06 吉成主税(論文)

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7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

ICTを軸にした小中連携

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

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第 5 学年 社会科学習指導案 1 単元名自動車をつくる工業 2 目標 我が国の自動車工業の様子に関心を持って意欲的に調べ, 働く人々の工夫や努力によって国民生活を支える我が国の工業生産の役割や発展について考えようとしている ( 社会的事象への関心 意欲 態度 ) 我が国の自動車工業について調べた事

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

上に食に関する指導の充実が求められている 食環境の乱れが社会的課題とっている今日 中学生が食生活の自立を目指した学習をすることは大切なことであるので 本時は 自分や家族の食生活の中で見付けた問題点の改善に自主的に取り組むことができるように 指導を進めることにした 指導に当たっては これまでの学習を踏

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

Microsoft Word - 小学校第6学年国語科「鳥獣戯画を読む」

子葉と本葉に注目すると植物の成長の変化を見ることができるという見方や, 植物は 葉 茎 根 からできていて, それらからできているものが植物であるという見方ができるようにしていく また, 学んだことを生かして科学的なものの見方を育てるために, 生活の中で口にしている野菜も取り上げて観察する活動を取り

けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

6年 ゆで卵を取り出そう

解答類型

(Microsoft Word - 201\214\366\212J\216\366\213\3061\224N\211\271.docx)

小学校理科の観察,実験の手引き 第3学年A(1) 物と重さ

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

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国語科学習指導案様式(案)

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エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

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4. 題材の評価規準 題材の評価規準 については, B 日常の食事と調理の基礎 (2),(3), D 身近な消費生活 と環境 (1) の 評価規準に盛り込むべき事項 及び 評価規準の設定例 を参考に設定して いる 家庭生活への関心 意欲 態度 お弁当作りに関心をもち, おか 生活を創意工夫する能力

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平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

H30全国HP

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(2) 授業者が学びの見通しを持つ ( 学習目標の明確化 ) 問題解決的な学習に取り組む際, どのような場面で, どのようにして, どのような力を子どもたちに付けるのか, 単元や授業における目標を明確にして学びを見通しておくことが大切です 目標が不明確であると, 作業や体験などの活動そのものに, 子

第 2 学年 * 組保健体育科 ( 保健分野 ) 学習指導案 1 単元名生涯の各段階における健康 ( イ ) 結婚生活と健康 指導者間中大介 2 単元の目標 生涯の各段階における健康について, 課題の解決に向けての話し合いや模擬授業, ディベート形式のディスカッションなどの学習活動に意欲的に取り組む

の 問を提示して定着度を確認していく 1 分けて計算するやり方 70 = =216 2 =6 2 筆算で計算する方法 題材の指導計画 ( 全 10 時間扱い ) ⑴ ⑵ ⑶ 何十 何百 1 位数の計算 1 時間 2 位数 1 位数

2 単元の目標 廿日市市 についての魅力を目的意識や相手意識を明確にして地域内外に発信することができる 自分たちの住む 廿日市市 に愛着をもつことができる 3 単元の評価規準 学習方法 自分自身 他者や社会 課題発見力 思考力 判断力 表現力 主体性 自らへの自信 対象と積極的にかかわる中で, 課題

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

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○ ○ 科 学 習 指 導 案

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国語 A では, 領域別, 観点別, 問題形式別に見て, どの区分においても全国平均を上回り, 高い正答率でした しかし, 設問別でみると全国および新潟県平均正答率を下回った設問が, 15 問中 1 問, 新潟県の平均正答率を下回った設問は,15 問中 1 問ありました 設問の概要関屋小新潟県全国

学習指導要領の趣旨を実現する授業づくりのポイント

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

第4章 道徳

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

< 自己と 事象 とのつながり> 題材との出会いの場面において, やってみたいという思いや, どのようになっているのかなどの知的欲求を刺激するように, 実際の小物や写真などを提示し, 自分の生活を豊かにする楽しい小物について具体的なイメージを完成予想図として描き表していく そうすることで, 事象 (

