【アジア新興経済レビュー】韓国・台湾・マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン・インド 韓国と台湾、内需に違い

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【アジア新興経済レビュー】底堅い内需も輸出不振の長期化が足枷に

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

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今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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リンギ安進むマレーシア~原油安による経済への影響~

金融政策決定会合における主な意見

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○ユーロ

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ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

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月例経済報告

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

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インド経済見通し~公共投資と農村部の回復で7%台半ばの成長を維持

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

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月例経済報告

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

【アジア・新興国】東南アジアの経済見通し~景気は内需を中心に堅調維持も、資金流出と貿易摩擦のリスクに注意

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

1. インドネシア 2018 年の成長率は +5.3% に加速 2017 年は +5.1% 成長と小幅加速 2017 年の実質 GDP 成長率は前年比 +5.1% と 政府が 2017 年度補正予算で示した政府目標 ( 同 +5.2%) をわずかに下回るものの 2016 年 ( 同 +5.0%) か

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経済・物価情勢の展望(2016年10月)

【ロシア最新経済金融週報】

Invesco Premia Plus Fund

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経済・物価情勢の展望(2017年10月)

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米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

第45回中期経済予測 要旨

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

20TH JULY 1998    MITSUBISHI TRUST & BANKING CO

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

○ユーロ

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

金融市場2018年12月号

Economic Indicators_  定例経済指標レポート

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(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

第1章

資料1

現代資本主義論

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

株式市場 米国株 国内外の政治動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 好調な企業決算発表を受けて上昇米国株式市場は上昇しました 月前半までは2017 年 1-3 月期の決算発表内容が総じて好調であったことが株価を支えました 月半ばには コミー前 FBI( 連邦捜査局 )

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

【アジア・新興国】東南アジア経済の見通し~19年は底堅い成長も、輸出鈍化と利上げの影響で減速傾向

○ユーロ

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

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2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

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1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

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2017年第3四半期 スマートフォンのグローバル販売動向 - GfK Japan

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

南十字星(オセアニアレポート)(No

HSBC A4 Factsheet 2018

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Microsoft Word - ギリシャ概況(2019年7月号)

From The FIXED INCOME Desk 2013年3月

2. トピックス 中国 インドを除くアジア主要国の特徴について 中国やインドが高い成長を続けている中にあって 韓国 台湾 タイ インドネシアなどの東南アジアの国々の成長率は過去 7 年間を平均すると 4.3% と安定している しかし 成長率には国によって差があり フィリピン ベトナム インドネシアな

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中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

Outlook201608

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

Transcription:

ニッセイ基礎研究所 No.14-084 01 Aug. 2014 アジア新興経済レビュー 韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド韓国と台湾 内需に違い 経済研究部研究員斉藤誠 TEL:03-3512-1780 E-mail: msaitou@nli-research.co.jp 1. ( 実体経済 ) 7 月は韓国 台湾で 4-6 月期のGDPが発表された 両国とも海外景気の回復を背景に緩やかな改善を続けている しかし 内需については 韓国は自粛ムードやウォン高圧力によって消費 投資の勢いが弱まっている一方 台湾は好調な輸出を背景に消費 投資が改善するなど好循環が生まれている 2. ( インフレ率 ) 6 月のインフレ率は 引き続き多くの国 地域で食品価格の上昇を背景に緩やかなインフレ圧力が働いている ただし インドネシアについては昨年の燃料補助金削減の影響が一巡したことからインフレ率が6% 台へと低下した 3. ( 金融政策 ) 7 月は 韓国 マレーシア インドネシア フィリピンで金融政策決定会合が開かれた マレーシアとフィリピンがそれぞれ政策金利を +0.2 引き上げた 両国とも国内では良好な経済環境が続くなか 物価上昇への警戒感が高まったことから利上げに踏み切った 4. (7 月の注目ニュース ) 7 月 22 日 インドネシアでは大統領選挙の結果が発表され ジョコ氏の勝利が確定した プラボウォ氏と比べて清廉な改革派と評されるジョコ氏の勝利を受けて インドネシアは株高 通貨高が進むなど金融市場では好意的に受け止められた 7 月 10 日 インドでは 2014 年度予算案が発表された モディ政権初の予算編成であり 世界の注目が集まった 製造業の振興に向けたインフラ整備の加速 投資促進など数多くの政策が組み入れられた内容だった 5. (8 月の主要指標 ) 8 月は マレーシア タイ インドネシア フィリピン インドで 2014 年 4-6 月期のG DPが公表される 特にインドネシアは未加工鉱石の輸出規制と高インフレ タイでは軍事クーデター前後の国内の混乱による実体経済への影響が懸念される また インドでは足元の経済指標が改善しており GDP 成長率の加速が期待される 1

