気候変化レポート2015 -関東甲信・北陸・東海地方- 第1章第4節

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(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

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IPCC 第1作業部会 第5次評価報告書 政策決定者のためのサマリー

( 第 1 章 はじめに ) などの総称 ) の信頼性自体は現在気候の再現性を評価することで確認できるが 将来気候における 数年から数十年周期の自然変動の影響に伴う不確実性は定量的に評価することができなかった こ の不確実性は 降水量の将来変化において特に顕著である ( 詳細は 1.4 節を参照 )

2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 横浜地方気象台月別累年順位更新表 横浜地方気象台冬日 夏日 真夏

正誤表 ( 抜粋版 ) 気象庁訳 (2015 年 7 月 1 日版 ) 注意 この資料は IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書の正誤表を 日本語訳版に関連する部分について抜粋して翻訳 作成したものである この翻訳は IPCC ホームページに掲載された正誤表 (2015 年 4 月 1

1. 天候の特徴 2013 年の夏は 全国で暑夏となりました 特に 西日本の夏平均気温平年差は +1.2 となり 統計を開始した 1946 年以降で最も高くなりました ( 表 1) 8 月上旬後半 ~ 中旬前半の高温ピーク時には 東 西日本太平洋側を中心に気温が著しく高くなりました ( 図 1) 特

電気使用量集計 年 月 kw 平均気温冷暖平均 基準比 基準比半期集計年間集計 , , ,

2. エルニーニョ / ラニーニャ現象の日本への影響前記 1. で触れたように エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海洋 大気場と密接な関わりを持つ大規模な現象です そのため エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海流や大気の流れを通じたテレコネクション ( キーワード ) を経て日本へも影響


( 第 2 章異常気象と気候変動の将来の見通し ) 第 2 章異常気象と気候変動の将来の見通し 2.1 気候変動予測と将来シナリオ本節では 異常気象と気候変動の将来の予測を述べる前に それらの定量的な評価を可能にしている気候モデルと これに入力する将来の社会像について述べる 気候変動予測

2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 平成 21 年 (2009 年 ) の月別累年順位更新表 ( 横浜 ) 23

IPCC 第 5 次報告書における排出ガスの抑制シナリオ 最新の IPCC 第 5 次報告書 (AR5) では 温室効果ガス濃度の推移の違いによる 4 つの RCP シナリオが用意されている パリ協定における将来の気温上昇を 2 以下に抑えるという目標に相当する排出量の最も低い RCP2.6 や最大

はじめに 東京の観測値 として使われる気温などは 千代田区大手町 ( 気象庁本庁の構内 ) で観測 気象庁本庁の移転計画に伴い 今年 12 月に露場 ( 観測施設 ) を北の丸公園へ移転予定 天気予報で目にする 東京 の気温などの傾 向が変わるため 利 者へ 分な解説が必要 北の丸公園露場 大手町露

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地球温暖化に関する知識

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2. 背景わが国では気候変動による様々な影響に対し 政府全体として整合のとれた取組を総合的かつ計画的に推進するため 2015 年 11 月 27 日に 気候変動の影響への適応計画 が閣議決定されました また 同年 12 月の国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議で取りまとめられた 新たな国際的な

2.1 の気温の長期変化 の 6 地点の 1890~2010 年の 121 年間における年平均気温平年 差の推移を図 2.1-2に示す の年平均気温は 100 年あたり1. 2 ( 統計期間 1890~2010 年 ) の割合で 統計的に有意に上昇している 長期変化傾向を除くと 1900 年代後半と

資料6 (気象庁提出資料)

(1) 継続的な観測 監視 研究調査の推進及び情報や知見の集積〇気候変動の進行状況の継続的な監視体制 気象庁では WMO の枠組みの中で 気象要素と各種大気質の観測を行っている 1 現場で観測をしっかりと行っている 2 データの標準化をしっかりと行っている 3 データは公開 提供している 気象庁気象

風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

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報道発表資料 平成 26 年 11 月 2 日 文 部 科 学 省 経 済 産 業 省 気 象 庁 環 境 省 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 5 次評価報告書 統合報告書の公表について 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 40 回総会 ( 平成 26 年 10 月 27

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IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書概要 ( 気象庁訳 ) 正誤表 (2015 年 12 月 1 日修正 ) 第 10 章気候変動の検出と原因特定 : 地球全体から地域まで 41 ページ気候システムの特性第 1 パラグラフ 15 行目 ( 誤 ) 平衡気候感度が 1 以下である可能性

