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九州大学学術情報リポジトリ Kyushu Unvrsy Insunl Rpsry 平成 24 年 4 月 -12 月授与分 博士学位論文内容の要旨及び審査の結果の要旨 hp://hdl.hndl.n/2324/26197 出版情報 :2013-03-29. 九州大学バージョン :publshd 権利関係 :

氏名 ( 本籍 国籍 ) ( 広島県 ) 学位の種類博士 ( 薬学 ) 学位記番号薬博甲第 492 号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位論文題目 平成 24 年 9 月 24 日 学位規則第 4 条第 1 項該当薬学府創薬科学専攻 AT DNA B Z 論文調査委員 ( 主査 ) 教授佐々木茂貴 ( 副査 ) 教授古賀登教授末宗洋准教授唐澤悟准教授麻生真理子 149

ビスナフチルポリアミン分子が短鎖 GC配列の DNAを低塩濃度下で効果的に B Z遷移が可能な ことを示した 一方 低い塩濃度条件や短鎖 DNAあるいは AT繰り返し配列においては Z-DNA構 造を形成しにくいことが知られている AT繰り返し配列 DNAは低塩濃度条件において B-DNAと なり この構造を完全に Z-DNAに遷移させるには 塩 5Mと高濃度としさらに 95mM以上の NCb が必要なことが解っている よって AT繰り返し配列における Z-DNAの形成は困難となり この ことが生体内で Z-DNAが関与する機能解明の詳細な検討の障害となっている このような機能を 有する低分子化合物の報告例は極めて少ないため 本研究ではこれまで困難とされた AT繰り返し 配列を低塩濃度下で効果的に B Z構造遷移を誘起する新規分子の開発を目指した 実験 AT繰り返し配列特異的に B Z構造遷移を誘起するポルフィリン誘導体の合成と評価 ポルフィリン誘導体の分子設計 近年 DNA に結合し生体分子でもあるポルフィリンを誘導体化 し分子内にカチオン部位をもっ TMPyP4を用いて AT繰り返し配列が酸性条件下で一部 B Z構 造遷移を誘起する可能性が報告された 私は独自にポリカチオンを結合したポルフィリン誘導体の 合成を行っており この化合物が B Z構造遷移能を有するか検討することとした 用いる分子の 基本構造は ポルフィリンのトランスの位置のピリジン窒素をメチル化しカチオンとすることで水 溶性向上を期待した また DNA構造のリン酸アニオンとの静電的相互作用部位としてトランス の位置の 2つのフェノール部位にポリカチオンリンカーを導入した ポリカチオンリンカーとして スペルミン及びトリアミンを導入した分子を設計し これらポルフィリン誘導体が AT繰り返し配 列に対し効果的な B Z構造遷移能を有するか調べた ポルフィリン誘導体の合成 ピリジンとフェノールを分子内に交互に有するボルフィリン誘導体は 文献に従い合成した 別途 アミノ基を保護したそれぞれのポリカチオン鎖末端をアルキルヨウ素 化したアミノリンカーを合成した それを用いてポルフィリンのフェノール部をアルキル化し さ らにピリジン部分をヨウ化メチルによりメチル化した 最後にボック基及びノシル基を除去するこ とでスペルミンポルフィリンとトリアミンポルフィリンをそれぞれ合成した スペルミンポルフィリン誘導体による AT配 列 DNA構造遷移能の評価 合成したポルフィリン誘 導体を用いて AT繰り返し配列に対する B Z構造遷移能を評価するため CDスペクトルを測定し ヶー一一TATATATATATA'Iア ハ 一寸 3'.TATATATATATATA.5 ~ M ra ι~ l r B 川 た 14mrAT 繰り 返し配列では 4 B-DNA コンフ Z2 0 O O. 2 1 ォメーションを 350 示 す 250nm付. 6 wvlnh(nm).2evlun fb Z r n s n b l yf r(at)ndn A. DNA:d(ATh 15μM Lnd:450μM 0 Nc c d y l B u f f rlmm ph7.0 NCl100mM 25C J - r.3a:j - r. B :Sprmn'prphyrn 近の核酸塩基部 分に由来する負 の吸収極大と 265nm 付 近 の らせん構造に由来する正の極大の強度がスペルミンポルフィリンを添加するにつれ減少し Z-DNA コンフォメーションを示す 280nm付近の負の極大が増大した (.2 ) この結果より スペルミン ポルフィリンは低塩濃度下においても効果的に B型から Z型へ構造遷移を誘起することが解った また ポルフィリン吸収帯波長において DNAへの結合によって生じる誘起 CDスペクトルが観測 された この様な誘起 CDが二本鎖 DNA末端においてポルフィリン同士が J型会合体を形成し生 じることが報告されており このスペルミンポルフィリンも同様の会合体を形成していると考えら れる (.3A) 14mrAT繰り返し配列とスペルミンポルフィリン誘導体との等温滴定型熱量測定(ITC) CD u v 150

