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更新日 :2008/5/19 ノルウェー : 二酸化炭素の分離 回収 貯留 (CCS) の現状 調査部宮本善文 1. ノルウェーの石油会社 StatoilHydro は 二酸化炭素 (CO2) を帯水層に貯留する技術を確立しつつある 1ノルウェー領北海 Slipner ガス田において 1996 年から実施されている二酸化炭素の分離 回収 貯留 (CCS: Carbon Dioxide Capture & Storage) の累計量が 2008 年 4 月に 1000 万トンに達した 2ノルウェーの Snohvit LNG プロジェクトにおいて CCS が 2008 年 4 月から開始された 2. 天然ガスに含まれる CO2 を分離 回収する技術は比較的容易であるが 発電所で天然ガスや石炭を燃焼させた後に いかに費用を抑えて CO2 を分離 回収させるか その技術開発を世界中で競っているところである ノルウェーの小規模プラント会社である Sargas は 画期的な二酸化炭素回収技術を実証試験で確認したようだ 同社の発表によると 二酸化炭素の回収率は 95% 回収費用は 20 ドル / トン以下であり 発電所の建設 操業費用は 他のプロセスに比較して安価であるとのこと ノルウェー政府の認可を得られ次第 石炭火力発電所 ガス火力発電所が建設される 3. 最近ノルウェーの首相と外務大臣は それぞれ南アフリカとサウジアラビアを訪問し 同国の CCS 技術を売り込んでいる ビジネスにつなげたいと考えているはずである 1. はじめにガス 石炭などの発電所が地球温暖化ガスである二酸化炭素を大気中に発生しないような技術を開発できれば環境問題に貢献することができる 大きく分けて 2つの技術が必要である 1つは 安価かつ効率的に二酸化炭素 (CO2) を分離 回収する技術 (capture) であり 分離 回収した CO2 を安全かつ永久に地中などに貯留する技術 (storage) である 両方の技術においてノルウェーが一歩抜きん出たようだ 本稿では ますノルウェーで既に実施されている2 つの CO2 貯留プロジェクトの現状について説明し 次に Sargas 社の CO2 回収の新技術について簡単に紹介する 2. CCS プロジェクト (1) Sleipner ガス田 Sleipner( 東 西 ) ガス田の概要 : ノルウェー沖合 250km に位置し 1993 年より原油 天然ガスを生

産しており CCS は 1996 年より実施されている CCS を実施する理由 :Sleipner ガス田で生産される天然ガスには高い濃度 (9%) の CO2 が含まれているので 欧州ガス市場における販売基準 (2.5% 未満 ) を満たすため CO2 を分離している さらに 環境問題に加えて CO2 を大気に放出すると炭素税が課せられるので CO2 を貯留している ( 図 1 図 2 参照 ) 分離 回収はプラットフォーム上で行い その場で CO2 圧入されている CO2 の量 : 年間 100 万トン ( 日量 2800 トン ) であり これは ノルウェー全体の年間放出量の 2% にあたる 2008 年 4 月 累計貯留量が 1000 万トンに達した 帯水層の規模 :Utsira 層は巨大であり ( 図 1 の黄色の部分 ) 一説によれば EU の排出量の 67 年分を貯留できる大きさである [3] CCS の費用 : 年間の費用総額は合計 1660 万ドル ( 資本費 960 万ドル 操業費 700 万ドル ) であり 1トンあたりの年間費用は 16.6 ドルである [4] 安全性 :CO2 は帯水層 (Utsira 層 ) に貯留されているが これまでの観察結果では帯水層から漏洩していない [1,2] 図 1:Sleipner ガス田位置及び Utsira 層の大きさ 図 2: CO2 貯留の模式図 出典 :http://www.seed.slb.com/en/scictr/watch/climate_change/sleipner.htm (2) Snohvit ガス田 Snohvit ガス田の概要 : ノルウェー北部のバレンツ海 ( 沖合約 160km) で発見れ 欧州初の LNG プロジェクトとして開発された 生産設備は海底にあり 陸上から遠隔操作されている 天然ガスは Hammerfest という町の近くの小さい島 (Melkoya) にある LNG プラントまでパイプラインで運ばれてい

