Microsoft Word - Masuyama.docx

Similar documents
博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文


商学 63‐1・2☆/5.冨田

Microsoft Word - sato docx

商業学会発表資料( ).ppt

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

<4D F736F F F696E74202D2091E63989F1837D815B F A B836093C1985F D816A2E >

66-4 正岡・二宮先生.pwd

過去の習慣が現在の習慣に与える影響 インターネットの利用習慣の持ち越し 松岡大暉 ( 東北大学教育学部 ) 1 問題関心本研究の目的は, インターネットの利用の習慣について, 過去のインターネットの利用習慣が現在のインターネットの利用の習慣に影響を与えるかを検証することである. まず, 本研究の中心

Microsoft Word - manuscript_kiire_summary.docx

どのような生活を送る人が インターネット通販を高頻度で利用しているか? 2013 年 7 月 公益財団法人流通経済研究所主任研究員鈴木雄高 はじめにもはやそれなしでの生活は考えられない このように インターネット通販を生活に不可欠な存在と位置付ける人も多いであろう 実際 リアル店舗で買えて ネットで

論文内容の要旨

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

Microsoft Word - 概要3.doc

ISO9001:2015内部監査チェックリスト

( 続紙 1 ) 京都大学博士 ( 経済学 ) 氏名衣笠陽子 論文題目 医療経営と医療管理会計 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 医療機関経営における管理会計システムの役割について 制度的環境の変化の影響と組織構造上の特徴の両面から考察している 医療領域における管理会計の既存研究の多くが 活動基準原

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

QOL) を向上させる支援に目を向けることが必要になると考えられる それには統合失調症患者の生活の質に対する思いや考えを理解し, その意向を汲みながら, 具体的な支援を考えなければならない また, そのような背景のもと, 精神医療や精神保健福祉の領域において統合失調症患者の QOL 向上を目的とした

1. 研究の目的本研究は 米国および日本のインターネット広告の分野で急成長している行動ターゲティングの特性抽出ならびに有効性分析を通じて 購買行動への影響および潜在需要の顕在化効果を明らかにしていくものである 研究の目的は次の 4 項目である 第 1 に ターゲティング広告が どのような特性を備えて

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド (PMBOK ガイド ) 第 6 版 訂正表 - 第 3 刷り 注 : 次の正誤表は PMBOK ガイド第 6 版 の第 1 刷りと第 2 刷りに関するものです 本 ( または PDF) の印刷部数を確認するには 著作権ページ ( 通知ページおよび目次の前 )

療養病床に勤務する看護職の職務関与の構造分析

Microsoft Word - JSQC-Std 目次.doc

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 利害関係者の特定 QMS 適用範囲 3. ISO 9001:2015への移行 リーダーシップ パフォーマンス 組織の知識 その他 ( 考慮する 必要に応

ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

スライド 1

多変量解析 ~ 重回帰分析 ~ 2006 年 4 月 21 日 ( 金 ) 南慶典

Microsoft Word - 鈴木_卒論.doc

様式 3 論文内容の要旨 氏名 ( 神﨑光子 ) 論文題名 周産期における家族機能が母親の抑うつ 育児自己効力感 育児関連のストレス反応に及ぼす影響 論文内容の要旨 緒言 女性にとって周産期は 妊娠 分娩 産褥各期の身体的変化だけでなく 心理的 社会的にも変化が著しいため うつ病を中心とした気分障害

産学共同研究 報告書

Microsoft Word - 209J4009.doc

J-SOX 自己点検評価プロセスの構築

ISO 9001:2015 改定セミナー (JIS Q 9001:2015 準拠 ) 第 4.2 版 株式会社 TBC ソリューションズ プログラム 年版改定の概要 年版の6 大重点ポイントと対策 年版と2008 年版の相違 年版への移行の実務

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

研究レビューミーティング プレゼン資料 テンプレート

EBNと疫学

コーチング心理学におけるメソッド開発の試み 東北大学大学院 徳吉陽河

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

4.2 リスクリテラシーの修得 と受容との関 ( ) リスクリテラシーと 当該の科学技術に対する基礎知識と共に 科学技術のリスクやベネフィット あるいは受容の判断を適切に行う上で基本的に必要な思考方法を獲得している程度のこと GMOのリスクリテラシーは GMOの技術に関する基礎知識およびGMOのリス

Powered by TCPDF ( Title 組織のスラック探索に関する包括的モデルの構築と実証研究 Sub Title On the comprehensive model of organizational slack search Author 三橋, 平 (M

博士学位請求論文 審査報告書 2017 年 12 月 28 日 審査委員 ( 主査 ) 経営学部専任教授 氏名鈴木研一印 ( 副査 ) 経営学部専任教授 氏名森久印 ( 副査 ) 経営学部専任教授 氏名大倉学印 1 論文提出者細田雅洋 2 論文題名企業の社会的責任の遂行を促進するためのマネジメント

こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案

スライド 1

サマリー記載について

甲37号

Microsoft PowerPoint - データ解析発表2用パワポ

Medical3

ISO19011の概要について

Microsoft Word - 1_CSテキスト

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

た 観衆効果は技能レベルによって作用が異なっ 計測をした た 平均レベル以下の選手は観衆がいると成績が 下がったが, 平均以上の選手は観衆に見られると成績が上がった 興味深いことに, 観衆効果は観衆の数に比例してその効果を増すようである ネビルとキャン (Nevill and Cann, 1998)

表 5-1 機器 設備 説明変数のカテゴリースコア, 偏相関係数, 判別的中率 属性 カテゴリー カテゴリースコア レンジ 偏相関係数 性別 女性 男性 ~20 歳台 歳台 年齢 40 歳台