とで児童に活動の見通しを持たせ, 自分で課題を立て情報を集め整理し, 発表する等に取り組めるようにしていきたい 調査計画の場面では, 目的に照らしてどのような調査をしていくことがよいのか児童にしっかりと考えさせたい 例えば, データはどう集めたらよいのか, アンケートを実施する場合には, 誰にアンケ

第 4 学年算数科学習指導案 平成 23 年 10 月 17 日 ( 月 ) 授業者川口雄 1 単元名 面積 2 児童の実態中条小学校の4 年生 (36 名 ) では算数において習熟度別学習を行っている 今回授業を行うのは算数が得意な どんどんコース の26 名である 課題に対して意欲的に取り組むこ

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

実践 報告書テンプレート

平成 30 年 1 月平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果と改善の方向 青森市立大野小学校 1 調査実施日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) 2 実施児童数第 6 学年 92 人 3 平均正答率 (%) 調 査 教 科 本 校 本 県 全 国 全国との差 国語 A( 主として知識

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

○数学科 2年 連立方程式

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平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

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知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

愛媛県学力向上5か年計画

第 6 学年 1 組理科学習指導案単元名 : 瀬野川の生き物のつながり 生き物のくらしと環境 男子 18 名女子 21 名計 39 名 単元について 指導者澄川和生 単元観本単元は, 小学校学習指導要領解説理科編第 6 学年 内容 B(3) の 動物や植物の生活を観察したり, 資料を活用したりして調

平成 30 年度 品川区学力定着度調査 の結果から明らかになった課題と学力向上に向けた取組 ( 国語 ) 1. 国語の定着状況についての概要 どの学年もほとんどすべての項目において 目標値を上回った 昨年度から取り組んできた 文章を書き表す際の 言葉の正しい使い方の指導 が 言葉についての知識 理解

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

指導方法等の改善計画について

2年生学級活動(性に関する指導)指導案

(6) 調査結果の取扱いに関する配慮事項調査結果については 調査の目的を達成するため 自らの教育及び教育施策の改善 各児童生徒の全般的な学習状況の改善等につなげることが重要であることに留意し 適切に取り扱うものとする 調査結果の公表に関しては 教育委員会や学校が 保護者や地域住民に対して説明責任を果

た, 導入で扱うイメージキャラクターについて, デザインやネーミングの意図, 理由について疑問や関心を持つことにより, より北広島町に興味を持つことが可能となる その他, 調べる際に新聞記事を利用することにより, 記事をスクラップすることができる 記録性 に優れ, 疑問を解決するための手立て, 情報

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

3. 単元目標 自の育てている野菜の変化の様子を観察したり 地域の人に話しかけたりしながら すすんで課題を解決することができる ( 関心 意欲 態度 ) 野菜の生長の様子や 地域のお店の様子について気付いたことを絵や文章などにかき 伝えることができる ( 思考 表現 ) お店の人にインタビューしたり

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今年度の校内研究について.HP

Taro-4年 総合 指導案(最終)

第4学年理科学習指導案

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理科学習指導案

Microsoft Word - ④「図形の拡大と縮小」指導案

第 3 学年算数科学習指導案 日時対象学校名授業者会場 平成 27 年 7 月 8 日 ( 水 )5 校時 13:40~14:25 第 3 学年均等割クラス 19 名町田市立町田第六小学校 2 階 3 年 1 組教室 1 単元名 かけ算の筆算 ( 学校図書 みんなと学ぶ小学校算数 3 年上 ) 2

できるようにする 野菜を学年園やプランターで栽培する計画を立てさせる際には, 平成 27 年度全国学力 学習状況調査 2(5) に取り組ませ, 前学年までに学習した植物の成長にかかわる知識や経験も活用して考える必要があることに気付かせる 実際に野菜を育てる活動に取り組ませることにより, 知識や経験を

