il Goldenberry (Physalis peruviana L.) 著者 : Mohamed F. Ramadan*, and Jorg-T. Morsel* 雑誌名 : J.Agric.Food Chem. 2003, 5, 969-974 紹介者 : 佐々木翔 200..2( 木 ) Introduction ゴールデンベリーはアンデス地方の果物であり 食用のほおずきの一種である 世界各地で栽培されている 以前はそれほど目立った作物ではなかったが イモ類やトマトと植物学上親族であるという事実が 商業的に多くの分野で期待されていたからである 食用としての数多くの用途の他に薬としての特質も持つ 外見はうすい皮に覆われている 大きさは.25~2cm で 滑らかで光沢があり オレンジ色の皮 小さな黄色い仁 ( 種子 ) を持つ 組成としては 皮を除いて種子部が重量で 7% 果肉部が 83% である この研究の目的は果実全体 果肉部 種子部から抽出した油脂をそれぞれ分析し 詳細な脂質プロフィールを得ることである ゴールデンベリーの主要な脂質構成を評価し 機能的食品の安定した供給を探っていくことを目的とする Results & Discussion 果実全体の油脂 (Whole berry oil 以下 WB と表記 ) 種子部の油脂 (Seeds oil S) 果肉部の油脂 (Pulp/peel oil P) 植物油として上のように 3 通りの油を抽出した 油をそれぞれ GC 分析し 別途購入した標準試薬と比較して同定した 今回の実験では果実全体から 新鮮な状態の果実の重量の 2 % 程度の油脂がとれ そのうち S が 90 % P が 0 % である 脂肪酸組成の調査脂肪酸 ( カルボン酸 ) 分析では GC にて検出しやすいようメチルエステル化の前処理をしている 脂肪酸メチルエステル (FAME) の分析は WB S P の 3 種について行った - -
主要な脂肪酸メチルエステルとして Table に決定した 5 の脂肪酸を示した 測定結果を考察していくと 最も大きな組成を占めているのがリノール酸であり 次いでオレイン酸が二番目である P のリノール酸はオレイン酸の 2 倍以上 同様に WB S についても 5 倍近くとなっている リノール酸は体内で合成できない必須脂肪酸であり 心臓病 動脈硬化 高血圧の予防に適していることが知られている 各植物油脂は飽和脂肪酸も多く含んでいる パルミチン酸 (~9 %) ステアリン酸(~ 2.5%) は既に調査されているほぼ全ての植物油脂にでも主要な飽和脂肪酸である その中でも P は 飽和脂肪酸が比較的高比率であり 全体の 6 % を超える WB S では 上記で紹介したリノール酸 オレイン酸 パルミチン酸 ステアリン酸の 4 つの脂肪酸だけで全体の 95 % 近くになり P では 77 % 近くになる ガドレイン酸 ジホモ-γ-リノレン酸 エルカ酸 リグノセリン酸 ネルボン酸の 5 つの脂肪酸は P では比較的高い収率で WB では低い収率で検出された その一方で S では検出できなかった トリエン (γ-リノレン酸 α-リノレン酸 ジホモ-γ-リノレン酸 ) の収率が低い S と違って P は多価不飽和脂肪酸を豊富に持つ P のうちトリエンは全体の.7 % を占め 特にγ-リノレン酸はその中の 8.66 % で 突出している 多価不飽和脂肪酸は健康促進のための栄養素として 近年劇的に研究が進んでおり 関連する論文も広く発展して来ている このような脂肪酸組成や 多量の多価不飽和脂肪酸の存在から ゴールデンベリーを重要な栄養素源とみなすことができる - 2 -
脂質の分類 分類した脂質ごとの脂肪酸組成 WB S P を クロロホルムを用いて中性脂質 (Neutral lipids NL) と極性脂質 (polar lipids PL) に分離する NL は TLC にて 5 成分の分離ができる モノアシルグリセロール (MAG) ジアシルグリセロール (DAG) トリアシルグリセロール(TAG) 遊離脂肪酸 (FFA) ステロールエステル(STE) である 分離後 更にメチルエステル化し脂肪酸組成も調査している 結果を表に示したものが Table2-4 である WB と S については中性脂質の割合が大きく P