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Microsoft Word - ver41 技術発表会の原稿(H27)

26 応用地質技術年報 No まえがき 自然斜面 ( 以下, 斜面 ) や人工斜面 ( 以下, 法面 ) と地質の不連続面 ( 層理 片理 節理 劈開 断層等 ) との関係について, 流れ盤構造と受け盤構造に区分するときに, 一般に受け盤構造は流れ盤構造に比較して安定性が高いと

危険度判定評価の基本的な考え方 擁壁の種類に応じて 1) 基礎点 ( 環境条件 障害状況 ) と 2) 変状点の組み合わせ ( 合計点 ) によって 総合的に評価する 擁壁の種類 練石積み コンクリートブロック積み擁壁 モルタルやコンクリートを接着剤や固定材に用いて 石又はコンクリートブロックを積み

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図 東北地方太平洋沖地震以降の震源分布図 ( 福島第一 第二原子力発電所周辺 ) 図 3 東北地方太平洋沖地震前後の主ひずみ分布図 ( 福島第一 第二原子力発電所周辺 )

あなたの宅地は大丈夫か -地震による谷埋め盛土造成地被害事例と安全性調査方法-

地域のために

Microsoft Word - ★ 紀の川市西脇地区斜面崩落に関する調査検討会報告書(最終案)

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

7-2 材料 (1) 材料一般 1. アンカーの材料は JIS などの公的機関の規格により保証されているものか もしくは所要の品質や性能を有していることを確認したものとする 2. アンカーの材料を組み立てる場合には 各材料は他の材料に悪影響を与えないことを確認したものを使用する 1) 材料に関する一

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177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

この台風による和歌山県全域での被害をみると, 人的被害は, 死者 56 人 ( うち災害関連死 6 人 ), 行方不明者 5 人, 負傷者 9 人, 物的被害は, 全壊 371 棟, 半壊 1,842 棟, 一部破損 171 棟, 床上浸水 2,680 棟, 床下浸水 3,147 棟, 浸水被害 1

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地すべり学会関西支部大豊地すべり調査 調査報告 メンバー高知大学笹原克夫, 日浦啓全 ( 名誉教授 ) 徳島大学西山賢一京都大学松浦純生, 末峯章, 土井一生国土防災技術 ( 宮本卓也, 井上太郎 相愛山崎尚晃, 松田誠司 四国トライ松尾俊明, 吉村典宏長崎テクノ 讃岐利夫木本工業株西森興司町田博一

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Microsoft PowerPoint - 知財報告会H20kobayakawa.ppt [互換モード]

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強化プラスチック裏込め材の 耐荷実験 実験報告書 平成 26 年 6 月 5 日 ( 株 ) アスモ建築事務所石橋一彦建築構造研究室千葉工業大学名誉教授石橋一彦

泊発電所 地盤(敷地の地質・地質構造)に関するコメント回答方針

点検対象項目 1 落石 崩壊 1-1 落石 崩壊 (1) 落石 崩壊の安定度調査の考え方 要因に関する評点 対策工に関する評点 履歴に関する評点 評 点 評点の求め方 1 要因は のり面部分と自然斜面部分について別々に評点を求める 2 のり面と自然斜面の対策工の状況に対して評点を加える 3 1と2の

図 6 地質と崩壊発生地点との重ね合わせ図 地質区分集計上の分類非アルカリ珪長質火山岩類後期白亜紀 火山岩 珪長質火山岩 ( 非アルカリ貫入岩 ) 後期白亜紀 花崗岩 後期白亜紀 深成岩 ( 花崗岩類 ) 花崗閃緑岩 後期白亜紀 チャートブロック ( 付加コンプレックス ) 石炭紀 - 後期三畳紀


はじめに 宅地造成等規制法が昭和 36 年に制定されてからおよそ半世紀を経過しました この間 平成 18 年には同法制定以来初めての抜本改正が行われています この改正は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 ) 新潟県中越地震 ( 平成 16 年 ) などで被災例が多かった大規模盛土造成地に対応するの

労働災害発生状況

1.2 主な地形 地質の変化 - 5 -

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【論文】

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国土技術政策総合研究所 研究資料

アンカー工設置のり面の 健全性評価に関する研究 報告 平成 22 年 9 月 10 日プロジェクトリーダー神戸大学名誉教授沖村孝

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9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