早稲田大学大学院日本語教育研究科 修士論文概要書 論文題目 ネパール人日本語学習者による日本語のリズム生成 大熊伊宗 2018 年 3 月

簿記教育における習熟度別クラス編成 簿記教育における習熟度別クラス編成 濱田峰子 要旨 近年 学生の多様化に伴い きめ細やかな個別対応や対話型授業が可能な少人数の習熟度別クラス編成の重要性が増している そのため 本学では入学時にプレイスメントテストを実施し 国語 数学 英語の 3 教科については習熟

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 関連する利害関係者の特定 プロセスの計画 実施 3. ISO 14001:2015への移行 EMS 適用範囲 リーダーシップ パフォーマンス その他 (

顧客の気まずさ リレーションシップ マーケティングのジレンマ 高銘鴻 論文要旨 1. 本論文の構成 本論文は7 章構成となっている 第 1 章では 問題意識を整理し, 本論文全体の流れについて簡潔に説明する 本研究を行うきっかけとなった 顧客が経験する気まずさ について紹介し 従来のリレーションシッ

修-CIA Exam Change Handbook_FAQs_ indd

因子分析

Microsoft PowerPoint - 05 資料5 白井委員

Microsoft Word - IRCA250g APG EffectivenessJP.doc

Microsoft PowerPoint - 04_01_text_UML_03-Sequence-Com.ppt

<4D F736F F F696E74202D2091E6368FCD5F95F18D908B7982D D815B >

高齢者の健康及び長寿医療制度アンケート調査のご協力のお願い

Microsoft Word - youshi1113

事例から振り返る    調査プロセスの検証

1 はじめに 85

問題 近年, アスペルガー障害を含む自閉症スペク トラムとアレキシサイミアとの間には概念的な オーバーラップがあることが議論されている Fitzgerld & Bellgrove (2006) 福島 高須 (20) 2

2015 3

<4D F736F F F696E74202D A B837D836C CA48F435F >

Microsoft Word - cjs63B9_ docx

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 勝又さん.pptx

と 測定を繰り返した時のばらつき の和が 全体のばらつき () に対して どれくらいの割合となるかがわかり 測定システムを評価することができる MSA 第 4 版スタディガイド ジャパン プレクサス (010)p.104 では % GRR の値が10% 未満であれば 一般に受容れられる測定システムと

「訪問診療において看護師が同席する意義とメリットについて」

横浜市環境科学研究所

働き方の現状と今後の課題

Microsoft PowerPoint - e-stat(OLS).pptx

untitled

目次 I. 調査概要 II. 調査票 調査目的調査期間調査対象調査方法サンプル数 III. 属性調査結果 性別年齢入院病棟入院日数当院を選んだ理由 IV. 満足度調査結果 1. 満足度ポイント一覧 2. 満足度構成比率総合満足度医療サービス施設 設備 情報提供師の接遇の接遇の接遇 V. ポートフォリ

2017年度患者さん満足度調査結果(入院)

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名小山内秀和 論文題目 物語世界への没入体験 - 測定ツールの開発と読解における役割 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 読者が物語世界に没入する体験を明らかにする測定ツールを開発し, 読解における役割を実証的に解明した認知心理学的研究である 8

第 18 回 JAB/ISO 9001 公開討論会 2012 年 3 月 13 日 ISO 9001 認証の ブランド価値を高める 東京大学大学院飯塚悦功

PowerPoint プレゼンテーション

27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

いままでの大学評価 これからの大学評価

平成30年度 患者様満足度調査 【外 来】

chap03.indd

目 次 第 1 章イントロダクション第 2 章先行研究のレビュー第 3 章仮説の提唱第 4 章調査方法第 5 章分析結果第 6 章考察と今後の課題

実習指導に携わる病棟看護師の思い ‐ クリニカルラダーのレベル別にみた語りの分析 ‐

経営戦略研究_1.indb

調査概要 NPS( ネット プロモーター スコア )* という指標は顧客が企業の商品やサービスをどの程度推奨しているかを計るものである そして推奨度が高ければ高い顧客ほどリピート率が高く 口コミによる新規顧客の獲得にもつながるため NPS を向上させることで収益を上げることができるとされている そこ

Microsoft Word - intl_finance_09_lecturenote

<4D F736F F F696E74202D ED089EF959F8E838A7789EF C835B BB82CC A332090DD92758EE591CC8F4390B38CE3205

DSOC_DSR-04

13章 回帰分析

AAプロセスアフローチについて_ テクノファーnews

Microsoft PowerPoint - 審査会_林.ppt

解答のポイント 第 1 章問 1 ポイント仮に1 年生全員の数が 100 人であったとする.100 人全員に数学の試験を課して, それらの 100 人の個人個人の点数が母集団となる. 問 2 ポイント仮に10 人を抽出するとする. 学生に1から 100 までの番号を割り当てたとする. 箱の中に番号札

RSS Higher Certificate in Statistics, Specimen A Module 3: Basic Statistical Methods Solutions Question 1 (i) 帰無仮説 : 200C と 250C において鉄鋼の破壊応力の母平均には違いはな

Transcription:

中央大学商学部久保知一研究室第 3 期卒業論文 患者満足の構成要素の究明 表層サービスによる満足形成の是非 増山絵里 中央大学商学部久保知一研究室第 3 期生 E-mail: t0kageccha@yahoo.co.jp 要約 : 医療機関における顧客 ( 患者 ) 満足は 営利企業以上に重要な概念であり 患者満足に関する研究は盛んに行われている しかし 実態の記述に終わっている傾向が多く見られ より一般化可能な研究が求められる そこで本研究では 医療サービスを 本質サービスと表層サービスとに分け SERVQUAL モデルを用いて 患者満足の構造を解明することを目的とする 潜在ユーザーに対して行った質問票調査のデータをもとに 共分散構造分析を行った 分析の結果 満足に影響を与えるのは 本質サービスではなく 表層サービスであるということが実証された キーワード : 患者満足本質サービス表層サービス SERVQUAL モデル共分散構造分析 1. イントロダクション近年 マーケティング概念は非営利組織である医療機関においても注目されてきており 実際にマーケティングを実行する医療機関は増えている 医療経済学者 Donabedian (1966) は 一般産業界における顧客満足という概念は 企業の収益性を向上させるためのツール すなわち企業の間接的成果目標であるという 一方 医療機関における患者満足概念は それ自体が評価の対象となりうるという 直接的成果目標であると主張している つまり医療機関においては 一般の営利企業以上に 顧客 ( 患者 ) 満足は重要な概念なのである そのため患者満足に関する研究の蓄積は十分にあるが 経験的な検討に基盤をおいた 1

患者満足の構造解明ものが多い またそれらは実態の記述に終わっている傾向が見受けられる そのため 仮説の理論的背景が明らかにされていないという課題がある また 医療に対する満足を高めるためには 医療サービスの中心である診察 治療だけではなく それを取り巻く周辺環境を含んだ総合的なサービスを提供することが重要な要素となってくる これを嶋口 (1994) では本質サービスと表層サービスに分類し 表層サービスこそが満足要因に関与するとしている そこで本研究では 医療サービスの中でも看護師によるサービスに焦点を当て 患者満足の構造の解明を試みる 本研究は以下のように構成される まず第 2 節において 先行研究のレビューを行う 具体的には 患者満足に関する研究 SERVQUAL モデル 顧客満足と再購買意図について検討する 第 3 節においては仮説を提唱し 理論モデルを構築する そして第 4 節では調査方法について言及し 第 5 節では構造方程式モデルの分析結果を検討する 最終節では分析結果の考察を行い 本研究の限界及び今後の研究課題について述べる 2. 先行研究のレビュー本節では 患者満足 SERVQUAL モデル 顧客満足と再購買意図について 先行研究のレビューを行う 患者満足に関する研究の問題点を挙げ 医療サービスにおける満足の構造を考察する 2-1. 患者満足の先行研究 Donabedian (1966) によると 医療の質は 健康の維持と患者の満足水準によって評価されるべきである これは健康の維持はまさに医療機関のもつ本質サービス 1 であり 医療の質を測る上で不可欠であるが 同時に患者の満足が直接的成果として評価の対象となりうるという主張である 一般産業界における顧客満足という概念は 企業の収益性を向上させるためのツールとして考えられるため 間接的なものとして捉えることができる これに対して Donabedian (1966) は 医療機関では満足水準は直接的成果目標であると主張している つまり 医療機関におけるサービスの受け手の満足 つまり患者満足は重要な概念であるといえる 患者満足の意義は 医療サービスを医療従事者からの一方的な評価ではなく 患者の主観的な評価という視点を考慮することによって 双方向的な評価を行うことにあると考えられる すなわち患者満足は 患者と医療従事 1 本質サービスとは 顧客が支払う代価に対して当然受けうると期待しているサービス属性をさす そのため 欠如すると不満を高める効果がある これに対して表層サービスとは 代価に対して必ずしも当然と思わないが あればあるにこしたことはない期待サービスをさす そのため 顧客の満足を直接向上させるための重要なサービス属性と考えられる (Swan & Combs, 1976; 嶋口, 1994) 2

患者満足の構造解明者の相互の関わりを通して 患者の意向が医療の提供に組み込まれていくという使われ方をすることが望まれる 続いて 患者満足に関する研究について細かく見ていく 患者満足に関する研究の蓄積は十分にあり 経験的な検討に基盤を置いた研究が多くなされている それらの研究では 満足を構成する次元を特定化し 総合的な満足度との関連付けを行っており 現場でのサービス エンカウンターに具体的な示唆を提供している点で大きな貢献が見られる 入院患者を対象とした研究では 満足を構成する要素として 職員の接し方 技術水準 物理的環境 治療効果を取り上げ これらに影響を与える管理姿勢についての類型化と 患者の満足度の関連を考察している ( 池上, 河北, 1987) また アメニティが満足度に影響を及ぼすという前提に立って より包括的な医療評価スケールの開発を試みた研究もある ( 大和田, 郡司, 今中, 1995) 堀 (2007) は コミュニケーションを中心とした患者満足度と費用負担感の関係に焦点を当てて分析を行っている 外来患者を対象とした調査では より包括的に設定された 19 の個別の満足度変数の因子分析によって 5 つの個別満足度因子を抽出する 大規模な調査が行われた ( 長谷川, 杉田, 1993) 彼らはさらに 個別満足度因子を構成する 15 の質問項目と 14 のコントロール変数によって総合的満足度との間の回帰分析を行っている また 前田 徳田 (2003) は 患者満足度を 医師に対する満足度 と 職員や待合室に対する満足度 に分け 受付の態度 や 看護師の態度 待ち時間 などは後者の満足度向上において重要な因子であるが 医師の説明のわかりやすさ や 医師が訴えを聞いてくれた といったコミュニケーションが全体の満足度を向上させる上で 最も重要な因子であると指摘している 今中 荒記 村田 信友 (1993) は 医療効果の自覚 医師の技能と説明 医師の専心と思いやり 巷間の評判 看護師 一般職員の対応 事務の対応 費用 建物内の快適性 アクセス の 9 次元を導出し 満足度との関係を調査している 藤村 (1995) は 医師に関連する要因として 患者とのコミュニケーション 患者に対する態度 患者との接触時間 医療能力 医師内での能力 患者対応の同質性 をあげ その他の要因として 病院の管理体制 待ち時間の短さ 医療設備 備品の充実度 の 11 次元を導出している 高 (2002) は 後述するサービス品質の次元を用いて 医療サービス品質次元と顧客満足との関係について 病院利用回数を従属変数に設定し研究を行っている 丸橋 横田 高間 (2001) は 性別 年齢の違いによる満足度の違いを調査している 永井 山本 横山 (2001) は 病院と診療所で調査を行い 病院では 雰囲気 快適性 満足できるサービス が総合満足度に強く影響し 診療所では 施設内の清潔さ 満足できるサービス が総合満足度に強く影響しているとした これらの研究によると 医療効果の自覚や医療能力といった本質サービスに関しては 3

