基礎化学 2 第 4 章解答解説 4-1 ドリル問題 1. 陰イオン性界面活性剤 イオン性界面活性剤 陽イオン性界面活性剤 界面活性剤 両イオン性界面活性剤 非イオン性界面活性剤 2. コップに水をあふれそうになるまで入れると, 水面は盛り上がる ( 表面張力 ) が, これは水面の水分子が水素結合しているためである 楊枝の先に液体洗剤を付け, この盛り上がった水面に付けると, 水はこぼれ, 盛り上がりが低くなる これは液体洗剤分子が水面に親水基を水中に, 疎水基を空気側に向け配向吸着するためである この疎水基が水面の水素結合を切り, 水分子同士の結合を, 水分子と疎水基との弱い結合 ( ファンデルワールス力 ) に変える ( 表面張力を低下する ) ため水がこぼれる 3. 水に界面活性剤を溶かしていくとき, まず, 界面活性剤分子が水面に吸着する 水面が界面活性剤分子で満たされると, 界面活性剤分子は水中にもぐるが, 水から逃げようとする疎水基は, 疎水基同士で集まって水を避けるようになる こうして, 界面活性剤分子は疎水基を内側に, 親水基を外側 ( 水のある側 ) に向けて集まりはじめる この界面活性剤の集合体をミセルと呼ぶ このミセルができはじめる濃度を臨界ミセル濃度 ( c r i t i c a l m i c e l l e c o n c e n t r a t i o n, 略して c m c ) と呼ぶ 4. 油のように水に不溶な物質の表面に界面活性剤が吸着すると粒子の凝集を抑え, また, 表面張力を低下させるために分散しやすくなり, 牛乳 ( O / W 型 ) や生クリーム ( W / O 型 ) のように, 比較的安定に乳化や分散をさせることができるようになる O / W は O i l i n W a t e r を表し, 水中にオイルが分散し, 水が連続相となる乳化状態を示す 1
5. けん化 ( 鹸化 ) 反応は一般にエステルの加アルカリ分解を指す 油脂 ( 高級脂肪酸グリセリンエステル ) を加アルカリ分解すると高級脂肪酸のアルカリ塩とグリセリンが生じる 鹸化で得られた高級脂肪酸のアルカリ塩を固めたものは石のように硬いので, 石鹸 ( 石けん ) という 6. グリセリン脂肪酸エステル ( モノグリセリド ), ショ糖脂肪酸エステル, ソルビタン脂肪酸エステル, プロピレングリコール脂肪酸エステル, 有機酸モノグリセリドなどがある 7. 水に溶けにくい物質が, 界面活性剤によって, 水溶液中で安定に存在するようになること 疎水基として炭化水素基をもつ界面活性剤のミセル内部は, 液状炭化水素とほぼ同じ状態であり, 液状炭化水素を溶媒とする有機物を添加するとミセル内部に分配溶解する 可溶化か c m c 以上で起こり, 濃度の上昇とともに直線的に増加する また, 非イオン界面活性剤の可溶化量は温度とともに変化し, 曇点付近で最大となる 8. 細菌の表皮である細胞壁 細胞質膜では, 外部からの栄養物や水分の取り込み, あるいは菌体内の老廃物の外部への搬出等が行われている 細菌の表皮はわずかにマイナス ( - ) に帯電している そのため, 陽イオン界面活性剤の第 4 級アンモニウム塩のカチオン ( + イオン ) により, 細胞膜が引き寄せられる その結果, 引き寄せられた反対側の細胞膜が弱くなって穴が開き, 細菌の増殖に必要な内容物が漏れ出し, 死滅する あるいは, 引き寄せられた細菌の細胞膜は, 第 4 級アンモニウム塩の疎水性基 ( 長鎖アルキル基 ) により, 突き破られ, 細胞膜が破壊され死滅する 9. 非イオン界面活性剤は, 水溶液中でイオンに解離しない界面活性剤である 非イオン界面活性剤にはポリエチレングリコール型と多価アルコール脂肪酸エステル型がある ポリエチレングリコール型がもっとも多く使用されている ポリエチレングリコール型はエーテル結合の酸素に水を配位するため低温では水溶性を示すが, 高温になると分子運動が激しくなり, 配位した水を離すため水溶性が低下し白濁する 2
