横書き　２組

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みちしげきせんばる
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航空レーザー測量の DSM で抽出された地すべり危険斜面の現地検証 Slope Stability by using Airborne LiDAR DSM 株式会社環境地質 / 下河敏彦株式会社環境地質 / 稲垣秀輝 Kankyo Chishitsu Co.,Ltd/Toshihiko shimogawa Kankyo Chishitsu Co.

,Ltd/Kuji Suzuki キーワード :DSM( デジタル表層モデル ), 時系列解析, 地すべり危険斜面, 地すべり前兆地形, 樹冠 30 3 1.

1 航空レーザー測量の DSM で抽出された地すべり危険斜面の現地検証 Slope Stability by using Airborne LiDAR DSM 株式会社環境地質 / 下河敏彦株式会社環境地質 / 稲垣秀輝 Kankyo Chishitsu Co.,Ltd/Toshihiko shimogawa Kankyo Chishitsu Co.,Ltd/Hideki Inagaki 中日本航空株式会社 / 千田良道中日本航空株式会社 / 松田匡司中日本航空株式会社 / 鈴木浩二 Nakanihon Air Service Co.,Ltd/Yoshimichi Senda Nakanihon Air Service Co.,Ltd/Masashi Matsuda Nakanihon Air Service Co.,Ltd/Kuji Suzuki キーワード :DSM( デジタル表層モデル ), 時系列解析, 地すべり危険斜面, 地すべり前兆地形, 樹冠はじめに大規模な土砂災害の原因となる深層崩壊や地すべりの危険箇所を抽出する手法として航空レーザー測量データを用いた地形解析が進められている例えば稲垣ほ4 か (0) や日本応用地質学会応用地形学研究部会 (13) は地すべり地形の詳細な発達史や急斜面からの落石岩塊の分布状況を明らかにしハザードマップとしての利用法を報告しているしかし 11 年 9 月に発生した台風 12 号による豪雨災害に代表されるように近年深層崩壊や地すべりが同時多発的に発生するなど災害危険箇所の広域的な事前予測も急務となっている筆者らは深層崩壊や地すべりの危険斜面の予兆として斜面の微細な段差やクラック等の地表変状が林冠ギャップや樹木の移動傾きとして強調されることが多いことに着目し複数時期のデジタル表層モデル (DSM: 0 Digital Surface Model) の解析を進めている ( 千田鈴木,12) これは複数時期のデータの変動量や変動ベクトルを比較し相対的に不安定斜面を抽出する方法である DSM は植生データを除去するフィルタリング作業が不要であり DEM(Digital Elevation model) に比べ地表面の変化を広域的かつ迅速に検出する手法として期待できる本報告では平常時の平成年 ~6 月に取得したデータと平成 23 年 9 月の台風 12 号 ( 地すべり発生 ) 通過後に取得した平成 23 年 ~11 月データの時系列的解析により地すべり発生箇所で検出された不安定斜面について現地での検証結果を報告する研究対象地域は静岡県安倍川支流藁科川上流域である ( 図 -1) 2.DSM による危険斜面抽出 2.1 DSM データの特徴デジタル表層モデル (DSM:Digital Surface Model) は任意のメッシュ内の最高標高を表す等間隔の標高データで航空レーザー測量データによる山地のDSMデータは森林の樹冠形状に相当する ( 図 -2) 図 -2 DSMのイメージ地表面の段差やクラック等の変状は対象地域のように植林に覆われた斜面では樹冠部では移動幅や傾きが強調されることが多いため ( 図 -3) すべりに至る予兆を示す微細な規模の変状を捉えるにはDSMの方が適しているまた元となるデータ自体もフィルタリング後のまばらなグラウンドデータに比べて密度が高く精度の高いモデルを高速に作成できる利点がある 40 図 -1 研究対象地域図 -3 DSM による変動検出のイメージ

ただし植生の傾動や林冠ギャップの拡大といった現 40 象は地すべりの前兆として重要な指標であるが DSM で検出できるデータは樹冠部であるため斜面変動との関連ではあくまで目印と言わざるを得ない木の成長による DSM の変形が大きい場合や倒木伐採があると相関処理ができないなどのデメリットもあるまた実用化さ4 れたばかりの新しい手法であり DSM

円弧状の滑落崖を持つ典型的な地すべり地形が形成されており平成 23 年 9 月の台風 12 号では斜面下部 ( 北部 ) のブロックが崩壊し道路が寸断された崩壊深は最深部で 11m 崩壊土量は約 4 万 m 3 と推測される 2.

