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論文 重回帰分析等を用いた再生コンクリートの強度特性に関する評価 高橋智彦 *1 大久保嘉雄 *2 長瀧重義 *3 要旨 : 本研究は, 再生コンクリートの強度およびヤング係数を把握することを目的に実施したものである 再生コンクリートの強度およびヤング係数については既往文献結果を重回帰分析し評価した さらに, 電力施設のコンクリート解体材を用いて, 再生骨材の特性をパラメータとした試験を実施し, 上記分析結果の適用性について検証した その結果, 再生コンクリートの強度特性については, 普通の強度では再生骨材の特性によらず概ね同等の強度が得られるという結果であった 一方, ヤング係数については再生骨材の特性により変化する傾向を示したが, 普通コンクリートと同等であることが確認された キーワード : 再生骨材, 再生コンクリート, 強度特性, ヤング係数, 重回帰分析 1. はじめに日本原子力発電 ( 株 ) の東海発電所は, 昭和 45 年 3 月に運転を開始し, 平成 1 年 3 月に運転を停止した 平成 13 年 12 月から発電所の解体工事に着手しており, この工事から発生する廃棄物の内, 再利用可能なコンクリート量は十数万 t である また, 現在稼働中の 11 万 kw 級の原子力発電所を解体した場合は,1 基当たり約 5 万 t と大量のコンクリート解体材が発生するものと推定される これら大量のコンクリート解体材は, 一般的には道路路盤材への利用とされるが, コンクリート用骨材の枯渇傾向からコンクリート用骨材としての再利用が期待される 一方, 再生骨材を用いたコンクリートの特性に関しては, 多機関において研究されており, 個々の文献においてはその評価結果が異なっている場合も認められる 以上のことから, 本研究では再生コンクリートの諸特性のうち, コンクリートの重要な特性である強度およびヤング係数に関して既往文献結果を重回帰分析し, これらの特性に関する要因を評価した さらに, 電力施設から発生する コンクリート解体材を用いて再生骨材の特性をパラメータとした試験を実施し, 前記分析結果の適用性について検証することとした 本論は, それらの結果について報告するものである 2. 重回帰分析による既往文献評価 2.1 調査対象文献文献評価は 年度までの関連学会の論文等を対象とし, その文献数は表表 -1 のとおり 238 編である 表 -1 文献掲載箇所土木学会年次学術講演会 対象とした文献数 日本建築学会大会学術講演梗概集 コンクリート工学年次論文集 その他の学術講演会等 ( セメント技術大会, 廃棄物学会 ) 国および民間の研究報告書 ( 国土交通省, 原子力発電技術機構他 ) 専門誌 ( コンクリート工学, セメントコンクリート等 ) 文献数 49 編 116 編 39 編 5 編 15 編 14 編 *1 日本原子力発電 ( 株 ) 開発計画室工修 ( 正会員 ) *2 日本原子力発電 ( 株 ) 開発計画室 *3 新潟大学工学部教授工博 ( 正会員 )

2.2 評価概要 (1) 下記の 4 項目を考慮し, 分析対象のデータを抽出した a) 粗骨材は再生骨材, 細骨材は普通骨材のものとした b) コンクリートの打設方法は通常のものとし, プレパックドコンクリート等は除外した c) 使用したセメントは普通ポルトランドセメントのみとし, 高炉セメントやフライアッシュセメントは除外した d) 養生方法は標準養生のみとし, 期間の異なるものや気中養生は除外した その結果, データ数は 個となった (2) まず, 抽出されたデータを用いて再生コンクリートの圧縮強度について, および再生粗骨材の吸水率との関係を把握した (3) 次に, 再生コンクリートの圧縮強度について重回帰分析を適用し, 支配因子を把握した (4) さらに, 再生コンクリートの圧縮強度とヤング係数および引張強度との関係を把握し, 