過去約 130 年の年平均気温の変化傾向 (1891~2017 年 ) 図 緯度経度 5 度の格子ごとに見た年平均気温の長期変化傾向 (1891~2017 年 ) 図中の丸印は 5 5 格子で平均した 1891~2017 年の長期変化傾向 (10 年あたりの変化量 ) を示す 灰色は長期

平成 30 年 2 月の気象概況 2 月は 中旬まで冬型の気圧配置が多く 強い寒気の影響を受け雪や雨の日があった 下旬は短い周期で天気が変化した 県内アメタ スの月降水量は 18.5~88.5 ミリ ( 平年比 29~106%) で 大分 佐賀関 臼杵 竹田 県南部で平年並の他は少ないかかなり少なか

気候変動に関する科学的知見の整理について (前回資料2)

報道発表資料

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2.1 の気温の長期変化 の年平均気温平年差の推 移を図 に示す の年平均気温は 100 年あ たり 1.3 の割合で上昇している 長 期変化傾向を除くと 1900 年代後半 と 1920 年代半ばから 1940 年代半ば までは低温の時期が続いた 1960 年 頃に高温の時期があり 1

第 12 章環境影響評価の結果 12.1 調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果

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2018 年 12 月の天候 ( 福島県 ) 月の特徴 4 日の最高気温が記録的に高い 下旬後半の会津と中通り北部の大雪 平成 31 年 1 月 8 日福島地方気象台 1 天候経過 概況この期間 会津では低気圧や寒気の影響で曇りや雪または雨の日が多かった 中通りと浜通りでは天気は数日の周期で変わった

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火山活動解説資料 ( 令和元年 5 月 ) 栗駒山の火山活動解説資料 ( 令和元年 5 月 ) 仙台管区気象台地域火山監視 警報センター 火山活動に特段の変化はなく 静穏に経過しており 噴火の兆候は認められません 30 日の噴火警戒レベル運用開始に伴い 噴火予報 ( 噴火警戒レベル 1 活火山である

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橡Ⅰ.企業の天候リスクマネジメントと中長期気象情

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第 41 巻 13 号 大分県農業気象速報令和元年 5 月上旬 大分県大分地方気象台令和元年 5 月 1 3 日

NO2/NOx(%)

温水性のカワアナゴ テンジクカワアナゴ ボウズハゼ ナンヨウボウズハゼ ウロハゼの 5 種をとり上げ 確認状況を整理しました これら 5 種はいずれも現状で分布の北限が日本列島上にあると考えられます また両側回遊性のため海を通じて分布域の変化が可能なため 純淡水魚と比較すると 温度変化による分布域変

図 1 COBE-SST のオリジナル格子から JCDAS の格子に変換を行う際に用いられている海陸マスク 緑色は陸域 青色は海域 赤色は内海を表す 内海では気候値 (COBE-SST 作成時に用いられている 1951~2 年の平均値 ) が利用されている (a) (b) SST (K) SST a

Executive summary


IPCC 第 5 次評価報告書に向けた将来シナリオの検討日本からの貢献とその意義環境研究総合推進費 A 1103 統合評価モデルを用いた世界の温暖化対策を考慮したわが国の温暖化政策の効果と影響 藤森真一郎 国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト一般公開

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2

などの極端現象も含め 気候変動による影響を評価している さらに AR4 は 長期的な展望として 適応策と緩和策のどちらも その一方だけではすべての気候変動の影響を防ぐことができないが 両者は互いに補完し合い 気候変動のリスクを大きく低減することが可能であることは 確信度が高い とし 最も厳しい緩和努

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い水が海面近くに湧き上っている 図 (a) をみると 太平洋赤道域の海面水温は西部で高く 東部で低くなっていることがわかる また 北半球 ( 南半球 ) の大陸の西岸付近では 岸に沿って南向き ( 北向き ) の風が吹くと 海面付近の暖かい海水は風の方向に力を受けるとともに 地球自転に

第 41 巻 21 号 大分県農業気象速報令和元年 7 月下旬 大分県大分地方気象台令和元年 8 月 1 日

本州の南岸沿いに梅雨前線が停滞するようにな ると梅雨の季節である 急激に日照時間が少なく なり ぐずついた天気が続く 梅雨の前半は 冷 たく湿った東寄りの風 ( ヤマセ ) が吹き 浜通り を中心に低温になることがあるが 会津ではその 影響は小さい 梅雨が明けると気温は上昇し ま た日照時間も急激に

