日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

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しかるところ, 一般に, ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし, 当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから, ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である 裁判官千葉勝美の補足意見があ

されることとなり その結果 取締役は一般的な注意義務として 善良な管理者としての注意義務 ( 民法 644) を負うことになる また 取締役に関してはこれとは別に会社法に独自の一般的義務が規定されており 取締役は 法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し 株式会社のため忠実にその職務を行わなければな

会社法 Ⅰ 期末試験 * 注意 : マークシートに記入をする時に解答箇所を間違えないよう 十分注意すること マークは必ず鉛筆で行うこと ペンでマークしたものは読取りができない Ⅰ. 次の問いに答えよ 第 1 問 ( 配点 :5 点 ) 株式会社と民法上の組合の類似点と相違点に関連する次のア ) から

企業取引法(今出川) 期末試験

(2) 変更の内容 定款変更の内容は別紙のとおりであります (3) 日程 定款変更のための株主総会開催日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 定款変更の効力発生日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 以上 - 2 -

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民事系 第 問 [ 商法 ] 川﨑作成解答例 全員の承認があり, 取締役会の承認があったと評価される余地はある しかしながら, 条 項の重要な事実の開示がない 取締役会の承認を必要とした趣旨からすれば, 利益の衝突を来すか否かを判断するに足りる事実, 本件でいえば, 乙の事業の内容, Bの関与の程度

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求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

役員及び会計監査人の選任に関する株主総会に関連し その議案は 通常の株主総会決議事項と同様に取締役会で決定するが 監査役や会計監査人の選任に関する議案については 監査役会の同意が必要であり ( 監査役に関し343Ⅰ Ⅲ 会計監査人に関し344Ⅰ) 場合によっては監査役会は取締役に対し監査役や会計監査

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商業登記法 宿題 第11問 解答例

66 対する本件解任の訴えは不適法であるとして却下した これを受けて X は控訴し 1 会社法 854 条が解任の対象とする役員に 取締役留任義務者が含まれると解すべきであること 2 Y 会社では 発行済株式総数の 2 分の 1 ずつを X と Y 1 が保有し 互いに対立しているため 株主総会を開

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

プレスリリース

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

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株式併合、単元株式数の変更および定款の一部変更に関するお知らせ

(2) 併合の内容 1 併合する株式の種類普通株式 2 併合の割合平成 30 年 10 月 1 日をもって 同年 9 月 30 日 ( 実質上 9 月 28 日 ) の最終の株主名簿に記載された株主さまの所有株式 5 株につき 1 株の割合で併合いたします 3 併合により減少する株式数併合前の発行済

単元株式数の変更、株式併合および定款の一部変更に関するお知らせ

したがって, 本件売却は,362 条 4 項 1 号に基づき取締役会決議が必要である 2) 利益相反取引に該当するか (356 条 1 項 2 号,3 号 ) 甲社は取締役会設置会社であるから, 本件売却が甲社において直接取引または間接取引に該当するときも,356 条 1 項 2 号または3 号,3

( 除名 ) 第 9 条社員が次のいずれかに該当するに至ったときは 社員総会の決議によって当該社員を除名することができる (1) この定款その他の規則に違反したとき (2) この法人の名誉を傷つけ または目的に反する行為をしたとき (3) その他除名すべき正当な事由があるとき ( 社員資格の喪失 )

として同条 2 項が定めた例 と同様に, 一方が死亡した日から起算して 1 月以内に 他方による標準報酬改定請求があったときに限り, 一方が死亡した日の前日, すなわちその者に係る標準報酬をなお観念することのできた時点において標準報酬改定請求がされたものとみなし, 特例を設ける趣旨であると解される

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

り, 変更後においても当社株式の売買単位あたりの価格水準を維持するとともに, 議決権数に変更が生じないことを目的として併合を行なうものです (2) 株式併合の内容 1 併合する株式の種類普通株式 2 併合の割合 2017 年 10 月 1 日をもって, 同年 9 月 30 日の最終の株主名簿に記録さ

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

単元株式数の変更、株式併合および定款の一部変更に関するお知らせ

株主間契約書 投資事業有限責任組合 ( 以下 A という ) 投資事業有限責任組合 ( 以下 B という ) 投資事業有限責任組合 ( 以下 C といいい A B C を総称し 投資者 といい 個別に 各投資者 という ) と 以下 D という ) と ( 以下 D という ) ( 以下 E といい

