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Transcription:

即実践可能な対策 Q&A ヒューマンエラー を防ぐ! 高原昭男著

はじめに 仕事を進める場合にヒューマンエラーは対応に 変苦慮するテーマである がかかわる仕事において ヒューマンエラーの発 を防ぐことはかなり難しいのが現実である だからと って ヒューマンエラーの発 は 間が うことだから仕 がないでは済まされないのである 難しいテーマであるが 知恵を出し少しでもヒューマンエラーの発 を防ぐ努 をすることは重要なことである そこで本書では ヒューマンエラーとはどのような特徴があるかを考え そのようなヒューマンエラーを発 させる原因を捉まえ 対策や改善策を構築する考え や 順を解説している ヒューマンエラーはその発 原因を徹底的に究明することが重要である 特に 間の 理的な要因の分析が重要になる この要因分析に重点を置いて解説している また ヒューマンエラーは発 してから対応策を検討することが多い しかし それでは取り返しのつかないトラブルになってしまうことも考えられる そこで 発 してからの対応だけでなく 発 する前の事前検討にも を れて解説している ヒューマンエラーは発 する前に事前に防ぐことが本来のあるべき姿なのである 本書が仕事を進める現場において ヒューマンエラーの撲滅に努 している 々のヒントになり さらに具体的な改善成果につながると幸いである ベーシック マネジメント研究所 代表 原昭男 1

次 はじめに... 1 1. ヒューマンエラーとは.... 4 2. ヒューマンエラーの原因... 4 3. ヒューマンエラーを発生させる職場要因.. 6 Q1ヒューマンエラーを減少させるためにはどのような方向が考えられますか 工場におけるミスを減らすための基本的な方向を教えてください... 7 Q2 ヒューマンエラーを防止するためには 作業者がヒューマンエラーの発生につながる異常を敏感に感じる感性が必要と思うのですが この感性を高めるにはどのような方法があるのでしょうか... 9 Q3 組織としてヒューマンエラーを削減するためには チーム相互間の連携が重要になると思うのですが ヒューマンエラー防止のためのチーム間の連携にはどのような点を留意する必要があるでしょうか... 11 Q4 仕事の条件が変わる場面で発生する仕事のミスであるヒューマンエラーを防止するためにはミスの発生を予測することも重要と考えます ミスの発生を予測するための良い考えかたや取り組み方があったら教えてください... 13 Q5 新入社員に仕事を教える場合に作業ミスを起こさないように ヒューマンエラーを発生させない心構えを指導したいと思うのですが どのような点に留意して指導すべきか教えてほしいのですが... 15 Q6 派遣社員が増えています 派遣社員の場合は採用してもすぐに人が変わることが多く ヒューマンエラーへの指導も難しいのが現実です このような派遣社員への指導のコツがあったら教えてほしいのですが... 17 Q7 ベテラン技能者から後継者に熟練技能を伝承する場合にヒューマンエラーを発生さ せないように留意することはどのようなことでしょうか ミスを起こさないベテラン技能者が技能伝承を実施するポイントを教えてください... 19 Q8 作業の中でミスを発生させた場合にはそのミスを反省し 発生させたミスからの教訓を考えさせることが重要と考えます 教訓を考えさせるポイントを教えてください 21 Q9 ヒューマンエラーを削減するための教育において集合教育を検討しているのですが どのようなねらいで どのようなカリキュラムの内容を実施すればいいのでしょうか 23 Q10 作業者がミスをした場合に管理監督者はどのように対応するのがいいのでしょうか 部下の指導方法でコーチングという手法が注目されていますが ヒューマンエラー防止にコーチングは有効でしょうか... 25 Q11 ヒューマンエラーの原因を探る視点としてM-SHELLモデルがあると聞いたのですが どのような内容でしょうか 教えてください また この方法は製造現場のミス防止の分析に活用できるのでしょうか 27 Q12 ヒューマンエラー対策としてエラープルーフ化という言葉を聞いたことがあります エラープルーフ化という意味を教えてください... 29 Q13 ヒューマンエラー対策のためのアイデアを多く引き出す方法として ビジュアル ブレイン ストーミングの内容を教えてほしいのですが... 31 Q14 ヒューマンエラーの発生と5Sは関連性があるのでしょうか もし 関連があるとすればどのような関連性があるのでしょうか... 33 Q15 ヒューマンエラーを削減するために管理監督者が果たすべき役割とはどのような 2