患者満足の構造解明総合満足度の規定因となりうることが明らかであるが 表層サービスに関しては様々な結果が存在している この理由は 患者満足の構造が充分に明らかにされていないためだと考えられる 以上のように 患者満足に関する様々な研究が存在するが その多くが大病院での調査データ中心であり そこでの記述に留まっている また 仮説の理論的背景が明らかにされていないため 実態の記述の域を出ないという課題が存在する より一般化の図れる理論モデルの構築と検証が望まれる 2-2. SERVQUAL モデルサービス 2 は 無形性 生産と消費の同時性 異質性 消滅性などの特徴をもつが そのことがサービスを客観的に評価することを難しくしている モノであれば五感や産地などの製品情報により評価が可能であるが サービスにおいては プロセスを含む体験や経験なので正確に品質を判断することができない つまり サービスは具体的な内容は消費されるまで明らかでない上に 品質に関する判断は消費者が独自に行うものであり 他者の窺い知るところではない しかし サービスを顧客に提供する企業にとって 顧客満足を高めるためにはサービス品質の評価は重要な要素である したがって サービスの質をより向上させようという動きがうまれた サービスの質に関する問題意識の高まりは サービスの質を構成する要素の研究や サービスの質の測定を主眼においた研究を活発にした その一つが SERVQUAL モデルである SERVQUAL とは サービス (Service) と品質 (Quality) を組み合わせた造語で サービスの品質を測定するための尺度のひとつである SERVQUAL モデルは Parasuraman, Zeithaml, & Berry (1988) によって 顧客がサービスに対する期待と実際に体験したサービスの差を計る測定方法として開発された これは有形商品の品質を測定する尺度とは異なり サービス品質固有の抽象性が考慮されている 尺度条件として サービス品質を1 消費者の主観的に知覚した品質で評価する 2 消費者が商品の購買前に抱いた期待 ( 期待値 ) と購買前に知覚された経験 ( 経験値 ) との相対的な比較により決定する という内容があげられる Parasuraman et al. (1988) では サービス品質の決定要因を 10 の要因にまとめている 1 信頼性 : サービス遂行に関して 信頼できて正確に遂行できる 2アクセス : 接触のしやすさ 3 物的要素 : 物的施設 設備 接客員の外見 4 反応性 : 顧客を助けて素早いサービスを提供する意欲 2 サービスとは 一方が他方に対して与える行為やパフォーマンスで 本質的に無形で 結果として何の所有権ももたらさないものをいう (Kotler, 1994) 4

患者満足の構造解明 5 能力 : サービスを遂行するために必要な技能と知識や資格 6 丁寧さ : 顧客への丁寧さ 思慮深さ 尊敬 配慮 親近感 7 安全性 : 危険やリスクや懸念から離れているかどうか 8 信用性 : 信頼でき正直で誠実かどうか 9コミュニケーション : 顧客の要望を聞き 組織に伝達できるか 10 顧客理解 : 顧客のニーズを知ろうとする力 これは後に 1 物的要素 2 信頼性 3 反応性 4 確実性 5 共感性の 5 つの次元に集約された さらに 期待と実績の認知に関する 22 の質問項目に 7 段階評価を加えたものが SERVQUAL とよばれる消費者知覚を測定する方法である SERVQUAL モデルはサービスの差を計る代表的先行事例であるために 多くの研究者により指摘を受けている この中で Parasuraman et al. (1988) によるサービス品質の研究は 概念形成 計測のための基準 手法を生み出したという点で サービスの知覚品質研究に貢献している 同時にサービス戦略という観点からも 多くの議論を促し サービス戦略の形成にも SERVQUAL モデルは貢献していると言える しかし SERVQUAL モデルの期待と知覚を測定する方法 構成要素の妥当性といった問題点がいまだ存在し それらの問題を改善し さらに精度を高めていくことが求められている 2-3. 顧客満足と再購買意図顧客満足の概念は 研究者によってそれを規定する評価基準が異なっている 例えば Oliver (1981) は 満足 を 期待が満たされなかったことにまつわる感情が消費者の消費経験に関する事前の感情と結びついたときに生じる 凝縮された心理状態 と定義し Tse & Wilson (1988) は 事前の期待と消費後に知覚された製品成果との間の知覚された不一致に関する評価に対しての消費者の反応 と定義している また Oliver (1980) は 期待不一致 概念を用いて モデルの定式化を行っている このモデルは 購買経験による満足によって再購買意図が形成されることを示すものである つまり 満足した消費者は再購買意図を形成し 満足しなかった消費者は購買を止める また 再購買意図は顧客満足と正の相関があり その度合いによって規定されると主張されている 3 このように満足は 消費者のロイヤリティを形成し そして保持するための重要な概念であると考えられる サービス消費の場合でも ロイヤリティは重要な役割を果たすと考えられる 顧客が特定のサービスの利用経験において特に大きな問題に直面しないかぎり サービスの特質 ( 無形性 生産と消費の同時性 ) によって 顧客にそのサービスの再利用を促すような構造が備わっていると考えられている 4 3 詳しくは Heskett, Jones, Loveman, Sasser, & Schlesinger (1994) を参照のこと 4 詳しくは 藤村 (2006) を参照のこと 5