移動量を計算したこのことにより 2 時期の DSM における同一地点の同定ならびにその位置の違いを抽出することができる ( 図 -4) 30 3 0 図 -4 DSM 移動量の計算方法 2 時期の DSM データからの移動量は DSM の任意のメッシュにおける地形パラメータを計算し相関的手法を用いて算出したこれらの計算は機械処理で行い全てのメッシュに対して移動量及び移動方向を算出した

2 ただし植生の傾動や林冠ギャップの拡大といった現 40 象は地すべりの前兆として重要な指標であるが DSM で検出できるデータは樹冠部であるため斜面変動との関連ではあくまで目印と言わざるを得ない木の成長による DSM の変形が大きい場合や倒木伐採があると相関処理ができないなどのデメリットもあるまた実用化さ4 れたばかりの新しい手法であり DSM の時系列的解析結果を現地で検証した事例が少ないこのため植生と斜面動態との関連の検証を蓄積することが必要であり本報告はその先駆的事例と位置付ける図 - に対象地域の地形分類を示すこの地形分類図は固定翼機 ( 飛行機 ) により1m 間隔で取得したレーザー計測データから作成した地形データ (DEM:1m メッシュ ) を陰影表示したものを基図としたこれをみると円弧状の滑落崖を持つ典型的な地すべり地形が形成されており平成 23 年 9 月の台風 12 号では斜面下部 ( 北部 ) のブロックが崩壊し道路が寸断された崩壊深は最深部で 11m 崩壊土量は約 4 万 m 3 と推測される 2.2 DSM データの作成方法対象地域において台風前後のデータ ( 平成年及び平成 23 年 ) に実施された航空レーザー測量データより DSM(1m メッシュ内の最高点 ) を作成した次に DSM を構成する各メッシュを中心とする領域の地形パラメータ [ 傾斜角, 凹凸度 ( 狭 ), 凹凸度 ( 広 )] を計算し画像相関的手法を用いて 2 時期の DSM 間での位置の同定を行い移動量を計算したこのことにより 2 時期の DSM における同一地点の同定ならびにその位置の違いを抽出することができる ( 図 -4) 図 -4 DSM 移動量の計算方法 2 時期の DSM データからの移動量は DSM の任意のメッシュにおける地形パラメータを計算し相関的手法を用いて算出したこれらの計算は機械処理で行い全てのメッシュに対して移動量及び移動方向を算出した 60 変動量の抽出は全てのメッシュを対象として DSM による変動量分布図を作成し 2m 以上の変動がみられた領域を抽出した植生が消失した新規の崩壊地ではデータ間の相関が低く移動量の抽出ができないものの植生を残したまま移動した地域では面的に移動量を推定することができる本手法により推定した移動量の分布は空間解像度が高いため移動域の境界が明瞭であり移動土塊の把握に有効であると考える図 - 対象地域の地形分類 3.2 対象斜面の DSM データ解析結果 DSM による変動量抽出結果を図 -6 に示すベクトルを m 毎に間引き倒木などによる不規則なベクトルを削除し土塊の移動を把握しやすいように加工したこれをみると崩壊地の南側に隣接するブロックにおいて最大幅 2.m 段差 0.7mの地すべりブロック境界の移動が認められる ( 図 -) なお本報告では今後崩壊や地すべりの発生する危険性の高い斜面を抽出するという目的から平成 23 年 ~11 月時の崩壊地のデータは除去している 3. 現地検証結果 3.1 対象斜面の地形及び地すべりの状況図 -6 DSM による変動量抽出結果

3.3 地表地質踏査結果図 -7 に DEM 及び地表地質結果を踏まえた微地形分類図図 -8,9 に断面図を示す道路を寸断した崩壊地は幅 60m 長さ 160m 最大崩壊深 11m である 1990 年に撮影された空中写真では末端部に表層崩壊が認められており河川の侵食が地すべり地形の末端部に及び平成 23 年 9 月の台風以前か30 ら不安定化していたことが伺える現在