( 曇点をもつ ) 一般に起泡性は低いが高い洗浄力と浸透性を示す 耐硬水性, 耐酸性, 耐アルカリ性に優れるほか, イオン性界面活性剤と混合使用することができる 大きなミセルを形成するので, 多量の油を可溶化することができ, 乳化性が高い 1 0. ビルダーは洗浄力をビルドするもの, すなわち, 洗浄力を向上させるものであるが, それ自身には洗浄力がない 多くは石けん, 合成洗剤などに添加してその洗浄作用を向上させるために用いる 無機, 有機の数多くの物質がある 無機物としてアルカリ性のものではリン酸ナトリウム, 炭酸ナトリウム, 中性のものでは硫酸ナトリウム, 塩化ナトリウム, 酸性のものでは硫酸水素ナトリウム 有機物としてアルカリ性のものではクエン酸ナトリウム, 中性の脂肪酸アミド, デンプン, 酸性のグリコール酸などがある 4-2 ドリル問題 1. Na CO 2 ONa COONa H + OCOCH 3 (CH 3 CO) 2 O CO CO CH 3 COONa 2. HNO 3 H NO 2 H 2 SO 4 Sn (CH 3 CO) 2 O NH 2 NHCOCH 3 3. 中枢神経を興奮させるカフェインは興奮剤であるが, 心筋の収縮力を増強させ, 冠動脈を拡張するため, 強心薬としても用いられる また, 利尿効果もある 4. 3 CCHO + 2 H 2 SO 4 H C C 3 3
5. + 3 2 光照射 H H H H H H 6. 2 CH 2 CO Na OCH 2 CO 4-3 ドリル問題 1. CH ポリエチレンはエチレンの重合体で 2 -CH 2 n で表される 工業的製法として高圧, 中圧, 低圧による合成法がある 製法により 高密度ポリエチレン と 低密度ポリエチレン に分けられる 高密度ポリエチレン ( H D P E : H i g h D e n s i t y P o l y E t h y l e n e ) は, 低圧あるいは中圧で合成され, 分枝度が低く, 結晶性が高い 比重は 0. 9 4 ~ 0. 9 6 で, 硬いフィルム, 繊維, 成形品として使用される 一方, 低密度ポリエチレン ( L D P E : L o w D e n s i t y P o l y E t h y l e n e ) は, 高圧法でつくられ, 分枝度が高く, 結晶性が低い 比重は 0. 9 1 ~ 0. 9 3 で, やわらかくシートとして用いられる エチレンを 1 0 0 0 ~ 3 0 0 0 a t m,1 0 0 ~ 3 0 0 で有機過酸化物を開始剤として重合したものである 低圧法によるポリエチレンの合成は, A l ( C 2 H 5 ) 3 - Ti C l 4 ( Z i e g l e r 触媒 ) を用い, 1 ~ 1 0 a t m, 常温 ~ 1 0 0 で重合したものである 中圧法では触媒として酸化クロム系 ( 2 0 ~ 4 0 a t m,1 0 0 ~ 1 6 0 ) または酸化モリブデン系 ( 2 0 ~ 8 0 a t m,2 0 0 ~ 2 7 0 ) を用いる 中圧法により得られるポリエチレンは低圧法のそれと性質が似ている 2. スチレン 4
3. CH 2 =CH 2 2 高温 CH 2 =CH 2 CH 2 -CH 2 Ca() 2 CH 2 =C 2 -H 重合 (CH 2 -C 2 ) n ( サラン ) サランは網戸 ( 防虫ネット ) や食品包装用ラップに使用される 4. 塩化ビニル樹脂のように極性の大きいプラスチックは一般に硬く, もろく, きわめて加工しにくい このような硬いプラスチックに配合し, 弾性率を低下させ, 成形加工を容易にし, また製品に柔軟性, 耐寒性などの性能を付与する液状または固体状の有機化合物を可塑剤という 可塑剤の役目は低分子の可塑剤が, 高分子化合物間にはたらく相互作用 ( ファンデルワールス力 ) を弱めることで, プラスチック製品には種々の添加剤が加えられるが, 可塑剤も添加剤の一つである 5. 