解禁日時 :2018 年 8 月 24 日 ( 金 ) 午前 0 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2018 年 8 月 17 日国立大学法人東京医科歯科大学学校法人日本医科大学国立研究開発法人産業技術総合研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 軟骨遺伝子疾患

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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報道関係各位 日本人の肺腺がん約 300 例の全エクソン解析から 間質性肺炎を合併した肺腺がんに特徴的な遺伝子変異を発見 新たな発がんメカニズムの解明やバイオマーカーとしての応用に期待 2018 年 8 月 21 日国立研究開発法人国立がん研究センター国立大学法人東京医科歯科大学学校法人関西医科大学

平成14年度研究報告

論文の内容の要旨

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. 発表者 : 山田泰広 ( 東京大学医科学研究所システム疾患モテ ル研究センター先進病態モテ ル研究分野教授 ) 河村真吾 ( 研究当時 : 京都大学 ips 細胞研究所 / 岐阜大学

報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

CiRA ニュースリリース News Release 2014 年 11 月 20 日京都大学 ips 細胞研究所 (CiRA) 京都大学細胞 物質システム統合拠点 (icems) 科学技術振興機構 (JST) ips 細胞を使った遺伝子修復に成功 デュシェンヌ型筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

長期/島本1

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

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博士学位論文審査報告書

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」【岡澤均 教授】

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 5 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 椎間板ヘルニアの新たな原因遺伝子 THBS2 と MMP9 を発見 - 腰痛 坐骨神経痛の病因解明に向けての新たな一歩 - 骨 関節の疾患の中で最も発症頻度が高く 生涯罹患率が 80% にも達する 椎間板ヘルニア

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

生物時計の安定性の秘密を解明

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

背景 人工 DNA 切断酵素である TALEN や CRISPR-Cas9 を用いたゲノム編集技術により 遺 伝性疾患でみられる一塩基多型を導入または修復する手法は 疾患のモデリングや治療のた めに必須となる技術です しかしながら一塩基置換のみを導入した細胞は薬剤選抜を適用で きないため 正確に目的

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

た遺伝子を切断し修復時に微小なエラーを生じさせて機能を破壊するノックアウトと 外部か ら任意の配列を挿入して事前設計した通りの機能を与えるノックインに大別される 外来遺伝 子をもった動物の作成や遺伝子治療には後者の技術が必要である しかし 動物胚への遺伝子ノックインには マイクロインジェクション法

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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

汎発性膿庖性乾癬の解明

背景 近年, コンピューター, タブレット, コンタクトレンズなどの使用増加に伴い, 国民の約 10 人に 1 人がドライアイだと言われています ドライアイの防止に必要な涙 ( 涙液 ) は水だけでできていると思われがちですが, 実は脂質層 ( 油層 ), 水層, ムチン層の三層で形成されています

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

学報_台紙20まで

東京医科歯科大学医歯学研究支援センター illumina Genome Analyzer IIx 利用基準 平成 23 年 10 月 1 日医歯学研究支援センター長制定 ( 趣旨 ) 第 1 条次世代型シークエンサーはヒトを含むあらゆる生物種の全ゲノム配列の決定 全エキソンの変異解析 トランスクリプ

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

研究成果報告書

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し


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背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

第6号-2/8)最前線(大矢)

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2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

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革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究 ( 厚生労働科学研究 ) に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療 再生医学分野の小戝健一郎教授の 難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究 が 平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金 ( 難病 がん等の疾患

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

発表内容 1. 背景感染症や自己免疫疾患は免疫系が強く関与している病気であり その進行にはT 細胞が重要な役割を担っています リンパ球の一種であるT 細胞には 様々な種類の分化したT 細胞が存在しています その中で インターロイキン (IL)-17 産生性 T 細胞 (Th17 細胞 ) は免疫反応