1. 生産活動 ( 韓国 台湾 タイ :6 月 その他の国 :5 月 ) アジア新興国 地域の生産指数の伸び率 ( 前 年同月比 ) を見ると 国 地域によってまちま ( 図表 1) 生産指数 ちの結果となった ( 図表 1) 良い動きとしては 台湾 (6 月 ) が米アップ ルの新型スマホ発売による半導体受託生産の活 況やパソコンの買い替え需要により 2013 年 1 月以来の高水準を記録した また インド (5 月 ) は前年同月比 +4.7% と 2012 年 10 月以来 の高水準を記録した さらに 韓国 (6 月 ) は 前年同月比 +1.3%( 前月 : 同 0.7%) と 半導体需要の増加を受けてプラスに転じた 一方で悪い動きとしては タイ (6 月 ) が軍事クーデター後の夜間外出禁止令などの影響で 15 ヵ月連続のマイナスとなった 夜間外出禁止令は 6 月 13 日に完全解除されており 国内情勢も軍 事政権下で安定化に向かっていることから 7 月以降は生産も徐々に改善に向かうと見ている ( 注 ) 月は韓国 台湾 タイが 6 月 その他の国 地域が 5 月 2. 貿易 ( 韓国 台湾 タイ インド :6 月 その他の国 :5 月 ) アジア新興国 地域における輸出の伸び率 を見ると 緩やかな海外需要の拡大を受けてインドネシアを除く全ての国 地域でプラスを記録した ( 図表 2) 特にマレーシア タイが農業 鉱業 製造業など幅広い分野でプラスとなったほか インドが 2 ヵ月連続の前年同月比 + 超を記録した また インドネシアでは未加工鉱石の輸出規制でマイナスが続いている 輸入の伸び率 については 国 地域によってまちまちの結果となった ( 図表 3) 特に タイが内需の鈍化が下押し圧力となり 12 ヵ月連続のマイナスとなった また インドネシア フィリピンが原材料と資本財の減少で大幅マイナスとなり先行きの生産の鈍化が懸念される さらに インドは金の輸入規制の一部緩和などを受けてプラス転化した 経常赤字に悩むインドネシア インドの貿易収支を見ると インドネシアは輸出よりも輸入の収縮が大きかったことから僅かながらも黒字を確保した また インドは輸出が増加したものの 金 の輸入が急拡大したことから貿易赤字が拡大した ( 図表 2) ( 図表 3) 輸出 2 6カ月平均 3カ月平均 輸入 ( 注 ) 月は韓国 台湾 タイ インドが 6 月 その他の国 地域が 5 月 またマレーシアは現地通貨ベース 他はドルベース 2 ( 注 ) 月は韓国 台湾 タイ インドが 6 月 その他の国 地域が 5 月 またマレーシアは現地通貨ベース 他はドルベース 2