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

単元株式数の変更、株式併合および定款一部変更に関するお知らせ

各 位 平成 29 年 5 月 18 日会社名太平洋セメント株式会社代表者名代表取締役社長福田修二 ( コード番号 5233 東証第 1 部 福証 ) 問合せ先総務部長井町孝彦 (TEL ) 単元株式数の変更 株式併合および定款一部変更に関するお知らせ 当社は 本日開催の取締

新株予約権発行に関する取締役会決議公告

競業取引規制 1 条文 趣旨 LQ223 頁, 江頭 433 頁, 田中 237 頁 条文 法 356 条 1 項本文 1 号 ( 競業及び利益相反取引の制限 ) 取締役は, 次に掲げる場合には, 株主総会において, 当該取引につき重要な事実を開示し, その承認を受けなければならない 1 取締役が自

答案の書き方講義 ( 会社法 ) 答案の書き方講義会社法講師加藤喬 第 1. 総論 1. 判例を意識した論述設問 1⑵は 定款に記載がない財産引受けの効力及び当該財産引受けの追認の許否等について 問うものである 判例の考え方に言及せず 又は定款に記載がない財産引受けが当然に発起人の無権代理行為である

審決取消判決の拘束力

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

新株予約権発行に関する取締役会決議公告 株主各位 平成 29 年 8 月 1 日千葉県流山市南流山三丁目 10 番地 16 サンコーテクノ株式会社代表取締役社長洞下英人 平成 29 年 7 月 18 日開催の当社取締役会において 当社の取締役 ( 監査等委員である取締役及び社外取締役を除く ( 以下

まず 取締役会は委員会及び執行役の人事を決定する すなわち 各委員会の委員は取締役の中から取締役会の決議で選定する (400Ⅱ) 各委員会の委員の人数は3 人以上でなければならず (400Ⅰ) 過半数は社外取締役でなければならない 3 (400Ⅲ) 委員会の委員は他の委員及び執行役を兼ねることはでき

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法人税における役員特有の取扱いには 主に次のようなものがあります この取扱いは みなし役 員も対象となります 項目 役員給与 損金算入制限 過大役員給与 特有の取扱い 定期同額給与 ( 注 1) や事前確定届出給与 ( 注 2) など一定のもの以外は損金不算入 実質基準 ( 職務内容 収益状況など

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

各 位 2017 年 5 月 24 日会社名住友金属鉱山株式会社代表者名代表取締役社長中里佳明 ( コード番号 5713 東証第 1 部 ) 問合せ先広報 IR 担当部長元木秀樹 (TEL ) 単元株式数の変更 株式併合および定款の一部変更に関するお知らせ 当社は 平成 29

平成 年 月 日

11総法不審第120号

公益財団法人全国競馬 畜産振興会役員慰労金支給規程 ( 平成 25 年 8 月 1 日会長達第 3 号 ) ( 趣旨 ) 第 1 条この規程は 公益財団法人全国競馬 畜産振興会 ( 以下 振興会 という ) 役員及び評議員の報酬等の支給に関する規程第 5 条の規定に基づき 役員 ( 常勤の者に限る

平成  年(オ)第  号

とを条件とし かつ本事業譲渡の対価全額の支払と引き換えに 譲渡人の費用負担の下に 譲渡資産を譲受人に引き渡すものとする 2. 前項に基づく譲渡資産の引渡により 当該引渡の時点で 譲渡資産に係る譲渡人の全ての権利 権限 及び地位が譲受人に譲渡され 移転するものとする 第 5 条 ( 譲渡人の善管注意義

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

単元株式数の変更、株式併合及び定款の一部変更に関するお知らせ

取締役会規定

単元株式数の変更、株式併合および定款の一部変更に関するお知らせ

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示して, 理事会の招集を請求することができる ( 同条第 2 項 ) この請求のあった日から 5 日以内に, 当該請求があった日から 2 週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には, 当該請求をした理事は, 理事会を招集することができる ( 同条第 3 項 ) 監事は,