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4 本単元と情報リテラシーの関わり 課題設定担任による 説明会におけるデモンストレーションを見ることを通して 本単元を貫く言語活動としての これぞ和の文化! おすすめの 和の文化 を調べて説明会を開こう を知り 見通しを持たせ学校司書による関連図書紹介を通して 和の文化への関心を高め 進んで調べよう

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第 4 学年算数科指導案 平成 28 年 11 月 2 日 ( 水 ) 第 5 校時場所 4 年 2 組男子 22 名女子 10 名指導者垣見遥 ともなって変わる量 思考力 判断力 表現力の育成 ~ 児童の考えを引きだす算数的活動の工夫 ~ 1 単元名 ともなって変わる量 2 単元の目標 ともなって

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(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

いろいろな衣装を知ろう

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児童の主体的 計画的に学ぶ力を育てるキャリア教育モデル - 教科の学習と日常生活とをつなぐ取組 - 吉成 主税 計画づくりの必要性に気付く, 自分のやりたいことを考え, 進んで取り組む という中学年児童のキャリア発達を促すために, 本研究では教育課程の大部分を占める各教科に着目し, 教科の学習と日常生活とをつなぐキャリア教育モデルを作成した 児童一人一人が設定した 自分の問い を基にして, 学校と家庭において 問題解決 の活動を一体化して進める本モデルの活用によって, 児童が教科の学習と日常生活とのつながりを実感できた そして, 様々な事象へと興味 関心を広げて 自分の問い を意欲的に見付け, 解決へ向けて進んで取り組もうとする意識が高まった キーワード : 教科の学習と日常生活とのつながり, 問題解決 の活動, 自分の問い Ⅰ 主題設定の理由 現在, 一人一人の社会的 職業的自立に向け, 校種間を貫いて基礎的 汎用的能力を育てるキャリ ア教育の充実が求められている 秋田県では, 第 2 期あきたの教育振興に関する基本計画 に ふ るさとを愛し, 社会を支える自覚と高い志にあふれる人づくり を目指す姿として掲げ, 学校の教育 活動全体を通じて, 発達の段階に応じたキャリア教育を行うことの重要性を示している キャリア教育を重点として推進している小学校は多いが, 総合的な学習の時間を中心とした取組は 充実してきているものの, 教育課程の大部分を占める各教科での実践が十分であるとは言い難い 教 育活動全体を通じて児童のキャリア発達を促すためには, 教師が, 目指す児童の姿を明確にし, 各教 科で, 基礎的 汎用的能力を身に付けさせる学習活動を推進していく必要があると考える 中学年のキャリア発達の特徴として, 計画 づくりの必要性に気付き, 作業の手順が分か る, 自分のやりたいこと, よいと思うことな どを考え, 進んで取り組む が挙げられる す なわち, 課題対応能力に関わる主体的 計画的 に学ぶ力を身に付ける段階であると言える し かし, 研究協力校である A 小学校の中学年の児 童を対象としたキャリア教育アンケートの結果 ( 図 1) によると, 課題対応能力に関わる, 項 目 7 分からないことを進んで調べたり聞いた りすること において, いつもできる が 21 % にとどまり, まあまあできる を合わせて も 47% であった また, 項目 9 見通しをもち 図 1 キャリア教育アンケート ( 平成 27 年 5 月 ) の結果 いつもできる まあまあできる と回答した児童の割合 計画的に進めたり改善したりすること についても, いつもできる が 24%, まあまあできる を 合わせても 64% と高くはない これは, 特に各教科において, 課題対応能力の育成と結び付けた指導 をあまり意識してこなかったことにより, 学習が日常生活と関連していることに気付いたり, 自分の こととして学習を捉えたりする場の設定が, 十分とは言えないことによるものと思われる そこで, 教科の学習と日常生活とのつながりを実感できるキャリア教育モデルを作成し, 活用する ことで, 主体的 計画的に学んでいく力が育つのではないかと考え, 本主題を設定した