3. 自動車販売 (6 月 ) 6 月の自動車販売台数 は タ イを除く全ての国 地域でプラスを記録した ( 図 表 4) 特に 台湾 マレーシア フィリピンが好調 を維持し インドは 18 ヵ月続いたマイナスから プラスに転化した また タイは国内の混乱と 自動車購入支援策による需要の先食いの影響で 14 ヵ月連続のマイナスを記録した 4. インフレ率 (6 月 ) 6 月のインフレ率 は 引き続 き多くの国 地域で緩やかなインフレ圧力が働 いているものの 前月の水準から大きな変化は なかった ( 図表 5) ただし インドネシアは断 食月 ( ラマダン ) の開始が今年は 6 月 ( 昨年は 7 月 ) にずれ込んだため 買い溜め需要による インフレ圧力が働くと見られたが 6 月のイン フレ率は +6.7%(5 月 : 同 +7.3%) に低下した ( 図表 4) 4 これは昨年の 6 月下旬に実施した燃料補助金削減の影響が一巡し始めたためと考えられる また 7 月には同政策の影響が完全に一巡するため インフレ率は 弱まで低下すると見ている 7 月は 韓国 マレーシア インドネシア フィリピンで金融政策決定会合が開かれた マレー シアは 2011 年 5 月以来 据え置いてきた政策金利を +0.2 引き上げた (OPR 1 :3.0 3.2) また フィリピンも 2012 年 10 月以来 据え置いてきた政策金利を +0.2 引き上げた ( 翌日物借 入金利 :3.5 3.7 翌日物貸出金利 :5.5 5.7) マレーシア フィリピンでは 国 内の経済活動が好調であるため インフレ率の上昇を受けて利上げに踏み切った その他の国では 政策金利は据え置かれたが 韓国は足元の景気減速を受けて来月の利下げ観測が高まっている 3 2 2 3 4 5 ( 注 ) 台湾は登録台数 ( ナンバープレート交付数 ) ( 図表 5) 8% 6カ月平均 7% 3カ月平均 6% 4% 3% 2% 1% インフレ目標 新車販売台数 インフレ率 ( 注 ) インドは WPI 他は CPI インフレ目標を採用している国は韓国 タイ インドネシア フィリピン タイはコア CPI の目標値を定めている 5. 金融市場 (7 月 ) ( 図表 6) (%) 株価上昇率 30 6カ月 25 3カ月 20 1カ月 15 ( 図表 7) (%) 6カ月 6 3カ月 5 1カ月 4 3 2 通貨上昇率 ( ドル安 自国通貨高 ) ( ドル高 自国通貨安 ) 10 1 5 0 0 1 5 2 7 月のアジア新興国 地域の株価は 国 地域によってまちまちの結果であった ( 図表 6) 7 月 1 Over Night Policy Rate の略 3

は中国の景気刺激策による景気回復期待の高まり 米連邦準備制度理事会 (FRB) による出口戦略が漸進的に進められるとの見方が相場の好材料となる一方 地政学的リスクの高まり ( ウクライナ反政府勢力によるマレーシア航空機の撃墜事件 イスラエル軍によるガザ地区への地上戦の長期化 ) ポルトガルの金融システム不安が悪材料となり 全体として上値余地は限られた ただし 国別に見ると上昇を続けた国もある 韓国は 40.7 兆ウォンの景気刺激策を打ち出したこと タイは軍政による国内の安定化で景気が回復しつつあること インドネシアでは大統領選で改革派と評されるジョコ氏が勝利したこと インドでは新政権がインフラ投資を重視した今年度予算案を発表したことが株価を押し上げた 為替については 国 地域によってまちまちの結果となった ( 図表 7) 目立った動きとしては インドネシアは大統領選の結果が好感されたこと タイは国内情勢の安定で資金流入が続いたこと マレーシア フィリピンは金融引締めサイクルに入ったことから自国通貨高となった 一方 韓国は 景気減速を背景とする 8 月の利下げ観測の高まりから小幅のウォン安となり 経常黒字を背景に続いたウォン高は一旦ストップした 6.7 月の注目ニュース 今後の注目点など 1 韓国 台湾 :GDP 発表韓国では 7 月 24 日 台湾では 7 月 31 日に 4-6 月期のGDPが発表された 結果は 韓国が前年同期比 +3.6%( 前期 : 同 +3.9%) と減速 台湾が前年同期比 +3.8%( 前期 : 同 +3.1%) と加速した 両国とも海外景気の回復を背景に緩やかな改善を続けているものの 内需の状況は異なるようだ まず韓国は 4 月の旅客船事故による自粛ムード 2 やウォン高圧力によって消費 投資の勢いが弱まっている 韓国政府は 景気下振れを懸念してGDP 発表後に景気浮揚策 3 を打ち出した 一方 台湾は好調な輸出を背景に消費 投資が改善するなど好循環が生まれている 2インドネシア : 大統領選でジョコ氏が勝利 7 月 9 日にインドネシアではジョコ氏とプラボウォ氏が争う大統領選挙が投開票された 7 月 22 日の結果発表では民間調査会社による開票速報とほぼ変わりなくジョコ氏の勝利が確定した 両候補ともに鉱物の輸出規制を支持するなど保護主義の色合いは強いものの 比較的に清廉な改革派と評されるジョコ氏の勝利を受けて インドネシアは株高 通貨高が進むなど金融市場では好意的に受け止められた 与党サイドは議席占有率が 37% しかないため これから連立の組み替えを進めて国会運営を安定化させる必要がある 与党は過半数確保に向けて 副大統領となるユスフ カラ氏の所属するゴルカル党 ( 議席占有率 16.) を加えると見込まれるものの 複数政党の連立政権であることには変わりない 法改正のスピードが前政権に比べて速くなるとは期待できない 2 自粛ムードは当初一時的なものと見られていたが 消費者心理指数は 7 月も改善が見られていない 3 景気刺激策は 公共支出拡大 (11.7 兆ウォン ) 政府系金融機関による中小企業支援策 (26 兆ウォン ) 住宅ローン規制の緩和など総 額 40.7 兆ウォンの資金投入を行う予定 4