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

利益相反取引規制 1 利益相反取引 承認を要しない利益相反取引 LQ220 頁, 田中 239 頁 ⑴ 利益相反取引会社と取締役の利益が相反する場合, 取締役が私心を去って会社の利益のために自己を犠牲にすることを常に期待することが困難であり, 会社が害されるおそれがある そこで, 利益相反取引 (

(3) 分割の日程 ( 予定 ) 1 基準日設定公告 2013 年 9 月 13 日 ( 金 ) 2 基準日 2013 年 9 月 30 日 ( 月 ) 3 効力発生日 2013 年 10 月 1 日 ( 火 ) (4) 新株予約権の目的である株式の数の調整今回の株式の分割に伴い 当社発行の第 1

(4) 併合により減少する株主数本株式併合を行った場合 10 株未満の株式のみご所有の株主様 156 名 ( そのご所有株式数の合計は 198 株 ) が株主たる地位を失うことになります なお 当社の単元未満株式をご所有の株主様は 会社法第 192 条 1 項の定めにより その単元未満株式を買い取る

 

356 早法 92 巻 1 号 (2016) Y 1 の主な収入源は スポンサー収入 ( 法人広告請負料 ) および試合の入場料収入 ( チケット収入 ) であり 主な支出は 監督 コーチおよび選手の年俸や移籍金などの人件費であった Y 1 は その設立当初から 毎年 11 月頃に約 2 億円ないし

2. 株式併合 (1) 株式併合の目的上記 1. 単元株式数の変更 に記載のとおり 当社株式の単元株式数を変更するにあたり 中長期的な株価変動を勘案しつつ 投資単位を証券取引所が望ましいとする水準 (5 万円以上 5 0 万円未満 ) に調整することを目的として 株式併合 (2 株を1 株に併合 )

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〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

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株式併合、単元株式数の変更及び定款の一部変更に関するお知らせ

そこで、X男は、八年前にY女が出した離婚届は民法742条に該当し、無効だと裁判を起こした

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

ストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ

2 併合の方法 比率平成 30 年 10 月 1 日をもって 平成 30 年 9 月 30 日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主様の所有株式 5 株につき1 株の割合で併合いたします 3 減少株式数株式併合前の発行済株式総数 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) 124,415,013

ロボットショップポイントサービス利用規約

会員に対する処分等に係る手続に関する規則 (2018 年 7 月 30 日制定 ) 第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条本規則は 定款第 15 条に規定する会員に対する処分及び不服の申立てに係る手続の施行に関し 必要な事項を定めることを目的とする ( 定義 ) 第 2 条本規則において 次の各号

定款規定不要必要経 3 売買価格決定のタイミング 4 当該株主以外の他の株主が自分の株式を買ってほしいという権利 ( 売主追加請求権 ) があるか否か 5 会社が買取る場合 財源上の制約があるか否かなお どのケースの場合も 株主総会の特別決議が必要です 決議にあたっては 対象となる株主 ( 売主 )

(2) 併合の内容 1 併合する株式の種類 普通株式 2 併合の割合 2016 年 10 月 1 日をもって 同年 9 月 30 日の最終の株主名簿に記録 された株主様ご所有の株式について 10 株を 1 株の割合で併合いた します 3 併合後の発行可能株式総数 177,500,000 株 ( 併合

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民事訴訟法

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評議員選任 解任委員会について点検項目 説明 参考 1 評議員選任 解任委員会の設置について すべての法人 ( 現在, 評議員会を設置している法 定款例第 6 条 評議員選任 解任委員会 を設置する旨の定款変更を行っていますか ( 又は定款変更の準備をしていますか ) いる いない 人も含む ) に

平成  年(行ツ)第  号

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2. 株式の併合 (1) 併合の目的上記 1. に記載のとおり 単元株式数を 1,000 株から 100 株に変更することに伴ない 証券取引所が望ましいとしている投資単位の水準 (5 万円以上 50 万円未満 ) および中長期的な株価変動等を勘案し 株式の併合を行なうことといたします (2) 併合の