普通コンクリートとの差異を把握した 2.3 評価結果 (1) および吸水率の関係圧縮強度ととの関係を図図 -1 に示す なお, 今回のおよび吸水率の分布範囲は表表 -2 に示すとおりである 同図のうち最上段は全てのデータ ( 個 ) をプロットしたものであり, それ以外は再生粗骨材の吸水率毎にプロットしたものである 各吸水率毎に若干のバラツキはあるものの, の増加に伴い, 圧縮強度は増加している また, 吸水率が 6% 以上においてはを大きくしても強度が変化しない圧縮強度の頭打ちの傾向が確認できる 一方, 吸水率との関係は図図 -2 に示すとおり, 毎では若干の負の相関が認められ るが全体的には明確な傾向が把握できなかった 図 -1 [] 1%< 再生粗骨材吸水率 <15.5% 1 2 3 4 5 [27] [13] [43] 1%< 再生粗骨材吸水率 <3% 1 2 3 4 5 3% 再生粗骨材吸水率 <6% 1 2 3 4 5 6% 再生粗骨材吸水率 <15.5% 1 2 3 4 5 圧縮強度との関係

図 -2 [] 1.4< 4. 2 4 6 8 1 [88] 1.4< <2. 2 4 6 8 1 [51] 2. <2.5 2 4 6 8 1 [61] 2.5 4. 2 4 6 8 1 圧縮強度と吸水率の関係 表 -2 説明変数の分布範囲説明変数分布範囲 C/W 1.4 ~ 4. 吸水率 Q(%) 1. ~ 15.5 実強度 Fc(N/mm 2 ) 15.7 ~ 66.3 実積率 G(%) 54.4 ~ 65.2 洗い損失量 A(%).1 ~ 4.1 付着モルタル率 M(%) 11. ~ 48.8 以上は粗骨材に再生骨材を用いた検討結果であるが, 細骨材に再生骨材を用いた場合, また, 再生粗骨材, 再生細骨材に普通骨材を混合した場合についても検討を行っており, 本結果と同様な傾向を示した (2) 圧縮強度に対する重回帰分析再生コンクリートの圧縮強度の支配因子を把握するため, 再生コンクリートの, 再生骨材の吸水率ならびに相互依存性が小さい原コンクリートの実強度, 再生骨材の実積率, 洗い損失量および付着モルタル率を説明変数とし, 重回帰分析を実施した なお, 表 -2 に説明変数とその分布範囲を示す また, データ数との関係等を考慮し, 説明変数の組み合わせは表 -3 に示すとおりとした まず, 圧縮強度と ( ケース 1) および再生骨材の吸水率 ( ケース 2) との単相関について把握した 結果は, 表 -4 に示すとおりケース1は相関係数が.9と高くなっているが, ケース 2 は.7 と低かった さらに, この 2 つを説明変数とした重回帰分析 ( ケース 3) を実施した結果, 相関係数はケース 1 と同じ値であった このことから, 以下の重回帰分析については, に加えて原コンクリートの実強度, 再生骨材の実積率等を説明変数とした ケース 4,5,6 については, 原コンクリートの実強度, 再生骨材の実積率の増加ならびに再生骨材の洗い損失量の低下に伴い, 再生コンクリートの圧縮強度が増加するとの一般的な傾向を示した 一方, ケース 7 では再生骨材の付着モルタル率の増加に伴い, 圧縮強度がわずかだ

表 -3 重回帰分析に用いるデータ数 ケース 説明変数 データ数 1 C/W 2 Q 3 Q+C/W 4 Fc+C/W 64 5 G+C/W 1 6 A+C/W 58 7 M+C/W 72 表 -4 圧縮強度との重回帰分析結果 ケース 回 帰 式 相関係数 1 22.C/W-5.9.9 2 -.8Q+44.4 -.7 3 -.9Q+22.C/W-1.8.9 4.3Fc+22.7C/W-15.8.92 5.7G+22.1C/W-49.8.91 6 -.1A+19.6C/W-3.6.84 7.1M+.4C/W-2.1.88 が増加し, 一般的な傾向と逆の結果を示した なお, 相関係数はに他の説明変数を追加しても.84~.92 と概ね同等であった また, ケース 1 のの係数は 22 となっており, 