Ⅱ 研究仮説 教科の学習と日常生活とのつながりを実感できるキャリア教育モデルを作成し 活用することによ り 児童の主体的 計画的に学ぶ力を育てることができるであろう Ⅲ 研究内容 1 研究の構想 (1) 主体的 計画的に学ぶ力の向上が期待できる単元 題材の整理 教科の学習の中で児童の主体的 計画的に学ぶ力 表1 主体的 計画的に学ぶ力の向上が期待 の育成を図るために まず A小学校第4学年の年 できる単元 題材数 第4学年 間指導計画を基に 全ての単元 題材をキャリア教 図画 国語 社会 算数 理科 音楽 体育 育の視点から捉え直した 児童自身で 課題設定す 工作 る 計画を立てる 必要な情報を収集 選択す 7 8 3 10 5 5 7 る 等の学習活動が単元 題材に設定されているか どうかを基準にして 主体的 計画的に学ぶ力の向 算数は問題解決の場面を設定し 全単元で展開 している 上が期待できる単元 題材の数を整理した 表1 これにより 社会科や理科等は 問題解決 の活動を通して主体的 計画的に学ぶ力の向上が期待 できる単元が多いことが明らかになった そこで 本研究では 扱う事象が児童の身近にあり 日常生活の中で自分との関わりとして捉えや すい教科である理科を取り上げ 児童が 問題解決 の活動に取り組むことで 教科の学習と日常生 活とのつながりを実感させることを構想した (2) キャリア教育モデルの作成 児童が 学校で学んでいることと自分の日常生 活とのつながりに気付くことが 目標に向かって 努力したり 進んで生活や勉強の仕方を工夫した りする主体的 計画的な学びの第一歩になると考 える 学校での 問題解決 の活動によって生ま れた 自分の問い を につなげ 問題解決 の活動を繰り返していく その際 授業の中で 教科のねらいに関わることだけでは なく 学んだ内容がどのような場面とつながって 図2 キャリア教育モデル いるのかも考えさせることで 学習が日常生活と つながっていることを理解できるようにする また 一人一人が家庭で学習した内容や振り返りにつ いて教室に掲示することで共有化を図り 学校での次の 問題解決 の活動につなげるようにする このように 学校での学びとを一体化させたキャリア教育モデル 図2 を作成した (3) キャリア教育モデルの活用 検証対象とした理科では 自ら事象と出会って問題を見いだし 予想をもって観察 実験を行い 考察する という 問題解決 の活動を展開する 授業では 事象との出会わせ方を工夫し 児童が日常生活とのつながりに気付けるようにして 自 分の問い を引き出す その問いについて 家庭において調査や観察など 問題解決 の活動を進め 取り組んだ結果を持ち寄る 更に その結果について授業の中で友達と話し合い 既習事項や友達の 意見から考えを深める このようなサイクルを繰り返すことで 自分の問い を設定し 自らの問 題意識に支えられた 主体的で 実感を伴った学習が可能になると考える 具体的な手立てとして 児童自身が 常に主体的 計画的に取り組むことを意識して学習を進めら れるように 学習シートには 問題解決 の段階を記入し その段階で身に付く基礎的 汎用的能力