患者満足の構造解明 3. 仮説の提唱本節では 前節で行ったレビューをもとに 患者満足の形成要因を明らかにするためにモデルを構築し 仮説を提唱する 先述したように 嶋口 (1994) では表層サービスが満足の形成要因となると述べられている 本研究で取り扱う医療サービスにおいては 看護師のサービスが表層サービスに当たると考えられる 提供されるサービスが本質サービスなのか それとも表層サービスなのかという分類は個人によって異なり 難しい点ではあるが 医療機関を訪れる本来の目的が治療や診察を受けることだと考えると 看護師のサービスは表層サービスに当たると考えられる よって以下の仮説を提唱する 仮説 1: 看護師のサービス品質は 満足に正の影響を与える また 看護師のサービス品質こそが患者満足を形成することを明らかにするために 看護師のサービス品質の他に 3 つの統制変数を組み込む まず 医療における本質サービスである医師のサービス品質である 本質サービスは満足形成に影響を及ぼさないはずではあるが 医療サービスを受ける目的を考慮すると 少なからず影響があると考えられるためである そして 今井 揚 小島 櫻井 武藤 (2001) で述べられている 満足度に影響する要因をもとに 待ち時間の短さ 環境 設備の 2 つを組み込む よって以下の仮説を提唱する 仮説 2: 医師のサービス品質は 満足に正の影響を与える 仮説 3: 待ち時間の短さは 満足に正の影響を与える 仮説 4: 環境 設備は 満足に正の影響を与える 再購買意図は 顧客満足と正の相関があり その度合いによって規定される (Heskett, Jones, Loveman, Sasser & Schlesinger 1994) 本研究においては 再購買意図は再来院意図に置き換えることができる よって以下の仮説を提唱する 仮説 5: 満足は 再来院意図に正の影響を与える 嶋口 (1994) によると 表層サービスは 満足 満足していない という次元に働き 本質サービスは 不満 不満でない という次元に働く また 藤村 (1999) によると 満足の最大化と不満足の最小化は異なる次元であるとしている つまり 本質サービスが備わっていることは顧客にとって当たり前であるため 満足を生じさせる要因ではな 6

患者満足の構造解明 く むしろ欠如した場合に不満を感じる 一方表層サービスは なくても困らないが あれば魅力的で 満足を感じる よって 以下の仮説を提唱する 仮説 6: 医師のサービス品質が満足に与える影響よりも 看護師のサービス品質が満足に与える影響の方が大きい 以上の仮説 1~6 をもとに 以下の理論モデルを導出する 本研究では このモデルを SPS モデル (Structure of Patient s Satisfaction model) と呼ぶ 実証分析を行うことで 仮説の経験的妥当性をテストする 図 1 SPS モデル 看護師のサービス品質 (+) 医師のサービス品質 (+) 満足 (+) 再来院意図 待ち時間の短さ (+) (+) 環境 設備 4. 調査方法 本論では 先に導出した因果モデルの経験的妥当性をテストするために 質問票調査を行う 調査にあたり医療機関へ調査依頼を行ったが アンケートにおける個人情報の取り扱いや研究の倫理審査の関係により 残念ながら医療機関での調査は不可能であった よって今回は 都内私立大学の学生を中心に調査を行った 測定尺度の作成にあたっては 看護師のサービス品質 と 医師のサービス品質 については Parasuraman, Zeithaml, & Berry (1985; 1988) 宮城 (2009) を 再来院意図 については Baker & Churchill (1977) を参考にして開発した 満足 については Oliver (1980) を参考にした 7

患者満足の構造解明 待ち時間の短さ と 環境 設備 については独自で設定した 今回 潜在ユーザーを対象として調査を行ったため 場面想定法を用いて質問票を作成した このような内容で調査を行ったところ 回答数 124 有効回答率 100% を得た 5. 分析結果図 1 に示された因果モデルを 統計ソフト SPSS Inc PASW Statistics 18 および Amos 18 を用いて共分散構造分析によって経験的にテストした まず 潜在変数の信頼性分析を行ったところ クロンバックの 係数は以下の表 1 のような結果となった 看護師のサービス品質と医師のサービス品質の 係数はやや低かったが その他の潜在変数の 係数は十分に高かった 表 1 観測変数と信頼性係数 (n=124) 潜在変数観測変数 ( 質問項目 : 全て 1-7 の 7 点尺度 ) クロンバックの 係数 患者ひとりひとりに対して 正確に対応するべきだ 看護師のサービス品質医師のサービス品質待ち時間の短さ環境 設備満足再来院意図 いつでも進んで患者を手助けするべきだ 安心して任せられる対応がされるべきだ 患者ひとりひとりの要求を理解するべきだ 身なり ( 髪型も含む ) はきちんとされているべきだ 患者ひとりひとりに対して 正確に対応するべきだ 必要な知識 技能が身に付いているべきだ 常に患者ひとりひとりに注意を向けるべきだ 受付を済ませてから診察までの時間は 適切だ 十分に我慢できるものだ 雰囲気は良いと思う 清潔だと思う このような病院であれば 満足だ このような病院であれば 来て良かったと感じると思う 医者に掛かることがあったら このような病院を利用したい このような病院を掛かりつけにしようと思う.615.565.849.764.843.902 妥当性のチェックのため 確認的因子分析を行った 2 値は 147.873 で 自由度は 89 有意確率は.000 であった 適合度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は各々.875 および.810 で 適合度は既存研究の推奨値をわずかに下回った ただし このことはサンプルサイズの小ささに依存しているものと考えられる おおむね満足できる適合度を 8