る ガスから分離された CO2 はガス田までパイプラインで運ばれている ガス田を発見してから 24 年後の 2007 年 9 月に LNG の生産が稼動した [5] ( 現時点においては 熱交換器に不具合が見つかっており 生産は不安定な状態にある [6] ) 生産能力は年産 430 万トン (560 万立方メートル ) CO2 の帯水層への貯留は 2008 年 4 月 22 日に開始された CCS を実施する理由 : 生産される天然ガスには 5~8% の濃度の CO2 が含まれており LNG の製造過程で分離される 大気中に放散すると環境問題になるし 炭素税 (340 NOK/ トン 約 7000 円 / トン ) が課税されるため CO2 の量 : 年間 70 万トン ( 日量 1900 トン ) 貯留される 帯水層の規模 : ガス層より深部にある帯水層 (Tubasen 層 厚さ 45m~75m) に圧入される CCS の費用 :Melkoya 島から沖合いまで CO2 用のパイプラインで運ばれているので その分高くなっている CC2 費用の資本費用について Sleipner は 94 百万ドル Snohvit は 191 百万ドルとの情報があるが 詳しくは発表されていない [7] 安全性 : 帯水層 ( 砂岩 ) の上部は硬い層でシールされているため CO2 は漏洩しないと考えられる その他 :Melkoya 島の LNG 製造プラントでは天然ガス電力発電をしているが CO2 は大気に放散されている ( 後述 ) 図 3:Snohvit ガス田位置 図 4:CO2 貯留の模式図 3.Sargas 社の CO2 回収技術天然ガスに含まれる CO2 を分離 回収する技術は確立されている しかし 天然ガスあるいは石炭発電所での燃焼後の煙道ガス (flue gas) から CO2 を効率的かつ安価に分離 回収する技術については 世界の会社が競っている 現状では CO2 回収効率は 85%~90% 費用( 分離 回収部分 ) はトンあたり約 3000

円 ( 図 5 約 30 ドル ) であるとされている ノルウェーの Sargas は 既存の技術を修正する方法 (= すなわち技術的リスクが小さい ) を使い 効率的 かつ安価で 煙道ガスから CO2 を回収 分離する技術を開発したと発表した 技術 : 炭酸カリウム (25%) を用いる 化学吸収法 を使う [8] 実証実験の結果 :2007 年秋から 2008 年春まで ストックホルムの Vartan 石炭発電所 ( 出力 400MW) において CO2 回収効率を 95% 以上 建設費 操業費が安いため トンあたり 20 ドルで回収できると発表した [9] 今後の事業展開 : 以下に述べる 2 社の電力会社は Sargas の技術を使い 天然ガスや石炭を用いた発電所の建設を計画している 具体的には 1Snohvit LNG 施設の近くの Hammerfest においてガス発電所 [10] を また 2 西ノルウェーにおいて石炭発電所 [11] を受注している 図 5:CCS 費用 出典 : 地球環境産業技術研究機構 (RITE)[12] 4.Hammerfest Energi 社による CCS Hammerfest Energi によるの天然ガス発電所 (CCS 実施 ) 事業は CCS の先例になるので紹介する Snohvit LNG 施設 (Meloka 島 ) の近くの街 Hammerfest( 図 6) においてガス発電所を建設し そこで発生する CO2 を回収する計画である 発電所で回収した CO2 を Snohvit から生産された天然ガスから分離回収された CO2 を運ぶパイプライン ( 図 7) を使い 沖合いの帯水層に貯留する