普通コンクリートでの一般的な 1) 値 ( 村田の 28) より若干小さめであった (3) 普通コンクリートとの比較さらに, 上記データに基づき圧縮強度とヤング係数および引張強度との関係を把握し, 普通コンクリートと比較した 圧縮強度とヤング係数との関係を図図 -3 に示す なお, 図中にはコンクリート標準示方書の普通コンクリートおよび軽量骨材コンクリートの評価値を記載する 再生骨材の吸水率にはバラツキがあるものの, 平均的には概ね普通コンクリートと同等と判断される 日本建築学会の評価式による単位容積質量および圧縮強度から推定されるヤング係数と試験結果との関係は図図 -4 に示すとおりであり, 全体的には既往の評価式を上回る傾向が確認された さらに, 圧縮強度と引張強度との関係を図図 - 5に示す なお, 図 -3 と同様図中には普通コ ンクリートおよび軽量骨材コンクリートの評価式を記載する 引張強度は圧縮強度の 1/1~ 1/13 の範囲にほぼ分布しており, また, 普通コンクリートの評価式を上回っていることから, その評価式を適用することが可能と判断された ヤング係数 ( 試験結果 )(kn/mm 2 ) 引張強度 (N/mm 2 ) 5 3 1 図 -3 ヤング係数 ( 試験結果 )(kn/mm 2 ) 5 3 1 図 -4 6 5 4 3 2 1 図 -5 標準示方書軽量骨材 標準示方書普通骨材 圧縮強度とヤング係数の関係 ヤング係数の試験結果と推定値の関係 1:1 13:1 1 : 1 F C 36N/mm 2 : 日本建築学会 RC 構造計算基準 F C >36N/mm 2 :NewRC 1 3 5 ヤング係数 ( 推定値 )(kn/mm 2 ) 普通コンクリート : f tk =.23 fc 2/3 軽量骨材コンクリート : f tk =.7.23 fc 2/3 圧縮強度と引張強度の関係

3. 試験による検証前記評価結果の電力施設から発生するコンクリート解体材への適用性を検証するため, 本施設から採取したコンクリート解体材を用いて, 再生骨材の吸水率ならびに再生コンクリートのを変化させた試験を実施した 3.1 実験概要 (1) 原コンクリートの概要原コンクリートは構築後 年以上経過したマッシブな構造物で, その示方配合は表表 -5 に示すとおりである なお, 使用骨材は川砂利および川砂であった 原コンクリート採取に先立ち, 厚さ約 3m の部材から直径 φmm, 長さ約 1,mm のコアを 3 本採取し, 各コア毎に 3 本ずつ圧縮強度試験 (JIS A 117) を実施した その結果は, 平均 37.9N/mm 2, 変動係数 14.4% であった なお, 同試料の平均中性化深さは 2.4cm であった (2) 再生骨材の製造方法およびその特性再生骨材は原コンクリートを mm 以下のコンクリートガラに破砕し, 異なる処理方法により 3 種類製造した 再生骨材 H は, コンクリートガラを加熱すりもみし製造した 2) 再生骨材 L はコンクリートガラそのものとし, 再生骨材 M は, 再生骨材 H, L の吸水率のほぼ中間となることを目標とし, スクリュー式の磨砕機で製造した 3 種類の再生骨材の諸特性試験結果は, 表 -6 および表表 - 7に示すとおりである なお, 試験に用いる再生粗骨材の最大寸法は mm とした (3) コンクリートの示方配合 3 種類の再生粗骨材と砕石 5 に適合する石灰岩砕石 N を用い, 計 1 ケースのコンクリートを強制式ミキサにより製造した これらの示方配合を表表 -8 に示す なお, スランプおよび空気量は, それぞれ 12.±1.cm,4.5±1.