患者満足の構造解明得た 平均二乗誤差平方根 RMSEA は.073 であり データがこのモデルに適していることを示している 続いて 構造方程式を共分散構造分析によって推定した まず モデルの全体的評価を行うと このモデルに対する 2 値は 208.331 自由度は 94 有意確率は.000 であった 適合度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は各々.844 および.774 で やや低い適合度となった これも確認的因子分析と同様に 小さなサンプルサイズに起因していると解釈できる 平均二乗誤差平方根 RMSEA は.099 であり データがこのモデルに適合していると解釈できる 続いてモデルの部分的評価を行う 看護師のサービス品質は満足に対して有意かつ正の影響を与えており ( =.218, t=1.949, p<.10) 仮説 1 は支持された つぎに 医師のサービス品質は満足に対して有意かつ負の影響を与えており ( =-.202, t=-1.780, p<.10) 仮説 2 とは逆の結果が得られた つぎに 待ち時間の短さは満足に対して有意かつ正の影響を与えており ( =.414, t=3.466, p<.01) 仮説 3 は支持された つぎに 環境 設備から満足へのパスは非有意となり ( =.144, t=1.203, p>.10) 仮説 4 は棄却された つぎに 満足は再来院意図に対して有意かつ正の影響を与えており ( =.951, t=12.860, p<.01) 仮説 5 は支持された 最後に仮説 6 に関しての評価を行う 医師のサービス品質から満足へのパスと 看護師のサービス品質から満足へのパスの標準化係数を比較すると 医師のサービス品質よりも 看護師のサービス品質の方が満足に強い影響を与えていることがわかる これは 仮説 6 を支持する結果である 表 2 構造方程式モデルの推定結果 H1 看護師のサービス品質 満足 (+).218 (t= 1.949)* H2 医師のサービス品質 満足 (+) -.202 (t= - 1.780)* H3 待ち時間の短さ 満足 (+).414 (t= 3.466)*** H4 環境 設備 満足 (+).144 (t= 1.203) H5 満足 再来院意図 (+).951 (t= 12.860)*** ** : 10% 水準で有意 *** : 1% 水準で有意 9

患者満足の構造解明 図 2 SPS モデル分析結果 看護師のサービス品質.218* 医師のサービス品質 待ち時間の短さ -.202*.414*** 満足.951*** 再来院意図 環境 設備.144 ***:1% 水準で有意 *:10% 水準で有意 実線 : 有意 破線 : 非有意 2 =208.331 (d.f.=94), p<.001 GFI=.844, AGFI=.774 RMR=.165, RMSEA=.099 以上の分析結果から まず有意になった仮説について考える 満足に影響を与える 3 つの潜在変数のうち 待ち時間の短さが最も強い影響を与えていた また 医師のサービス品質は満足に負の影響を与えており 仮説 2 は支持されなかったが 本質サービスである医師のサービス品質と 表層サービスである看護師のサービス品質という違いが 標準化係数に表れたと考えられる 次に 非有意になった仮説について考える 環境 設備は満足に対して影響を与えていなかった これは 医療サービスを受けるうえで 医師や看護師のサービス品質 待ち時間の短さといった直接的な要素とは異なり 副次的な要素であるため 満足形成に影響を与えていないのではないかと考えられる 6. 本論の知見と今後の課題先述の通り 患者満足に関する研究の蓄積は多く 様々な結果を提示してきているが 理論的背景がはっきりとしていない点や現実の記述に留まっている点など 問題点が存在していた そこで より一般化された研究結果を導き出すことを目的に 患者満足の構造を解明しようと試みてきた 10

患者満足の構造解明満足に影響を与える要因を順に見ていくと 最も強い影響を与えているのは 待ち時間の短さである これについては ネコの目システム 5 という 混雑状況を携帯電話やパソコンで知ることができるシステムを導入している医療機関も すでに存在している 待ち時間の短さの次に 満足に強い影響を与えているのは 看護師のサービス品質である 医師に診てもらうという医療サービスを受けるために医療機関を訪れるのであるが 医師ではなく 看護師のサービス品質が満足形成に影響を及ぼすことが 仮説通り見いだされた 最も興味深い結果が得られたのが 本質サービスである医師のサービス品質が 表層サービスである看護師のサービス品質よりも 満足に与える影響が小さいだけでなく マイナスの影響を与えていることが実証された点である この要因については 2 点考えられる 第 1 に 本質サービスが不満足形成に関わっている可能性があるという点である 表層サービスは 顧客に不可欠だと期待されているわけではないため このサービス属性がゼロであっても 不満足 にはならず 単に 満足していない 状態になる 一方本質サービスは そのサービス属性をある最低許容水準以下のレベルにしてしまうと 不満足 になってしまう また 最低許容水準以上にサービス充実度を上げても 満足度はある程度の充実点以上には上昇しない つまり 本研究において医師のサービス品質が満足にマイナスの影響を与えていたことは 本質サービスが不満足形成に関わっているということが示唆されたことになる 第 2 に 質問票でサービス品質について問う際に ~すべきだ という理想的水準による表現をした点である 場面想定法での医療機関の細かい描写は限界があり 特定の医療機関の知覚サービス水準ではなく 回答者の理想的なサービス水準を測定することになったため このような結果が得られたと考えられる 本研究には次のような課題がある 第 1 に 調査にあたり本質サービスと表層サービスの分類を研究者自身で行ったが 先述の通り判断する人によって分類が異なるという点である 分析を行う前に 何が医療サービスにおける本質サービスであり表層サービスであるのか 潜在ユーザーにアンケートをとるという方法も考えられる それにより 患者満足の構造をより明確に計り知ることができるであろう 第 2 に 本質サービスと不満足の関係である 本研究において 表層サービスである看護師のサービス品質が 医師のサービスよりも満足に強い影響を与えていることが分かった しかし 本質サービスである医師のサービス品質が不満足の形成要因として影響を与えることは 可能性として示唆されるのみであった 本質サービスが不満足の解消にどのような影響を与えているのか さらなる研究が必要であろう 以上のような課題を残したが 本研究は実地の記述に留まることなく 提言を導き出せたという点で 意義あるものと主張できるであろう 5 詳しくは (http://neco.riprice.co.jp/advertise/advertise.html) を参照のこと 11

