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報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

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新技術で分離した ヒト骨質由来微小幹細胞の医療応用 薗田精昭 関西医科大学大学院医学研究科先端医療学専攻修復医療応用系幹細胞生物学

2001 背景 (1): 微小幹細胞とは Journal of Cellular Biochemistry 80;455-460(2001) 微小幹細胞に関する最初の報告生体の組織内に非常に小さな spore-like stem cell が存在することが初めて報告された また この細胞が体性幹細胞の補充に寄与している可能性が提唱された 2006 Leukemia 20;857-869(2006) FACS で分離可能な微小幹細胞 (VSEL) の報告 10μm 以下の大きさで 血球系 Lineage 陰性 Sca-1 陽性分画に微小幹細胞が存在することが示された

2006 背景 (2): 微小幹細胞とは Leukemia 20;857-869(2006) A Sca-1 + Lin - CD45 - Differentiation potentials of Sca-1 + Lin - CD45 - cells 心筋細胞分化 a b c cardiac troponin I (red) myosin heavy chain (green) 2 mm 1 mm 1 mm 1 mm B c d 4 mm Sca-1 + Lin - CD45 + 2 mm 2 mm 2.5 mm 神経細胞分化 a nestin (green) b DAPI for nucleus c (blue)

微小幹細胞に関する海外での動向 背景 (3): 微小幹細胞とは 海外では 骨髄や臍帯血から得られる微小幹細胞 (VSEL) を用いた再生医療の研究が進められており 臨床研究へ向けた取り組みがスタートしている (NeoStem 社 ) しかし 骨髄や臍帯血から得られる微小幹細胞は量的に大変尐ないため 細胞の有為性を疑問視する声も存在している NeoStem, Inc. (420 Lexington Avenue Suite 350 New York, New York 10170 Telephone:1.212.584.4180)

従来技術とその問題点 従来報告され 海外で採用されているマウス骨髄 あるいはヒト骨髄や臍帯血からの微小幹細胞の分離手法には 得られる微小幹細胞の回収率が非常に低いという問題点があった このため 詳細な幹細胞特性の解明や 医療応用における細胞の有為性 信頼性について 問題が生じている

新技術による改善点 特徴 骨質を細胞ソースとして利用し 酵素処理法を用いて得られた細胞懸濁液 からセルソーターによって高純度かつ効率的に微小幹細胞を同定 分離 する技術を開発した 従来法に比べて 約 100 倍という高率で骨質由来微小幹細胞を採取する ことに成功した 開発した技術に基づいて発見された骨質由来微小幹細胞は 採取量が多いために従来技術の細胞回収率が低いという問題点を解決できる さらに 本技術は骨髄を材料としないため 従来法との差別化を図ることが可能と考えられる

マウス骨質由来微小幹細胞 (BD-SSC) の調製 分離法 従来法 新技術

新技術を用いると従来法に比べて高率で微小幹細胞を分離できる 従来法 新技術 従来法 新技術

マウス骨質由来微小幹細胞の形態 マウス骨質由来微小幹細胞の形態を顕微鏡下で観察した 微小幹細胞は非常に小型で ( 平均 4.94±0.44μm) 核細胞比が大きい

マウス骨質由来微小幹細胞の ES 細胞マーカー発現 マウス骨質由来微小幹細胞 (BD-SSC) 造血幹細胞(HSC) 間葉系幹細胞(MSC) の胎生多能性幹細胞 (ES 細胞 ) マーカー発現比較 微小幹細胞は 他の組織幹細胞と比べてES 細胞マーカーを高く発現している

マウス骨質由来微小幹細胞と造血幹細胞 間葉系幹細胞との遺伝子発現比較 マウス骨質由来微小幹細胞 (BD-SSC) と造血幹細胞 (HSC) 間葉系幹細胞 (MSC) の 各細胞マーカーの発現を比較 微小幹細胞は 他の組織幹細胞とは異なる遺伝子発現プロファイルを示す 緑字 : 造血幹細胞 (HSC) マーカー 青字 : 間葉系幹細胞 (MSC) マーカー

マウス骨質由来微小幹細胞と間葉系幹細胞は明確に区別可能である マウス骨質由来微小幹細胞 (BD-SSC) と間葉系幹細胞 (MSC) は 表面マーカー発現と細胞の大きさにより 明確に区別可能である 間葉系幹細胞のコンタミネーションのリスクがない 間葉系幹細胞に適した培養条件下では 骨由来微小細胞は増殖せず 間葉系幹細胞のみが増殖する Sca-1 + PDGFRα low/- 分画に骨由来微小細胞が含まれる Sca-1 + PDGFRα + 分画 ( 間葉系幹細胞が含まれる ) の細胞は大型