可塑剤に求められる性質には, 相溶性 可塑剤とプラスチックがよく混和する性質低揮発性 揮発性が低いこと低移行性 プラスチックが他のものに接触したとき, 可塑剤が相手物質に移行しにくい性質耐水性, 耐油性 水や油に触れたとき変質したり, 溶け出したりして可塑剤としての機能が落ちないこと耐熱性, 耐寒性 暑さ, 寒さで可塑剤としての機能が落ちないこと耐候性 季候の変化に影響されないこと低毒性 毒性が低いことなどさまざまであるが, 一つの可塑剤ですべての要求を満たすことはできないので, 複数の可塑剤が用いられる 6. 木材パルプのセルロースを繊維にしたもので, セルロース ( C e l l - O H と略す ) に水酸化ナトリウムを作用させるとアルカリセルロース ( C e l l - O N a ) ができる これを二硫化炭素と作用させ, セルロースザントゲン酸ナトリウム溶液をつくる この溶液を細いノズルを通して希硫酸 ( 紡糸液 ) 中に押し出したものがビスコースレーヨン ( 再生繊維 ) である 5
7. ビスコースレーヨンは細いノズルを通して紡糸液中に押し出したものであるが, スリットを使用するとフィルムになる これがセロハンで構造はセルロースと同じである 8. セルロースを銅アンモニア溶液に溶解し, これを硫酸中で再生, 凝固させたもので, 凝固後, 延伸されて分子が配列することにより, 極めて細い繊維が得られる このようにして得られるセルロース繊維はキュプラまたはベンベルグと呼ばれる 9. シリコーンは鎖状オルガノポリシロキサン ( 主鎖が ( S i - O ) n のもの ) の総称である この分子構造のために耐熱性, 耐寒性, 潤滑性, 電気絶縁性, 撥水性, 耐薬品性, 耐老化性などに優れている 比較的やわらかいものが多く, 酸素透過性をもつ 液状 ( シリコーンオイル ), グリース状, ゴム状, 樹脂状のものがある シリコーンオイルは潤滑油, 制動油, 液圧油, 離型剤, 消泡剤, 皮膚保護剤などに, シリコーン樹脂は電気絶縁物, 耐熱性塗料, 接着剤などにもちいられる 1 0. フッ素ポリマーとは, 四フッ化エチレン ( C F 2 = C F 2 ), 三フッ化塩化エチレン ( C F 2 = C F C l ) などの重合体である 代表的なフッ素ポリマーはポリテトラフルオロエチレン ( P T F E, 商品名 : テフロン ) で, 懸濁重合で得られ, 耐熱性, 耐酸性, 耐アルカリ性をもち, 最大静止摩擦も小さいことから, 機械材料, 電気絶縁材料, 宇宙開発材料から家庭用品 ( 卵焼きが付着しないフライパンなど ) まで幅広く使われている 1 1. 一般にベンゼン環を有するポリマーは耐熱性をもつことが多い たとえば, 全芳香族ポリイミドなどは機械強度, ならびに耐熱性に優れる代表的な耐熱性ポリマーである 以下に 2 例を示す 6
ケブラーはパラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドの重合によって得られ, 分子構造が剛直で直鎖状の骨格を持つために, 高強度 高耐熱性であり, 同じ重さの鋼鉄と比べて 5 倍の強度を持つ また, ケブラーは結晶性のポリマーであり, 一般の有機溶媒に溶けず, 溶融もしないために成形が困難なポリマーであるが, 濃硫酸に溶解することで成形していることも大きな特徴である P E E K ( ポリエーテルエーテルケトン ) 樹脂は, 射出成形可能な熱可塑性樹脂としては最高の耐熱性を持つ芳香族系のプラスチックである 融点が 3 3 4 で, 2 5 0 で連続使用できるという超耐熱性を持つことから, スーパーエンプラ とも呼ばれる 1 2. 