かかわる力 見つめる力 もとめる力 つながる力 とした も明記する また 負担感をも たず一人で家庭学習を進めやすいように 授業で使う学習シートと同じ様式の家庭学習シートを用い じっくりと自分の計画で進められるようにする このようにして 児童一人一人の興味 関心に基づき 進んで調べたい 自分の問い をもつこと によって 家庭においても主体的な学習が展開される キャリア教育モデルが 児童が学校での学び で見いだした 自分の問い について 家庭においても自分なりに広げたり深めたりしながら 目標 をもち適切な計画を立て解決を目指すものになるように 活用を試みた 2 検証方法 (1) キャリア教育アンケート 分からないことを進んで調べたり聞いたりすること 見通しをもち計画的に進めたり改善した りすること の項目 また 理科における学習と日常生活とのつながりの気付きについて 児童の変 容を見取る 具体的には 検証前 5月 検証1後 7月 検証2後 11月 に実施する (2) 学習シート 家庭学習シート 検証授業で使用した学習シートや家庭学習シートの内容を キャリア教育の視点から分析し 考察 する 問題解決 の活動における 広がったり深まったりした 自分の問い 既習事項や友達の意 見を参考にした予想 調べる方法 振り返りに記述される生活とのつながり等 主体的 計画的に学 ぶ力に関わる記述内容を見取る Ⅳ 検証と考察 検証1 2ともに第4学年22名の児童を対象に行った 1 検証1 7月実施 単元名 夏の星 総時数2時間 本単元では 自力で問いを設定できることに主 眼をおいてキャリア教育モデルを活用した 図3 本単元のねらいは 星に親しみをもつこと 星 の明るさや色に違いがあることを理解すること である 夜空が学習対象になり 教室で実感を伴 った学習が難しいこと 夜の活動になることから 家庭学習の進め方が重要になる単元である 学校での学び 第1時 第1時では 映像資料の提示 家庭用プラネタ リウムの鑑賞といった視聴覚教材を用いた疑似体 図3 検証1におけるキャリア教育モデル 験を通して興味をもたせ 自分の問い を設定さ せた 表2 映像には 七夕の物語やお祭りの話 表2 児童が設定した 自分の問い 複数回答 等を盛り込み 星と生活とのつながりに触れるこ とで児童が星を身近に感じられるようにした ま た 自分の問い 一覧や学習方法等 全体で共有 したい内容を教室に掲示し 児童が一人で進める ことになる家庭での 問題解決 の活動の参考に なるようにした 多くの児童が 星の観察の経験がなく 実際に星空を見てみたいという声が多かったため 星の観 察は全員が共通の活動としてそれぞれの家庭で取り組むことにした また 児童自身が設定した 自 分の問い についても その解決を目指して活動を行うようにした 観察においては 学級通信を活 用し 保護者へ協力を依頼した

学校での学び 第2時 第2時は 星の観察結果と 児童自身が主体的に設定した 自分の問い について調べ解決した結 果を 報告し合うようにした 本単元で児童は 設定した 自分の問い について意欲的に調べ それぞれの視点で主体的に家庭 学習を進めることができた 中には 星が光る理由は 水素ガスをエネルギーにしているから と 記述した児童もおり そこから次の問いである 水素ガスがなくなったらどうなるのか につながり 更に調べる計画を立てる といった主体的 計画的な学びが深まっていく姿も見られた 振り返りに は 昔の人は 暗い夜道でも迷わないように星座をつくった 星を見ることは心が豊かになる 等 星をより身近に感じている記述もあり 口頭や教室掲示で紹介し全体で共有した 2 検証2 11月実施 単元名 物の体積と温度 総時数8時間 本単元では 自分の問い の設定に加え 問 題に対する予想と実験方法を考えること 身の回 りにある 体積と温度 の関係を見付けることを 主眼に キャリア教育モデルを活用した 図4 本単元のねらいは 物を温めたり 冷やしたり すると体積が変化することを実験を通して理解す ること である 本単元は 前単元 閉じ込めた 空気と水 での既習事項を活用したり 自分で考 えた方法で実験を行ったりすることで 実感を伴 って理解することができる また 温度計等もこ 図4 検証2におけるキャリア教育モデル の仕組みを利用していることを知ることで日常生 活とのつながりも実感できる単元である 表3 振り返りの内訳 複数記述 学校での学び 第1時 第1時では ペットボトルを掌で温めると石 けん水の膜が膨らむ 事象を提示し なぜ膨らむ のかの予想を話し合わせた 第2時では一人一人 が考えた方法で実験を行うことを伝え 計画を立 てさせた 児童が自分の予想に基づいてペットボトルの容 器等を用いた実験計画を整理し 必要な材料を準 備させた 学校での学び 第2 3時 第2時は 一人一人の計画に沿った方法で実験 した 潰しすぎて膨らみが観察できなかったり 容器と栓の摩擦が大きく飛び出さなかったりする等 自分の予想通りにいかない実験もあったが うまくいかない理由を考え 修正するという点では自分 で方法を考えての実験は有効だった 多くの児童の振り返り 表3 から 第3時の 空気を冷やす とどうなるのか という学習課題が設定された さらに 空気以外はどうなるのか という 自分 の問い も出され 児童は第4時 第5時の見通しをもつことができた 第3時までの学びで 水は温めたり冷やしたりするとどうなるのか という学習課題が設定され たのを受けて 水の体積変化について考えさせた 児童に 空気の共通実験を生かし 同様の方法が 水の実験においても有効であるという見通しをもたせ 次時の実験方法について整理させた 以下 学校での学びは 第4時 第5時は水について 第6時 第7時は金属について進めた 家 庭での学びとしては この性質が身の回りで活用されていないか調査することを促した 第8時は