ことがあるのでしょうか... 35 Q16 ヒューマンエラーと職場風土は密接に関連していると考えますが ヒューマンエラーを削減させていく職場風土づくりに重要なコミュニケーションのポイントを教えてほしいのですが... 37 Q17 組織でのヒューマンエラーを防ぐた めのコミュニケーションで 特に留意すべき点はどのようなところでしょか... 39 Q18 ヒューマンエラーを防止するためのコミュニケーションを向上させる方策は何かあるでしょうか... 41 3

1. ヒューマンエラーとは. いるつもりでも つい失敗したり ミスを引き起 こすものである という点である ヒューマンエ ヒューマンエラーとはどの様なものかについ ラーに対する考え方で重要なことは 人間はミス て解説しよう ヒューマンエラーという言葉が を犯すものである という前提に立ってさまざま 示すように人間が関わるエラーであり ミスの な対応や改善策を講じることである ことである この人間が関わるエラーやミスの 類はその対応がかなり難しい 2. ヒューマンエラーの原因 日常生活においてもヒューマンエラーの事例 を頻繁に目にし また耳にすることであろう ヒューマンエラーの発生段階 一番多くの人が関係するヒューマンエラーが交 ヒューマンエラーの発生を人間の行動プロセ 通事故だ 交通事故のほとんどはヒューマンエ スに当てはめて検討してみよう ヒューマンエ ラーであり 人間のミスが原因である このよ ラーが発生する段階には1 状況認識の段階 2 うなヒューマンエラーとはどのような特徴があ 判断 決定の段階 3 行動の段階の3 段階があ るかについて考えてみよう る ( 図 1 参照 ) 最初の段階は物事を認識する段 一般的な定義は人の過誤に対する全般を捉え 階でエラーが発生する 事実を正しく認識でき ている しかし 筆者は人の技能未熟による過誤 ず誤った認識をすることでエラーを発生させる はヒューマンエラーの対象としていない その理 のである 最初に状況を把握する場面で 勘違 由は実行すべき対策や改善策が異なるからであ い 思い込み 無意識な行動 などによって る ここでのヒューマンエラーの定義を次のよう 誤った認識をしてしまうのである に定義する 例えば ある会社では製品を梱包する際 コン ヒューマンエラーとは人間による過誤で 認 テナの中に工具を入れたまま梱包をしてしまっ 識の段階 判断の段階 行動の段階で発生する失 た そのまま納品してしまい その結果 混入し 敗であり 注意しているつもりでも つい失敗し た工具がお客様の設備を壊してしまったことが てしまうミスをいう ある 梱包担当者が工具を取り出したと勘違いし この定義で重要なポイントは 人間は注意して て梱包してしまったのである 図 1 ヒューマンエラーの発生段階 状況認識の段階 事実を正しく認識できす誤った認識をする 勘違い 思い込み 指示間違い 連絡ミス 誤った認識に基づいて 誤った判断をする 判断 決定の段階 事実認識は正しいが経験や能力不足により誤った判断をする 行動の段階 誤った判断に基づいて 誤った行動をする 判断は正しいが経験や能力不足により誤った行動をする 4