定款の一部変更に関するお知らせ

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

剰余金の配当に関するお知らせ

( 第 8 条から移動 ) 第 10 条 ( 単元未満株式の売渡請求 ) 当会社の単元未満株式を有する株主 ( 実質株主を含む 以下同じ ) は株式取扱規則の定めるところに従い その有する当会社の単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の当会社の株式を売渡すよう当会社に請求することができる 第 1

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職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

市町村合併の推進状況について

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民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

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Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以外の株式会社では ) 定款または株主総会の決議によって定めなければならず ( 会社法 361 条 ) それを経ずに支給された報酬は無効と考えられている ところが 中小閉鎖的会社においては株主総会を開催せず しかも定款規定も整備していないまま報酬を支給しているケースが多くみられる このような会社では 形式的に株主総会を開催していないとしても 実質的には株主全員が報酬支給に同意していること等を理由に通常は問題とはならない しかし 一度取締役 株主間で対立状態に陥ると 報酬支給の有効性が争われることになる そこで 株主総会を招集して 取締役への報酬支給を事後的に追認する株主総会決議を得る方法が考えられる すなわち 株主総会決議が報酬支給後になされた場合に 事後の総会決議によって役員報酬決議の遡及的効力が生じるかが問題となる これに関する近時の注目すべき裁判例が 東京地判平成 27 年 5 月 26 日金法 2034 号 84 頁である 二東京地判平成 27 年 5 月 26 日 1. 事案の概要 ( 1) 当事者関係 Y1 株式会社は 昭和 26 年 4 月 5 日に成立した 日用品雑貨等の販売業等を目的とする株式会社 ( 公開会社 ) である ( 発行済株式総数 3 万株 取締役会設置会社かつ監査役設置会社 ) Y1 会社の定款 16 条は 取締役及び監査役の報酬は株主総会の決議により定める と規定している 実際には Y1 会社は A Y2 Y 4 および Y 3 が現実に働くことにより雑貨等の販売および貸しビル業を営み 収益を維持してきた家族会社であった A は 平成 14 年 4 月 1 日以前から平成 24 年 9 月 8 日までY 1 会社の取締役および代表取締役を務めていたが 同日死亡した Y2 は A 死亡時の同人の妻であり Y1 会社において 1 平成 14 年 4 月 1 日以前に取締役に就任し 平成 23 年 5 月 29 日に辞任し 2 平成 24 年 10 月 18 日に取締役に就任したが 平成 25 年 3 月 13 日に当該就任に係る株主総会決議を取り消す旨の判決が確定し 3 同年 5 月 31 日に取締役に就任し 以後現在までその地位にある Y3 は A の長女である Y4 は A の二女であり Y1 会社において 平成 23 年 5 月 29 日に取締役に就任し 平成 24 年 10 月 18 日に代表取締役に就任し 以後現在までそれらの地位にある Y5 は A の長男であり 平成 14 1

年 6 月 10 日に取締役に就任し 以後現在までその地位にある X1 X 2 は 平成 25 年 6 月 6 日以前から現在まで Y1 会社の株式を保有する株主である また Y1 会社 ( 発行済株式総数 3 万株 ) の株式保有状況は次のとおりである Y2 5685 株 X1 5700 株 Y3 Y4 17,070 株 X2 7100 株 B 100 株 Y5 C 30 株 また Y 1 社は 平成 14 年 4 月から平成 25 年 3 月までの間に A Y2~ Y5 に対して 総額 6956 万円 ( 年額では 960 万円以下 ) を支給してきたが 支給のために必要とされる株主総会決議がなされてこなかった ( 会社法 361 条 Y2 会社定款 16 条 ) ( 2) 甲事件 :X1 X2 の提訴請求平成 25 年 12 月 6 日 X 1 X2 は 同日付け文書 ( 同月 7 日到達 ) により Y 1 会社の監査役 D(Y5 の妻 ) に対し (1)A が Y1 会社の代表取締役として行った支払総額 6698 万円を (2)(A の死後に )Y4 および Y5 が Y1 会社の取締役として行った総額 54 万円を (3)Y4 が Y1 会社の代表取締役就任後に行った総額 204 万円を ((1)~(3) 合計 6956 万円 ) それぞれY1 会社から流出させ それにより Y1 会社に損害が生じた旨指摘して Y2~ Y5 に対し責任追及の訴えの提起を請求した その理由として X1 X2 は A が Y1 会社の代表取締役として 株主総会の決議を経ずに取締役報酬の支払を行う等の任務懈怠をし それにより Y1 会社に同額の損害が生じたところ A はその後死亡し 相続人 Y2~ Y 5 が相続したことを挙げている その後 Y 1 会社が訴えを提起しなかったため 平成 26 年 3 月 27 日 X 1 X2 は Y2~ Y5 に対して 平成 17 年改正前の商法 ( 旧商法 )266 条 1 項または会社法 423 条 1 項に基づく損害賠償請求 ( 株主代表訴訟 ) を提起した ( 3) 乙事件 : 本件決議と決議取消の訴え平成 26 年 6 月 24 日 Y1 会社の代表取締役たる Y4 の招集により Y1 会社の臨時株主総会 ( 以下 本件総会 という ) が開催され Y1 会社の株主 8 名のうち C を除く 7 名が出席し Y4 が議長を務めた 同総会において Y1 会社の取締役らが本件決議に係る議案を提出した 対象となる議案は次のとおりである (1) 平成 15 年 3 月期 ( 平成 14 年 4 月 1 日から平成 15 年 3 月 31 日まで ) から平成 26 年 3 月期 ( 第 63 期 平成 25 年 4 月 1 日から平成 26 年 3 月 31 日まで ) までの取締役報酬の年間総額 ( 枠 ) を 1000 万円以内とする 旨 2