体積と温度の関係 について身の回りで調査したことを紹介し合う時間として設定した 児童が見 付けた温度計や電線のたるみ等の事象を紹介し合うことで 教科の学習と日常生活とのつながりを実 感できるようにした 3 考察 検証1 検証2の後にキャリア教育アンケートを行った 図 5 5月実施の結果と比較すると 検証2後は 分からな いことを進んで調べたり聞いたりすること という項目にお いて まあまあできる と いつでもできる を合わせる と15人から19人に増加している 見通しをもち計画的に進 めたり改善したりすること の項目でも まあまあできる と いつでもできる を合わせると18人から21人に増加して いる 一方 あまり効果が表れなかった児童や下がってしま った児童が 分からないことを進んで調べたり聞いたりす ること において3人 見通しをもち計画的に進めたり改 善したりすること において1人見られた 面談形式で理由 図5 キャリア教育アンケートの結果 いつもできる まあまあできる を確認すると 前よりは自分で問いを設定して取り組める と回答した児童数 ようになったが 今 それ以上にはやれるようになっていな い 自分で問いを設定して取り組めていたと思っていたが 友達の取組を見て自分が不十分だと気 付いた 自分で問いをもって取り組んでいるが 調べたことを上手に伝える方法が分からない と いう それぞれ前向きな理由だった 同時に 理科の学習が生活と 表4 理科の学習が生活とつながると思うこと 複数回答 つながると思うこと 表4 も 分析した 検証前は 一つも挙げ られない児童が7人いたが 検証 1の後は 無回答がなくなった また 動植物の育て方 のよう な生活と直結する 学習内容 に 関わる記述が中心であったが そ れに加えて 学習態度 や 学 習方法 を挙げる児童が増え 将 来の仕事 に触れる児童も見られ た さらに 検証2の後は 予 想をもてる から 予想を修正できる という表現に変わる等 気付きの変容が感じられた これら の結果は 教科の学習と日常生活とのつながり 更に一部の児童は将来とのつながりを実感できたた めではないかと考えられる 検証前の家庭学習の実態は 進んで日記を書く児童がいたものの 他は漢字練習や計算練習といっ た内容だった 検証1で理科を取り上げてキャリア教育モデルを活用し 問題解決 の活動に慣れ てきた児童は 家庭において進んで 自分の問い の解決に向けて追究できるようになってきた そ こで 理科以外の教科で 自分の問い を設定して追究する より主体的な家庭学習への取組につい ても投げかけた この取組を始めた当初は 慣れてきた理科に関する取組や 算数を問題解決的に進 める取組が多かった しかし 体育の授業でマット運動が上手にできなかった児童が その解決のた めに家庭において取り組んできた内容を教室に掲示して紹介したことをきっかけに 学びの範囲を広 げ 友達との言葉遣い や 挨拶が他人に与える影響 等 学校での学びと一体化させて様々な内 容について取り組む姿が見られるようになってきた 検証2後 家庭学習への取組状況を分類した結果 図6 理科で 自分の問い を生かした学習