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台風経路図 9 月 5 日 09 時温帯低気圧に変わる 9 月 4 日 14 時頃兵庫県神戸市付近に上陸 9 月 4 日 12 時頃徳島県南部に上陸 8 月 28 日 09 時南鳥島近海で台風第 21 号発生 -2-

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() 実験 Ⅱ. 太陽の寿命を計算する 秒あたりに太陽が放出している全エネルギー量を計測データをもとに求める 太陽の放出エネルギーの起源は, 水素の原子核 4 個が核融合しヘリウムになるときのエネルギーと仮定し, 質量とエネルギーの等価性から 回の核融合で放出される全放射エネルギーを求める 3.から

図 表 2-1 所 得 階 層 別 国 ごとの 将 来 人 口 の 推 移 ( 億 人 ) 開 発 途 上 国 中 間 国 先 進 国

Transcription:

第 4 節富士山 父島 南鳥島の気候変化 4.1 富士山 父島 南鳥島の地勢富士山 ( 標高 3776m) は 日本一の名山として万葉集などの古歌にもうたわれる日本の最高峰で 山梨県と静岡県にまたがる成層火山である 昭和 7 年 (1932 年 ) に 中央気象台 ( 現気象庁 ) が臨時富士山頂観測所を開設した その後 富士山測候所が山頂の剣が峰に設置され 平成 20 年 10 月 1 日からは特別地域気象観測所に移行して気象観測が続けられている 東京都に属する小笠原諸島の父島は 東京の南約 981km 北緯 27 度 05 分 東経 142 度 11 分に位置する太平洋上の面積約 24km 2 の海洋島である ( 参考 : 山手線の内側 63km 2 ) 同じく東京都に属する南鳥島は珊瑚礁でできた小さな島で 東京からは南東へ約 1862km 北緯 24 度 17 分 東経 153 度 59 分に位置し日本の最東端として知られている 南鳥島はほぼ正三角形で その一辺の長さはおよそ 2km 標高は最高地点でも約 9m である 気象庁では父島と南鳥島に気象観測所を設置して気象観測を行なっている なお 南鳥島には気象庁と海上自衛隊南鳥島航空派遣隊及び関東地方整備局東京港湾事務所南鳥島港湾保全管理所の職員が常駐している 麓と山頂の年平均気温を比較すると 麓 ( 御殿場 : 標高 472m) では 12.8 山頂では-6.2 で差は 19 にもなる また これまでに山頂では最高気温 17.8 (1942 年 8 月 13 日 ) 最低気温 -38.0 (1981 年 2 月 27 日 ) を記録している なお 日最大風速は西南西 72.5m/s(1942 年 4 月 5 日 ) 日最大瞬間風速は南南西 91.0m/s(1966 年 9 月 25 日 ) がこれまでの記録である 父島と南鳥島は周囲が海であることから 最高気温と最低気温の平年値の差がそれぞれ 4.4 4.8 と小さいという特徴を持つ ( 東京 ( 千代田区 ) の差は 8.2 ) 富士山 父島 南鳥島と東京 ( 千代田区 ) のそれぞれの年平均気温 年降水量 相対湿度 日照時間の一覧は次の表のとおりである 平均気温年降水量相対湿度日照時間地点 ( ) (mm) (%) ( 時間 ) 富士山 -6.2 /// /// /// 父島 23.2 1292.5 77 2038.5 南鳥島 25.6 1053.6 76 2805.3 東京 15.4 1528.8 65 1876.7 4.2 富士山 父島 南鳥島の気候富士山は独立峰であることから 麓と山頂の気温や風向 風速が相違するほかに 1 日の中でも気象の変化が大きいことが知られている 南鳥島 ( 東京都 ) の全景 富士山 ( 山梨県 静岡県 ) 父島 南鳥島と東京の位置 114

4.3 富士山 1 富士山特別地域気象観測所における平均気温の長期変化富士山特別地域気象観測所で観測された年平均気温の経年変化を図 4.3.1 に 季節ごとの平均気温の経年変化を図 4.3.2 に示す ( 統計期間 :1932 ~2014 年 ) 年平均気温には上昇傾向がみられる 季節別に見ると 春には変化傾向がみられないが 夏 秋 冬の平均気温は上昇傾向がみられる 冬の上昇幅は他の季節に比べて大きい 長期変化傾向 :+1.1( /100 年 ) 平年値 :-6.2 図 4.3.1 富士山特別地域気象観測所の年平均気温の経年変化 長期変化傾向 :+0.8( /100 年 ) 平年値 :-8.8 平年値 :4.1 春 (3~5 月 ) 夏 (6~8 月 ) 長期変化傾向 :+1.5( /100 年 ) 長期変化傾向 :+1.2( /100 年 ) 平年値 :-3.0 平年値 :-17.2 秋 (9~11 月 ) 冬 (12~2 月 ) 図 4.3.2 富士山特別地域気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化 115