については極性脂質の割合が大きい TAG は中性脂質の中で圧倒的に多く 脂質全体の中でも大きな割合を占める 中性脂質の合計は WB S P がそれぞれ 8.6 86.6 65. % である MAG DAG FFA の比率は S WB より P が比較的大きい この結果からもわかるように 脂質分類ごとの脂肪酸組成は部位ごとで異なっている 表からリノール酸とオレイン酸は主要な不飽和脂肪酸であることが分かる 飽和脂肪酸では パルミチン酸 ステアリン酸の割合が大きく 特に MAG におけるパルミチン酸は 25 % を超えている WB P では ネルボン酸のステロールエステル (STE) は例外的にかなり高い数値を示す P についての極性脂質 (PL) でも γ-リノレン酸が例外的に高い数値を示している TAG の組成脂肪や油からの個々の TAG の効率的な分離識別は 近年少しずつ理解が進んできている TAG の生合成や植物のつくりに対する理解を容易にするため データの有用性は非常に大きい 高温度の FID 検出器の GC で メチルエステル化で前処理せずに 口に入れるそのままの状態のオイルの TAG について組成を測定した この方法は TAG の炭素数 二重結合数は決定できるが位置異性体までは判別できない TAG の GC 分析の結果を Table5 に示した Table の結果から ゴールデンベリーのオイルでは飽和脂肪酸は 6. % 以下ということが分かっている これより 高比率の不飽和脂肪酸がグリセリンにまんべんなく配向していると考えると ほとんどの TAG は 2 または 3 の不飽和アシル基を持っていることが推測できる Table5 の結果では 測定上小さいピークの集合の unknown を - 3 -
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除くと 9 種の組み合わせ ( 3 つの脂肪酸の炭素数の合計 : 二重結合数 ) の分子で構成さ れているとみなしている その中の 3 分子 C54:6 C52:2 C54:3 で 9 % 以上を占め る この結果により このオイルの主要な TAG は 以下のように推測できる C54:6 トリリノール (8:2) 3 C52:2 ジオレインモノパルミチン モノパルミチンモノステアリンモノリノール (8:) 2 + 6:0 and/or 6:0 + 8:0 + 8:2 C54:3 トリオレイン (8:) 3 分子のグリセリンに上記のような 3 分子の脂肪酸がエステル結合した 中性脂肪の一 種であるトリアシルグリセロール (TAG) これがオイルの主要な成分である Conclusion この分析測定から ゴールデンベリーの油の主要な脂肪酸の組成が判明した 機能性食品としての可能性をもち 産業的に利用価値があるものだといえる この果実の特色として貯蔵に便利なことが挙げられる 乾燥した状態であれば 長い間品質を保った状態で保管できる このことからもオイル生産に向いている果実だということが分かる オイル自体の収率が低くても 必須脂肪酸等の貴重な栄養源であるため 収率の低さは大きなデメリットではない ゴールデンベリーは世界中で徐々に普及してきており レストランや パン屋でも見かけるようになった これは 960 年代にキウイフルーツの消費量を大きく押し上げた 市場の経営戦略と同じものであり 非常に大きな可能性を秘めた一年生作物である - 5 -
Table-4 に対応 C2:0 ラウリン酸 C4:0 ミリスチン酸 H 4 C6:0 パルミチン酸 8 8 C8:3 n-3 α-リノレン酸 8 6 C6: n-7 パルミトレイン酸 C8:0 ステアリン酸 C8: n-9 オレイン酸 C8:2 n-6 リノール酸 6 2 H H H H H 8 H C8:3 n-6 γ-リノレン酸 8 H C20:0 アラキジン酸 20 H H C20: n-9 ガドレイン酸 以下構造式略 名称のみ C20:3 n-6 ジホモ-γ-リノレン酸 C22: n-9 エルカ酸 C24:0 リグノセリン酸 C24: n-9 ネルボン酸 - 6 -
補足 C50: はジパルミチンモノオレイン C52:2 はジオレインモノパルミチン またはモノパルミチンモノステアリンモノリノールグリセロールだと考えることができる - 7 -