(2) 取締役報酬の配分及び配分の時期 方法は取締役会に一任する 旨 (3) 株主総会の決議を経ずに支払済みの取締役 A Y2 および Y4 に対する取締役報酬の支払全部を追加承認する 旨 X1 X 2 および B はこれに反対したものの Y2 ら ( 持株数合計 1 万 7070 株 ) の賛成により当該議案は可決された これに対し 平成 26 年 8 月 29 日 X1 X 2 は 取締役の説明義務違反 ( 会社法 314 条本文 ) があった旨等を主張して 本件総会決議には会社法 831 条 1 項 1 号および 3 号の取消事由があるとして 本件総会決議の取消を求める訴えを提起した 2. 判旨 ( 1) 甲事件 : 株主総会決議のない報酬の支払いについて損害賠償責任が認められるか Y1 会社においては 基本的には 株主総会の決議によって取締役報酬の額等を定めた上で行うことを要する ( 定款 16 条 旧商法 269 条 1 項 会社法 361 条 1 項 ) しかしながら 旧商法 269 条 1 項及び会社法 361 条 1 項がそのように規定している趣旨目的は 取締役又は取締役会によるいわゆるお手盛りの弊害を防止し 取締役報酬の額等の決定を株主の自主的な判断に委ねるところにあると解されるところ 株主総会の決議を経ずに取締役報酬が支払われた場合であっても これについて後に株主総会の決議を経ることにより 事後的にせよ上記の趣旨目的は達せられるものということができるから 当該決議の内容等に照らして上記の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り 当該取締役報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになるというべきである ( 最高裁第三小法廷平成 17 年 2 月 15 日判決 判タ 1176 号 135 頁参照 ) そして 本件各支払のうち本件問題支払以外の支払については その後 これを承認する旨の本件決議が行われている X 1 X2 の主張内容及び本件全証拠によっても 本件決議による本件各支払の承認について 旧商法 269 条 1 項及び会社法 361 条 1 項の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認めることはできない ( 2) 乙事件 : 本件決議には会社法 831 条 1 項所定の取消事由があるか X1 X 2 は 本件決議について 取締役の説明義務違反 ( 会社法 314 条本文 ) があった旨主張するが Y4 が 1 その理由は 当社では 法律の理解が不十分で 株主総会の承認議決をすることを忘れて 役員報酬を支払ってきたと思われます 2 当社では A Y2 Y4 の 3 名が従業員と取締役を兼ねて営業し 収益を上げてきたのです 3 ( 本件各支払の額が ) 低い金額です との回答をしていること も踏まえれば この点において 決議取消事由を構成するよう 3