患者満足の構造解明参考文献 Baker, M. J. & G. A. Churchill, Jr. (1977). The impact of physically attractive models on advertising evaluations, Journal of Marketing Research, 14, 538-555. Bitner, M. J. (1990). Evaluating service encounters: The effects of physical surroundings and employee responses. Journal of Marketing, 54 (2), 69-82. Bolton, R. N. & J. H. Drew (1991). A multistage model of consumers assessments of service quality and value. Journal of Consumer Research, 17 (4), 375-384. Donabedian, A. (1966). Evaluating the quality of medical care. Milbank Memorial Fund Quarterly, 44, 166-206. 藤村和宏 (1992) 顧客満足戦略における消費者満足概念 広島大学経済論叢 16(3), 141-179. (1995) 医療サービス生産の実態 サービス企業における生産性 顧客満足 職務満足 OBMS 概念による実証研究報告 社会生産性本部, 53-85. (1999) 日本人のサービス消費における満足形成の特質 香川大学経済論叢 72(1), 215-240. (2006) 顧客満足とロイヤルティの関連性についての理論的考察 サービス消費を中心として 香川大学経済論叢 79(2), 101-170. 長谷川万希子, 杉田聡 (1993) 患者満足度による医療の評価 大学病院外来における調査から 病院管理 30(3), 31-39. Heskett, J. L., T. O. Jones, G. W. Loveman, W. E. Sasser, Jr., & L. A. Schlesinger (1994). Putting the service-profit chain to work. Harvard Business Review, 72(2), 164-174. 堀真奈美 (2007) 患者満足度向上に向けたコミュニケーション戦略の在り方について 病院管理 44(2), 81-92. 池上直巳, 河北博文 (1987) 患者の満足度と病院の管理姿勢: 日病の会員施設における実態調査 日本病院会雑誌 34, 13-19. 今井壽正, 揚学坤, 小島茂, 櫻井美鈴, 武藤孝司 (2001) 大学病院の患者満足度調査 外来 入院患者の満足度に及ぼす要因の解析 病院管理 37(3), 63-74. 今中雄一, 荒記俊一, 村田勝敬, 信友浩一 (1993) 医師および病院に対する外来患者の満足度と継続受診意思におよぼす要因 総合病院における解析 日本公衆衛生誌 40(3), 624-634. 井上淳子, 冨田健司 (2000) 医療機関における患者との関係性構築: リレーションシップ マーケティング概念を用いて 医療と社会 10(3), 97-108. 金成洙 (2007) 医療業界におけるサービス マーケティングの戦略体系: 患者満足向上のために 専修総合科学研究 15, 219-250. 近藤隆雄 (2000) サービス品質の評価について 経営 情報研究: 多摩大学研究紀要 4, 1-16. (2007) サービス マネジメント入門第 3 版 ものづくりから価値づくりの視点へ 社会経済生産性本部. 高載乾 (2002) 医療サービス品質の決定要因と患者満足に関する研究 龍谷大学経営学論集 12

患者満足の構造解明 41(3/4), 29-44. Kotler, P. (1994). Marketing management analysis, planning, implementation, and control, eighth edition. New Jersey: Prentice Hall. 前田泉, 徳田茂二 (2003) 患者満足度 コミュニケーションと受療行動のダイナミズム 日本評論社. 丸橋美友紀, 横田恵子, 高間静子 (2001) 外来患者の満足度の実態調査 富山医科薬科大学看護学会誌 4(1), 85-93. 宮城博文 (2009) サービス品質の管理 評価の課題 立命館ビジネスジャーナル 3, 45-67. 永井昌寛, 山本勝, 横山淳一 (2001) 病院および診療所におけるサービスの分析と評価 病院管理 38(3), 25-37. 中島明彦 (2007) ヘルスケア マネジメント 医療福祉経営の基本的視座 同友館. 中村陽人 (2007) サービス品質の測定尺度に関する実証研究 SERVQUAL の再検討 横浜国際社会科学研究 11(6), 39-54. Oliver, R. L. (1980). A cognitive model of the antecedents and consequences of satisfaction decisions. Journal of Marketing Research, 17(4), 460-469. (1981). Measurement and evaluation of satisfaction processes in retail settings. Journal of Retailing, 57(3), 25-48. 大和田瑞乃, 郡司篤晃, 今中雄一 (1995) 患者による入院医療の質の評価 患者評価の方法論と評価特性の検討 病院管理 32(4), 15-24. Parasuraman, A., V. A. Zeithaml, & L. L. Berry (1985). A conceptual model of service quality and its implications for future research. Journal of Marketing, 49(4), 41-50.,, & (1988). SERVQUAL: A multiple-item scale for measuring consumer perceptions of service quality. Journal of Retailing, 64(1), 12-40. 島津望 (2005) 医療の質と患者満足: サービス マーケティング アプローチ 千倉書房. 嶋口充輝 (1994) 顧客満足型マーケティングの構図 有斐閣. Swan, J. E., & L. J. Combs (1976). Product performance and consumer satisfaction: A new concept, Journal of Marketing, 40(2), 25-33. 竹田明弘 (2009) 医療サービスにおける患者満足とコミュニケーション構造 経済理論 347, 41-62. 竹内慶司編著 (2009) マネジメント基本全集 3 市場創造 ( マーケティング ): 顧客満足とリレーションシップ ( 第 2 版 ). ( 根本孝, 茂垣広志監修 ). 学文社. Taylor, Steven A. (1994). Distinguishing service quality from patient satisfaction in developing health care marketing strategies. Hospital & Health Service Administration, 39(2), 221-236. 冨田健司 (2007) 医療の質を高める組織マネジメント 慶應経営論集 24(1), 133-145. Tse, D. K. & P. C. Wilson (1988). Models of consumer satisfaction formation : An extension. Journal of 13