再生繊維 ( さいせいせんい ) は植物系と化学系の 2 つに分けられ, 植物系は天然繊維の性質を持った物質 ( 木材パルプ, 綿 ) を溶かし繊維に作り変えたものであり, 化学系はペットボトルを再生してできた繊維のことである 植物のセルロースを化学的に取りだし, 繊維に再生したものは, 再生セルロース繊維とも呼ばれる セルロースに水酸化ナトリウムを作用させるとアルカリセルロースができる これを二硫化炭素と作用させ, セルロースザントゲン酸ナトリウム溶液をつくる この溶液を細いノズルを通して希硫酸 ( 紡糸液 ) 中に押し出すと再生繊維 ( ビスコースレーヨン ) が得られる 第 4 章 演習問題 1. 陰イオン性界面活性剤 イオン性界面活性剤 陽イオン性界面活性剤 界面活性剤 両イオン性界面活性剤 非イオン性界面活性剤 陰イオン性界面活性剤 + R Al 3 R R SO 3 + R'CH=CH 2 HF SO 3 H Na R SO 3 Na 7
陽イオン性界面活性剤 RNH 2 HCO/HCHO RN(CH 3 ) 2 CH 2 R N CH 3 CH 3 CH 2 _ + 両イオン性界面活性剤 RNH 2 + CH 2 COONa RNHCH 2 COONa, RN(CH 2 COONa) 2 非イオン界面活性剤 R + nch 2 CH 2 O RO(CH 2 CH 2 O) n H 2. 水に界面活性剤を溶かしていくとき, まず, 界面活性剤分子が水面に吸着するが, 水面が界面活性剤分子で満たされると, 水中にもぐるが, 水から逃げようとする疎水基は, 疎水基同士で集まって水を避ける こうして, 界面活性剤分子は疎水基を内側に, 親水基を外側 ( 水のある側 ) に向けて集まりはじめる この界面活性剤の集合体をミセルと呼ぶ このミセルができはじめる濃度を臨界ミセル濃度 ( c r i t i c a l m i c e l l e c o n c e n t r a t i o n, 略して c m c ) と呼ぶ 3. 細菌の表皮である細胞壁 細胞質膜では, 外部からの栄養物や水分の取り込み, あるいは菌体内の老廃物の外部への搬出等が行われている 細菌の表皮はわずかにマイナス ( - ) に帯電している そのため, 第 4 級アンモニウム塩のカチオン ( + イオン ) により, 細胞膜が引き寄せられる その結果, 引き寄せられた反対側の細胞膜が弱くなって穴が開き, 細菌の増殖に必要な内容物が漏れ出し, 死滅する あるいは, 引き寄せられた細菌の細胞膜は, 第 4 級アンモニウム塩の疎水性基 ( 長鎖アルキル基 ) により, 突き破られ, 細胞膜が破壊され死滅する 4. コップに水をあふれそうになるまで入れると, 水面は盛り上がるが, これは水面の水分子が水素結合しているためである 楊枝の先に液体洗剤を付け, この盛り上がった水面に付けると, 水はこぼれ, 盛り上がりが低くなる これは液体洗剤分子が水面に親水基を水中に, 疎水基を空気側に向け配向吸着するためである この疎水基が水面の水素結合を切り, 水分子と疎水基との弱い結合 ( ファンデルワールス力 ) 8
に変える ( 表面張力を低下する ) ため水がこぼれる このとき, 疎水 基がフルオロアルキル鎖であると, 水との相互作用が炭化水素鎖と比 べ, さらに小さくなるため, 表面張力を低下させる 5. 可塑剤に要求される性質には, 相溶性 ( 可塑剤とプラスチックがよく混和する性質 ), 低揮発性, 低移行性 ( プラスチックが他のものに接触したとき, 可塑剤が相手物質に移行しにくい性質 ), 耐水性, 耐油性, 耐熱性, 耐寒性, 耐候性, 低毒性などさまざまであるが, 一つの可塑剤ですべての要求を満たすことはできないので, 複数の可塑剤が用いられる 6. 酸化 H 2N N H 2 SO 4 CO NH 開環重合 CO-(CH 2 ) 5 -NH n 7. 