール 市場でトップであるが 占有率は 20% 未満であり 絶対的優位にあるとは言い 難い また フィリピン インド市場では地場企業がトップを獲得している 缶詰は常温輸送 常温保存が可能で 賞味期限も長く 滅菌等の処理工程も比較的煩雑ではない 参入企業が多く 1 位 ~3 位までの合計占有率が他のカテゴリーと比較して低く 競争が起こっている 原料別の缶詰市場規模は 魚貝類 精肉加工 果物の順に大きく この 3 つのカテゴリーで全体の 85% を占めている フィリピンの缶詰市場で最大のを持つ Century Canning Corp 社の代表的な商品はツナ缶であり 同社はフィリピンの魚貝類缶詰市場において 50% を超える占有率を獲得している 図表 2-25 25: 缶詰等保存食品市場の企業別占有率 (2013 ベトナム Royal Foods Co Ltd 30.2 17.9 15.3 6.7 4.6 タイ Hi-Q Food Products Co Ltd 24.3 22.7 10.6 9.4 5.2 フィリピン Century Canning Corp 22.8 11.3 10.5 8.2 8.0 マレーシア Denis Frères SA 19.3 8.6 7.6 5.2 5.2 シンガポール Denis Frères SA 18.0 14.6 10.5 9.3 4.9 インドネシア Heinz Co, HJ 16.5 13.2 8.7 7.9 7.7 インド Oudh Sugar Mills Ltd, The 9.5 9.0 8.8 6.5 5.0 26

図表 2-26 26: 原料別缶詰等保存食品市場規模の割合 (2013 調理済食品 6% 野菜 5% その他 4% 果物 13% 2013 年市場規模 (6 ヵ国合計 ) 25.8 億ドル 魚貝類 46% 精肉加工 26% 図表 2-27 27: スーパーマーケットの商品棚に並ぶ缶詰 ( フィリピン ) (4) 冷凍保存加工食品 販路 流通網 輸送手 段を併せ持つ企業が 上位に並ぶ 冷凍保存加工食品市場は 2003 年から 2013 年までの年率成長率が 10% を超え 著 しい成長市場であるが 2018 年にかけても 9% を超える年率成長率を維持する見込み である 企業ごとのを国別にみると インドネシア タイ フィリピンではトップ企業が 30% 以上の占有率を獲得している また 自社で流通網を持ち 小売業も併せて行っている企業が上位に集まっている アジア地域では冷凍輸送の浸透も遅れており 冷凍加工食品業を営むためには 食品加工技術と併せて販路と流通網 輸送手段を確保する必要があろう 27

図表 2-28: 冷凍保存加工食品市場の企業別占有率 (2013 インドネシア Charoen Pokphand Group 36.5 31.2 16.9 5.7 3.0 タイ Charoen Pokphand Group 34.2 15.8 13.8 12.2 2.5 フィリピン San Miguel Corp 31.9 11.0 6.4 4.2 3.6 インド National Dairy Development Board 22.4 16.6 8.9 8.7 7.3 ベトナム Halong Canned Food JSC 20.5 18.6 13.3 11.4 10.5 マレーシア KFC Holdings Bhd 18.6 17.4 8.0 4.0 3.8 シンガポール QAF Ltd 9.2 7.4 7.3 6.3 6.0 図表 2-29 29: スーパーマーケットで販売される冷凍保存加工食品 ( フィリピン ) (5) 乳製品 チルド物流の浸透が 今後の市場規模動向 に影響する 企業へのヒアリングでは 今後注目されるカテゴリーとして乳製品が複数の企業か ら挙げられた 健康志向の高まりが予想されていることや 常温で輸送可能な乳製品 については 既に広く浸透していることなどが背景として挙げられている しかし ユーロモニターによる乳製品の市場成長率予想は 他のカテゴリーと比較してやや劣る結果となっている アジア地域では 乳牛の飼育が可能な地域がごくわずかであり 原材料を安価で調達することが難しい また チルド輸送手段が限られており 製造工場においても小売店においても繊細な温度管理が必要となるなど より多くの消費者が購入できる段階となるにはしばらく時間がかかるであろう 28