患者満足の構造解明 Marketing Research, 25(2), 204-212. 余田拓郎 (2000) 患者による医療機関の評価メカニズム: 事前期待に基づく患者満足の分析と考察 オイコノミカ 37(3/4), 41-54. 上原聡 (2009) 顧客満足に対するサービス品質の影響に関する考察 嘉悦大学研究論集 52(1), 1-15. 14

患者満足の構造解明 病院でのサービスに関するアンケート 中央大学商学部久保知一研究室第 3 期増山絵里 ごあいさつ現在 病院に対する満足度についての研究を行っております 回答結果はコンピュータで統計的に処理され プライバシーは保護されます また 学術研究以外の目的で使用されることもございません 大変お手数ではございますが なにとぞご協力のほど よろしくお願いいたします 以下のような病院を訪れたと想定して 質問にお答えください 風邪をひいてしまったため 近所の病院に行くことにしました 風邪が流行っている時期ということもあり 待合室の席はすすでにほとんど埋まってしまっています 看護師さんもとても忙しそうに働いています ( しっかり予約をするべきだったかな ) と思いつつ 受付を済ませて空いている椅子に座りました 掃除の行き届いた待合室には テレビが 1 台 新聞や雑誌 子供用の絵本が置いてあり ドリンクサーバーも設置されているので水やお茶が自由に飲めます 渡された体温計で熱を測り 紙コップでお茶を飲みながら テレビを眺めたり雑誌を読んだりして待ち時間を過ごしました 看護師さんに名前を呼ばれ 診察室に通されました 時計を見てみると 受付を済ませてから約 30 分が経っていました 診察室では 医師に症状を聞かれ丁寧に診察をしてもらい 処方される薬の説明を受け 全部で 5 分ほど診てもらいました 看護師さんからは しばらく安静にしていてくださいと言われ 診察室を出ました もう一度待合室で待っていると 3 分ほどで名前を呼ばれ 会計を済まして処方箋をもらい 病院を出ました あてはまる番号に 印をお付けください 7 6 5 4 3 2 1 そう思う どちらでも そう思わない ない 問 1: 看護師について どう思いますか? 0101: 身なり ( 髪型も含む ) は きちんとされているべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0102: 患者ひとりひとりに対して 正確に対応するべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0103: 信頼に足るサービスを提供している 7-6-5-4-3-2-1 15

患者満足の構造解明 0104: 忙しいので患者の注文に迅速に応えられなくてもよい 7-6-5-4-3-2-1 0105: いつでも進んで患者を手助けするべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0106: 患者思いであるべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0107: 安心して任せられる対応がされるべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0108: 必要な知識 技能が身に付いているべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0109: 常に患者ひとりひとりに注意を向けるべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0110: 患者ひとりひとりの要求を理解するべきだ 7-6-5-4-3-2-1 問 2: 医師について どう思いますか? 0201: 身なり ( 髪型も含む ) は きちんとされているべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0202: 患者ひとりひとりに対して 正確に対応するべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0203: 信頼に足るサービスを提供している 7-6-5-4-3-2-1 0204: 忙しいので患者の注文に迅速に応えられなくてもよい 7-6-5-4-3-2-1 0205: いつでも進んで患者を手助けするべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0206: 患者思いであるべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0207: 安心して任せられる対応がされるべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0208: 必要な知識 技能が身に付いているべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0209: 常に患者ひとりひとりに注意を向けるべきだ 7-6-5-4-3-2-1 0210: 患者ひとりひとりの要求を理解するべきだ 7-6-5-4-3-2-1 問 3: 待ち時間について どう思いますか? 0301: 受付を済ませてから診察までの時間は 適切だ 7-6-5-4-3-2-1 0302: 十分に我慢できるものだ 7-6-5-4-3-2-1 問 4: 病院内はどうですか? 0401: 快適だと思う 7-6-5-4-3-2-1 0402: 雰囲気は良いと思う 7-6-5-4-3-2-1 0403: 清潔だと思う 7-6-5-4-3-2-1 問 5: 以上の事をふまえて お答えください 0501: このような病院であれば 満足だ 7-6-5-4-3-2-1 0502: このような病院であれば 来て良かったと感じると思う 7-6-5-4-3-2-1 0601: 医者に掛かることがあったら このような病院を利用したい 7-6-5-4-3-2-1 0602: このような病院を掛かりつけにしようと思う 7-6-5-4-3-2-1 ご協力ありがとうございました 16