新聞によれば ある県立病院で アルマール のつもりで アマリール を処方したところ 患者は意識不明になった という事故が報道された これなどは薬剤を処方する時に薬剤を誤って選択してしまい事故につながっていると想定される いずれのケースも誤った認識から エラーにつながっている 次の段階は判断や決定を行う段階で発生するエラーである 誤った認識に基づいて 誤った判断をするのである 事実認識は正しいが 経験や能力不足により誤った判断をする また この段階においても 判断や決定する場合に 勘違い や 思い込み が入り込んでくる可能性もある 例えば マシニングなどの設備へのデータ入力などは正しい認識をしていても 誤った計算などで 判断を間違うことがある 最後が行動の段階である 誤った判断に基づいて 誤った行動をする または判断は正しいが 経験や能力不足により誤った行動をする場合である この段階は人間の経験や技能不足によるエラーである 例えば 新人の作業者が経験不足による技能や技術の未熟さが原因でミスをする場合などは この行動段階のヒューマンエラーである 思い込みとは人は 客観的な事実だけに基づいて状況を認識しているわけではない これまでの経験や知識によって 将来の危険な場面を予測したり 過去に経験したこともないようなことであっても推論を働かせることにより 危険を認識することができる そして その予測や推論による認識に基づいて 恐らくこのようになる筈だという 行動パターン をもち行動する この行動パターンが現実と異なり さらにそれに気付かない場合に 思い込みと という現象になる ( 図 2 参照 ) また 行動が習慣化している 指導者や責任者としての立場に固執する 行動に自信 過信を持っている などの さまざまなこだわり は思い込みを助長することになる このような思い込みは勘違いから始まることが多い 人間は多少の勘違いを起こすことは避けられない しかし その勘違いを気づくことが必要なのである しかし ここに思い込みが入り込むと 重大な状況にならないと気づかないことが多いものである 勘違いを減少させるためには勘違いとは たとえばAをBと間違って認識す 図 2 思い込みとは 勘違いに基づく行動モデル 勘違い等による認識の間違い 推論 予測 間違った行動モデルを適切と判断 思い込みをより強化 行動が習慣化 立場に固執 行動に自信 思い込み 間違った行動 5

るという状況である 間違いに気づけば問題は回避されるが 思い込み状態に陥ることにより 重大なミスにつながることになる なぜ間違って認識するのだろう その原因はさまざま考えられるが 代表的な要因としては 見た目が似ているため勘違いする 習慣化しているためこれまでと同じと勘違いする 事前の行為を忘れてしまい勘違いする あいまいな状況を勝手に判断する などが考えられる いずれの場合も共通する原因のひとつとして 認識の範囲が広いということが指摘できよう すなわち 人間として物事を認識する場合に勘違いは当然ありうるということを前提に 認識する状況をより明確にすることが必要なのである 無意識的な行動を防ぐ無意識的に行動を防ぐためによく活用されているのが 指差呼称 と呼ばれるものである チェックすべきポイントを指を差して 声を出して確認するのである 指差呼称を行うことにより無意識になっている状況を意識化させるのである 重要なことは確認すべきポイントを明確にし 可能な限り表示することである そのためには 目で見る管理 の考え方活用することが効果的である 3. ヒューマンエラーを発生させる職場要因ヒューマンエラーの発生は勘違いや思い込みあるいは無意識的な行動により発生する これらは人間の弱さである ヒューマンエラーを起こすのは人間であるが ヒューマンエラーは起こるべくして起こるということが重要な考え方である よくヒューマンエラーが発生すると発生させた人が責められるが 発生させた人が悪いのではなく発生するような職場状況になっているということが最も問題なのである 人間はミスを 犯すものであるという前提にたった職場状況の整備が重要なのである 例えば 勘違いが原因でミスを発生させたとすれば 人が勘違いすることを問題にするのではなく 勘違いをしてしまう職場状況が問題であるという考え方が重要なのである また そのような職場を改善しないまま放置していること自体を問題にすることが必要なのである エラーが発生する職場要因とはエラーの発生を防止するための最も重要な視点は エラーが発生する要因を徹底的につぶすという考え方である 工場におけるエラーや事故の原因はさまざま考えられるが 勘違いや思い込みによるエラー防止には 職場状況を徹底的に分析し 整備し 勘違いを無くす努力をすることが エラーや事故防止の最も必要条件といえよう ここでの職場要因とはどのような点だろうか エラーが発生した場合の状況分析すべき内容として主なものは 1 上司と部下とのコミュニケーション 2 職場関の情報共有化 3 職場メンバーの意識や感性 4 事例からの学習 5 職場の5Sのレベル などが指摘できよう 以上も職場要因のへ対応するための方向として 以下 Q&Aで解説しよう Q&Aの構成は次のような内容である 1. ヒューマンエラー削減の基本的な方向 Q1 Q2 Q3 Q4 2. 対象者別のヒューマンエラーへの対応 Q5 Q6 Q7 3. ミスを発生させないための教育方向 Q8 Q9 Q10 4. ヒューマンエラーの対策立案の進め方 Q11 Q12 Q13 Q14 Q15 5. ミスを防ぐコミュニケーションの方法 Q16 Q17 Q18 6