な説明義務違反があったと認めることはできない X 1 X 2 は 本件各支払の対象取締役の具体的な業務内容 Y1 会社の収益 必要経費の内訳 報酬額の算出根拠等の説明がなかった旨主張するが 本件総会において Y1 会社の取締役が株主からそれらの 特定の事項について説明を求められた ( 会社法 314 条本文 ) 事実は認められず そうである以上 それらの事項についての説明をしなかったことをもって同条本文に違反するということはできない 等として 本件決議について 会社法 831 条 1 項所定の取消事由に該当する事実は認められないと判示した 三事後の株主総会決議と役員報酬支払の効力 1. 株主総会の決議時期取締役に対する報酬規制 ( 会社法 361 条 ) は お手盛りを防止し 会社 株主の利益を保護するために規定された すなわち 株主が取締役に対する報酬支給の公正さを判断するとの観点から定款の定めや株主総会の決議が必要であるとしている もっとも 株主総会の決議をいつの時点で行うべきかは明文で定められていないため 本件のように報酬支給後になされても既に支給された報酬が遡及的に適法になるか否かは問題である なぜなら 通常は事前に株主総会の決議を経た上で報酬を支給すると考えられるからである 2. 裁判例の状況 - 最判平成 17 年 2 月 15 日 - この問題について争われた最判平成 17 年 2 月 15 日判タ 1176 号 135 頁は 株式会社の取締役 の報酬について 定款にその額の定めがないときは 株主総会の決議によって定めると規定している趣旨目的は 取締役の報酬にあっては 取締役ないし取締役会によるいわゆるお手盛りの弊害を防止し 役員報酬の額の決定を株主の自主的な判断にゆだねるところにあると解される そして 株主総会の決議を経ずに役員報酬が支払われた場合であっても これについて後に株主総会の決議を経ることにより 事後的にせよ上記の規定の趣旨目的は達せられるものということができるから 当該決議の内容等に照らして上記規定の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り 当該役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになるというべきである と判示した 3. 東京地判平成 27 年 5 月 26 日の検討本判決も 前掲最判平成 17 年 2 月 15 日を受けて お手盛りの弊害を防止し 取締役報酬の額等の決定を株主の自主的な判断に委ねるという報酬規制の趣旨目的から 事後的に株主総会の決議を経ることでも取締役報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになると判示している もっとも 本判決は この 趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り は適法なものになると判示しており 特段の事情 にあたるか否かが問題となる 4

これについて (1) 株主代表訴訟を却下させる目的である場合と (2) 株主総会 決議に取り消すべき瑕疵がある場合が考えられるので それについて検討してお きたい (1) 株主代表訴訟の提訴との関係株主代表訴訟の提起後に株主総会の決議を行うこととなる場合 取締役の責任の免責に総株主の同意を要する制度 ( 会社法 424 条 ) に反するか否かも問題となる しかし 事後的な株主総会の決議により既に支給された報酬相当額の損害も生じないため 取締役の任務懈怠行為を対象とする同規定の対象にはならないと解すべきであろう 前掲最判平成 17 年 2 月 15 日が判示するとおり 本件決議により既に支払済みの本件役員報酬の支払を適法有効なものとすることが許される以上 総会決議に訴訟を勝訴に導く意図が認められるとしても それだけでは被告らにおいて総会決議の存在を主張することが訴訟上の信義に反すると解することはできないと判示していることからも明らかだからである したがって 特段の事情 に該当しないと考えられる (2) 株主総会決議に取り消すべき瑕疵がある場合ところで 報酬の支給について株主総会で追認決議をするに当たり 当該決議に取り消しすべき瑕疵がある場合は問題となる 本判決では 本件決議について 取締役の説明義務違反 ( 会社法 314 条本文 ) があったか否かが 争われた 取締役が説明義務を尽くしたといえるか否かについて 裁判例は 本件株主総会における株主の質問に対して 取締役が 本件各決議事項の実質的関連事項について 平均的な株主が決議事項について合理的な理解および判断を行い得る程度の説明を本件株主総会で行ったと評価できるか否かに帰するというべきであるととらえる ( 東京地判平成 16 年 5 月 13 日金判 1198 号 18 頁 ) 本判決もこの裁判例に従い 説明義務違反に該当しないと解している 裁判所の下記 HP を参照 最判平成 17 年 2 月 15 日 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/580/062580_hanrei.pdf 以上 5