2 富士山特別地域気象観測所における最高気温と最低気温の長期変化富士山特別地域気象観測所で観測された日最高気温と日最低気温の年平均値の経年変化を 図 4.3.3 と図 4.3.4 に示す ( 統計期間 :1932~2014 年 ) 最高気温 最低気温ともに上昇傾向がみられる 冬の上昇幅は他の季節に比べて大きい ( 季節ごとの経年変化のグラフは掲載略 ) 3 富士山特別地域気象観測所における冬日の長期変化富士山特別地域気象観測所で観測された冬日の年間日数の経年変化を図 4.3.5 に示す ( 統計期間 :1933~2014 年 ) 冬日日数には変化傾向はみられない 長期変化傾向 :+1.1( /100 年 ) 平年値 :-3.4 図 4.3.3 富士山特別地域気象観測所の日最高気温の年平均の経年変化 平年値 :276.7 日 図 4.3.5 富士山特別地域気象観測所の冬日日数の経年変化 長期変化傾向 :+0.8( /100 年 ) 平年値 :-9.3 図 4.3.4 富士山特別地域気象観測所の日最低気温の年平均の経年変化 116

4.4 父島 1 父島気象観測所 ( 小笠原村父島 ) における平均気温の長期変化父島気象観測所で観測された年平均気温の経年変化を図 4.4.1 に 季節ごとの平均気温の経年変化を図 4.4.2 に示す ( 統計期間 :1968~2014 年 ) 年平均気温には上昇傾向がみられる 季節別に見ると 夏と秋の平均気温には上昇傾向がみられるが 春と冬には変化傾向がみられない 2 父島気象観測所 ( 小笠原村父島 ) における降水量の長期変化父島気象観測所で観測された年降水量の経年変化を図 4.4.3 に示す ( 統計期間 :1969~2014 年 ) 年降水量には変化傾向はみられない 長期変化傾向 :+0.6( /50 年 ) 図 4.4.1 父島気象観測所の年平均気温の経年変化 平年値 :23.2 図 4.4.3 父島気象観測所の年降水量の経年変化 平年値 :1292.5mm 長期変化傾向 :+0.5( /50 年 ) 平年値 :21.1 平年値 :27.0 春 (3~5 月 ) 夏 (6~8 月 ) 長期変化傾向 :+0.9( /50 年 ) 平年値 :25.7 平年値 :18.8 秋 (9~11 月 ) 冬 (12~2 月 ) 図 4.4.2 父島気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化 117

3 父島気象観測所 ( 小笠原村父島 ) における最高気温と最低気温の長期変化父島気象観測所で観測された日最高気温と日最低気温の年平均の経年変化を 図 4.4.4 と図 4.4.5 に示す ( 統計期間 :1969~2014 年 ) 最高気温 最低気温ともに上昇傾向がみられる 冬の上昇幅は他の季節に比べて大きい ( 季節ごとの経年変化のグラフは掲載略 ) 4 父島気象観測所 ( 小笠原村父島 ) における真夏日と熱帯夜の日数の長期変化父島気象観測所で観測された真夏日 熱帯夜の年間日数の経年変化を 図 4.4.6 と図 4.4.7 に示す ( 統計期間 :1969~2014 年 ) 真夏日日数 熱帯夜日数ともに増加傾向がみられる 長期変化傾向 :+0.6( /50 年 ) 長期変化傾向 :+21( 日 /50 年 ) 平年値 :25.4 図 4.4.4 父島気象観測所の日最高気温の年平均の経年変化 平年値 :52.9 日 図 4.4.6 父島気象観測所の真夏日日数の経年変化 長期変化傾向 :+0.8( /50 年 ) 長期変化傾向 :+42( 日 /50 年 ) 平年値 :21.0 図 4.4.5 父島気象観測所の日最低気温の年平均の経年変化 図 4.4.7 父島気象観測所の熱帯夜日数の経年変化 平年値 :85.5 日 118