Q1 ヒューマンエラーを減少させるためにはどのような方向が考えられますか 工場におけるミスを 減らすための基本的な方向を教えてください A ヒューマンエラーの2つの方向と3つの視点ヒューマンエラーを削減するための方向は基本的に2つの方向がある 事後対策と事前対策の2つの方向である また 対策の視点としては1 構成メンバー自身の意識レベルの向上によるミス防止 2チーム連携によりミスの削減を実現する 3ミスを予測する訓練の徹底 などの3つの視点が指摘できよう 事後対策と事前対策事後対策とはヒューマンエラーが発生したことを反省して同じようなヒューマンエラーを発生させない対策を立案してミスを防止する方法である 発生原因の分析では行動 判断 認識の分析 M-SHELLモデルによる分析などがある 対策の立案では エラープルーフ化 ( ポカヨケ ) を推進することが効率的だ また 事前対策とは発生後の事後対策ではなく 未然防止のための活動や取り組みの視点である ここでは この視点に重点を置いて解説することにしよう 詳細については後述するとして ここでは概要について簡単に解説しておこう 前者のヒューマンエラーが発生した後の対策はここで云々述べるまでもなく重要な視点である ヒューマンエラー対策の書籍などはこの点に重点を置いて解説している場合が多い 工場ではヒューマンエラーのことをポカミスと呼ぶことが多い ポカミスの対策としてポカヨケの方法などは ポカミスが発生した後の対策としてのさまざまの方策がポカヨケである 最近ではエラープルーフ化とも呼ばれている この視点は重要であるが どうしても事後対策だけになってしまう ヒューマンエラーでは事後対策だけでなく事前対策も重要である 後者はヒューマンエラーの発生後の対策の検討ではなく ヒューマンエラーを発生させないたための事前対策についての方策である この小論文では まず ヒューマンエラーの 事前対策への取り組みから解説する 事前対策といっても事後対策を軽視するものではない 事後対策を徹底することを通じて 事前対策のレベルを向上 事前対策についての考え方もより高度になっていくものである すなわち 事後対策を展開することを事前対策につなげて行く展開が重要である ( 図 3 参照 ) 事前対策の3つの視点ヒューマンエラーを防ぐための対策の視点 すなわち対策のためのアプローチとしては 個人の意識の視点 チームの連携の視点 ミスの事前予測の視点を指摘できよう いずれの視点も管理者などの責任者がコツコツと教育を実施していくべきテーマである 構成メンバー自身の意識レベルの向上ヒューマンエラーの対策についての第一は構成メンバー自身の意識の向上である 意識の向上とは ミスを発生させる前に事前に気づき 発生を防止しようとする意識の問題である 中でも重要になるのがエラーの発生につながるような異常な現象を敏感につかんで そのことを上司や周りの関連する人に報告 連絡 相談する姿勢である ミスなどのヒューマンエラーを引き起こす状況では 多くの場合にミスの発生前に おや! おかしいな と感じることが多いようだ おや いつもと違う なんだか変だな と前兆現象のような出来事を感じることがあるのだ 感じたら上司や周りの人に確認することが重要 7