マウス骨質由来微小幹細胞と造血幹細胞は明確に区別可能である マウス骨質由来微小幹細胞 (BD-SSC) と造血幹細胞 (HSC) は 表面マーカー発現と細胞の大きさにより 明確に区別可能である 造血幹細胞のコンタミネーションのリスクがない c-kit + Sca-1 + Lineage - 分画 ( 造血幹細胞が含まれる ) の細胞は大型 c-kit - Sca-1 + Lineage - 分画 ( 微小幹細胞が含まれる ) の細胞は小型

新技術のヒトへの応用 : ヒト骨質由来微小幹細胞の分離 (1) 人工関節置換術の際に摘出される骨からヒト骨由来微小幹細胞を分離した ( 関西医科大学医学倫理委員会の承認 ( 関医倫第 1114 号 ) による実験 ) 新技術を応用することで ヒトにおいても骨質から効率良く微小幹細胞を分離できる 酵素処理により骨から 細胞を分散させる 人工関節置換術の際に 患者の同意を 得て廃棄される骨の提供を受けた FACS による 解析と細胞分取 BD FACSAria セルソーター

新技術のヒトへの応用 : ヒト骨質由来微小幹細胞の分離 (2) 人工関節置換術の際に摘出される骨からヒト骨由来微小幹細胞を分離した ( 関西医科大学医学倫理委員会の承認 ( 関医倫第 1114 号 ) による実験 ) 新技術を応用することで ヒトにおいても骨質から効率良く微小幹細胞が分離できる

新技術のヒトへの応用 : ヒト骨由来微小幹細胞の分離 (3) 人工関節置換術の際に摘出される骨からヒト骨質由来微小幹細胞を分離した ( 関西医科大学医学倫理委員会の承認 ( 関医倫第 1114 号 ) による実験 ) 新技術を応用することで ヒトにおいても骨質から効率良く微小幹細胞が分離できる

新技術の想定される用途 : 微小幹細胞を用いた再生医療への応用 微小幹細胞を生体外で分化誘導し 障害組織の再生に役立てるほか 微小幹細胞そのものを直接移植することで障害組織を再生することが 可能になるものと期待される 分化誘導した細胞を用いる 細胞そのものを移植する

実用化に向けた課題 新技術 : マウス あるいはヒトの骨組織に由来する 微小幹細胞の効率的な分離方法を開発 確立した 実用化に向けた課題 : 微小幹細胞は それぞれ最適な条件で分化誘導することにより 多分化能を示すことがVSELなどで報告されている しかし 微小幹細胞の分化能の詳細な検討 再生させたい組織に効率的に分化誘導する方法の開発など 丌明な点や改善すべき点が存在する

企業への期待 (1) 今回紹介した技術により 再生医療における微小幹細胞の数の確保 という問題は解決できると考えている 一方で 現在 我々が取り組んでいる 微小幹細胞の分化能の詳細な検討 再生させたい組織に対する効率的な分化誘導法の開発 これらの課題の克服が微小幹細胞の医療応用をさらに加速させると 考えている

企業への期待 (2) これらの課題を克服するための基盤技術 ( 培養技術 ) 細胞移植 再生医療の ためのティッシュエンジニアリング技術 ( 分化誘導に関わる技術 移植時の担体 等の技術など ) を保有される企業と共同研究を進めたいと考えている また この微小幹細胞を用いた細胞製剤の開発や組織再生の基材開発など 再生医療分野への展開を考えている企業には 本技術の導入 微小幹細胞の 利用が有用と考えられる

産学連携の経歴 1998 年 ~1999 年 Y 社と委託研究実施 2000 年 ~2004 年 K 社と共同研究実施 2004 年 ~2007 年 K 社と共同研究実施 2011 年 ~2012 年 JST A-STEP 探索タイプに採択 2012 年 ~2013 年 JST A-STEP 探索タイプに採択 2013 年 ~2014 年 JST A-STEP 探索タイプに採択 2012 年 ~2014 年 D 社と共同研究実施

本技術に関する知的財産権 発明の名称 : 微小幹細胞の分離方法 出願番号 : 特願 2012-220648 出願人 発明者 : 学校法人関西医科大学 : 薗田精昭 中塚隆介 岩城隆二 飯田寛和 お問い合わせ先 関西医科大学産学連携知的財産統括室 ( 三島健 桑原厚 溝上大樹 ) TEL: 072-804-0101 FAX: 072-804-2686 e-mail: sangaku@hirakata.kmu.ac.jp