酸化 HNO 3 HOOC-(CH 2 ) 4 -CO NH 3 H 2 NCO-(CH 2 ) 4 -CONH 2 -H 2 O NC-(CH 2 ) 4 -CN H 2 H 2 N-(CH 2 ) 6 -NH 2 縮合重合 nhooc-(ch 2 ) 4 -CO + nh 2 N-(CH 2 ) 6 -NH 2 CO-(CH 2 ) 4 -CO-NH-(CH 2 ) 6 -NH n 8. CO COOCH 2 CH 2 O n 9. 次に示した全芳香族ポリアミド系繊維をケブラー繊維という CO CONH NH n ケブラーはパラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドの重合によって得られ, 分子構造が剛直で直鎖状の骨格を持つために, 高強度 高耐熱性であり, 同じ重さの鋼鉄と比べて 5 倍の強度を持つ また, ケブラーは結晶性のポリマーであり, 一般の有機溶媒に溶けず, 溶融もしないために成形が困難なポリマーであるが, 濃硫酸に溶解す 9
ることで成形していることも大きな特徴である スキーの板にも使用 されていることがある 1 0. 使用済みプラスチックは古くはほとんどが廃棄され, ゴミとして埋め立てられていた しかし, 近年, 化石燃料の使用量が増加し, そのために二酸化炭素による地球温暖化の問題が懸念されていることから, 使用済みポリマーをリサイクルさせたり, 元の原料へ戻したり, 無公害の状態で燃焼により消滅させたり, あるいは地中のバクテリアにより分解できるポリマーを開発することが行われるようになってきた ペットボトルを例に, そのリサイクルの状況を見ると以下のようになる ペットボトルのリサイクル量は生産量のおよそ半分程度 ペットボトルは, 容器包装リサイクル法に基づいて市町村が回収している ペットボトルを回収している市町村は全体の 7 0 % このほか, スーパーマーケット, コンビニエンスストア, 自動販売機設置場所などにも回収ボックスがある 回収されたペットボトルは, いったん地域の集積場所に集められ, 機械で圧縮 梱包, リサイクル工場に送られる リサイクル工場では, 異物を除去し, 水洗, 粉砕し, 細かく砕いたフレークや粒状のペレットにする これらはプラスチック工場に運ばれ, 衣類, バッグ, 文房具などのプラスチック製品に生まれ変わる 1 1. 天然繊維には植物繊維と動物繊維があり, 植物繊維は綿, 麻, 竹, いぐさなどから得られる また, 動物繊維は羊毛, 獣毛 ( カシミヤ, アンゴラなど ), 絹などがある いずれも, それ自身のもつ風合い, 触感, 着心地などがある 必ずしもそうではないが, 一般的には植物繊維は肌に直接触れる部分に, 動物繊維は外装着に使用される場合が多い 合成繊維はほとんどが天然繊維をモデルに合成されたもので, たとえば, 絹や羊毛の強さ, つやなどに注目して, その分子構造 ( ポリアミド ) を真似たものが, 6 - ナイロンや 6, 6 - ナイロンである 天然繊維より強度はあるが, 吸湿性, 触感, 風合いなどに欠ける場合がある 1 2. セルロイドはニトロセルロース約 7 5 %, ショウノウ ( 可塑剤 ) 約 2 5 % の混合物からなる熱可塑性プラスチックで, 以前は玩具や下敷きなどにつかわれていた 近年, 石油系プラスチックに押されて, ほとんど製造されなくなったが, 適切な弾性を有するため, ピンポン球に使用されている 成分からわかるように燃えやすく, 火気に注意なければならない 10