小守先生インタビューHP掲載用最終版

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解禁日時 :2018 年 8 月 24 日 ( 金 ) 午前 0 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2018 年 8 月 17 日国立大学法人東京医科歯科大学学校法人日本医科大学国立研究開発法人産業技術総合研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 軟骨遺伝子疾患の原因遺伝子である Sox9 の発現システムの解明 先天性骨軟骨形成異常症の病態解明へ向けた発見 ポイント SOX9 は 性分化や軟骨細胞の分化に必須の役割を持つ転写因子であり その SOX9 遺伝子もしくはそのエンハンサーの突然変異により 先天性骨軟骨形成異常症 ( キャンポメリックディスプラシア ) が引き起こされることがわかっていました 今回研究チームは CRISPR/Cas9 を用いたゲノム編集技術を複数の研究手法 ( クロマチン免疫沈降 (ChIP) と次世代シークエンサーおよび質量分析 エピジェネティックスな編集制御 エンハンサーのノックアウトマウスの作成 解析 ) と組み合わせることによって マウスの肋軟骨部位に特異的なエンハンサー (Rib Cage Specific Enhancer: RCSE) が Sox9 遺伝子から遠く離れた 1Mb 付近に存在し これが転写因子 Stat3 によって制御されることをつきとめました この発見は キャンポメリックディスプラシアやアキャンポメリックディスプラシアといった先天性骨軟骨形成異常症の病態解明へとつながる可能性があります 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科システム発生再生医学分野の淺原弘嗣教授と日本医科大学医学部整形外科学大学院生ならびに東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科システム発生再生医学分野特別研究学生の望月祐輔大学院生は 日本医科大学医学部整形外科学 慶應義塾大学医学部整形外科学 産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センターらのグループとの共同研究で Sox9 遺伝子から遠く離れた 1Mb 付近に存在するエンハンサーとそこに結合する Stat3 という転写因子が 肋軟骨における Sox9 遺伝子の作動を制御する発現システムであることを見出しました この研究成果は 先天性骨形成異常症キャンポメリックディスプラシアの原因の解明に寄与する可能性があります この研究は 文部科学省科学研究費補助金 ( 基盤研究 ) ならびに日本医療研究開発機構 (AMED) 革新的先端研究開発支援事業 (AMED-CREST) メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出 研究開発領域 1

における研究開発課題 腱 靱帯をモデルとした細胞内 外メカノシグナルの解明とその応用によるバイオ靱帯の創出 ( 研究開発代表者 : 淺原弘嗣 ) の支援のもとでおこなわれたもので その研究成果は 国際科学誌 Developmental Cell ( デベロップメンタル セル ) に 2018 年 8 月 23 日午前 11 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます 研究の背景 軟骨細胞の分化や発生に必須の役割を持つ転写因子として SOX9 (SRY-box9) が挙げられます この SOX9 遺伝子もしくはその周辺の突然変異により骨軟骨の異形成と性分化異常を主徴とする 重篤な先天性骨形成異常症 ( キャンポメリックディスプラシア, アキャンポメリックディスプラシア ) を引き起こすことが知られておりましたが SOX9 の遺伝子のスイッチ部分 ( エンハンサー ) は 非常に長い距離 ( 約 2Mb) のどこかに存在するといった特殊なものであるため 現在まで解明されていませんでした 研究成果の概要 近年 遺伝子改変を可能とする CRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeats) /Cas system を用いて エンハンサーの同定やエピジェネティックス制御の戦略が報告がされています 我々はこれらシステムを組み合わせることで 未だ明らかでない Sox9 の軟骨特異的なエンハンサーの同定を試みました まず Sox9 の近傍に設計した CRISPR/Cas system をレトロウイルスによりマウスの初代肋軟骨細胞に対し導入後 クロマチン免疫沈降とシークエンス (ChIP-seq) によって Sox9 から約 1Mb 離れたところに軟骨エンハンサー (RCSE) の候補を見出しました ( 図 1) 図 1 Sox9 上流 1Mb 付近に存在する肋軟骨特異的エンハンサー (RCSE) を同定するまでの模式図 A. 胎児マウスの初代肋軟骨細胞を採取し レトロウイルスを用いて Sox9 プロモーター領域付近の guide RNA (grna) と deactivated Cas9 (dcas9) を遺伝子導入後 HA 抗体にて ChIP-seq を施行した模式図 2