山岳トンネルの先進ボーリング調査

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目的 2 汚染水処理対策委員会のサブグループ 1 地下水 雨水等の挙動等の把握 可視化 が実施している地下水流動解析モデルの妥当性を確認すること ( 汚染水処理対策委員会事務局からの依頼事項 )

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地質ニュース

実施概要 平成 5 年度第 回災害対策等緊急事業推進費 ( 主な対策の ). 梅雨前線に伴う豪雨により被害を受けた地域における対策 5 件 674 百万円 ( 国費 ) 具体的には ()~(5) のとおり () 河川 ( 補助 ) (5) 国道 ( 直轄 ) よどがわすいけいふるかわ 平成 5 年

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原子力規制委員会 東通原子力発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 でのご意見を踏まえた地質調査の概要 ( プレスレク資料 ) 平成 25 年 2 月 18 日 東北電力株式会社 東北電力株式会社 All rights Reserved. Copyrights 2012, Tohoku Elec

第 3 章切土, 盛土, 大規模盛土, のり面保護工, 自然斜面等 3.1 切土 1. 切土のり面勾配 切土のり面勾配は, のり高及びのり面の土質等に応じて適切に設定するものとします その設定にあたっては, 切土するのり面の土質の確認を前提として, 表.3-1 を標準とします 崖の高さが 5m 以下

4. 粘土の圧密 4.1 圧密試験 沈下量 問 1 以下の問いに答えよ 1) 図中の括弧内に入る適切な語句を答えよ 2) C v( 圧密係数 ) を 圧密試験の結果から求める方法には 圧密度 U=90% の時間 t 90 から求める ( 5 ) 法と 一次圧密理論曲線を描いて作成される ( 6 )

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西松建設技報

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6-3

既存構造物がある場合の基礎地盤の液状化対策案 国土交通省の 都市防災推進事業 ( 市街化液状化対策事業 ) と連動して住宅地域を囲む周辺道路 下水 ( ライフライン ) の液状化対策と協同して住宅地の液状化対策を実施する 対策工法 WG ( 加倉井 中井 秋葉 田村 畑中 ) 都市防災推進事業 (

地すべり防止技術指針及び同解説(提案)

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リサーチ ダイジェスト KR-051 自然斜面崩壊に及ぼす樹木根系の抑止効果と降雨時の危険度評価に関する研究 京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻特定教授杉山友康 1. はじめに 鉄道や道路などの交通インフラ設備の土工施設は これまでの防災対策工事の進捗で降雨に対する耐性が向上しつつある一方で

土層強度検査棒 計測データ例 kn/ m2 45 滑り面の可能性ありとした箇所の条件 : 地下水に飽和していること 及び SS 試験で 100kg 以下で自沈する箇所であること 土層強度検査棒による地盤強度計測結果グラフ 粘着力 計測値 30 T2 O5 25 M4 M3 20 滑り面

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国土技術政策総合研究所研究資料

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

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1.3 風化 侵食状況

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「活断層の長期評価手法」報告書(暫定版)

マンホール浮き上がり検討例

図 2 内山地区被害分布図由布市全地図 1:25000 を使用 段丘面は高位面から 1-5 となっている 4. 調査結果各地区の地形分類と被害状況について, 詳細を述べる 1) 内山地区内山地区 ( 図 2) は最も被害が大きかった集落の一つである 総戸数 12 がすべて全壊した 大規模な地滑りや火

「活断層の補完調査」成果報告書No.H24-2

○○○○○○○の実験

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積粘土と同様に上下で低く 中央で高い弓形分布を示す 図 () の I L は 長田 新庄 門真で 1 以上を示し 東大阪地域の沖積粘土の特徴である超鋭敏性が伺える ただし 鴫野の I L はかなり低い 図 (3) () の c v は 先の w L が反映されているが 特に新庄の中央部の圧縮性が高い

の設置に加え 崩壊斜面の周辺に伸縮計 地盤傾斜計等を設置し計測データによる監視を行うとともに 定点カメラによる視覚的監視を行っている なお 地震動や雨量 各観測計器に基準値を設け 基準値超過時の作業中止基準を定め運用している 2.2, 崩壊地内の無人化機械による施工崩壊斜面上部に残る不安定土砂の崩壊

地すべり地形判読 地すべり地形判読 地すべり地形とは 地すべり地形判読のためには, 地すべりの定義をはっきりさせておく必要がある. まず, 重力を主な駆動力として斜面で発生する物質の移動を 斜面変動 あるいは 砕屑物の集団移動 という. この斜面変動の一形態が地すべりである. 地すべりとは, 斜面物

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6. 現況堤防の安全性に関する検討方法および条件 6.1 浸透問題に関する検討方法および条件 検討方法 現況堤防の安全性に関する検討は 河川堤防の構造検討の手引き( 平成 14 年 7 月 ): 財団法人国土技術研究センター に準拠して実施する 安全性の照査 1) 堤防のモデル化 (1)

(2) 地質当該地域の山地を構成している基盤岩は白亜紀の四万十帯日高川層群美山層と呼ばれる砂岩 頁岩 チャートなどの堆積岩からなる 地質構造は 走行が概ねで 北へ 45 ~70 程度で傾斜する 従って 北向きの斜面では流れ盤となってくる 被覆層は 崩積土が広く分布しており 谷部及び凹状の斜面ではやや

国土技術政策総合研究所 研究資料

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図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

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見学箇所図 ( 現地検討会資料より )

2019 年1月3日熊本県熊本地方の地震の評価(平成31年2月12日公表)

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地すべり防止施設の長寿命化計画 ( 個別施設計画 ) 策定の手順書 ( 案 ) 農村振興局農村環境課農村振興局防災課 平成 2 8 年 3 月

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Transcription:

トップリングによる変状箇所の特徴と機構について 基礎設計室岡淳一 1. はじめに交差点部で約 40m の切土を行ったところ トップリングが発生した 地山は硬質な花崗岩で 受盤の亀裂面の連続性が良く 亀裂には軟らかい粘土シームが介在していた トップリングは交差点方向に転倒しており 付近の亀裂からは粘土シームが押し出されていた 地下水位が高く 降雨時は亀裂内に水圧が作用する状態であった 対策は 岩塊が交差点方向へ転倒していたことから コーナー部を補強して崩壊の足元に要となるブロックを作ることにした 本稿では 今後のトップリング発生予測に役立てるため その特徴及び機構についてまとめる 2. 地形地質概要本地は宍道低地帯から南に約 5km の地点であり 中国山地の北縁部に位置する 河川が開析した谷に沿う低山地で 切土箇所は非攻撃斜面の尾根部である 北西と北東方向のリニアメントに沿って断層等の亀裂系が発達している 地質は新生代古第三紀の花崗岩であり 東西に延びた小規模な分布範囲の中央部に位置している 本地の花崗岩は節理や断層が発達し 割れ目には変質した茶色の粘土シームが多くみられるのが特徴である 花崗岩は北と南側に新第三紀層が分布していることから 地塁状の構造を持っていると考えられる したがって 花崗岩は形成後に間近で新第三紀の火山活動にさらされており 新第三紀の堆積盆形成時には幾度も大きな構造運動や 岩脈の生成に伴う貫入作用を受けたものと考えられる 茶色の粘土シームは 付近に玄武岩の岩脈や盛土の土砂に玄武岩の岩塊が含まれていることから 花崗岩形成後の玄武岩の火山活動に伴って形成された 岩脈系の粘土と推定される 3. 調査結果地すべりの特徴及び機構を把握するため 切土法面観察 調査ボーリング パイプ歪計観測 地下水位観測 伸縮計観測 光波観測を行った 以下に結果を述べる 切土法面観察切土法面にみられる亀裂系は主に 3 方向 ( ア~ウ系亀裂 ) で いずれも道路に対して高角度の受け盤である 図 -1 の平面図にこられの亀裂の分布と シュミットネットに整理したものを載せる 現地にはトップリング特有の変状がみられる 変状写真と トップリングの模式断面図を図 -2 に示す 交差点部は比較的硬質な岩塊が露出しているが 茶色の粘土シームが押し出されているのが確認できる また 茶色の粘土シームは 変状している割れ目にみられることが多い

図-1.調査平面図 図-2.トップリングの変状写真 右 と模式断面図 左

調査ボーリング上部は風化が進んでマサ状となる 深くなると徐々に硬質となり軟岩主体となる 硬質な岩盤でも割れ目が多く 茶色の粘土を挟んでいる箇所がみられる パイプ歪計観測多くの深度で歪み変動が確認される これはトップリング崩壊に特徴的に見られる現象で トップリングは通常の地すべりのような明瞭なせん断面 ( すべり面 ) が形成されることが少なく むしろ幾つかの岩盤の折れ曲がりでせん断帯を形成することが多い 図 -3 にトップリングの模型実験と本地の歪み変動グラフを示す 実験によると トップリング崩壊は広範囲のブロックが転倒し回転することによって発生しており すべり面より深部 ( 黄色箇所 ) においても変形が確認される そこで これらのせん断帯が歪として現れたものを歪み群とし その中で最大を示す歪み群を 最大歪み群 とした 安全性を考慮して 最大歪み群 のうち最も深いものをすべり面に相当するものと考えた 図 -3. トップリング模型実験写真 ( 左 ) と BP.2 における歪み変位量 ( 右 ) 地下水位観測 地下水位は割れ目が多い岩盤にしては比較的高い 降雨と連動して変動が見られるので 地 下水が地盤に与える影響は大きい