3 3.3 地表地質踏査結果図 -7 に DEM 及び地表地質結果を踏まえた微地形分類図図 -8,9 に断面図を示す道路を寸断した崩壊地は幅 60m 長さ 160m 最大崩壊深 11m である 1990 年に撮影された空中写真では末端部に表層崩壊が認められており河川の侵食が地すべり地形の末端部に及び平成 23 年 9 月の台風以前か30 ら不安定化していたことが伺える現在道路の復旧に向けた対策工事が行われている崩壊箇所以外の地すべりブロックは土塊の安定性や段差クラックの分布状況からみて 4 段階 (Ⅰ~Ⅳ) の地すべりブロックに分類できる 3 地すべりブロックⅠは初生的な地すべりで対象地域の大局的な地すべり地形を形成している道路の西側には現在の崩壊地と最大 m 程度の比高を持つ崖錐堆積物が存在するが初生地すべり時に発生した土石流堆積物であると判断される滑落崖の北側は直線状の形態を示 40 し断層に規制されているブロック内部には地すべり性の緩斜面が多く分布し線状凹地も存在するが新鮮な変動痕跡は少ないただし滑落崖の一部には表層崩壊が発生している箇所も認められる植生は 0 年生のスギの植林が主体で植生の異常はほとんど認められない 4 地すべりブロックⅡ~Ⅳは地すべりブロックⅠの下方の副次的な地すべりブロックである平成 23 年 9 月に発生した新期崩壊に伴う応力解放により地表の段差線状凹地や植生の傾倒林冠ギャップが集中し不安定土塊となっているこのうち道路から東側に 0 ~60m 付近に連続する円弧状の段差地形までの範囲を地すべりブロックⅡ 地すべりブロックの押し出しに伴う末端崩壊の影響が大きく認められる範囲を地すべりブロックⅣ その中間を地すべりブロックⅢと分類した 3.4 DSM データの検証結果地表地質踏査によって確認された地すべりブロック Ⅰ~Ⅳの分布範囲について以下に DSM による変動特性とその現地検証結果についてまとめる 1) 地すべりブロックⅠ 初生的な地すべりブロックに該当する地すべりの滑動痕跡を示す新しい変状はほとんど認められなかった新鮮な土砂移動痕跡も認められず植生は 40~0 年生のスギ植林が主体であり根曲がりや傾き等の変状もほとんど認められない ( 写真 -1) DSM の解析でも変動量は検出されなかった図 -7 対象地域の微地形分類及び地表地質踏査結果

4 図 -8 地すべり地形全体の地質断面図 -9 不安定土塊の地質断面及び地表の変状

写真 -1 地すべりブロック Ⅰ の状況写真 -2 地すべりブロック Ⅰ と Ⅱ の境界に位置する開口クラック 2) 地すべりブロックⅡ 不安定化した土塊の頭部に該当し斜面や道路に開口クラックは存在する地すべりブロックⅠとⅡの境界は幅深さとも 0.

様々な方向に傾倒する樹木の微細な変動を捉 3 えたものと判断できる 3) 地すべりブロックⅢ ブロック南部にガリー状の開口クラックが認められた幅は 1.~2.m 深さは 1~1.

0m) が認められた ( 写真 -4) 植生の変状としては土塊内の杉の傾倒や倒木段差に沿って連続する林冠ギャップが4 認められた ( 写真 -) DSM の解析結果では変動量は ~m 変動ベクトルは地すべりの移動方向と概ね一致する結果が得られたこれは