B. ChIP-seq の結果 grna 領域に強いピークを認める他に Sox9 遺伝子から約 1Mb 離れた箇所に有意なピ ーク (RCSE) を認めました 肋軟骨細胞において この軟骨エンハンサーの候補領域に遺伝子の作動をストップする機能のあるエピジェネティックシステムを誘導すると Sox9 の遺伝子の作動が弱まることが確認されたため 遺伝子スイッチとして機能することが示唆されました また この RCSE が作動する部位で青く染まる LacZ-トランスジェニックマウスを作成したところ 肋骨の軟骨に青い染色が見られたため RCSE は肋軟骨においてのみ Sox9 を作動させるスイッチであることがわかりました ( 図 2) 図 2 RCSE 領域を Sox9 プロモーターにつなぎ LacZ 配列を含んだベクターを用いたトランスジェニックマウスの作成 A. E12.5 ならびに E14.5 のトランスジェニックマウスで X-gal 染色を行った全体像 E12.5 および E14.5 両方で肋軟骨特異的な染色を認めており E14.5 では胸骨部分にも染色を認めました B. E14.5 のトランスジェニックマウスの切片 肋軟骨 および胸骨に染色を確認できます さらに この軟骨スイッチ RCSE を CRISPR/Cas9 を用いて欠失させたノックアウトマウスを解析したところ 肋 3

軟骨を含んだ胸郭のみの低形成 狭小化を認めました ( 図 3) また切片では肋軟骨のみで増殖軟骨細胞層の 狭小化 および肥大軟骨細胞層の増大を認めました これによって このスイッチが肋軟骨における Sox9 遺伝 子の作動に必要不可欠であることが証明されました 図 3 RCSE 領域を欠失させたノックアウトマウスの作成 A. E16.5 の骨格標本 RCSE ノックアウトマウスでは肋軟骨を含んだ胸郭のみの狭小化 低形成を認めました B. 生後 10 週のマイクロ CT 画像 骨格標本と同様 RCSE ノックアウトマウスで胸郭のみの狭小化 低形成を認めています 最後に この RCSE に結合するタンパクを質量分析装置をもちいて解析したところ Sox9 のスイッチを押す転 写因子として Stat3 (Signal transducer and activator of transcription 3) が同定されました この Stat3 遺伝子を 欠損させると Sox9 が作動しなくなり 軟骨発生が抑制されました 4

図 4 転写因子 Stat3 が肋軟骨特異的エンハンサーである RCSE 領域を介して Sox9 の発現を制御している模 式図 研究成果の意義 現在 ゲノムの機能を解析するための様々な手法が開発されていますが それぞれ一長一短があり まだまだ 未解明の先天性疾患や難病が多く残されています 本研究では 最近までに報告されてきた複数の CRISPR/Cas9 を用いた研究手法を組み合わせることによって 初めて肋軟骨における Sox9 遺伝子のスイッチ機構を明らかにすることができました これらの結果は 先天性骨軟骨形成異常症 ( キャンポメリックディスプラシア ) の疾患メカニズムの解明につながるものであり 本研究で用いられた手法は他の疾患の研究にも生かされることが期待されます 論文情報 掲載誌 : Developmental Cell 論文タイトル : Combinatorial CRISPR/Cas9 approach to elucidate a far-upstream enhancer complex for tissue-specific Sox9 expression 研究者プロフィール 淺原弘嗣東京医科歯科大学システム発生再生医学分野教授 研究領域分子生物学 ( 遺伝子発現 ) 発生 再生医学 整形外科学 リウマチ学 5

望月祐輔日本医科大学大学院医学研究科整形外科学分野大学院生東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科システム発生再生医学分野特別研究学生 研究領域発生 再生医学 整形外科学 問い合わせ先 < 研究に関すること> 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科システム発生再生医学分野氏名淺原弘嗣 ( アサハラヒロシ ) TEL:03-5803-5015 FAX:03-5803-5810 E-mail:asahara.syst@tmd.ac.jp < 報道に関すること> 国立大学法人東京医科歯科大学総務部総務秘書課広報係 113-8510 東京都文京区湯島 1-5-45 TEL:03-5803-5833 FAX:03-5803-0272 E-mail:kouhou.adm@tmd.ac.jp 学校法人日本医科大学総務部広報課 113-8602 東京都文京区千駄木 1-1 5 TEL:03-5814-6242 FAX:03-3824-2822 E-mail:kouhouka@nms.ac.jp 国立研究開発法人産業技術総合研究所企画本部報道室 305-8560 茨城県つくば市梅園 1-1-1 中央第 1 TEL:029-862-6216 FAX:029-862-6212 E-mail:press-ml@aist.go.jp <AMED 事業に関すること> 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) 基盤研究事業部研究企画課 100-0002 東京都千代田区大手町 1-7-1 読売新聞ビル TEL:03-6870-2224 FAX:03-6870-2246 E-mail:kenkyuk-ask@amed.go.jp 6