1 3. 宇宙開発に関連して耐熱性高分子の必要性が高まった エジソンが日本の竹を蒸し焼きにして電球のフィラメントをつくった話は有名であるが, 炭素繊維はレーヨン, アクリル繊維, ピッチなどから得られる繊維を酸素のない状態で加熱すると得られる 2 5 0 0 でも融解, 分解が起こらない 難点はコストが高く, 高温で酸化されやすいことである 航空機, ロケット, スポーツ用具などへ利用されている 1 4. 不織布とは繊維の集合体を紡績機や織機によらず繊維に接合させてつくった布状のものである 繊維から直接つくるので, 製造工程が簡略化され, 工業的に有利である 繊維の接合にはゴムの原料となる N B R, S B R やポリビニルアルコールなどがバインダーとして使われる また, 繊維を機械的に絡ませる方法もある 衣料用として芯地などに用いられ, また, 使い捨てのオムツやメディカル分野や, フィルター, 粘着テープの基材, 複合材料など利用範囲が広い 第 4 章 1. ワークシート問題 陰イオン性界面活性剤 イオン性界面活性剤 陽イオン性界面活性剤 界面活性剤 両イオン性界面活性剤 非イオン性界面活性剤 陰イオン性界面活性剤 + R Al 3 R R SO 3 + R'CH=CH 2 HF 陽イオン性界面活性剤 SO 3 H Na R SO 3 Na RNH 2 HCO/HCHO RN(CH 3 ) 2 CH 2 R N CH 3 CH 3 CH 2 _ + 11
両イオン性界面活性剤 RNH 2 + CH 2 COONa RNHCH 2 COONa, RN(CH 2 COONa) 2 非イオン界面活性剤 R + nch 2 CH 2 O RO(CH 2 CH 2 O) n H 4 章ワークシートの 1 は, 4 章演習問題の 1. と同じ問題が入って しまいました 申し訳ございません 2. 水中で解離して生じる有機カチオンが界面活性を表すものに, アミン塩 ( R N + H 3 X - ), 第 4 級アンモニウム塩 ( R N + ( C H 3 ) 3 X - ), 第 4 級ピリジニウム塩 ( C 5 H 5 N + R X - ) がある ここで, X は C l, B r などハロゲンである 一般に洗浄力は低いが, 繊維の柔軟剤, 殺菌消毒剤などの用途がある 細菌の表皮である細胞壁 細胞質膜では, 外部からの栄養物や水分の取り込み, あるいは菌体内の老廃物の外部への搬出等が行われている 細菌の表皮はわずかにマイナス ( - ) に帯電している そのため, 第 4 級アンモニウム塩のカチオン ( + イオン ) により, 細胞膜が引き寄せられる その結果, 引き寄せられた反対側の細胞膜が弱くなって穴が開き, 細菌の増殖に必要な内容物が漏れ出し, 死滅する あるいは, 引き寄せられた細菌の細胞膜は, 第 4 級アンモニウム塩の疎水性基 ( 長鎖アルキル基 ) により, 突き破られ, 細胞膜が破壊され死滅する 3. クメン法 Na ONa CO 2 H + (CH 3 CO) 2 O H + COONa OCOCH 3 CO CO 4. n HOOC CO + nho-ch 2 CH 2 - OC COOCH 2 CH 2 O n + nh 2 O 12
と書かれる場合が多いが, テレフタル酸は適当な溶媒がないので精 製が困難であり, テレフタル酸ジメチルエステルのエステル交換反応 でつくられるビス ( β ーヒドロキシエチル ) テレフタラートを減圧, 加熱し, エチレングリコールを除きながら重合する H 3 COOC COOCH 3 + 2 HO-CH 2 CH 2 - HOCH 2 CH 2 OOC COOCH 2 CH 2 + 2 CH 3 ビス (β ーヒドロキシエチル ) テレフタラート n HOCH 2 CH 2 OOC COOCH 2 CH 2 HOCH 2 CH 2 OOC COOCH 2 CH 2 n + (n-1)hoch 2 CH 2 < 補充問題 > ( 1 ) 界面活性剤は用途範囲が広い 以下の性質は工業的にどのよう な分野に応用されるか ( a ) 分散 ( b ) 乳化 ( c ) 湿潤 ( d ) 殺菌 ( e ) 浸透 ( a ) 分散 : インキ, ペイント, 化粧品など ( b ) 乳化 : 食品, 洗剤, 高分子合成, 化粧品など ( c ) 湿潤 : 化粧品, 製紙など ( d ) 殺菌 : 医薬, 農薬など ( e ) 浸透 : インキ, 農業 ( 土壌改良 ) など ( 2 ) 陽イオン性界面活性剤, 陰イオン性界面活性剤, 両イオン性界 面活性剤について, それぞれの親水基を複数あげよ 陽イオン性界面活性剤 : + N R _ R-NH 3 陰イオン性界面活性剤 : R-COONa R-SO 3 Na R-OSO 3 Na 両イオン性界面活性剤 : R-NHCH 2 CO R-NHCH 2 CH 2 SO 3 H 13
