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1. 気象概況と成田国際空港の状況第 1 図は 12 月 15 日 03UTC の地上天気図です 日本のはるか東海上には高気圧があり 日本海中部には前線を伴った低気圧があって東進しており 日本の南海上から南よりの風が東日本に吹き込む気圧配置となっていました 第 2 図は 12 月 14 日 21UTC から 15 日 21UTC までの成田国際空港における風向風速 視程 ( 以下 VIS と略す ) 雲底高度 ( 以下 CIG と略す ) 気温 露点温度等の時系列変化を示した METAR シーケンス図です 12 月 15 日 00UTC の成田国際空港の 実況は VIS10km 以上 CIG は 5,000ft 程度で VIS CIG ともに比較的良い状況でしたが 15 日 02UTC から南寄りの風が北西の風へ変化した後 次第に VIS CIG は低下し 15 日 0451UTC には CIG が 400ft に 0513UTC には VIS が 800m になって霧に覆われてしまいました VIS は最も低下した 0630UTC 頃には 600m となり CIG も 200~100ft の状態が夜の初めまで続きました その後 15 日 12UTC 頃から霧や低 CIG は次第に解消しました 第 2 図成田国際空港の METAR シーケンス図 ( 12 月 14 日 21UTC~ 15 日 21UTC) 左から右へ時間軸を取り 30 分毎に観測値を示しています 最上段は風向風速 2 段目の橙線は VIS 丸記号は雲量と高度 三段目の紫線は気圧 赤線は気温 緑線は露点温度を表します 最下段は天気を表しています 2

2. 関東地方の気象状況第 3 図にアメダス風向 風速 気温等を記入した関東地方とその周辺の局地天気図を示します 左上図の 00UTC の状況を見ると 千葉県北部から神奈川県沿岸にかけて 図中の点線を境に北側では北寄りの風で 2 ~6 前後の低温の領域が広がり 南側では南西風が吹いて 13 以上と気温が上昇しています この点線で示した気温差を持った風のシアーラインは 日本の南海上から日本海の低気圧に吹き込む南西風と関東平野付近にあった寒気との間にできた局地前線です この局地前線は 第 1 図の日本海の低気圧から伸びる温暖前線や寒冷前線と異なり 関東や東海地方の限定された地域に局地的に形成された前線で 今回のように海岸線に沿って出来る局地前線を特に沿岸前線と呼びます 沿岸前線の近くやその北側では しばしば VIS の悪化 CIG の低下やウィンドシアーが発生し アメリカ東部を中心とする沿岸前線では着氷性降雨による凍結 ( 氷点下に冷えた雨滴が凍らずに地上まで落下し地物に付着して凍る現象 ) も発生することが知られています 第 3 図関東地方の局地天気図 12 月 15 日左上 00UTC 右上 03UTC 左下 06UTC 右下 12UTC 図中の矢羽根はアメダス風向 風速 細実線は等圧線 数字は気温 ( 黄緑 9 橙桃 11 ) 点線は風のシアーラインを表します 3

12 月 15 日午前中に関東南部で発生した沿岸前線は 昼頃にかけて 00UTC の位置から僅かに南下し 03UTC には成田空港の南から三浦半島の南を通って伊豆半島を結ぶ位置にあり ( 第 3 図右上 ) その後 09UTC 過ぎまでほぼ房総半島から伊豆半島を結ぶ位置に停滞しました ( 第 3 図左下 ) 12UTC 以後 日本海の低気圧に伴う寒冷前線の通過に対応して 房総半島付近から次第に南下しました ( 第 3 図右下 ) 第 4 図に気象衛星の赤外画像及びレーダーエコー分布を示します 東日本は低い雲に覆われ 00UTC 頃以降 東海 地方から東進する降水エコー域が関東南部にかかり始め ( 第 4 図左 ) 所々で弱い降水を観測しました 昼頃にかけては シアーライン付近を中心に降水エコー域が広がり 当空港でも 02UTC 過ぎから弱い雨を観測しています その後 06UTC 衛星 エコー域 ( 第 4 図中 ) のように 降水エコー域は鹿島灘から大島付近にかけてライン状に点在し 関東南部では弱い雨が夜の初め頃まで断続しました その後 降水エコー域はゆっくり東進し 12UTC 頃には関東の南から東海上に進み ( 第 4 図左 ) 関東の雨も止みました 第 4 図気象衛星の赤外画像とレーダー合成図 3. 霧の発生原因について霧の発生には 下層が湿潤であることと大気の状態が安定であることが重要です 15 日 00UTC の館野 ( 茨城県つくば市 ) の高層観測の結果 ( エマグラム ) を見てみると ( 第 5 図 ) 1000hPa 付近 ( 高度約 200m) に安定層が形成されています ( 図中の矢印 ) この安定層の下方の地上付近では 北寄りの風で約 3 の寒気となっており 一方 安定層より上 方では南西風で 7 の暖気と上空の気温の方が高く大気の状態が非常に安定であったと言えます 安定層上空の南西風は 関東南部沿岸の地上の南西風が安定層の上方を滑昇して館野上空に達したものと考えられ この安定層は関東南部の沿岸前線に対応するものと言えます 関東付近の大気の立体的イメージを第 6 図に示します 4

沿岸前線の北側に広がる寒気は非常に安定で上空の空気と混ざりにくく 降水によって湿潤化が進むため VIS が悪化すると言われています 特に上空が南 ~ 南西風の場合は 沿岸前線北側の寒気が関東平野に滞留した状態 ( このような寒気を滞留寒気または滞留冷気と呼びます ) となり VIS が著しく悪化することがあります 本事例でも南西風と関 東内陸の滞留寒気の間で沿岸前線が形成されたこと 暖かい上空からの降水によって地上付近の湿潤化が強められ 空気が飽和に近い状態となったことが 霧発生の原因の一つと考えられます また 霧発生との関係は明確ではありませんが 当日は大気汚染物質の濃度が高く これによって VIS がさらに悪化した可能性があります 第 5 図館野エマグラム ( 12 月 15 日 00UTC) 縦軸は高度 ( 気圧 海抜 ) 横軸に温度 ( 赤線は気温 青線は露点温度 ) 右側に風の鉛直分布を表しています 第 6 図関東付近の大気の立体的イメージ図沿岸前線 ( 図中の破線 ) の北側には滞留寒気があり 関東南岸の地上で観測される南西風の暖気は この上を滑昇していると考えられます 滞留寒気は暖かい上空からの降水で湿潤化し VIS 悪化 一部で霧となったと思われます 5

4. まとめ今回の霧は 関東南部に沿岸前線が形成されたこと 地上より暖かい上空からの降水が断続し地上付近が非常に湿潤化したことが発生原因と考えられます このような霧は 前線霧 に分類されるもので 頻繁に発生するものではありませんが 沿岸前線が形成された場合には VIS が悪化し稀に霧になることもあります 沿岸前線は寒候期に発生しやすいことから 今後もこれらが予想される場合には VIS の悪化や CIG の低下 またウィンドシアーに十分注意が必要です 2012 年 3 月 17 日 0400UTC の成田国際空港今回と同様 局地前線が空港付近に停滞し 降水と霧によって VIS 悪化となりました 6