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10Gbps 超の高速信号測定を目的とした 30GHz 80GS/s のリアルタイム オシロスコープ The world s fastest 30GHz, 80GS/s High bandwidth real-time oscilloscope for over 10Gbps signal validation 辻嘉樹 鳥越大 ピーター J パパライキス ケン ジョンソン Yoshi Tsuji Hiro Torigoe Peter J Pupalaikis Ken Johnson レクロイ ジャパン株式会社 米国レクロイ社 LeCroy Japan Corporation LeCroy Corporation あらまし : 半導体の性能向上に伴い 近年では 5Gbps/10Gbps クラスの高速シリアル信号に対応する機器開発が進んでいる 米国レクロイ社は 2009 年 1 月に 10Gbps 超の高速信号測定をターゲットとした 2009 年 1 月現在において世界最速の 30GHz/80GS/s の超広帯域リアルタイム オシロスコープ SDA8Zi シリーズを発表した このオシロスコープの特徴は 30GHz という世界最広帯域のアナログ帯域幅もさることながら 高速信号測定に際して最も重要な振幅 位相特性と 伝送路 イコライザ特性のシミュレーション機能に大きな特徴がある 本稿では高速信号測定の課題に対する SDA8Zi の有用性を示す キーワード : オシロスコープ シリアルデータ 10Gbps イコライザ FFE DFE CTLE S パラメータ ミュレーション ディエンベディッド Keywords: Oscilloscope, Serial data, 10Gbps, Equalizer, FFE, DFE, CTLE, S-Parameter, Simulation, De-Embedded 1 概要 PCI-Express3.0 10G Ethernet などの高速シリアルインタフェースの登場により 測定器であるリアルタイム オシロスコープに求められる周波数帯域が 20GHz~25GHz を超えるものになってきている また これらの信号の測定は 測定系のテスト フィクスチャ ケーブルの影響を大きく受けるため これらの影響を取り除くいわゆるディ エンベディッド機能への対応や FFE/DFE/CTLE などのイコライザをシミュレーションする機能が求められてきており オシロスコープの広帯域化と同時に 各種シミュレーション機能も不可欠となってきている これらのニーズに応えるべく 米国レクロイ社は世界最高の (2009 年 1 月現在 ) 30GHz のアナログ周波数帯域と 80GS/s の世界最速 (2009 年 1 月現在 ) 高速 A/D システムと最長 512Mpts のロングメモリを搭載したリアルタイム オシロスコープの SDA8Zi シリーズ ( 図 1 参照 ) を発表した 図 1 :SDA8Zi 外観図 このリアルタイム オシロスコープは 10Gbps 超の高速デジタル信号や UWB ミリ波帯域のレーダの測定などをターゲットとしたオシロスコープで 以下の5つの特徴を有している 最高 30GHz のアナログ周波数帯域 (4GHz~30GHz のラインナップ ) 周波数アップグレードオプションの設定 伝送路 イコライザ特性の付加 除去機能 (EYE Dr II によるシミュレーション機能 ) 用途に応じて最適な特性を選べる 3 つの振幅 位相特性 圧倒的な高レスポンス & スループット 2 真の 30GHz を実現した DBI テクノロジ 従来の広帯域オシロスコープの問題点として いわゆる DSP ブーストの問題が挙げられる これは本来の周波数特性以上の周波数特性を実現するために 信号処理によりデジタル的に高域の周波数成分をブーストするもので この DSP ブーストは S/N の劣化や 高調波歪の増大を招くため 良好な測定結果を得ることができないが それ以外の方法で広帯域を実現する方法がなく 妥協せざるを得なかった これに対して レクロイ社の SDA8Zi シリーズは DBI(Digital Bandwidth Interleave) というユニー

クなテクノロジを用いて 30GHz という広い周波数帯域と妥協のない良好な信号品質を実現している 図 2 に DBI の基本ブロック図を示す 図 2:DBI 基本ブロック DBI とはその名のとおり 周波数帯域を拡張する技術で 測定信号を 2 つないし 3 つの周波数帯に分割し アナログ フロントエンドを超える周波数帯の信号をダウンコンバートして A/D コンバータでサンプリングした後 データをデジタル アップコンバートする技術で アナログ フロントエンドの上限周波数の 2~3 倍まで拡張した周波数帯域を実現することができるレクロイ独自のテクノロジである ( 特許出願済み ) オシロスコープで使用されているアナログ フロントエンドの最高周波数は 半導体のプロセス開発に制約を受ける ( 同等のプロセスを用いる他社のアナログ フロントエンドは ハード上の帯域が16GHz と SDA8Zi と同じ ) が この DBI テクノロジを利用することにより 