5 写真 -1 地すべりブロック Ⅰ の状況写真 -2 地すべりブロック Ⅰ と Ⅱ の境界に位置する開口クラック 2) 地すべりブロックⅡ 不安定化した土塊の頭部に該当し斜面や道路に開口クラックは存在する地すべりブロックⅠとⅡの境界は幅深さとも 0.8m 程度の開口クラックが連続し移動土塊と不動の古期地すべり土塊との境界とな30 っている ( 写真 -2) この結果は DSM の時系列的解析で顕著な変動が検出された範囲と一致する DSM の変動量は概ね 1~m 変動ベクトルは N-S 方向 E-W 方向のデータが多いこれは地すべり頭部の引っ張りに伴い様々な方向に傾倒する樹木の微細な変動を捉 3 えたものと判断できる 3) 地すべりブロックⅢ ブロック南部にガリー状の開口クラックが認められた幅は 1.~2.m 深さは 1~1.mである ( 写真 40-3) この段差は地すべりの南側部に該当すると判断されるガリーの近傍には植生の根茎が引っ張られた段差地形 (N30 E, 幅 1.4m 比高 1.0m) が認められた ( 写真 -4) 植生の変状としては土塊内の杉の傾倒や倒木段差に沿って連続する林冠ギャップが4 認められた ( 写真 -) DSM の解析結果では変動量は ~m 変動ベクトルは地すべりの移動方向と概ね一致する結果が得られたこれは本ブロックが地すべりの並進土塊に当たるためと考えているまた DSM の変動量が地すべりブロックの移動量より大きな値を示したのは杉の樹高が ~30mであるため樹幹部で傾きが強調されたためと判断される 4) 地すべりブロックⅣ 末端部の押し出しに伴う崩壊が発生した斜面であり段差や倒木が顕著であるブロックの南側には地すべりブロックⅢから連続するガリーが認められた ( 写真 -6) DSM の解析結果を見ると本報告の対象地域内で最大の変動量 (N30 E 方向に m) を示し変動ベクトルは概ね崩壊の方向と一致した ( 写真 -7) しかし地すべり末端部では後方に傾倒した樹木もありこれらが DSM による移動方向の乱れとなっている写真 -3 地すべりブロック Ⅱ の南側部のガリー

写真 -4 地すべりの引っ張りに伴う植生の変状写真 - ガリー上部の林冠ギャップ写真 -6 地すべりブロック Ⅲ の南側部のガリー写真 -7 末端部の崩壊と植生の変状

で顕著な変動量及び変動ベクト30 ルが検出された範囲の整合性が高かったこれは段差地形や開口クラック等の地すべりの移動によって生じた変状が林冠ギャップや樹木の移動

地すべり前兆地形や危険斜面を抽出する有効な手法として期待できることが示された今後の課題としてが算出された3 次元移動ベクトルから地すべりブロックを区分し

(0): 航空レーザー測量による斜面ハザードマップ, 日本地すべり学会誌,Vol.42,No.4,pp.

6 写真 -4 地すべりの引っ張りに伴う植生の変状写真 - ガリー上部の林冠ギャップ写真 -6 地すべりブロック Ⅲ の南側部のガリー写真 -7 末端部の崩壊と植生の変状 4. まとめ本報告では航空レーザー測量の DSM データの時系列的解析結果を地表地質踏査により検証したこの結果地すべりの変動と DSM で顕著な変動量及び変動ベクト30 ルが検出された範囲の整合性が高かったこれは段差地形や開口クラック等の地すべりの移動によって生じた変状が林冠ギャップや樹木の移動傾きとして強調され DSM によって効果的に検出されたことによるものであるこのことにより DSM による解析は主に植生 3 の異常を指標として地すべり前兆地形や危険斜面を抽出する有効な手法として期待できることが示された今後の課題としてが算出された3 次元移動ベクトルから地すべりブロックを区分しすべり面の深さや崩壊土量の推定につなげ対策工の検討にあたっても実用化できるように高度化していくことが挙げられる文献 1) 稲垣秀輝鈴木浩二柴田拓外山康彦 (0): 航空レーザー測量による斜面ハザードマップ, 日本地すべり学会誌,Vol.42,No.4,pp ) 日本応用地質学会応用地形学研究部会 (12): 応用地形学図における地形工学的な地形表現に関する研究, 応用地質学会研究発表会講演集,pp2~216 3) 千田良道鈴木浩二 (12):2 時期の航空レーザー測量の DSM による移動土塊の抽出, 平成 24 年度砂防学会研究発表会,pp

<4D F736F F D20926E82B782D782E88CA48B865F938C89A18E5289E6919C89F090CD5F8FAC8CB45F2E646F63>

<4D F736F F D20926E82B782D782E88CA48B865F938C89A18E5289E6919C89F090CD5F8FAC8CB45F2E646F63> 画像解析による東横山地すべりの発生機構独立行政法人土木研究所土砂管理研究グループ上席研究員藤澤和範研究員小原嬢子 1. はじめに平成 13 年に土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 ( 以下土砂災害防止法 ) が制定され土砂災害警戒区域等の指定等のソフト対策が進められているしかし地すべりに関してはその前兆が見られない状態での特別警戒区域の設定が困難となっているまた

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