( 3 ) ヨウ素価を測定すると, そこから何が分かるか 油脂の不飽和度がわかる 不飽和部分 ( 分子内の二重結合, まれに三重結合 ) が油脂中にある石けんは空気中に放置すると不飽和結合が酸化切断され短い鎖長のカルボン酸になる 短い鎖長のカルボン酸は臭いが悪い 油脂をけん化する前に不飽和度を調べ, 水素で還元 ( 水素添加 ) し, 不飽和結合のない油脂にする ( 4 ) グリセリンとステアリン酸のみからなる油脂 ( ステアリン酸トリグセリド ) のけん化価を求めよ けん化価は油脂 1 g を完全にけん化するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数 ( C 1 7 H 3 5 C O O ) 3 C 3 H 5 ( ステアリン酸トリグセリド ) の分子量は 8 9 0 8 9 0 g( 1 m o l ) のステアリン酸トリグセリドをけん化するのに必要な水酸化カリウムは 3 m o l ( 5 6g = 5 6 0 0 0 m g ) よって, 8 9 0 : 5 6 0 0 0 = 1 : X X = 6 2. 9 よって, けん化価はおよそ 6 3 ( 5 ) 食品用乳化剤となる界面活性剤を挙げよ グリセリン脂肪酸エステル ( モノグリセリド ), ショ糖脂肪酸エステル, ソルビタン脂肪酸エステル, プロピレングリコール脂肪酸エステル, 有機酸モノグリセリドなどがある ( 6 ) 医薬の開発には時間がかかる なぜか 医薬品は多くの新規合成化合物の中から選び出したものを臨床試験にかけ, 効力, 副作用, 毒性などが検討され, 世の中で使用されるようになる 多くの新規な化合物を開発しても, 実用の医薬品になる確率は低く, およそ 7 0 0 0 化合物に 1 個の割合といわれている このように医薬品の開発は時間と経費がかかる ( 7 ) 高密度ポリエチレンの特徴を記せ 高密度ポリエチレンはその分子鎖の分枝度が低く, 結晶性が高い 比重は 0. 9 4 ~ 0. 9 6 で, 硬いフィルム, 繊維, 成形品として使用される ( 8 ) 可塑剤を使うことの利点は何か 塩化ビニル樹脂のように極性の大きいプラスチックは一般に硬く, もろく, きわめて加工しにくい このような硬いプラスチックに配合し, 弾性率を低下させ, 成形加工を容易にし, また製品に柔軟性, 耐寒性などの性能を付与できる 14
( 9 ) ベンベルグの合成法を記せ セルロースを銅アンモニア溶液に溶解し, これを硫酸中で再生, 凝固させる 凝固後, 延伸させて分子を配列させることにより, 極めて細い繊維が得られる このようにして得られるセルロース繊維はキュプラまたはベンベルグと呼ばれる ( 1 0 ) シクロヘキサノールから 6 - ナイロンを合成せよ H 2N N H 2 SO 4 CO NH 開環重合 CO-(CH 2 ) 5 -NH n ( 1 1 ) アジピン酸から 6, 6 - ナイロンを合成せよ HOOC-(CH 2 ) 4 -CO NH 3 H 2 NCO-(CH 2 ) 4 -CONH 2 -H 2 O NC-(CH2 ) 4 -CN H 2 H 2 N-(CH 2 ) 6 -NH 2 縮合重合 nhooc-(ch 2 ) 4 -CO + nh 2 N-(CH 2 ) 6 -NH 2 CO-(CH 2 ) 4 -CO-NH-(CH 2 ) 6 -NH n 15