% とした 3.2 再生コンクリートの試験結果試験材齢を 28 日として圧縮強度 (JIS A118), ヤング係数 (JIS A 1149) および割裂引張強度試 Slump (cm) 表 -5 原コンクリートの示方配合 W/C 示方配合 (kg/m 3 ) (%) W C S G Ad 15 5 167 336 8 138 1.5 表 -6 細骨材の諸特性試験結果 H M L 表乾密度 (g/cm 3 ) 2.57 2.39 2.27 吸水率 (%) 2.51 8.1 1.8 表 -7 粗骨材の諸特性試験結果 H M L 表乾密度 (g/cm 3 ) 2.63 2.52 2.42 吸水率 (%) 1.8 3.47 5.93 実積率 (%) 64.8 63. 61.3 洗い損失量 (%) 12.3 17.2 26.3 BS 破砕値 (%) 11.1 16.4 23.4 BS 破砕荷重 (KN) 371 276 119 験 (JIS A 1113) を実施した と圧縮強度との関係を図図 -6 に示す 同図のとおり, 3 種類の骨材については, 吸水率が高くなると若干低めになる傾向を示したが, その差は小さかった なお, の係数は 14 程度であり前述の評価結果より小さくなった 水セメント比が 5% の場合の吸水率とヤング係数との関係を図図 -7 に示す 再生骨材 L のヤング係数は, 付着モルタルの影響により H,M に比較して 15% 程度低下している さらに, 水セメント比が 5% の場合の吸水率と引張強度との関係を図図 -8 に示す 吸水率による差は小さく, また圧縮強度との比は前述と 45 35 3 25 図 -6 : 再生骨材 H : 再生骨材 M : 再生骨材 L : 普通骨材 N 1 1.5 2 2.5 3 圧縮強度との関係

表 -8 試験用コンクリートの示方配合 W/C 示方配合 (kg/m 3 ) AE 剤 No. 骨材 (%) W C S G AE 減水剤 (A) 1 163 8 695 1,46 1. 3.5 2 H 5 153 36 776 1,76.765 3.5 3 15 25 837 1,69.625 3. 4 17 425 716 955 1.63 3.5 5 M 5 1 3 983. 3. 6 155 258 866 981.645 2.5 7 179 448 731 863 1.1 3. 8 L 5 169 338 818 891.845 3. 9 162 27 89 894.675 2.5 1 N 5 167 334 823 994.835 3. C: 普通ポルトランドセメント,AE 減水剤 : ポゾリス No.7,AE 剤 : マイクロエア 2(1A:C.1%) S: 普通細骨材,G: 再生粗骨材 同様 1/13 であった ヤング係数 (kn/mm 2 ) 図 -7 引張強度 (N/mm 2 ) 35 3 25 15 1 5 3.5 図 -8 3 2.5 2 1.5 1.5 : 再生骨材 H : 再生骨材 M : 再生骨材 L 2 4 6 8 再生粗骨材吸水率とヤング係数の関係 : 再生骨材 H : 再生骨材 M : 再生骨材 L 2 4 6 8 再生粗骨材吸水率と引張強度の関係 4. まとめ (1) 既往文献を分析した結果, 再生コンクリートの圧縮強度は普通コンクリートと同様で評価でき, その場合の係数は普通コンクリートが 28 程度であるのに対して, 再生コンクリートは 22 と若干低めの値を示す なお, 再生骨材の吸水率, 実積率等が圧縮強度に与える影響は小さい (2) ヤング係数は再生骨材の吸水率の影響を受け変化するものの, 普通コンクリートと概ね同等であることが確認された (3) 引張強度は普通コンクリートと同様, 圧縮強度との比が 1/1~1/13 であり, また普通コンクリートの評価式が適用可能である (4) 電力施設のコンクリート解体材を用いて再生骨材を製造し, その吸水率およびを変化させた試験を実施した その結果, 上記評価結果と同様な傾向を示した 参考文献 1) 村田二郎 : 人工軽量骨材コンクリート, セメントコンクリート,1967 2) 古賀康男ほか : 高品質再生骨材製造技術に関する開発その 4 全体加熱すりもみ方式基本試験 (1), 日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.111,1997.9