なのである このような点を感じるためには感性を高めることが必要になる このような変化を感じる感性を高める方向については後述しよう チーム連携によりミスの削減を実現するヒューマンエラーの原因により異なるが チーの連携レベルを高めることによりミスの削減を実現できる場合がある チームの連携とはどのようなことだろう たとえば製造現場と生産技術との連携で生産現場のミスであるヒューマンエラーを削減することができるのだ 製造現場で発生した組み付けのミスで 製品の設計そのものが大変間違いやすい構造であったため 現場から設計変更の要望を技術部門に連絡して 設計変更を実施して その後のヒューマンエラーを防止している これらは事後対策であるがチームの連携を効果的に実現することにより ヒューマンエラーの防止を実現するものである ミスを予測する訓練の徹底日常から業務を進める場合にミスを予測する訓練を行い 事前にヒューマンエラーの発生を防止しようとするものである 特に個別受注生産のような繰り返しの生産活動ではない場合は このヒューマンエラーの発生を事前に予測し防ぐという視点が重要になる 図表 3 ヒューマンエラーの事後対策と事前対策 事後対策 1 エラー発生原因の分析 行動 判断 認識の分析 M-SHELL モデルによる分析 2 対策の実施 エラープルーフ化 ポカヨケ 事前対策 1 個人の意識の視点 異常を事前に発見しミスをしない姿勢 おや! おかしいなぁ ということを報連相 2 チームの連携の視点 ミス発生現場から防止できる部署への連絡 チーム間の緻密な連携 3 ミスの事前予測の視点 ミスの発生を予測しよう S とする姿勢 日常からの訓練が重要 8

Q2 ヒューマンエラーを防止するためには 作業者がヒューマンエラーの発生につながる異常を 敏感に感じる感性が必要と思うのですが この感性を高めるにはどのような方法があるのでしょうか A 感性を高めるには問題意識向上の日常の努力が重要異常や問題につながる状況を発見できる感性と身に付けることはヒューマンエラーに限ったことでなく 仕事を進めるために重要な能力と言えよう この感性を身に付ける基本は日ごろからの問題意識が必要になる 今問題意識は自分で問題を見つけようとする積極的な姿勢が基本なのである そして そのような問題意識を高める努力は日常の積み重ねが重要である 感性は問題意識からヒューマンエラーの防止につながる感性とは変化を敏感に感じることが必要だ いつもと違うことに気づくことが求められるのである いつもとの違いは受身の姿勢では変化を感じることは難しい 常に積極的な態度や姿勢で周囲を見ることが重要なのである 積極的に見るとは 何か変わった点はないかということを 徹底的に見ようとする姿勢である 視覚や聴覚などの感じ方は意思や意欲といったものに左右されるものだ 見ているけど見ていないということが発生するのである 問題意識の高さが異常発見する最も重要な要素といえよう おや! なんか変だな を継続的に意識する仕事の中で おや! 変だな おかしいなぁ と感じることがあったら何でもすぐに連絡や相談することを職場として徹底することである 職場として徹底するという雰囲気が重要なのである 常に おや と感じることを報告 連絡 相談するという意識を持っていると異常と感じる感性が高まるものである 異常とは何かを繰り返しの教育異常とは何かが理解できないと異常な状態に気がつかない 異常とはどのような状態であるかについて理解させるための教育は重要になる ある機械部品を製造している会社では 朝礼でこれまで発生したヒューマンエラーの事例を毎日確認の説明をしているという 毎日異なる事例について職場のメンバーが順番に説明をするのである 説明を受けるメンバーにとってはヒューマンエラーを思い出すことにより エラーやミスへの感性を高めるのである 事例の説明は 作業ミス事例カード を使用して実施する このカードには ミスの内容 対策の内容 特に留意すべき点 等が書かれてあり 特に留意する点を強調して解説している ( 図 4 参照 ) 職場の設備などへの関心を高める前述したように過去のミス事例に関心を高めることにより ミスなどのヒューマンエラーの発生などへの感性を固めることは大切な視点だ さらに 現場の生産する設備や工具などへの関心を高め 感度を良くしていくことも重要な視点といえよう 当り前のことであるが 自分達が使用する設備や工具に関心を示すことができない人は 生産現場で働くための基本的な条件が不足していると思われる この設備や工具などに関心を持つための まず重要な観点は設備や職場そのものの清掃である 清掃の徹底がものの見方を変える生産現場における職場や設備の清掃は 人の意識を変化させるものである 自分が使用している設備や治工具を徹底して清掃したり 磨いたりする行為は その設備や工具に対する思い 9