ここで問題になるのは 第三者利用 (Third Party Access) の問題である すなわち StatoilHydro が所有する CO2 パイプラインと帯水層への貯留について 第三者である Hammerfest Energi が利用することである Hammerfest Energi が Statoil の施設を利用したいと表明した際 Statoil は CO2 パイプライン能力には余裕がない として 第三者利用を拒んだところ Hammerfest Energi は 有識者に評価をしてもらい まだ年間 100 万トンの能力があることを証明した [13] 図 6: 位置図 図 7:Melkoya から Snohvit ガス田まで LNG プラントは Melkoya 島にある 本土の町は Hammerfest 5. 終わりにノルウェーの CO2 の分離 回収 貯留 (CCS) の現状を簡単に説明したが 今後の展開として注目すべき点を列挙しておく CCS が安全かつ安く実施できると CO2 を大気に放散させない天然ガスや石炭火力発電所が増えるはずだが それにより天然ガスや石炭価格にどの程度の影響があるだろうか? また 原子力発電所や再生可能エネルギー関連設備の建設にとってどの程度影響があるだろうか? 著者は CO2 の処理は ゴミ処理 であり 利益を生むものではないので 基本的には 民間事業には馴染まない また 各国の政府は京都議定書で CO2 削減を約束しているため CO2 削減に有効であるとされる CCS 事業に補助金を支給せざるを得ない と考えている 今後 各国政府はどのような基準で補助金を支給するのか? なお EOR(Enhanced Oil Recovery: 原油増進回収 ) のため CO2 を利用できるが 現状では費用がかからない陸上油田においてのみ実施されている 既に一部の欧州の会社は沖合油

田における CCS-EOR プロジェクトに対し 補助金を申請しているが 各国政府は消極的態度を崩していない ノルウェーの場合 StatoilHydro が実証試験的に CCS を実施してきたが 今後は第三者 ( 天然ガスの生産者や前述の Hemmerfest Energi のような発電業者 ) が 既存の CO2 パイプラインや帯水層の利用を求めてくるであろう これは 第三者アクセス の問題であるが どのような形で法整備がなされるのか? 京都メカニズム ( 共同実施 クリーン開発メカニズム 排出権取引 ) との関係で CCS はどのような位置付けになるのか? CO2 は永久に貯留されるので 数百年という超長期的視点からは帯水層からの漏洩の問題も想定しておく必要があると思われるが どのような形で法整備や保険の整備がなされるのか? 参考文献 [1] http://www.statoilhydro.com/en/newsandmedia/news/2008/pages/c02capture10000.aspx [2] http://www.reuters.com/article/idusl2915061620080429 [3] Carbon Capture and Storage: Climate Change and Sustainable Development (Pernille Holtedahl) http://www.un.org/esa/sustdev/sdissues/energy/op/new_dehli_workshop/undesa%20presentations/day2/session2/h oltedahl_presentation/pernille%20ccs%20delhi%20v2.ppt [4] http://www.co2symposium.com/presentations/colloqueco2_session3_05_torp_statoil.pdf [5] http://www.statoilhydro.com/en/newsandmedia/news/2007/pages/producingfromsnohvit.aspx [6] http://www.energycurrent.com/index.php?id=3&storyid=5420 [7] http://www.mnp.nl/ipcc/pages_media/srccs-final/srccs_chapter5.pdf (page 66/82) [8] http://www.sargas.no/vartan_article.htm 及び http://akseli.tekes.fi/opencms/opencms/ohjelmaportaali/ohjelmat/climbus/fi/dokumenttiarkisto/viestinta _ja_aktivointi/seminaarit/ccs_seminar_050208/eva-katrin_lindman.pdf [9] http://www.sargas.no/index.htm [10] http://www.barentsobserver.com/co2-capture-technology-breakthrough.4477875-16178.html [11] http://www.ieagreen.org.uk/newsletter/march85.pdf [12] http://www.rite.or.jp/japanese/kicho/kakushin2007/rite_kakushin2007_fujioka.pdf

[13] Hammerfest Energi の担当者情報 その他参考文献 ノルウェーにおける CCS:http://www.bellona.org/factsheets/1191928198.67 http://www.france.no/co2/tore_torp.ppt