を継続したり 他教科において授業でうまくいかなかった内容等か ら生まれた 自分の問い を基にして主体的に取り組んだりしてい ることが分かった 中には特別活動や道徳に関わる内容について考 え 友達にアンケートをとって調査した児童の姿も見られた 最初 は 何をどうすればよいか分からなかった児童も 教室に掲示され る友達の取組を参考にして 少しずつではあるが 自分の問い を 設定し 解決に向けて取り組むことができるようになってきた また 家庭学習における振り返りの記述と家庭学習への取組につ いての意識調査の結果を分析した 表5 意欲的な記述が多く 主体的な取組ができていることが分かった 回答の中には 自力解 図6 家庭学習と一体化して取り 組んだ教科 決の力を実感している内容や目標に向かって頑張りたいといった内 11月の家庭学習シートの分析 容の記述が見られた しかし 進んで取り組 みたいと思っているものの 問題解決 の 表5 検証2後の家庭学習の意識 自由記述の分析 活動のいずれかの段階で難しさを感じ 主体 的な活動を展開できずに悩んでいる児童も19 いる実態が明らかになった Ⅴ 研究のまとめ 1 キャリア教育モデルについて キャリア教育モデルを活用したことで 児童は教科における学習と日常生活がつ ながる場面を意識的に考えられるように なった 様々な事象への興味 関心が広がったことで 自分のやりたいことを考え 進んで取り 組もうとする意識が高まった 本研究では課題対応能力に関わる児童の変容を目指して進めてきたが キャリア教育アンケート の結果を見ると 人間関係形成 社会形成能力に関わる 分かりやすく伝えようとすること の 項目についても いつもできる まあまあできる と回答した児童が増加していた キャリア 教育モデルの活用が 課題対応能力以外の基礎的 汎用的能力の向上にも有効であったことを詳 細に確認する必要がある 2 問題解決 の活動について 本研究ではキャリア教育モデルの中で 身近な事象を扱う理科を取り上げたことが 自分の問 い を設定するために有効であった そして 自分の問い を設定する場を大切にすることが 問題解決 の活動への意欲につながった また 友達の取組を教室掲示等で紹介することで 新たに日常生活とのつながりに気付いたり の参考にしたりして 一人でも取り組 める児童が多くなった 今後は 主体的 計画的に学ぶ力の向上が期待できる他の教科においてもキャリア教育モデルが 有効なのかを検証する必要がある 参考文献 国立教育政策研究所生徒指導 進路指導研究センター(2013) キャリア発達にかかわる諸能力の育成 に関する調査研究報告書 実業之日本社 藤田晃之(2014) キャリア教育基礎論 実業之日本社 谷川直也(2014)教科で取り組むキャリア教育に関する研究 小学校における理科教育とキャリア教育 http://www.shotoku.ac.jp/data/facilities/library/publication/kyoiku53-9.pdf

児童の主体的 計画的に学ぶ力を育てるキャリア教育モデル - 教科の学習と日常生活とをつなぐ取組 - 研究内容 学校 主体的 計画的に学ぶ児童 学校 疑似体験 観察 実験等 自分の問い の設定 教科の学習 どうしてこうなるのかな? 学校での学び 問題解決 の活動 生活の中で確かめてみよう! 問題解決 の活動 日常生活 学校 家庭 教室掲示での共有 キャリア教育モデル 授業と共通の家庭学習シート 実際の観察 計画の整理 身の回りの事象調査等 課題対応能力の不足 小学校中学年 進んで調べる力 計画的に進める力 教科におけるキャリア教育に焦点 課題対応能力と結び付けた指導が不十分 日常生活とのつながりに気付かせる場の設定 研究結果 キャリア教育アンケート結果 教科の学習が生活とつながると思うこと 学習態度 学習方法 将来の仕事 4 人 7 人 2 人 12 人 0 人 2 人 色々な教科で問題を見付けてやりたい 自分で問題を作ったり, まとめたり考えたりするのが好き 一人で解決できるようになってきた 無回答 7 人 0 人 科学者になって研究をしてみたい 課題対応能力が身に付き, 主体的 計画的に学ぶ児童が増加 主体的 計画的に学ぶ力の向上が期待できる他の教科での検証が必要