4.5 南鳥島 1 南鳥島気象観測所 ( 小笠原村南鳥島 ) における気温の長期変化南鳥島気象観測所で観測された年平均気温の経年変化を図 4.5.1 に 季節ごとの平均気温の経年変化を図 4.5.2 に示す ( 統計期間 :1951~2014 年 ) 年平均気温と春と夏の平均気温には上昇傾向がみられるが 秋と冬の平均気温には変化傾向がみられない 1963~1968 年には観測が中止されていた期間がある 2 南鳥島気象観測所 ( 小笠原村南鳥島 ) における降水量の長期変化南鳥島気象観測所で観測された年降水量の経年変化を図 4.5.3 に示す ( 統計期間 :1970~2014 年 ) 年降水量には変化傾向はみられない 長期変化傾向 :+0.3( /50 年 ) 図 4.5.1 南鳥島気象観測所の年平均気温の経年変化 平年値 :25.6 平年値 :1053.6mm 図 4.5.3 南鳥島気象観測所の年降水量の経年変化 長期変化傾向 :+0.5( /50 年 ) 長期変化傾向 :+0.3( /50 年 ) 平年値 :24.2 平年値 :28.1 春 (3~5 月 ) 夏 (6~8 月 ) 平年値 :27.5 平年値 :22.7 秋 (9~11 月 ) 冬 (12~2 月 ) 図 4.5.2 南鳥島気象観測所の季節ごとの平均気温の経年変化 119

3 南鳥島気象観測所 ( 小笠原村南鳥島 ) における最高気温と最低気温の長期変化南鳥島気象観測所で観測された日最高気温と日最低気温の年平均の経年変化を 図 4.5.4 と図 4.5.5 に示す ( 統計期間 :1952~2014 年 ) 最高気温には上昇傾向がみられるが 最低気温には変化傾向はみられない 4 南鳥島気象観測所 ( 小笠原村南鳥島 ) における真夏日と熱帯夜の日数の長期変化南鳥島気象観測所で観測された真夏日 熱帯夜の年間日数の経年変化を 図 4.5.6 と図 4.5.7 に示す ( 統計期間 : 真夏日日数 1970~2014 年 熱帯夜日数 1952~2014 年 ) 真夏日日数には増加傾向がみられるが 熱帯夜日数には変化傾向はみられない 1963~1968 年には観測が中止されていた期間がある 長期変化傾向 :+0.4( /50 年 ) 長期変化傾向 :+37( 日 /50 年 ) 平年値 :28.3 図 4.5.4 南鳥島気象観測所の日最高気温の年平均の経年変化 平年値 :137.7 日 図 4.5.6 南鳥島気象観測所の真夏日日数の経年変化 平年値 :23.5 図 4.5.5 南鳥島気象観測所の日最低気温の年平均の経年変化 平年値 :142.7 日 図 4.5.7 南鳥島気象観測所の熱帯夜日数の経年変化 120