周波数特性におけるムーアの法則を超えることができる稀有なテクノロジであるといえる 3 周波数アップグレード オプション高速シリアルデータの転送速度は年々向上しており オシロスコープの買い替えサイクルも従来と比べて短くなってきている これらのオシロスコープの導入には 1000~2000 万円もの費用がかかるため 導入へのハードルは従来に比べてより一層高くなってきている レクロイ社の SDA8Zi シリーズは これらの課題に対応すべく 周波数アップグレード オプションを設定している SDA8Zi は 4GHz~30GHz のラインナップの中で必要に応じて周波数をアップグレードすることができるため 導入後に必要な周波数にアップグレードすることができる上に その費用は本体価格の差額 + α 程度なので 設備投資費用を最小限に抑えることができる なお このアップグレード パスは WavePro7Zi シリーズも同様に設定されている 4 伝送路 イコライザ特性の付加 除去機能 (EYE Dr II によるシミュレーション ) SDA8Zi は高速シリアル信号測定を主なターゲットとしており 高速シリアルデータ測定に要求されている FFE/DFE/CTLE のシミュレーションや 伝送路特性による影響の除去 ( ディエンベディッド ) などの機能に応えることができる これらの機能を実現するのがオプションのシミュレーション ソフトウエア EYE Dr II であり 以下の機能を実現している Pre-Emphasis/De-Emphasis 付加 除去機能 FFE/DFE/CTLE シミュレーション機能 伝送路 テストフィクスチャの影響のシミュレーション機能 Channel Emulation 伝送路 テストフィクスチャによる影響の除去 De-Embedded 機能 この 4 つの機能はイコライザ シミュレーションと S パラメータを用いる伝送路シミュレーションに大別することができる いずれの機能もその付加と除去が可能なため PHY と伝送路を含めたシステム特性評価や ジッタ バジェットの算出に対して威力を発揮する 4.1 イコライザシミュレーション機能 4.1.1 Pre/De-Emphasis シミュレーション Pre/De-Emphasis の付加 除去する機能を備えている 任意の量もしくは タップ係数を自由に設定することができるため Emphasis 量の検証や Emphasis がかかった信号のジッタ解析を可能にする 4.1.2 FFE/DFE シミュレーション FFE/DFE イコライザの処理は任意のタップ数 ( 最大 20 タップ ) とその係数を自由に設定できるほか 測定信号から最適なタップ係数を算出するトレーニング機能を搭載している 4.1.3 CLTE シミュレーション CTLE(Continuous Time Linear Equalizer) は高

域をブーストするイコライザとして USB3.0 や PCI- Express3.0 で規定されており オシロスコープではコンプライアンス テストの際にこの CTLE をシミュレーションする必要がある EYE Dr II では 2 つの設定モードを備えており ビットレートとブースと量を指定するだけのオートモードと Pole Frequency, Zero Frequencyを設定するカスタムモードを搭載している 4.2 S パラメータシミュレーション機能 S パラメータを用いたシミュレーションは テスト フィクスチャやケーブル 伝送路の影響を付加 除去することができる 2 ポートまたは 4 ポートの S パラメータに対応しており いずれもタッチストーン形式のデータをサポートしている これらのシミュレーションは 2 つの S パラメータを読み込むことができるため テストフィクスチャとケーブルの影響を同時に除去したり あるいはテストフィクスチャの影響を除去して ケーブル影響を付加するなどのシミュレーションが可能になる これにより 測定系の影響を取り除くだけではなく 伝送路のワーストケースを想定した S パラメータを読み込んで最悪条件下をシミュレーションし その際のジッタを測定することも可能である これらの機能を利用することにより ジッタ バジェットの精度を上げることができる 4.3 Pre-Emphasis ディエンベディッド シミュレーションの例 図 3 に EYE Dr II による Pre-Emphasis のイコライザ ディエンベディッド シミュレーションの実例を示す この例では 3dB の Pre-Emphasis がかかった 8Gbps の信号から Pre-Emphasis を除去し EYE パターンで比較を行っている 図 3 の上段が処理前 下段が処理後で 左が Transition Bit の EYE パターン 右が Non-Transition Bit の EYE パターンとなっている 図 3:FFE シミュレーションの例 Emphasis がかかった信号を使って送信器のジッタ計測を含む信号評価をするには Emphasis で生じた意図的な ISI の影響を取り除く必要がある ( ディエンベディッド ) 従って このような信号を測定する場合 EYE Dr II のようなイコライザ ディエンベディッド機能が必須と言える 4.4 FFE シミュレーションの例 近年では ISI 補償用のイコライザを搭載するレシーバ チップも増えてきており これらのイコライザはシステム全体のジッタ バジェットの改善に貢献することができる ジッタ バジェットを算出するには イコライザによる DDj の改善量を測定する必要があるが レシーバ内臓タイプのイコライザの場合 測定することができないのが現実である この問題に対応すべく EYE Dr II はイコライジング後の信号のエミュレートをサポートしており エミュレートされた信号からジッタ バジェットを正確に算出することが可能になる 図 4 に FFE エミュレーションの例を示す EYE Dr II で 5 タップ ( プリカーソル :4) の FFE を用いてタップ係数の最適化したエミュレーション波形と 実測信号との比較である 左がイコライジング前の実測で 右側が EYE Dr II による前述のエミュレーション波形である ( 上段は信号波形 下段は EYE パターン ) 上段の波形を比較すると ISI による影響をイコライザが補償していることがわかると共に EYE パターンにも ISI の違いが見てとれる 図 4 の例ではイコライザにより DDj が 44.1ps から 15.1ps に改善しており 約 30ps のジッタマージンを確保できることがわかる これにより このイコライザによりジッタ バジェットを 30ps 補償することが可能になるため 伝送路のジッタ許容量を緩和が可能と言える これは伝送路のコストを低減することにも繋がるため イコライザを搭載するシステムの検証には

EYE Dr II が必須と言える 図 4:FFE シミュレーション例 4.5 S パラメータシミュレーションの例 ( チャネル ディエンベディッド ) 伝送スピードの向上に伴い 伝送路 測定系の影響を無視することができなくなっている 測定精度がこれらの測定系の影響を受けるため 本当にこの波形は正しいのか? と疑義をは挟まざるを得ないケースが増えてきており 信号品質測定において大きな課題となっている EYE Dr II はこれらの課題に対して S パラメータを用いたシミュレーション機能を実現している 図 5 は S パラメータシミュレーション ( チャネル ディエンベディッド ) の例の測定系で 3.125Gbps のプリエンファシスがかかったシリアル信号の出力に 約 80cm の伝送路 ( ストリップライン+SMA ケーブル ) を通してオシロスコープに直接接続しており 測定点として TP1 と TP2 を設けている 図 5 : 測定系 図 5 の測定系における各測定点 (TP1, TP2) の測定結果を図 6 図 7 に示す なお これらのデータは DDj の影響を比較するために ISI プロットという EYE パターンのデータを用いている 図 6 :TP1 における測定結果 図 7 :TP2 における測定結果 この図 7 の信号品質の劣化は 図 5 中の Channel の特性から起因しており この特性を補正することで TP2 のデータから TP1 をシミュレーションすることが可能になる 図 8 に TP2 のデータから Channel の特性を補正 ( ディエンベディッド ) した結果を示す この結果は 図 6 と比較して高い相関性があることがわかる 図 8 :EYE Dr II によるチャネル ディエンベディッド (TP1 に相当する ) このように EYE Dr II によるチャネル ディエンベディッドは伝送路特性を補正することができるため テストフィクスチャの影響の除去 プロービング困難な箇所の測定などに威力を発揮すると共に 定義された伝送路特性のバラつきをシミュレーションすることも可能なため ジッタ バジェットの最適化に威力を発揮する 5 用途に応じて最適な特性を選べる 3 つの振幅 位相特性 現在 3~4GHz 以上の周波数帯域を持つデジタル オシロスコープにおいては DSP を用いて周波数特性の調整を行うことが常識となっている これらの DSP を用いた処理には 2 種類存在し 前述のデジタル的に周波数ブーストを行う DSP ブーストと フラットネスやロールオフを調整する DSP コレクションに分かれる 無論レクロイ社では前者の DSP ブーストは採用しておらず DSP コレクションのみを行っている

DSP コレクションは どのような特性にでも調整することが可能なので 目標の特性をどこに置くかで信号品質に違いが生じる SDA8Zi シリーズでは オシロスコープの振幅 位相特性を Optimize として 3 つのモード ( Pulse Response EYE Diagram Flatness ) を用意しており 用途に応じて切り替えることが可能である Pulse Response : アナログ アンプの振幅 位相特性をエミュレートしたモード 物理現象や半導体の AC 特性などの波形を観測する際に推奨するモードで レクロイ社の推奨モードでもある EYE Diagram : アイパターンが最も良好に描け コンプライアンス テストなどの用途に推奨するモード 他社製オシロスコープと高い相関を持つ Flatness : UWB などの周波数ドメインでの測定用に推奨するモード 3つのモードで最も短い立ち上がり時間を示す この 3 つのモードにおけるステップ応答 振幅特性 位相特性の概略を図 9 示す 図 9 : 各モードの特性比較 