3インド :14 年度予算案を発表 7 月 10 日 インドでは 2014 年度予算案が発表された モディ政権初の予算編成であり 世界の注目が集まった 製造業の振興に向けたインフラ整備の加速 投資促進など数多くの政策が組み入れられた内容だった 政策面の目玉は 防衛産業と保険業への外資出資上限の引上げ (26% 49%) 消費者向けEC 市場の外資参入の完全開放といった外資誘致政策の見直しであった 複数ブランドを扱う総合小売業の外資解禁は総選挙の公約どおり見直しには踏み切らなかった また 財政健全化にも注目が集まったが 歳入面では細かな税率変更にとどまり 物品サービス税 (GST) は今年度中にスケジュールを示すことになった 今年度の財政収支 ( 対 GDP 比 ) は 4.1% と前政権による暫定予算案から動きはなかった 48 月の主要指標 : マレーシア タイ インドネシア フィリピン インドで GDP 公表 8 月は マレーシア タイ インドネシア フ ィリピン インドで 2014 年 4-6 月期の GDP が 公表される 特にインドネシアは未加工鉱石の 輸出規制と高インフレ タイは国内の混乱によ る影響がどの程度実体経済に表れるかが注目と 言える また インドは足元で見られる経済指 標の改善が示すとおりの良好な結果となって新 政権の改革の後押しとなるのか 期待は高まっ ている 当研究所では マレーシアが前年同期比 +5. タイが同 0.4% インドネシアが同 +5.6% フィリピンが同 +6.7% インドが同 +5.6% を予想する ( 図表 8) 新興国経済指標カレンダー 8 月 1 日金貿易 CPI CPI 8 月 1 日金 CPI 8 月 4 日月貿易 8 月 5 日火 CPI GDP CPI 金融政策 8 月 6 日水貿易金融政策 8 月 7 日木貿易 8 月 8 日金 8 月 11 日月生産 8 月 12 日火輸出生産 生産 8 月 14 日木金融政策金融政策 WPI 8 月 15 日金 GDP BOP 8 月 18 日月 GDP 8-18 日生産 8 月 20 日水 CPI 8 月 25 日月生産 25-27 日貿易 8 月 26 日火 26-28 日 貿易 8 月 28 日木 生産 GDP 8 月 29 日金生産 GDP ( 資料 ) 各種報道資料生産指数の対象月はマレーシア インドネシア フィリピン インドが 7 月 その他は 6 月 貿易統計の対象月はマレーシア インドネシア フィリピンが 7 月 その他は 6 月 貿易統計については フィリピンは輸出と輸入の公表日が異なる 公表日は変更になる可能性がある 特に斜体字については日程が不確実なもの 8-18 日貿易 CPI ( お願い ) 本誌記載のデータは各種の情報源から入手 加工したものであり その正確性と安全性を保証するものではありません また 本誌は情報提供が目的であり 記載の意見や予測は いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません 5