トピック 気候変化予測と RCP シナリオ気候モデルを用いて気候変化を予測するためには 人間活動によって将来の大気中の温室効果ガスの排出量などがどのように変化するかを仮定する必要がある IPCC の第 4 次評価報告書までは 温室効果ガスの排出シナリオとして SRES(Special Report on Emissions Scenarios) というシナリオを用いていた SRES シナリオは 今後の社会 経済動向がどうなるかを複数想定した上で ( 図 1) 仮定した将来像ではどれくらいの温室効果ガスが排出されるのかを導き出すという手法を採っている 図 2 RCP シナリオに基づく放射強制力 RCP シナリオで定める 4 つの放射強制力の経路を実線で示す 破線は SRES シナリオに基づいて求めた放射強制力である 異常気象レポート 2014 から引用 図 1 SRES シナリオの概念図 SRES シナリオでは 経済発展とグローバル化の 2 つの方向性で世界の将来像を表す IPCC 第 3 次評価報告書から引用 IPCC 第 5 次評価報告書では 排出シナリオは RCP シナリオという方法に変更された RCP とは Representative Concentration Pathways の略称であり 代表的濃度経路 と訳されている RCP シナリオでは 代表的な将来の放射強制力の経路に基づいて 気候モデルによる気候予測を行う ( 図 2) 放射強制力に対応 比較できる社会 経済的シナリオは 気候モデルの計算とは別途に用意をする RCP シナリオでは RCP2.6( 低位安定化シナリオ : 気温上昇を 2 に抑えることを想定 ) RCP8.5( 高位参照シナリオ : 政策的な緩和策を行わないことを想定 ) 及びそれらの間に位置する RCP4.5( 中位安定化シナリオ ) と RCP6.0( 高位安定化シナリオ ) の 4 シナリオが選択された なお 本書の将来予測で用いている SRES の A1B シナリオは RCP6.0 シナリオにほぼ相当する 放射強制力 とは 人間活動の影響でどれだけ大気を暖めるかを示す指標のこと 放射強制力が正の場合には地球を暖める効果を持ち 値が大きいほど暖める効果が大きい事をしめす 社会 経済的な将来像と将来予測が 1 対 1 で対応する SRES シナリオと比べて RCP シナリオでは各シナリオに複数の社会経済の将来像を対応 比較させることが出来る ( 図 3) 気候モデルによる予測には大量の計算機資源を要するが RCP シナリオでは気候予測と社会 経済的な将来像の想定を別途に行なうため 多様な将来像を仮定して 様々な手段がある緩和策の効果やその結果現れる気候変化による影響を見ることができる これにより 例えば 気温上昇を に抑えるためには といった目標主導型の社会経済シナリオを複数作成して検討することが可能となる 図 3 気候予測と将来像の対応の違い SRES シナリオ ( 上段 ) と RCP シナリオ ( 下段 ) で仮定する将来像の違いを示す SRES シナリオでは気候予測と将来像が同数だが RCP シナリオでは気候予測に対して複数の将来像を対応させることが出来る 異常気象レポート 2014 から引用 121

トピック 最近の気温上昇の停滞図 1 上段に示すように 世界の年平均気温は長期的に上昇しており その上昇率は 100 年あたり 0.71 (1891~2015 年 ) となっている しかし 最近 15 年程度の期間に注目してみると 2013 年までは 1998 年に観測した年平均気温偏差の +0.22 という高温の記録を更新することがなく 気温は横ばい傾向となっていた 一方 CO 2 などの温室効果ガスの濃度はこの間も増加を続けており IPCC 第 4 次 第 5 次評価報告書で用いられていた気候モデルの計算結果では 気温上昇が持続することを予測していた ( 第 1 図下段 ) このような最近の世界平均気温の横ばい傾向 ( 停滞 を意味する英語から hiatus( ハイエイタス ) と呼ばれる ) と 温室効果ガスの増加や気 候モデルが予測する気温上昇との乖離についての研究が 近年は盛んに行われている その成果によると 1 火山噴火や約 11 年周期の太陽活動の下降位相の時期であったことによる太陽放射の減少 2 気候システムの内部変動による影響 の 2 つが主な要因と考えられている 後者の2の影響については 1998 年以降 太平洋熱帯域中部 ~ 東部の海面水温が低い状態が持続しやすい位相にあり この間の地球温暖化により蓄積された熱エネルギーの多くが深海を含む海洋内部に再配分されていたため 大気の温度上昇として現れていなかったと考えられている 図 2 は 気候システムの中で蓄えられた熱量の経年変化である 大気に比べて海洋は膨大な熱量を蓄える力を持っている これまでに地球の気候システムが蓄積してきた熱量の 90% 以上は 海水の温度上昇に使われていることが分かる 海洋の温暖化は近年の hiatus の期間でも続いており 大気の温度上昇は海洋内部の変動のわずかな揺らぎが大きく影響しているとみることも出来る なお 2014 年や 2015 年の世界の年平均気温はエルニーニョ現象の影響も要因となって高温となった 地球温暖化の進行を適確に検出するには 大気だけでなく 海洋を含めた気候システム全体を長期的な観点で監視していくことが不可欠である 図 1 世界の年平均気温の経年変化と気候モデルによる予測結果 ( 上 )1891 年以降 長期的には 100 年あたり 0.71 の割合で上昇しているが 近年に着目すると 1998 年に統計開始からの 1 位の高温となって以降 横ばいの傾向となっている ( 赤枠囲み部分 ) ( 下 )IPCC 第 4 次評価報告書 第 5 次評価報告書における予測等の根拠になった気候モデルによる過去から 2020 年までの再現 予測実験を観測値と比較したもの 緑と黄色の細線は個々の気候モデルによる予測値 文部科学省 気象庁 環境省 (2013) より 一部改変し引用 図 2 気候システムの各要素に蓄えられた熱量の経年変化 1971 年を基準とした変化量で示している IPCC(2013) より引用 122