5.1 Pulse Response モードこのモードは アナログ アンプをエミュレートしているので 図 9 の下段に示した位相特性から分かるように 3 モードの中で唯一位相特性がリニアではない そのため 自然界では起こりえないプリシュートの発生が図 9 上段に示すように生じにくい特徴がある Pulse Response モードを用いることにより 物理実験などでより自然な波形品質測定を 行うことができるため 高速シリアル信号の物理層評価 ( 特に AC 特性 ) に適していると言える これはオーバーシュートの絶対値に大きな影響を与えるため 特に重要な特性と言える 一方で 他社製オシロスコープでは 位相特性をリニア ( 直線的 ) に調整するため このモードでの測定結果との相関性が低くなる傾向がみられる この特性の結果 Pulse Response と他社製オシロスコープではプリシュートに差異が生じるが SDA8Zi シリーズではこれに対応するために 互換モードとして EYE Diagram モードを搭載している 5.2 EYE Diagram モード 前述のように Eye Diagram モードでは位相特性をリニアに調整しているため オーバーシュートは Pulse Response モードで生じるもののおよそ半分に抑えることができるが 同時にほぼ同じ大きさのプリシュートを生じる つまり オーバーシュートがエッジの前後に均等に配分されるため見た目のアイパターンはきれいに描かれ マスク試験をパスしやすくなる SDA8Zi は他社との相関を目的として EYE Diagram というモードを搭載している このモードはコンプライアンス テストなどに用いることを想定しているため レクロイ社では必要に応じて切り替えて使用することを推奨している 5.3 Flatness モード Flatness モードは位相特性をリニアにするだけでなく振幅特性も帯域内でフラットに調整する 通常のオシロスコープ用アナログ アンプからは最も乖離した特性といえるが UWB などの周波数ドメインでの測定においては 理想的な特性となり 威力を発揮する 信号波形では Eye Diagram モードと比較して若干大きめのオーバーシュートとプリシュートが生じ 立ち上がり時間が最速となる SDA8Zi シリーズではこの Flatness モードの特徴を生かして FFT 解析機能が強化されている 最大で 64Mpts もの周波数分解能を実現しており 後述の圧倒的スループットにより 実用的なレスポンスを提供している点も大きな特徴といえる 6 圧倒的なレスポンス & スループット SDA8Zi シリーズは 高速シリアルデータ測定に最適な帯域とシミュレーション機能を備えているが 従来のオシロスコープではこれらのシミュレー

ション処理に長い時間を要したり 使用できるメモリ長が短いなどの制約があるケースが多く 単に処理が可能というだけで 実用レベルに達していないものも見受けられた この SDA8Zi シリーズは インテル Core 2 Quad の採用 OS の 64bit 化 マルチ コアを余すことなく使い切る独自のアーキテクチャ CPU キャッシュの使用効率を最大化するデータ処理アーキテクチャの開発により 高い処理速度と 高速レスポンスを実現している 図 10 に処理速度のベンチマークを示す 図 10 おり SDA8Zi シリーズは 同等他社製品比における各ベンチマークで 2~ 50 倍もの処理スピードを達成し ロングメモリ時にその比が顕著に現れている 参考文献 [1] Martin Miller, James Mueller, Michael Schnecker,, Signal Integrity Measurement Methods and Practices Designcon2009,2009 [2] Bryan Casper, Peter Pupalaikis, Jared Zerbe, Serial Data Equalization Designcon2007,2007 [3] Peter J Pupalaikis, LeCroy Digital Bandwidth Interleaving, 2005 連絡先 連絡先氏名鳥越大 所属機関 レクロイ ジャパン株式会社 所在地 168-0082 東京都杉並区久我山 1-7- 41 電話番号 (03)6861-9400- FAX 番号 (03)6861-9586 E-mail hiro.torigoe@lecroy.com 図 10 ベンチマーク 7 まとめ SDA8Zi シリーズは 10Gbps 超の高速シリアルデータの評価 デバッグを目的とした最高 30GHz のリアルタイム オシロスコープで 高い信号品質と用途に応じて切り替え可能な振幅 位相特性 各種シミュレーション機能と それらを支える高速処理エンジンを搭載したオシロスコープであると共に 周波数アップグレード パスの設定により高い投資効果を得られるオシロスコープである 本稿では触れていないが MATLAB および Simulink との連携機能や 最大 2001 タップのデジタル フィルタ シミュレーション機能 高度 DDj 解析機能をサポートしており これらのシミュレーション機能と DDj 解析機能を組合わせることで 高速シリアルデータの開発に大きな威力を発揮する