伸縮計観測 30mm/ 日以上の降雨で動きがみられ 60mm/ 日の雨量で 最大 20mm/ 日以上の緊急変動がみられる 光波観測図 -1 に示すように 全体的に交差点側に向かって動いている 4. 機構解析図 -1 に示すように トップリングは基本的に交差部に向うが 交差部の岩塊は本崩壊の主方向であり力が集中しているにもかかわらず 変状の規模が小さい これは交差部が要岩塊として崩壊全体のストッパー的な役割をしているためと考えられる 光波観測によると トップリング崩壊は交差点部の要岩塊をストッパーとして 国道側と村道側で移動方向が異なる 国道側はア系亀裂とウ系亀裂の合成方向に動いており最急勾配方向に一致する 一方 村道側はア系亀裂やイ系亀裂の直交方向に動いており必ずしも最急勾配方向に一致しない これは岩盤の転倒に引きずられて動いているためと考えられる トップリングは降雨との連動性が高く 降雨により地下水が上昇すると 亀裂内に水圧が作用し岩柱が押されて 変状を引き起こすと考えられる また 法面上部では風化によるマサ化が進行しており 法面下部の岩盤崩壊に追随してすべりが発生している トップリングとすべりの組合せの模式図を図 -4 に示す 図 -4. トップリングとすべりの組合せ模式図 以上より トップリングの素因 誘因は以下のようにまとめられる 素因 岩脈が熱水変質を受けて粘土化していた 新第三紀の構造運動による断層や岩脈が発達しており 割れ目の多い地盤であった

誘因 高低差 40m の大規模な切土により応力開放が発生し 割れ目が分離した 本地は降雨と変動の連動性が高く 降雨により地下水が上昇すると 亀裂内に水圧が作用し変状を引き起こした 粘土シームのせん断強度が低下し 岩柱がズレやすくなった 5. 対策工の設計対策工は工法比較の結果 図 -5 に示すように 頭部排土 +アンカー工法 とした 頭部排土ですべりの起動力を減少させ アンカーで末端部 ( コーナー部 ) の抵抗力を増加させ要ブロックを作り 安定化を図る また 地下水上昇がトップリングに影響しているので 排水ボーリングによる地下水排除工を併用した 対策工は交差点部になるので アンカーや排水ボーリングが他の法面のものと交差しないように注意して設計を行った 図 -5. 対策工平面図

6. 対策工完了後 対策工工事完了後 雨の多い春 ~ 秋にかけてパイプ歪計 伸縮計を再設置し 経過観測を行っ た 観測の結果 動きはみられず 対策工の効果を確認することができた 7. トップリングの発生予測最後にトップリングの発生予測について述べる 以下のような現象が確認できた場合はトップリングの注意が必要である なお トップリングは岩柱が転倒することで発生するので 地盤が硬質でも注意が必要である 1 斜面勾配が急で 高角度で連続性のある不連続面 ( 特に受け盤 ) が発達している場合 2 地質構造的な現象 ( 断層や褶曲等 ) が無いのに 斜面の上下で亀裂系の走向傾斜が変化している場合 ( 岩盤クリープが発生している可能性がある ) 3 地表面に地割れ等の連続性のある開口が確認される場合 4 高角度亀裂に挟まれる粘土が 圧縮されて押し出されている場合 トップリングの可能性がある場合は 以下の点に特に注意する必要がある 1 高角度亀裂に粘土が挟まれる場合は 岩柱と岩柱のせん断力が低下しトップリングが発生しやすくなる 2 切土の土被りが大きい場合は 応力開放により亀裂間で緩みが生じ 岩柱が転倒しやすくなる 3 地下水位が高い場合は 降雨に伴う地下水上昇により岩柱間が水で満たされ水圧が発生し 岩柱が転倒しやすくなる