論文審査の結果の要旨 151

Z 構造選移を誘起する可能性が報告された 佐々木英哲氏は独自にポリカチオンを結合したポル フィリン誘導体の合成を行っており この化合物が B Z構造選移能を有するか検討することとし た 用いる分子の基本構造は ポルフィリンのトランスの位罷のピリジン窒素をメチル化しカチオ ンとすることで水溶性向上を期待した また DNA構造のリン酸アニオンとの静電的相互作用部 位としてトランスの位罷の 2つのフェノール部位にポリカチオンリンカーを導入した ポリカチオ ンリンカーとして スペルミン及びトリアミンを導入した分子を設計し これらポルフィリン誘導 体が AT繰り返し配列に対し効果的な B Z構造選移能を有するか調べた ポルフィリン誘導体の合成 ピリジンとフェノールを分子内に交互に有するポルフィリン誘導体は 文献に従い合成した 別途 アミノ基を保護したそれぞれのポリカチオン鎖末端をアルキルヨウ素 化したアミノリンカーを合成した それを用いてポルフィリンのフェノール部をアルキル化し さ らにピリジン部分をヨウ化メチルによりメチル化した 最後にボック基及びノシル基を除去するこ とでスペルミンポルフィリンとトリアミンポルフィリンをそれぞれ合成した スペルミンポルフィリン誘導体による AT配列 DNA構造遷移能の評価 合成したポルフィリン誘 導体を用いて AT繰り返し配列に対する B Z構造遷移能を評価するため CDスペクトルを測定し た 14mrAT繰り返し配列では B-DNAコンフォメーションを示す 250nm付近の核酸塩基部分に 由来する負の吸収極大と 265nm付近のらせん構造に由来する正の極大の強度がスペルミンポルフ イリンを添加するにつれ減少し Z-DNAコンフォメーションを示す 280nm付近の負の極大が増大. 2 ) この結果より スペゾレミンポルフィリンは低塩濃度下においても効果的に B型から Z した ( 型へ構造遷移を誘起することが解った 10 5 '.ATATATATATATAT.3' 3'.TATATATATATATA.5' A B 6 ( 4 国 Ez } O O O 2 1 2 4 6 J - r wvlnh(nm).2evlun fb Z r n s n b l yf r(at)ndn A. DNA:d(ATh 15μM Lnd:450μM 0 Nc c d y l B u f f rlmm ph7.0 NCllOOmM 25C.3A:J- r. B :Sprmn-prphyrn また ポルフィリン吸収帯波長において DNAへの結合によって生じる誘起 CDスペクトルが観 測された この様な誘起 CDが二本鎖 DNA末端においてポルフィリン同士が J型会合体を形成し 生じることが報告されており このスペルミンポルフィリンも同様の会合体を形成していると考え.3A) られる ( 14mrAT繰り返し配列とスペルミンポルフィリン誘導体との等漏滴定型熱鼠測定 ( I T C ) CD u v スペクトルより示された結果を踏まえ DNA とポルフィリン誘導体との分子間相互作用をより詳 細に検討するため ITC測定を行った DNA溶液にポルフィリン誘導体を滴下した時の熱量変化か ら得られる実測値スペクトルは 三種類の別々の成分として分析することが可能であった Spl ではリガンドの DNAへの結合はエンタルビー駆動のもので ポルフィリン誘導体の DNAへのス タッキング相互作用及び電荷相互作用による外部結合が考えられた その後の Sp2では吸熱反応 が観測され これは B Z構造選移に由来するものと考えられた Sp3とするポルフィリンリガ ンドの低濃度から高濃度域においては エンタルビー及びエントロビー駆動によるパインディング が観測された この様にスペルミンボルフィリンの DNAへの結合とそれに伴う B Z構造誘起は 152

氏名 ( 本籍 国籍 ) ( 東京都 ) 学 位 の 種 類 博士 ( 薬学 ) 学 位 記 番 号 薬博甲第 493 号 学位授与の日付 平成 24 年 9 月 24 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当薬学府医療薬科学専攻 学位論文題目 論文調査委員 ( 主査 ) 教授 大戸茂弘 ( 副査 ) 教授 家入一郎 准教授 江頭伸昭 准教授 小柳 悟 153

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論文審査の結果の要旨 155

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